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ピンキー Pinky (1949)

アフリカ系の血を引く白人女性の苦難の日々を描く、製作ダリル・F・ザナック、監督エリア・カザン、主演ジーン・クレインエセル・バリモアエセル・ウォーターズ共演による社会派ドラマの秀作。

アカデミー賞 ■ ストーリー ■ 解説


ドラマ(社会派)


スタッフ キャスト ■
監督:エリア・カザン

製作:ダリル・F・ザナック
原作:シド・リッケッツ・サマー
脚本
ダドリー・ニコルズ

フィリップ・ダン
撮影:ジョゼフ・マクドナルド
編集:ハーモン・ジョーンズ
音楽:アルフレッド・ニューマン

出演
パトリシア“ピンキー”ジョンソン:ジーン・クレイン

ミス・エム:エセル・バリモア
ダイシー・ジョンソン:エセル・ウォーターズ
トーマス・アダムス医師:ウィリアム・ランディガン
ジョー・マクギル医師:グリフ・バーネット
ウォーカー判事:ベイシル・ライスディール
ジェイク・ウォルターズ:フレデリック・オニール
ロゼリア:ニナ・メイ・マッキニー
キャナディ医師:ケニー・ワシントン
メルバ・ウードリー:イヴリン・ヴァーデン
ショーハム判事:レイモンド・グリーンリーフ
警察署長:アーサー・ハニカット
看護師:ジュアニータ・ムーア
町民:ハリー・テンブルック

アメリカ 映画
配給 20世紀FOX

1949年製作 102分
公開
北米:1949年9月29日
日本:未公開
北米興行収入 $4,200,000


アカデミー賞 ■
第22回アカデミー賞

・ノミネート
主演女優(ジーン・クレイン
助演女優賞(エセル・バリモア/エセル・ウォーターズ


*詳細な内容、結末が記載されています。
ストーリー ■
生まれ故郷の、南部の片田舎に戻ってきたパトリシア“ピンキー”ジョンソン(ジーン・クレイン)は、貧しい祖母ダイシー(エセル・ウォーターズ)の家に帰る。

祖母と再会を果たしたピンキーは、アフリカ系の血を引きながら、肌は白人のように白かった。

ピンキーは、身を粉にして働いた祖母のお陰で北部の看護学校を卒業し、故郷に尽くすために戻ってきたのだった。

それを望んでいた祖母ダイシーだったが、ピンキーの様子がおかしいことに気づき、彼女がアフリカ系であることを北部で隠してきたことを知る。

若いピンキーには、自分がアフリカ系だと言って生きていく勇気は到底なく、彼女はそれを苦にして悩み続けていた。
...全てを見る(結末あり)

