前作「カジノ・ロワイヤル」(2006)のシリーズ初となる続編。 個人的な”復讐”をしてはならないというMi6の掟を破りかける主人公ボンドの苦悩を描く、監督マーク・フォースター、ダニエル・クレイグ、オルガ・キュリレンコ、ジュディ・デンチ、マチュー・アマルリック、ジェマ・アータートン、ジェフリー・ライト、ジャンカルロ・ジャンニーニ他共演。 |
■ スタッフ キャスト ■
監督:マーク・フォースター
製作総指揮
アンソニー・ウェイ
カラム・マクドゥガル
製作
マイケル・G・ウィルソン
バーバラ・ブロッコリ
原作:イアン・フレミング”ナッソーの夜”
脚本
ニール・パービス
ロバート・ウェイド
ポール・ハギス
撮影:ロベルト・シェイファー
編集
マット・チェシー
リック・ピアソン
音楽:デヴィッド・アーノルド
モンティ・ノーマン:ジェームズ・ボンドのテーマ
主題歌:ジャック・ホワイト”Another way to die”
出演
ジェームズ・ボンド:ダニエル・クレイグ
カミーユ・モンテス:オルガ・キュリレンコ
ドミニク・グリーン:マチュー・アマルリック
M:ジュディ・デンチ
ストロベリー・フィールズ:ジェマ・アータートン
メドラーノ将軍:ホアキン・コシオ
フェリックス・ライター:ジェフリー・ライト
レネ・マティス:ジャンカルロ・ジャンニーニ
Mr.ホワイト:イェスパー・クリステンセン
グレッグ・ビーム:デヴィッド・ハーバー
ビル・タナー:ローリー・キニア
ミッチェル:グレン・フォスター
イギリス/アメリカ 映画
配給
MGM
コロンビア・ピクチャーズ
2008年製作 106分
公開
イギリス:2008年10月31日
北米:2008年11月14日
日本:2009年1月24日
製作費 $200,000,000
北米興行収入 $168,368,400
世界 $575,952,500
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
恋人ヴェスパーに裏切られながらも、死んだ彼女のために復讐を誓ったイギリス諜報員のジェームズ・ボンド(ダニエル・クレイグ)は、イタリアのガルダ湖でMr.ホワイト(イェスパー・クリステンセン)を捕らえる。
追跡されながら無事にシエナに着いたボンドは、M(ジュディ・デンチ)の元にMr.ホワイトを連行する。
ボンドとMは、Mr.ホワイトの組織(クォンタム)に関する情報を聞き出そうとするが、Mのボディガードのクレイグ・ミッチェル(グレン・フォスター)の裏切りで、Mr.ホワイトは銃撃される。
ボンドは、逃走したミッチェルを追い詰めて激闘の末に殺すが、Mr.ホワイトは逃亡する。
ロンドン。 ハイチ、ポルト-プランス。 アタッシュケースの中に、自分の写真と拳銃が入っていたことを知ったカミーユは、ボンドに発砲する。 ボンドは車を降り、尾行していた男のバイクを奪いカミーユを追跡する。 愛人のドミニク・グリーン(マチュー・アマルリック)が自分を殺そうとしたことを知ったカミーユは、彼を責める。 グリーンは、ボリビアの独裁者メドラーノ将軍(ホアキン・コシオ)に家族を殺されたカミーユが、復讐のため自分に近づいたことに気づいていた。 メドラーノ将軍との打ち合わせ後にグリーンは、カミーユを彼に紹介し、2人は将軍のクルーザーに向かう。 その後、カミーユが復讐を企んでいることを知ったボンドは、メドラーノに同行したカミーユの危険を察知して彼女を救い出す。 ロンドンに連絡を取ったボンドは、グリーンが環境組織の”グリーン・プラネット”のCEOで、土地を買いあさっていることを知らされる。 さらにMは、CIAもグリーンを追っているということを知る。 グリーンのプライベートジェットに同乗した、CIAの南米局長グレッグ・ビーム(デヴィッド・ハーバー)は、彼と手を組むことを、同行するフェリックス・ライター(ジェフリー・ライト)に伝える。 オーストリア、ブレゲンツ。 ”トスカ”の上演中、観客席で無線を使い要人と取引していたグリーンらの会話に、ボンドが割って入る。 そしてボンドは、イギリス首相付特命大使の特別警護官に襲われ、相手を殺害してしまう。 