1937年に発表された、アイザック・ディネーセン/カレン・ブリクセンのアフリカ滞在の体験を小説にした”Out of Africa”を基に製作された作品。 監督シドニー・ポラック、メリル・ストリープ、ロバート・レッドフォード、クラウス・マリア・ブランダウアー共演による雄大な大自然を舞台に描くドラマ。 |
■ スタッフ キャスト ■
監督:シドニー・ポラック
製作総指揮:キム・ヨハンセン
製作:シドニー・ポラック
原作:アイザック・ディネーセン
原作
ジュディス・サーマン
エロール・トルビゼンスキー
脚色:カート・リュードック
撮影 デヴィッド・ワトキン
編集
ペンブローク・J・ヘリング
シェルドン・カーン
フレドリック・スタインカンプ
ウィリアム・スタインカンプ
美術・装置
スティーブン・B・グライムズ
ジョジー・マクエイヴィン
衣装デザイン:ミレーナ・カノネロ
音楽 ジョン・バリー
出演
メリル・ストリープ:カレン・ブリクセン
ロバート・レッドフォード:デニス・フィンチ・ハットン
クラウス・マリア・ブランダウアー:ブロー・ブリクセン
マイケル・キッチン:バークリー・コール
シェーン・リマー:ベルナップ
マリック・ボウエンズ:ファラ・アデン
マイケル・ガフ:デラメア男爵
ジョセフ・シアカ:カマンテ
レイチェル・ケンプソン:ベルフィールド伯爵夫人
スザンナ・ハミルトン:フェリシティ
レスリー・フィリップス:ジョセフ卿
アメリカ 映画
配給 ユニバーサル・ピクチャーズ
1985年製作 161分
公開 北米:1985年12月18日
日本:1986年3月15日
製作費 $31,000,000
北米興行収入 $87,071,210
世界 $128,499,210
■ アカデミー賞 ■
第58回アカデミー賞
・受賞
作品・監督・脚色・撮影・作曲・録音・美術賞
・ノミネート
主演女優(メリル・ストリープ)
助演男優(クラウス・マリア・ブランダウアー)
編集・衣装デザイン賞
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
デンマーク。
財産を持つカレン・ディーネセンは、異国での生活を夢見ていた。
1913年。
カレンは、父方の親戚である、スウェーデン貴族のブロー・ブリクセン(クラウス・マリア・ブランダウアー)と結婚することを決め、アフリカ東部のケニアに移住することになる。
旅の途中カレンは、列車に象牙を積み込む冒険家デニス・フィンチ・ハットン(ロバート・レッドフォード)に出会う。
カレンはデニスから、彼の友人バークリー・コール(マイケル・キッチン)に、象牙を渡してくれと頼まれる。
ナイロビで、召使いのファラ・アデン(マリック・ボウエンズ)に迎えられたカレンは、ブローのいるクラブに向かい、結婚式を挙げる。
式を終えたカレンは、ベルフィールド伯爵夫人(レイチェル・ケンプソン)に、デラメア男爵(マイケル・ガフ)を紹介される。 イギリス人女性フェリシティ(スザンナ・ハミルトン)に話しかけられたカレンは、その後、ある部屋に象牙が置いてあるのに気づき、そこでバークリーに会う。 大量の書物に埋もれたその部屋はデニスのもので、カレンはバークリーと簡単な会話を交わす。 カレンは、紳士的なバークリーと、彼から聞いたデニスについて興味を抱く。 所有地ヌゴンに新居を構えたカレンは屋敷に到着し、 ブローから、農園管理人のベルナップ(シェーン・リマー)や現地の使用人達を紹介される。 夕食の際にカレンは、乳牛を始めようとしていたにも拘らず、農地でコーヒー栽培をすると言い出したブローと口論になる。 翌日ブローは、ファラに雨が降るまで帰らないと言い残し、カレンには黙って狩に出てしまう。 それを知り憤慨したカレンは、コーヒーが育つのには、4年はかかるとベルナップから聞き驚いてしまう。 その後、カレンはキクユ族の首長に会い、彼らを雇い入れることにする。 自分が持参した荷物の整理も終わったカレンは、馬で遠出した際にメスのライオンに出くわすが、現れたデニスに救われる。 屋敷に戻ったカレンは、 デニスに同行してきたバークリーと共に農園を見て周り、高地では難しいと言われるコーヒー栽培にチャレンジしてみることを彼らに伝える。 日が暮れて、三人は夕食を共にして夜更けまで語り合い、翌朝、カレンは旅立つデニスとバークリーを見送る。 雨が降り、ブローが屋敷に戻り、それを迎えたカレンは、ようやく夫婦らしい生活を始める。 やがて、第一次大戦が勃発し、ブローは、遠く離れたドイツ領との境界線に、イギリスの偵察隊として加わることになり、カレンは彼との別れを惜しむ。 しばらくして、300人分の食料を、ネトロン湖近くのイギリス軍に届けることを要請されたカレンは、自ら現地に向う決心をして旅立つ。 途中、カレンはデニスとブレークリーに出くわし、コンパスをもらい先を急ぐ。 その後、カレンは草原を駆け抜けるマサイ族を目撃し、襲ってきたライオンには立ち向かい鞭で追い払う。 そんな困難を乗り越えて、カレンはついにデラメア男爵の待つイギリス軍の元にたどり着く。 久し振りに会ったカレンとブローは愛し合うが、ヌゴンに戻った彼女は、梅毒に感染していたために倒れてしまう。 検査を受けたカレンは、治る見込みが五分五分と言われ、治療のためデンマークに帰国することになる。 