スペイン内戦後のフランコ将軍圧政下”ラビリンス”迷宮を見つけた少女の試練を描く、監督、脚本ギレルモ・デル・トロ、出演イバナ・バケロ、ダグ・ジョーンズ、セルジ・ロペス他共演によるダーク・ファンタジーの秀作。 |
■ スタッフ キャスト ■
監督:ギレルモ・デル・トロ
製作
ベルサ・ナヴァロ
アルフォンソ・キュアロン
フリーダ・トレスブランコ
アルバロ・アウグスティン
脚本:ギレルモ・デル・トロ
撮影:ギレルモ・ナヴァロ
編集:ベルナート・ヴィラプラナ
音楽:ハビエル・ナバレテ
出演
オフェリア/モアナ王女:イバナ・バケロ
パン:ダグ・ジョーンズ
ヴィダル:セルジ・ロペス
カルメン/王妃:アリアドナ・ヒル
メルセデス:マリベル・ヴェルドゥ
フェレイロ医師:アレックス・アングロ
ガルセス:マノロ・サロ
ペドロ:ロジェール・カサマジョール
王:フェデリコ・ルッピ
スペイン/メキシコ 映画
配給
ワーナー・ブラザーズ(スペイン)
ピクチャーハウス(北米)
2006年製作 118分
公開
スペイン:2006年10月11日
メキシコ:2006年10月20日
北米:2006年12月29日
日本:2007年10月6日
製作費 €13,500,000
北米興行収入 $37,623,140
世界 $83,258,230
■ アカデミー賞 ■
第79回アカデミー賞
・受賞
撮影・美術・メイクアップ賞
・ノミネート
脚本・外国語映画・作曲賞
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
妖精の物語・・・。
魔法の王国”アンダーワールド”の王女が、人間の世界に向かい死んでしまう。
しかし王は、王女の魂が甦りアンダーワールドに戻ると信じた・・・。
__________
1944年、スペイン。
内戦終結後も抵抗するゲリラは山にこもり、フランシスコ・フランコ将軍の圧政に反発していた。
おとぎ話が好きな少女オフェリア(イバナ・バケロ)は、臨月の母カルメン(アリアドナ・ヒル)と共に山中に向かう。
カルメンの気分が悪くなったため車は止まり、オフェリアは近くを歩き、模様が刻まれた石と石碑を見つけ、妖精のようなナナフシを見る。
再婚相手である、フランコ軍の駐屯地の指揮官ヴィダル大尉(セルジ・ロペス)に歓迎されたカルメンは、オフェリアに新しい父に挨拶するよう促す。
左手を出したオフェリアは、ヴィダルに無礼を注意される。 ナナフシが自分達を追ってその場にいたことに気づいたオフェリアは、それを追って森に向かう。 オフェリアは、現れた小間使いのメルセデス(マリベル・ヴェルドゥ)から、そこが岩の壁でできた”ラビリンス”迷宮であることを知らされ、迷うので入らないようにと言われる。 オフェリアは、仕立て屋だった父親が戦争で死んだことをメルセデスに伝える。 その夜、カルメンを診察したフェレイロ医師(アレックス・アングロ)に負傷者がいることを伝えたメルセデスは、薬剤を受け取る。 オフェリアはヴィダルを恐れながら、カルメンの頼みでお腹の”弟”におとぎ話を話して聞かせる。 フェレイロは、旅のせいで彼女が弱っていることをヴィダルに伝える。 それを気にしないヴィダルは、息子が産まれると確信し子供のことだけを心配する。 その後ヴィダルは、捕えた親子がウサギを撃っていただけだという言葉に耳も貸さず容赦なく殺害する。 夜中に目覚めたオフェリアはナナフシが部屋にいることに気づき、本を見せて妖精なのかを尋ねる。 ナナフシはその絵を見て妖精に姿を変え、オフェリアをラビリンスに導く。 