Mはボンドの行動を非難し、彼のパスポートやクレジットカードを無効にしてしまう。 イタリア、タラモーネ。 ラパス。 安宿を用意されたボンドは、高級ホテルにチェックインして、部屋でフィールズを誘惑する。 その後ボンドは、フィールズとマティスを伴い、グリーンが主催する慈善パーティーに向かう。 カミーユに再会したボンドは、グリーンに絡む彼女を連れて会場を後にする。 現地の警察に追われて車を止められたボンドは、トランクに痛めつけられたマティスが入れられているのを知る。 マティスは警官に撃たれ、相手を倒したボンドは、覚悟を決めたマティスを看取る。 マティすの遺体をゴミボックスの中に放置したボンドは、カミーユとその場を立ち去る。 そしてロンドンのMには、ボンドがマティスを撃ったという連絡が入る。 グリーンが、利権がらみの土地を取得しようとしていることを知ったボンドは、原野の飛行場で輸送機(ダグラスDC-3)を調達する。 ボンドは、ボリビアの諜報員だったカミーユから、グリーンが手に入れた土地で何かが見つかったことを知らされ、2人はその場に向かう。 しかしボンドらは、追ってきた戦闘機(アエルマッキ SF.260)とヘリコプター(ベル・UH-1イロコイ)の攻撃を受ける。 ボンドは、攻撃を受けて制御不能になった輸送機を捨てて、カミーユにパラシュートをつけさせて脱出する。 無事に地上に降下して難を逃れたボンドは、カミーユの狙いがグリーンではなく、家族を殺したメドラーノ将軍の命だということを知る。 その場でボンドは、グリーンが川の水をダムで堰きとめ、水の供給を止めていることを知り、彼の目的が石油ではなく水だと気づく。 カミーユとラパスにたどり着いたボンドは、現地に来ていたMから、フィールズが石油で溺れさせられて殺害されたことを知らされる。 Mは、敵味方に犠牲者を出すボンドの任務を解く。 ボンドはその場を去るが、警護官を叩きのめして銃を奪い、カミーユと車で逃走する。 ライターに連絡を入れて酒場に呼び出したボンドは、グリーンと手を組もうとするCIAを非難する。 ライターは、クーデターを起そうとしているメドラーノに、グリーンが資金提供をしようとしていることをボンドに伝える。 襲われることを知らせたライターは、ボンドを逃がす。 グリーンとメドラーノの取引現場となる、砂漠の中のエコホテルに向かったボンドは、メドラーノへの復讐の準備をするカミーユに、冷静さを保つよう助言する。 そして、グリーンがホテルに到着し、メドラーノとの取引を済ませる。 その直後、ボンドとカミーユは、ホテルに侵入して攻撃を仕掛ける。 カミーユはメドラーノに襲い掛かり、ボンドもグリーンとの一騎打ちになる。 しかし、誤って発火したホテルの水素タンクが、連鎖爆発し始める。 メドラーノを射殺した、カミーユの元に向かったボンドは、彼女を助けて脱出する。 ボンドは砂漠に逃げたグリーンを捕らえ、エンジンオイルの缶を与えて置き去りにする。 カミーユを駅まで送ったボンドは、彼女にキスをして別れ、ダムを破壊するため現地に向かう。 ロシア、カザン。 ボンドは、彼女が身に付けている、男がヴェスパーに与えた物と同じネックレスを見せて、情報が漏れているため、本部にシステムのチェックをさせるようにと伝える。 その後、ボンドがアパートを出ると、Mが待ち構えていた。 Mは、ボンドがヴェスパーの元恋人に復讐しなかったことを知り驚く。 Mは、グリーンが砂漠で射殺され、胃の内部にオイルが確認され、CIAのライターが昇格しビームが降格したことなどをボンドに伝える。 MI6に復職するようMから言われたボンドは、職を放棄した憶えはないことを彼女に告げる。 そしてボンドは、ヴェスパーのネックレスを雪道に捨てて、その場を立ち去る。
ミッチェルのアパート及び身辺調査で、 ボンドは手がかりを掴みハイチに向かう。
...全てを見る(結末あり)
ボンドは、ミッチェルと接触したと思われる男を殺し、その男のアタッシュケースを奪いホテルを出て、現れたカミーユ・モンテス(オルガ・キュリレンコ)から車に乗るよう指示され、それに従う。
ボンドはグリーンの後を追い、コンスタンス湖で開催されるオペラ会場に向かう。
