同性愛者であるAIDS患者の弁護士がライバル弁護士の協力を得て偏見と闘う姿を描く、製作、監督ジョナサン・デミ、主演トム・ハンクス、デンゼル・ワシントン、ジェイソン・ロバーズ、メアリー・スティーンバーゲン、アントニオ・バンデラス、ジョアン・ウッドワード他共演のドラマ。 |
・ドラマ
・トム・ハンクス / Tom Hanks 作品一覧
・デンゼル・ワシントン / Denzel Washington 作品一覧
■ スタッフ キャスト ■
監督:ジョナサン・デミ
製作総指揮
ゲイリー・ゴーツマン
ケネス・ウット
ロン・ボズマン
製作
エドワード・サクソン
ジョナサン・デミ
脚本:ロン・ナイスワーナー
撮影:タク・フジモト
編集:クレイグ・マッケイ
音楽:ハワード・ショア
主題歌:ブルース・スプリングスティーン”Streets of Philadelphia”
出演
アンドリュー・ベケット:トム・ハンクス
ジョー・ミラー:デンゼル・ワシントン
チャールズ・ウィーラー:ジェイソン・ロバーズ
ベリンダ・コーニン:メアリー・スティーンバーゲン
ミゲール・アルヴァレス:アントニオ・バンデラス
サラ・ベケット:ジョアン・ウッドワード
ボブ・サイドマン:ロン・ボーター
ウォルター・ケントン:ロバート・リッジリー
ガーネット判事:チャールズ・ネイピア
ジェミー・コリンズ:ブラッドリー・ウィットフォード
リサ・ミラー:リサ・サマーラー
レアド:ロジャー・コーマン
アンシア・バートン:アンナ・ディーヴァー・スミス
陪審長:ダニエル・フォン・バーゲン
図書館員:トレーシー・ウォルター
アメリカ 映画
配給 トライスター・ピクチャーズ
1993年製作 125分
公開
北米:1993年12月24日
日本:1994年4月
製作費 $26,000,000
北米興行収入 $77,446,440
世界 $206,678,440
■ アカデミー賞 ■
第66回アカデミー賞
・受賞
主演男優(トム・ハンクス)
歌曲賞”Streets of Philadelphia”(ブルース・スプリングスティーン)
・ノミネート
脚本・歌曲”Philadelphia”(ニール・ヤング)・メイクアップ賞
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
フィラデルフィア。
名門法律事務所の弁護士アンドリュー・ベケット(トム・ハンクス)は、社長チャールズ・ウィーラー(ジェイソン・ロバーズ)に呼び出され、新たな訴訟を担当すると同時に上級弁護士に昇進する。
9日後。
血液検査を受けていたベケットは、顔面のあざを気にし始めて体調不良を起こす。
それを知った、ベケットのパートナーのミゲール・アルヴァレス(アントニオ・バンデラス)は、病院に駆けつけて彼に付き添う。
1ヵ月後。 1週間後。 ミラーは、ベケットの容姿の変化に驚き、彼の行動を観察しながら話を始める。 ベケットは、ウィーラーの事務所を解雇されたため、彼らを相手取り、不当解雇で訴えたい意向をミラーに伝える。 ミラーに弁護を依頼したいベケットは、任された訴訟の訴状紛失騒ぎに巻き込まれ、その翌日に即刻、解雇されてしまったことを語る。 AIDSでは解雇出来ないと考えた事務所側が、ベケット能力を疑うかたちで追い込んだというのが彼の主張だった。 それを信じることができないミラーは、ベケットの依頼を断り、病院の予約を取り、主治医からHIVウィルスが体液感染しかしないことなどを知らされる。 帰宅したミラーは、妻リサの周辺には同性愛者が多くいることを知らされ驚き、そのことを気にする。 2週間後。 ミラーはベケットの元に歩み寄り、彼の準備している訴訟のための資料に目を通す。 6週間後。 憤慨したウィーラーは、部下のウォルター・ケントン(ロバート・リッジリー)やボブ・サイドマン(ロン・ボーター)らに、ベケットの私生活を調べ上げるように命ずる。 ベケットは、ミゲールや家族が集まる実家で、母サラ(ジョアン・ウッドワード)から、偏見に負けない勇気を持つよう励まされる。 7ヶ月後。 事務所側の主任弁護士ベリンダ・コーニン(メアリー・スティーンバーゲン)は、ベケットの劣っている点や、病気だということの事実を述べる。 証人のレアド(ロジャー・コーマン)は、ベケットの弁護で勝訴した経験を持ちながら、その働きが普通以上ではないと語り、明らかに圧力がかかっているかのような証言をする。 法廷の外では、ゲイの擁護派と排除派が激しい論争を繰り広げ、マスコミの話題もさらい、ミラーは心無い者に軽蔑されたりもする。 原告側証言、10日目。 ガーネット判事にその真意を聞かれたミラーは、この裁判をきっかけに、他人の性癖が気になるのなら、自分達の中にある嫌悪や恐怖が、ベケットの解雇にどうつながったかを考えるべきだと語る。 献身的なミゲールに、自分との時間を求められたベケットは、ゲイの仮装パーティーを企画して楽しい一時を過ごす。 そして翌日、ベケットの証言が始まり、事務所に誘われた経緯、内部ではゲイだということを隠していたこと、そして正義の一部になれることの喜びなどを語る。 事務所側のコーニン弁護士は、ベケットが解雇される原因となったという、顔のシミがないことを鏡を使って彼に確認させる。 意識が朦朧とする中、ベケットは当時はシミがあったはずだと語る。 ミラーはベケットにシャツを脱がせて、体にあるおぞましいシミを見せるよう指示し、法廷内の人々はそれを確認する。 