階段を下り地下に向かったオフェリアは、その場にいたラビリンスの守護神パン(ダグ・ジョーンズ)から、自分が魔法の王国の王女モアナだと言われる。 国王は王女が戻ることを願い世界中に入り口を作り、ここが最後の場所だとパンは語る。 王女の証拠である肩のアザのことなども話したパンは、以前の王女であるかを確かめるために、満月の夜までに3つの試練に耐えるよう伝えオフェリアに”道を標す本”を渡す。 本が何をすべきかを教えてくれると伝えパンは姿を消す。 オフェリアはその内容を確かめるが、本には何も書かれていなかった。 翌日、晩餐会が開かれるため入浴するようにとカルメンに言われたオフェリアは、浴室で開いた本に文字などが書き込まれたため、肩のアザも確認して自分が王女であることを確信する。 オフェリアは優しくしてくれるメルセデスと親しくなり、妖精や守護神のことなどを話す。 実はメルセデスはゲリラのスパイで、軍の情報を入手していたのだった。 オフェリアは森に向かい本に書かれたことを確認する。 枯れて幹が折れ曲がった木の根元に潜む大ガエルが、その成長を阻んでいるため、カエルの口に魔法の石を放り込み体内の黄金の鍵を取り出せば、木は再び花を咲かせるだろうと本には書いてあった。 木の中に入って行ったオフェリアは、泥だらけになりながら奥へと進む。 ゲリラの野営地を調べたヴィダルは、その場で抗生物質のアンプルを見つける。 オフェリアは、現れた大ガエルの口に虫に変わった石を投げ入れ、体内から吐き出された鍵を手に入れて外に出る。 泥だらけのオフェリアはドレスも汚れていることに気づき雨も降りだす。 晩餐会は始まるがオフェリアは戻らず、ヴィダルは敵に負傷者がいることを伝え、フェレイロの前でその証拠である抗生物質のアンプルを見せる。 メルセデスは森に向かい仲間達に合図を送り、そこにオフェリアが戻ってくる。 カルメンが来客に話した内容をよく思わないヴィダルは不快感を示す。 オフェリアが戻ったことを知らされたカルメンは、彼女に入浴をさせて叱る。 カルメンが去った後でナナフシが現れ、オフェリアは鍵を持ってラビリンスに向かう。 パンに鍵を手に入れたことを伝えたオフェリアは、それを持っているように言われ白いチョークを渡される。 翌日、本を開いたオフェリアは不吉な予感を感じ、カルメンが出血したことに気づきヴィダルを呼ぶ。 ヴィダルは、絶対安静が必要なカルメンを必ず治すようフェレイロに命ずる。 カルメンと違う部屋に移ったオフェリアは悲しみ、メルセデスが彼女を慰める。 メルセデスがゲリラの仲間だと気づいていたオフェリアは、それを誰にも話していないことを伝え、メルセデスを母親のように慕う。 その後メルセデスは、フェレイロと共に弟ペドロ(ロジェール・カサマジョール)の元に向かう。 その夜、オフェリアの部屋に現れたパンは、試練を果たしていないことで彼女を責める。 母が病気だという言い訳を聞き入れないパンは、人間になることを望んだ植物マンドラゴラの根をミルクの中に入れて母のベッドの下に置くよう指示する。 毎朝、血液を垂らすよう付け加えたパンは、オフェリアに妖精と砂時計を渡し試練を果たすよう指示する。 ゲリラのアジトに向かったフェレイロは、負傷者の脚を切断する。 本の指示に従ったオフェリアは壁にチョークで扉を描き、それを開けて砂時計をセットして内部に入る。 オフェリアは黄金の鍵を使い扉を開けて、内部にあった短剣を手に入れる。 妖精達の制止を無視してテーブルのブドウを食べてしまったオフェリアに、その場で死んでいた魔物が息を吹き返して襲い掛かる。 魔物は要請を食いちぎり、オフェリアはその場から逃げるものの、砂時計が時間切れとなり扉が閉じてしまう。 