協力者レネ・マティス(ジャンカルロ・ジャンニーニ)に接触したボンドは、彼を説得してボリビアのラパスに向かう。
現地の諜報員ストロベリー・フィールズ(ジェマ・アータートン)に迎えられたボンドは、、彼女の任務が自分を帰国させることだということを知る。
南米での任務を終えたボンドは、ヴェスパー・リンドの元恋人を待ち伏せ、彼と戻ったカナダ安全情報局の女性諜報員に、入手した情報を報告するために去るよう指示する。
*(簡略ストー リー)
死んだヴェスパーの復讐を誓ったイギリス諜報員ジェームズ・ボンドは、黒幕Mr.ホワイトを捕らえるものの、内部の裏切りで彼を逃がしてしまう。
その後、ある手がかりを掴んだボンドはハイチに向かい、謎の女カミーユが関係するグリーンと、ボリビアの独裁者メドラーノ将軍の存在に目を付ける。
グリーンは、将軍に家族を殺されたカミーユが、復讐のために自分に近づいたことに気付いていた。
カミーユの危険を察知したボンドは、彼女を救い出す。
ロンドンからの情報で、グリーンが環境組織のCEOであり、土地を買いあさっていることボンドは知る。
グリーンを追いオーストリアに向かったボンドは、Mを含めた周囲の目を無視して彼の情報を入手し、協力者マティスと接触しボリビアのラパスに向かう。
現地の連絡員ストロベリー・フィールズの帰国指示も無視したボンドは、グリーンに近づき企みを探ろうとするのだが・・・。
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本来、冒頭で登場する、観客席方向の銃口に向けて発射される、ボンドの銃撃と共に始まるジェームズ・ボンドのテーマがラストに登場し、劇中でもテーマ曲はわずかしか流れない。
そして、前作と本作によりボンドは、真の”00エージェント” となったことを案じさせている。
シリーズ最短の、106分という上映時間からも、前作とセットで見るべき作品と言える。
1960年に発表された、イアン・フレミングの短編集”For Your Eyes Only”の中に収められている作品、”Quantum of Solace”が原作である。
初めて劇場で予告編を見た時に知った”慰めの報酬”という、007シリーズにそぐわない野暮ったい題名には興醒めした。
しかし、以前のシリーズのニヤケたボンドの雰囲気が全くない、冷酷で女性にも冷たい人物像と、玄人受けする大人向の作風、丁寧な演出など、見応えある作品には仕上がっている。
シリーズ史上最高のヒットとなった前作と比較され、何かと批判的な声が多かった本作だが、興行収入は、全世界で前作とほぼ同じ6億ドルに迫る大ヒットとなった。
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北米興行収入 $168,368,430
世界 $575,952,510
前作で”00”/殺しのライセンスを得た、逞しいNEWボンドを見事に演じたダニエル・クレイグは、強い意志を前面に出し、さらにパワーアップされたアクション・シーンなど、体が粉々になりそうなハード・アクションを見事にこなしている。
こちらも、美しいだけのボンド・ガールとは全く違うイメージの、家族の復讐に燃える諜報員オルガ・キュリレンコの魅力も新鮮だ。
今回はいつになく出番が多く、腕白息子に手を焼く母親のような、主人公の上司M役ジュディ・デンチは、シリーズ中、最も存在感ある役所を見事に演じている。
特異なキャラクターではあるが、ボンドの敵役にしては、やや器が小さい感じもするマチュー・アマルリック、「ゴールドフィンガー」(1964)の金粉窒息死を思い出す殺され方をする連絡員のジェマ・アータートン、ボリビアの独裁者役ホアキン・コシオ、続編ということで連続出演している、CIAのフェリックス・ライター役ジェフリー・ライト、その同僚デヴィッド・ハーバー、そして命を落とす協力者のジャンカルロ・ジャンニーニ、前作ラストでボンドに狙われて捕らえられ、引き続き登場するMr.ホワイト役イェスパー・クリステンセン、その後も出演するMの部下ローリー・キニアなどが共演している。