祖母が送ったはずの、自分の学費をくすねていたと思われる、ジェイク・ウォルターズ(フレデリック・オニール)の元に向かったピンキーは、彼に返金を迫る。

ジェイクから、僅かな有り金を受け取ったピンキーはその場を去ろうとするのだが、彼の妻ロゼリア(ニナ・メイ・マッキニー)が言いがかりを付ける。

そこに警察署長(アーサー・ハニカット)が現れ、ピンキーを助けて帰そうとするが、彼女がアフリカ系だと知り態度を一変させ三人を連行する。

ウォーカー判事(ベイシル・ライスディール)の元に連れて行かれた三人だったが、ジェイクとロゼリアは厳重注意で帰される。

成長したピンキーを見て、彼女を立派に育てたダイシーに感心した判事は、祖母を大事にするようピンキーに優しく声をかけ帰宅させる。

その夜、ピンキーは食欲もないまま散歩に出かけ、その後ジェイクが家に現れる。

ジェイクは、ピンキー宛の白人医師からの手紙をダイシーが隠しているのを知る。

街道を歩いていたピンキーは、通りがかりの男達に襲われるが、何とかそれを逃れ家に戻る。

何もかもが嫌になったピンキーは北部に戻ろうとするが、祖母ダイシーが世話をするミス・エム(エセル・バリモア)が心臓の発作を起したとの報せが入る。

ジョー・マクギル医師(グリフ・バーネット)が、看護師を必要としていることを知ったダイシーは、ピンキーに医師の手伝いをさせようとする。

しかし、自分の思い通りに行動させようとするダイシーに腹を立てたピンキーは、それを拒んでしまう。

北部に戻る仕度を始めたピンキーに、自分が肺炎を患った時に、ミス・エムが、家に泊り込んで看病してくれた恩があることをダイシーは伝える。

看護服を着たピンキーはミス・エムの屋敷に向かい、彼女の完治が難しいことをマクギル医師から知らされる。

意識の戻ったミス・エムは、ピンキーに強い口調であれこれ指示を出すが、再び意識を失ってしまう。

ピンキーの適切な処置で落ち着きを取り戻したミス・エムは、嫌味ばかり言ってピンキーを困惑させる。

マクギル医師はミス・エムが数日の命だと診断し、ピンキーはその後、北部に戻ることをダイシーに告げる。

そんなピンキーの元に、看護学校設立を考えるキャナディ医師(ケニー・ワシントン)が訪ねてくる。

キャナディ医師は、ピンキーに教育係として協力を要請するが、彼女はそれを断る。

ミス・エマの世話に戻ったピンキーは、看護師としての自分に敬意を払わない彼女と口論になってしまう。

しかし、ミス・エマは、本当の自分を偽ろうとするピンキーの心を読み、彼女にありのままに生きることが大切だということを言い聞かせる。

屋敷から戻ったピンキーは、ボストンの”聖バーソロミュー病院”の医師で、恋人のトーマス・アダムス(ウィリアム・ランディガン)が訪ねて来たのに気づく。

ピンキーはアダムスに自分の素性を正直に話して、結婚を申し込まれ困惑し、彼の元から姿を消したことを告げる。

冷静に話し合った二人はお互いの愛を確認し、ミス・エマの看護が終わり次第、ピンキーが北部に戻る事で話しがまとまる。

翌日、ミス・エムのいとこのメルバ・ウードリー(イヴリン・ヴァーデン)が屋敷を訪れる。

メルバは財産が目当てで、ミス・エムは彼女の様子を窺いながら追い払う。

その後、ミス・エムは遺言書を書くために、ピンキーを家に帰らせる。

独りで遺言書を書き終わったミス・エムは倒れてしまい、そこにピンキーが現れ、彼女は一命を取り留める。

意識を取り戻したミス・エムは、ピンキーが部屋を出た間に、マクギル医師に遺言書の証人として署名をしてもらう。

マクギル医師を見送るピンキーは、彼からミス・エムの死が近いことを知らされる。

そして朝方、ミス・エムはピンキーとダイシーに見守られながら息を引き取る。

町に喪服用のベールを買いに行ったピンキーは、居合わせたメルバに、アフリカ系の客だと嫌味を言われながらも買い物を済ませる。

ミス・エムの葬儀を済ませ、帰宅したピンキーとダイシーの元にマクギル医師が現れ、遺言の内容を知らされる。

ダイシーに衣服が、そしてピンキーに屋敷と土地が遺されたことを、マクギル医師は二人に伝える。

ミス・エムは、ピンキーの人柄を信じ彼女に財産を残したのだが、メルバがそれを狙い弁護士を雇い既に訴えを起していた。

翌日、北部に戻る予定だったピンキーは困惑し、彼女がミス・エムに薬を盛って遺言を書かせたと言う噂も流れる。

ピンキーが北部に行ってしまえば、財産はメルバのものになってしまうのを、訪ねてきたジャイクが知らせる。

ミス・エムの遺志を尊重し、逃げるわけにはいかないと考えたピンキーは、メルバの訴えに対し受けて立つ覚悟を決める。

ピンキーはウォーカー判事に相談し、彼を説得して自分の代理人になってもらうことになる。

裁判費用を稼ぐために、ピンキーはマクギル医師を訪ね仕事を紹介してもらおうとするが、町中が彼女を白い目で見る中、誰も雇おうとする者はいなかった。

体調の悪いダイシーに代わり、洗濯の仕事などを始めたピンキーは、迎えに来たアダムスに、ミス・エムに報いる決意をしたことを伝える。

ピンキーの熱意を理解したアダムスは、彼女を身近で見守ろうとする。

そして裁判は始まり、ミス・エムの人柄を知れば、彼女が正気を保っていたのは明らかで、ピンキーへの感謝の気持ちから、財産を遺したのは正当な行為だと、弁護人を引き受けたウォーカー判事は陳述する。