オフェリアはチョークで扉を書き、魔物に捕えられる寸前でその場を脱出する。 翌朝フェレイロは、メルセデスのことを考えるならこの場から去るようにとペドロに警告するが聞き入れられない。 メルセデスは、ペドロに食糧庫の鍵を渡し辛い毎日を送っていることを伝え、ヴィダルらを必ず倒すことを弟から約束される。 カルメンの元に戻ったオフェリアは、マンドラゴラの根をミルクの中に入れて母のベッドの下に置き、指を噛んで血液を垂らす。 そこにフェレイロが現れ、カルメンの熱が下がったことをヴィダルに伝える。 ヴィダルは、万一の場合は子供だけを救うようフェレイロに指示する。 ベッドの下に潜みそれを聞いていたオフェリアは心を痛める。 その時、森の爆発に気づいたヴィダルはそれを確認する。 カルメンに寄り添ったオフェリアは、母を苦しめないようにとおなかの子に語り掛け、産まれてきたら王子様にすることを約束する。 線路が爆破されて駐屯地も襲撃に遭い、ヴィダルは荒らされた食糧庫の鍵が開いていることを確認する。 反撃したヴィダルは敵を撃退し、脚の治療を受けた負傷兵がいたという報告を受ける。 動揺するメルセデスは仲間が捕えられたことを知り、ヴィダルは捕虜を拷問する。 その夜、オフェリアの元に現れたパンは、彼女が掟を破ったことに憤慨して、王国には戻れず二度と会うことはないと言い残して姿を消す。 翌日、拷問された捕虜を診たオフェリアは、苦しむ彼が死を望んでいることを知る。 ヴィダルは、オフェリアの所持品のアンプルに気づき、森で見つけたものと同じことを確認し彼の裏切りを知る。 カルメンの部屋でマンドラゴラの根を見つけたヴィダルは、オフェリアを問い詰める。 それを制止したカルメンは、ヴィダルに娘を任せてほしいと伝え、おとぎ話にのめり込むオフェリアに意見する。 マンドラゴラの根を暖炉で燃やしてしまったカルメンは苦しみ始める。 捕虜が死んだことを知ったヴィダルは、フェレイロを容赦なく殺す。 カルメンは男の子を出産するものの息を引き取り、オフェリアは悲しむ。 ヴィダルはメルセデスがスパイかを探り、彼女はオフェリアに出ていくことを伝え必ず迎えに来ると約束する。 オフェリアと森まで行ったメルセデスは、待ち伏せていたヴィダルに捕えられ拘束される。 ヴィダルはオフェリアを脅し、メルセデスを拷問しようとする。 メルセデスは隠し持っていたナイフでロープを切り、ヴィダルに襲い掛かりその場から脱出して森に向かう。 兵士に囲まれたメルセデスは自ら命を絶とうとするが、ペドロらが現れて彼女を救う。 怯えるオフェリアの前に現れたパンは、チャンスを与えることを告げる。 オフェリアは、弟を連れてラヴィリンスに向かうよう指示され扉を描くチョークを渡される。 ヴィダルの部屋に侵入したオフェリアだったが、テーブルに置いたチョークが見つかってしまう。 警戒するヴィダルだったが、負傷して戻った部下の元に向かう。 オフェリアはカルメンの睡眠薬をヴィダルの酒に入れて、弟を連れてその場を離れようとする。 戻ったヴィダルは酒を飲み、オフェリアが息子を連れて逃げようとするのに気づき彼女を追ってラビリンスに向かう。 優勢となったゲリラは駐屯地を襲い、メルセデスはオフェリアがいないことを知る。 待ち構えていたパンは、扉を開けるための短剣を持ち、子供の血液が数滴必要だとオフェリアに伝える。 オフェリアはそれを拒み、それが最後の試練だと言うパンは王座を放棄するという彼女の好きにさせる。 そこに現れたヴィダルは息子を奪い、オフェリアを銃撃してその場を去る。 