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ジェニーの肖像 Portrait of Jennie (1948)

1940年に発表された、ロバート・ネイサン同名短編小説を基に製作された作品。
本作公開の翌年に結婚するジェニファー・ジョーンズのためにデヴィッド・O・セルズニックが製作し、監督ウィリアム・ディターレジョゼフ・コットンエセル・バリモア共演によるファンタジー・ロマンスの傑作。

アカデミー賞 ■ ストーリー ■ 解説


ファンタジー

ジェニファー・ジョーンズ / Jennifer Jones / Pinterest


スタッフ キャスト ■
監督:ウィリアム・ディターレ

製作:デヴィッド・O・セルズニック
原作:ロバート・ネイサン
脚本
ポール・オズボーン
ピーター・バーネイズ
レオナルド・ベルコヴィッチ
撮影:ジョセフ・H・オーガスト
編集:ウィリアム・モーガン
音楽:ディミトリ・ティオムキン

出演
ジェニファー・ジョーンズ:ジェニー・アプルトン
ジョゼフ・コットン:エブン・アダムス
エセル・バリモア:スピニー夫人
セシル・ケラウェイ:マシューズ
デヴィッド・ウェイン:ガス・オトゥール
リリアン・ギッシュ:シスター・メアリー
ヘンリー・ハル:イーク
クレム・ビヴァンス:コッブ船長
アン・フランシス:美術館の少女

アメリカ 映画
配給 Selznick Releasing
1948年製作 86分
公開
北米:1948年12月25日
日本:1951年7月18日
製作費 $4,041,000


アカデミー賞 ■
第21回アカデミー賞

・受賞
特殊効果賞
・ノミネート
撮影賞(白黒)


*詳細な内容、結末が記載されています。
ストーリー ■
1934年、ニューヨーク
貧しい画家エブン・アダムス(ジョゼフ・コットン)は、画商のスピニー夫人(エセル・バリモア)とマシューズ(セシル・ケラウェイ)の画廊を訪れる。

気難しそうなスピニー夫人は、アダムスの人間性の未熟さを指摘するものの、彼に、何か引かれるものを感じて、花の絵を一枚買うことにする。

その後アダムスは、セントラルパークで、雪遊びをしている少女ジェニー・アプルトン(ジェニファー・ジョーンズ)に出会う。

ジェニーに絵を見せたアダムスは、コッド岬の絵を見た彼女が、その場に詳しいことを知る。

友達のことなどを矢継ぎ早に話す不思議な少女ジェニーに、アダムスは、空腹と疲労で落ち込んでいた心を癒されるのだった。
...全てを見る(結末あり)

そしてジェニーは、スカーフを残して姿を消してしまう。

苦しい生活に疲弊し切っていたアダムスは、ジェニーとの出会いで、彼女に心奪われる。

アダムスは、自宅に帰っても頭を離れない、ジェニーのデッサン画を描いてみる。

友人のタクシー・ドライバーのガス・オトゥール(デヴィッド・ウェイン)と昼食に行ったアダムスは、ジェニーのスカーフを包んであった新聞が、20年以上前のものだと気づく。

さらに新聞には、ジェニーの言っていた空中ブランコ乗りの両親の広告も掲載されていた。

アダムスは、ガスの機転で、レストランの壁に絵を描く仕事をもらえる。

その後アダムスは、マシューズとスピニー夫人の画廊に向かい、ジェニーのデッサン画をマシューズが気に入り、それを25ドルで買ってもらえる。

アダムスをお茶に誘った夫人は、その絵を描いた時の閃きを大切にするよう彼に助言する。

穏やかな気分で午後を迎えたアダムスは、スケートリンクでジェニーに再会する。

不思議なことに、ジェニーは短期間で背が伸びて成長していた。

そして、相変わらずおかしな話をするジェニーの肖像画を描こうとするアダムスは、その承諾を得るために、彼女の両親に会う約束をして別れる。

しかし、そこに現れたスピニー夫人には、ジェニーの姿は見えなかった。

数日後、ジェニーは約束の場所に現れず、アダムスは、彼女の両親について調べてみることにする。

すると両親の資料と共に、自分が会ったジェニーの写真が出てきたのだ。

自分の目を疑ったアダムスは、ジェニーが両親の死後に、カトリックの修道院に預けられたことを知る。

その帰り道にアダムスは、両親が事故死して泣き崩れるジェニーに出会う。

彼女は修道院に預けられることと、何かを探し求めていることを言い残して姿を消してしまう。

それからは、ジェニーがアダムスの前に現れなくなり、時は経ち、彼は絵を描こうとする気力が薄れてしまう。

全てがジェニーを想い出させ、長い冬が終わり春が訪れても、アダムスは何も手のつかない日々が続いた。

ただ一人の相談相手のスピニー夫人に、アダムスは、生涯最高の作品”ジェニーの肖像”が描けそうな気がすることを伝えるが、それにとりかかれないもどかしさも語る。

アダムスは、ジェニーは自分が作り上げた空想と思うかと夫人に尋ねるが、彼女は、それは問題ではなく、描く準備をしておくべきだと彼を励ます。

ガスにも助言されたアダムスは、先延ばしになっていた、アイルランド独立運動の指導者”マイケル・コリンズ”の絵をレストランの壁に描き完成させる。

その絵の除幕式を終えるものの、ガスらと騒ぐ気になれないアダムスはアパートに帰る。

なんと、そこにには、大人になったジェニーがアダムスを待ち構えていた。

ジェニーは、アダムスの、コッド岬のランズエンド灯台の絵を見て動揺する。

そしてアダムスは、気を取り戻したジェニーをモデルに、彼女の肖像画を描き始める。

その後、ジェニーを修道院に訪ねたアダムスは、彼女との癒された一時を楽しむ。
数日後、アダムスのアパートを訪れた、スピニー夫人とマシューズは、未完成の”ジェニーの肖像”を見て、奇跡にも近いその素晴らしい出来栄えと、そして、時代を超えた神秘的な美しさに感激して絶賛する。