さらにウォーカーは、国内に知れ渡り、世の中が注目するこの裁判で、古い習慣や誤った伝統を見直すべきだとも語る。

ウォーカーは、遺言状の証人になったマクギル医師を証言台に呼ぼうとするが、彼の姿は法廷になかった。

その後、警察署長、メルバ、そしてダイシーが証言台に立ち、マクギル医師は出産のため遅れることが知らされる。

迅速な裁定を要求するメルバ側の意見が通り、ショーハム判事(レイモンド・グリーンリーフ)は判決を下す。

ミス・エムの遺言書に法的な問題はなく、ピンキーによる圧力も確認できず、遺言書が有効な書類と断定される。

裁判に勝ったものの、ウォーカーはそれが町のためになったかをピンキーに伝え法廷を去る。

傍聴人の白人達の視線を浴びながら、ピンキーはアダムスに寄り添われ法廷を後にし、ミス・エムの屋敷に向かう。

アダムスは屋敷を売り払い、ピンキーと共に新任地であるデンバーに行く準備を始めようとする。

しかしピンキーは、ミス・エムが祖母ダイシーにではなく、自分に屋敷を託したのには何か意味があるのだと考える。

ありのままに生きるのが大切だと助言してくれた、ミス・エムの言葉を思い出したピンキーは、アフリカ系の人々のために屋敷を役立てて欲しかったという、ミス・エムの気持ちを理解する。

ピンキーは結婚を諦め、アダムスに別れを告げ屋敷に残る。

そしてピンキーは、キャナディ医師やマクギル医師、ダイシーの協力を得て、屋敷をアフリカ系の人々のための病院と看護学校にする。

ピンキーはようやく心の安らぎを得て、それを天国のミス・エムに感謝する。


解説 評価 感想 ■

*(簡略ストー リー)
アフリカ系の血を引く、見かけは白人の看護師パトリシア“ピンキー”ジョンソンは、黒人の祖母ダイシーの意思に従い、故郷に帰ってきたかに見えた。
しかし、北部で愛し合った医師に自分の素性を話せず苦しみ抜いた末、故郷に逃げ帰ったのだった。
彼女の素性を知る地元の白人からも虐げられていたピンキーは、一部の偏見のない人々に見守られながら、祖母が世話をする、臨終に近
い白人の老女ミス・エムの世話をすることになる。
ピンキーは、看護師の自分に敬意を払おうとしないミス・エムを嫌う。
しかし、ミス・エムはピンキーの本質を見抜き、彼女の人種に対する誤った考えを正そうとして、遺言書で財産をピンキーに遺そうとする。
ミス・エムの死後、その遺志を知ったピンキーは、それに応えるため、財産を狙う親族と闘う決意をする・・・。
__________

シド・リッケッツ・サマーの小説”Quality”を、ダドリー・ニコルズフィリップ・ダンが脚色して製作された作品。

紳士協定」(1947)でも、ユダヤ人への偏見問題を鋭く描いたエリア・カザンが、アメリカの抱える最も大きな問題とも言える、アフリカ系の人々に対する差別を取り上げた社会派ドラマの秀作。

ジョン・フォードの監督で撮影は始まるものの、ダリル・F・ザナックが編集用フィルムに不満を示し1週間で降板となった。

製作はダリル・F・ザナック、ドラマチックな物語を盛り上げる音楽はアルフレッド・ニューマンが担当している。

第22回アカデミー賞では、主演女優(ジーン・クレイン)、助演女優賞(エセル・バリモア/エセル・ウォーターズ)がノミネートされた。

アメリカ国内での高い評価にも拘らず、日本では公開はおろか、長くソフト化もされていなかった。

単にアフリカ系の人々の差別を扱った作品ではなく、アフリカ系の主人公が肌の白い見かけは白人だというところが、当時タブーとされていた、この問題を描いた先駆けの作品として余りにも衝撃的な内容だ。
それを、生々しい描写で描いたエリア・カザンの力強い演出も光る、歴史的な作品でもある。

純情可憐な雰囲気で登場するジーン・クレインの背負った運命の重さが、意志の強さを求められる看護師の役柄とマッチし、愛に逃げ道を探そうとしていた主人公が、アフリカ系の誇りを胸に、生きる希望に満ち溢れた笑顔で締めくくるラストの感動は、彼女の名演と共に心に残る。

主人公の厳しい運命に甘い言葉をかけず、感謝の気持ちで彼女を生きる道へと導く老女役エセル・バリモアと、アフリカ系に誇りを持ちながら、孫娘を温かく見守るエセル・ウォーターズの重厚な演技も素晴らしい。

最後には別れてしまうが、素性を知っても、偏見と闘おうとする恋人の主人公を見捨てない医師ウィリアム・ランディガン、主人公の理解者である町医者グリフ・バーネット、同じく弁護を引き受ける判事役のベイシル・ライスディール、主公の学費をくすねるフレデリック・オニール、その妻ニナ・メイ・マッキニー、地元に看護学校を作ろうとする、アフリカ系の医師ケニー・ワシントン、老女の財産を狙ういとこイヴリン・ヴァーデン、裁判長レイモンド・グリーンリーフ、警察署長アーサー・ハニカットなどが共演している。


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