ラビリンスを出たヴィダルは、その場を制圧したゲリラ達を前にして観念し、メルセデスに息子を引き渡す。 息子に父が何時に死んだか伝えてほしいと伝えたヴィダルだったが、メルセデスは名前さえ教える気はないと答え、ペドロが彼を射殺する。 ラビリンスに向かったメルセデスは瀕死のオフェリアを見つけ、彼女の手から滴り落ちた血は祭壇に流れていく。 王国の黄金の間にいることに気づいたオフェリアは、汚れないものの代わりに血を流したことこそが最後の試練だったと国王を(フェデリコ・ルッピ)に言われる。 現れたパンはオフェリアの選択が正しかったことを伝え王女モアナに敬意を表する。 王妃(アリアドナ・ヒル)は、父王の隣に座るようモアナに指示して微笑みかける。 ラビリンスのオフェリアは一瞬、微笑みながら息を引き取り、メルセデスは彼女に寄り添い泣き崩れる。__________ 王女は王国に戻り父王の跡を継ぎ、優しさと正義で何世紀もの間、国を治めて人々に愛され、そして小さな目印を遺した。 注意して探せば、きっとその目印を見つけられるだろう・・・。
...全てを見る(結末あり)
__________
__________
*(簡略ストー リー)
1944年、スペイン。
内戦後、フランコ将軍の圧政に反発するゲリラは山中にこもり、それを一掃しようとする駐屯部隊があった。
父を戦争で亡くしたおとぎ話が好きな少女オフェリアは、臨月の母カルメンと共に部隊の指揮官で冷酷非情な大尉ヴィダルの元に向かう。
カルメンはヴィダルと再婚したのだが、オフェリアは彼を恐れていた。
そんなオフェリアは、現れた妖精のようなナナフシに導かれ、森の中の”ラビリンス”迷宮を見つける。
その場にいた守護神パンは、オフェリアが魔法の国の王女モアナだと考える。
パンは、オフェリアが王女であるかを確かめるため、満月の夜までに彼女に3つの試練に耐えるよう伝えるのだが・・・。
__________
おとぎ話が好きな少女の物語ではあるが、ダーク・ファンタジーであることと、時代背景がスペイン内戦後の独裁者フランシスコ・フランコ将軍の圧政下だということを考えながら観る必要がある。
当然、現実離れした夢の世界が広がる話ではなく、軍による多くの残虐行為、その圧政に耐える者達の恐怖の日々と戦いを深いテーマで描く内容になっているところに注目。
一方、主人公の少女が魔法の国の王女であることを確かめようとする姿を描いているが、上記のように夢のような世界などはクライマックスでわずかに登場するだけであり、つまり、辛い現実から逃避したい気持ちから生まれた、全てが彼女だけに見える幻覚でだったことを暗示するシーンで締めくくられている。
厳しい現実の世界とメルヘンをマッチさせた独特の世界観、脚本を兼ねるギレルモ・デル・トロの感性が光る一作として、世界中で高い評価を受け絶賛された作品でもある。
第79回アカデミー賞では、彩度を落とした陰湿な雰囲気で現実の世界の恐怖を、また少女に常につきまとう”闇”を見事に映し出したギレルモ・ナヴァロが撮影賞を、他、美術、メイクアップ賞を受賞した。
・ノミネート
脚本・外国語映画・作曲賞
薄幸の現実と試練に耐える重責、健気な行動が胸を打つ主人公の少女を好演するイバナ・バケロ、彼女に試練を与えるラビリンスの守護神ダグ・ジョーンズ、冷酷非情な部隊指揮官セルジ・ロペス、少女の母と魔法の王国の王妃役アリアドナ・ヒル、勇気ある行動が印象的な少女の心の支えとなるゲリラのスパイ、マリベル・ヴェルドゥ、ゲリラである彼女の弟ロジェール・カサマジョール、ゲリラに協力する医師アレックス・アングロ、魔法の国の国王フェデリコ・ルッピなどが共演している。