その後、ウィーラーが証言台に座り、コーニンの質問に答えて、ベケットがAIDSだとは知らず、それを理由に解雇したのではないことと、彼が自分の期待に応えられなかったことを証言する。 ミラーはその証言を嘲り笑い、ウィーラーに同性愛者かを問い質す。 ウィーラーは、ベケットが自分勝手であり、ゲイだということも隠し、ルール違反をした偽善者だと言い放つ。 その時、体力の限界に達したベケットが意識を失い、病院に搬送されてしまう。 ベケットがいないまま、サイドマンの証言が始まり、内部の者には話さなかったものの、彼はベケットがAIDSだと思っていたが、相談にも乗らずにいたことを一生後悔するだろうと述べる。 陪審員室で陪審長(ダニエル・フォン・バーゲン)は、重要な裁判に、経験の浅い弁護士を事務所側がテストとして担当させるかを疑問に思い、それを他の陪審員に問う。 3日後、評決。 喜びも束の間、ミラーは病院に急行するが、ベケットの回復は不可能なことを知る。 ベッドに横たわるベケットに感謝されたミラーは、彼と簡単な会話を交わし早々に引き上げる。 翌日も見舞いに来ると、家族に語りかけられたベケットは、付き添いのミゲールに、全てをやり尽くし、逝く覚悟が出来たことを告げる。 そして深夜、ミラーはミゲールからベケットの死の報せを受ける。 その後、ベケットの葬儀は終わり、彼の家に家族や友人、そしてミラー夫婦が集まり故人を偲ぶ。
ベケットのライバルの弁護士ジョー・ミラー(デンゼル・ワシントン)は、妻リサ(リサ・サマーラー)の出産に立会い、同僚達から祝福されていた。
...全てを見る(結末あり)
ベケットから連絡を受けていたミラーは、AIDSを宣告された彼の訪問を受ける。
AIDSについてなどを調べ始めたミラーは、図書館内で職員(トレーシー・ウォルター)から、個室に移ることを勧められているベケットを目撃する。
ベケットの弁護を引き受けたミラーは、ウィーラーに召喚状を渡す。
ガーネット判事(チャールズ・ネイピア)の下で裁判は始まり、冒頭陳述でミラーは、事務所側がベケットの病気を理由に解雇したことを主張し、それが違法であると言い切る。
ベケットが担当した裁判の、訴状紛失事件の当事者ジェミー・コリンズ(ブラッドリー・ウィットフォード)を証人に呼んだミラーは、自分側の証人にも拘らず、彼がゲイかを激しく追及し攻撃する。
陪審員長は、事務所側が懲罰的損害賠償を含め約500万ドルをベケットに支払う評決を判事に伝える。
*(簡略ストー リー)
エリート弁護士のアンドリュー・ベケットは、弁護士事務所の明らかな工作により、不当解雇されてしまう。
同性愛者のベケットは、AIDSを理由に自分が排除されたと判断し、ライバルの弁護士ミラーに弁護を依頼する。
AIDSには無関心で、同性愛者にも偏見に近い考えを持っていたミラーは、それをためらう。
しかしミラーは、衰弱する体で必死に生きようとするベケットや、彼を温かく見守る家族、そしてあからさまに弱者に浴びせる偏見の視線などを見て、弁護を引き受けることを決める。
訴えられた事務所側は、社長ウィーラーを先頭にして、ベケットを無能な故に解雇したのであり、AIDSや偏見が理由ではないことを主張する。
両者の闘いは、世論も巻き込み大きな問題となるが、ベケットの体力は限界に達してしまう・・・。
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アメリカのみならず、世界の社会問題でもある同性愛者やAIDS患者への偏見に立ち向かう、二人の弁護士の闘いを描いたヒューマン・ドラマ。
二人の勇気を中心に描く中で、主人公を見守る家族や周囲の温かい視線や心が、大袈裟なように見えて違和感なく感じるところがいかにもアメリカ映画らしい。
ジョナサン・デミの演出はやや平凡のようにも思えるが、AIDSが大きな社会問題として重要視され始めていた時代に、衝撃を与えるほどの影響力があった作品を作り上げたという功績は大きい。
意外にもアメリカ国内ではそれほどのヒットにはならず、興行成績は約7700万ドルに終わるものの、全世界トータルでは2億ドルを超すヒットとなった。
第66回アカデミー賞では、主演男優賞(トム・ハンクス)、ブルース・スプリングスティーンが歌う主題歌”Streets of Philadelphia”で歌曲賞を受賞した。
・ノミネート
脚本・歌曲”Philadelphia”(ニール・ヤング)・メイクアップ賞
コメディアンから、シリアスな役柄をこなす役者に転向しつつあった主演のトム・ハンクスの、体を張った迫真の演技は絶賛され、ついに念願のオスカーを受賞することになる。
得意のトークは極力抑え、メイクによる痛々しい患者の表情だけで訴える無言の表現力に、彼の役者としての実力を見た。
主人公が物静かだったため、対照的な奔放な弁護士デンゼル・ワシントンの存在の方がインパクトが強い。
若手実力派スタートしてキャリアを積んでいた彼の周囲を圧倒する雰囲気や自然な演技は、いつみても素晴らしい。
法律事務所社長である貫禄の大ベテラン、ジェイソン・ロバーズ、その主任弁護士メアリー・スティーンバーゲン、主人公のパートナー役のアントニオ・バンデラス、母親のジョアン・ウッドワード、同僚ブラッドリー・ウィットフォード、ロバート・リッジリー、ロン・ボーター、アンナ・ディーヴァー・スミス、クライアントのロジャー・コーマン、判事チャールズ・ネイピア、ミラー(D・ワシントン)の妻役のリサ・サマーラー、陪審長ダニエル・フォン・バーゲン、図書館員のトレーシー・ウォルターなどが共演している。