やがて、アダムスとジェニーは心惹かれ合うが、何か越えられない境界線のようなものを感じる。

ジェニーは、病気の叔母の元に向かうことになり、数ヶ月会えなくなる二人は、肖像画を仕上げるために徹夜して、そして、ついに絵は完成する。

それを喜ぶ二人だったが、ジェニーはその場にあったスカーフと共に姿を消してしまう。

ジェニーを待ち続けて、再び空虚な日々が続くアダムスは、ガスの提案で、修道院のシスター・メアリー(リリアン・ギッシュ)を訪ねる。

そこでアダムスは、ジェニーが、何年も前にランズエンドの灯台に向かったまま消息を絶ち亡くなったことを、シスター・メアリーから知らされる。

アダムスは、ジェニーの一生と自分の人生のつながりを追求するために、ジェニーの肖像画をスピニー夫人に預けてコッド岬に向かう。

岬に着いたアダムスは、コッブ船長(クレム・ビヴァンス)から、ジェニーを知る現地の住民イーク(ヘンリー・ハル)を紹介されて彼からヨットを借りる。

嵐の中、灯台にたどり着いたアダムスは、ジェニーと再会できるが、彼女は高波にさらわれてしまう。

一命を取り取り留めたアダムスは、ジェニーを助けられなかったことを後悔する。

アダムスは、後を追ってきたスピニー夫人に、ジェニーに会えただけでも幸運だったと励まされる。

自分が発見された場所の近くにあったという、ジェニーのスカーフを見たアダムスは、彼女に会ったことを確信して、失っていないことを知り安堵する。

そして、”ジェニーの肖像”により、才能を開花したアダムスは、”エブン・アダムス画集”を発表する。

その後、肖像画は、メトロポリタン美術館に展示される。

ある日、美術館を訪れた少女(アン・フランシス)は、その肖像画を見て、美しいジェニーが、作者にとっては存在したのだと信ずる。

そこに現れたスピニー夫人は、少女達の賢さに感心して、輝くばかりの美しいジェニーの肖像画(カラー)を前に笑む。


解説 評価 感想 ■

*(簡略ストー リー)
1934年、ニューヨーク
貧しい画家エブン・アダムスは、画廊のオーナー、スピニー夫人とマシューズに気に入られる。
その後、ジェニー・アプルトンという不思議な少女に出会ったアダムスは、彼女の魅力にとり憑かれてしまう。
ジェニーのことが頭から離れないアダムスは、彼女の置いていった新聞から、奇妙な事実を知ることになる。
ジェニーが、過去に生きた人物だということを知ったアダムスは、再会した彼女が急激に成長していくことに驚く。
そして、美しい女性に成長したジェニーをモデルに、アダムスは、念願だった”ジェニーの肖像”を描き始める・・・。
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雲の合間から現れる上空から見たマンハッタンの情景、随所に登場するキャンパスを思わせる粗い画面、稲光が光った瞬間から突然セピア・カラーに・・・、その斬新な映像表現は秀逸だ。

そして、衝撃さえ感じる、フルカラーの”ジェニーの肖像”の、目を見張る美しさで締めくくるラストの素晴らしさに、心奪われた方は多いはずで、その映像美は忘れ難い。

また、最初に少女で登場するジェニファー・ジョーンズが、ジョゼフ・コットンよりかなり小柄に見えるような、細かな工夫も多く見られる。

第21回アカデミー賞では、特殊効果賞を受賞した。
・ノミネート
撮影賞(白黒)

原作の内容を忠実に再現すべく、上記のように、その幻想的な映像美は、ショッキングに感じたほどだ。

ドイツ出身のウィリアム・ディターレが、ヨーロッパ風のロマンス仕立てにしたかったところだろうが、さすがに、セルズニックの理想の前にかなわなかったとも想える。

フランスの作曲家クロード・ドビュッシーの曲を効果的に使った、ディミトリ・ティオムキンの音楽も印象に残る。

ジェニファー・ジョーンズをモデルに、肖像画を描いたのは、著名な画家ロバート・ブラックマンである。

ジェニファー・ジョーンズをモデルに肖像画を描く、画家ロバート・ブラックマンを見つめるジョゼフ・コットン

主演のジェニファー・ジョーンズの神秘的な美しさと、彼女を追い求めながら、画家として成長して才能を開花させるジョゼフ・コットンの、純朴な演技も素晴らしい。

また、その才能を見抜き、温かく見守り助言をする画商エセル・バリモアの重厚な演技も見事だ。

気のいい画商セシル・ケラウェイ、人情味溢れる主人公の友人デヴィッド・ウェイン、シスター役のリリアン・ギッシュコッド岬の住人ヘンリー・ハルクレム・ビヴァンス、そして、ラストで肖像画に見入る少女アン・フランシスなどが共演している。

このような名作が、日本で知名度が低いのは残念でならない。


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