屋敷に戻ったブローは、診察を勧めるカレンに謝罪して彼女を独りで帰国させる。 その後、祖国で自分が異邦人のように感じながら、治療に専念したカレンは、完治して再びアフリカに戻り、 ファラをはじめとする使用人達の歓迎を受ける。 学校の開設も考えていたカレンは、終戦を迎えたパレードでデニスと再会する。 1919年、新年。 予定通り学校を始めたカレンは、ようやく実をつけたコーヒー栽培に精を出す。 そして、ガイドを始めていたデニスに誘われたカレンは、サファリでアフリカの大自然を満喫する。 ある夜、自分にこの場所を見せたかったというデニスに、カレンは、梅毒にかかり帰国したことを話す。 それを知っていたと答えるデニスは、自分は感染しないことを伝え、カレンが子供を産めない体になったために、学校を始めたことを知る。 翌日、ライオンに遭遇したデニスとカレンは、 二人でオスとメスのライオンを倒す。 その日の夕食の際、物語を語り合った二人は、その後、結ばれる。 ヌゴンの屋敷に戻ったカレンは、バークリーにデニスとのことを話し、それが危険なことであることを理解する。 ガイドから戻ったデニスとの時を楽しむカレンは、 体調の悪いバークリーのことを心配する。 バークリーの様子を見に行ったデニスは、彼が黒水熱で死を覚悟していることを知り励ます。 そして、デニスはカレンの屋敷で暮らすようになり、 その後、バークリーは亡くなる。 ある日、デニスと複葉機で空を飛んだカレンは、 神が見る世界と、二人の一体感を実感する。 その後、ブローはカレンに友好的に離婚を迫り、彼女はそれを承諾する。 カレンはデニスにそのことを知らせ、結婚の価値について話し合うのだが、彼はそれに興味を示さなかった。 人の荷物にはなりたくないと自由を求めるデニスと、彼にすがりたいカレンに意見の相違が見え始める。 そしてカレンは、自分の意見を受け入れようとしないデニスと別れることになる。 軌道に乗るまでには行かないまでも、カレンはコーヒー栽培を続けていくしかなく、それに追われる日々が続く。 そんなある日、収穫したコーヒーが火事で焼けてしまい、カレンは財産を失ってしまう。 キクユ族の土地だけは確保したいカレンは、新総督ジョセフ卿(レスリー・フィリップス)に掛け合い彼の前で跪く。 周囲はカレンの行為を制止しようとするが、そこにデニスが現れ、彼女の話を続けさせて、総督はカレンの要望をかなえることを約束する。 カレンはデニスに帰国することを告げ、彼と別れて身の回りの整理を始める。 その夜、屋敷に現れたデニスとの、満ち足りた日々を想い起しながら、カレンは彼と踊り続ける。 そして、数日後の再会を約束し、カレンは飛び立つデニスを見送る。 その後カレンは、デニスが複葉機の墜落事故で死亡したことを、ブローから知らされる。 デニスの葬儀を済ませ、アフリカの地を去る日、女人禁制の英国人クラブのメンバーは、カレンを受け入れ彼女と別れのグラスを交わす。 カレンは、友情が芽生えていたファラに、デニスからもらったコンパスを渡し、アフリカの大地に別れを告げる。 その後カレンは、1934年に”アイザック・ディーネセン”の名前で文豪デビューする。
...全てを見る(結末あり)
パーティーで再びデニスに会ったカレンは、 浮気をしていることに気づいたブローを屋敷から追い出してしまう。
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*(簡略ストー リー)
デンマーク人の資産家女性カレン・ディーネセンは、異国での生活を夢みて、アフリカ東部ケニアに移住することを決める。
その手助けをしてくれることになった貴族ブロー・ブリクセンと結婚する予定のカレンはアフリカに向かう。
しかしカレンは、自分の意思に反しコーヒー栽培を始めるというブローと意見が合わず、彼はその農地での生活も好まない。
冒険家デニス・ハットンに出会っていたカレンは、彼の親友のバークリーとも親交を深めていく。
現地の部族民を雇い入れて、仕方なくコーヒー栽培を始めたカレンは、それに協力することもない夫ブローへの気持ちは薄れる。
そしてカレンは、アフリカを神の大地と考え駆け巡る自由人、デニスに心惹かれていく・・・。
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原作者の体験を基にしたストーリーを、雄大且つ詩情豊かに描いた、監督シドニー・ポラックの演出は秀逸で、彼のベストと言える作品。
第58回アカデミー賞では、12部門でノミネートされ、作品、監督、脚色、撮影、作曲、録音、美術賞を受賞した。
・ノミネート
主演女優(メリル・ストリープ)
助演男優(クラウス・マリア・ブランダウアー)
編集・衣装デザイン賞
アカデミー賞を受賞した、ジョン・バリーの美しい主題曲をバックに、アフリカの広大な大地を見事に映し出す、デヴィッド・ワトキンの撮影も出色だ。
北米興行収入は約8700万ドル、全世界では約1億2800万ドルのヒットとなった。
演技派として早くも頂点を極めようとしていたメリル・ストリープの円熟とも言える演技は、文壇デビューする前の主人公カレン・ブリクセンの、一人の北欧女性としての心理を、逞しさも加えて見事に表現し演じ切っている。
共演のロバート・レッドフォードの、自由な冒険家の生き様にも、男性として憧れる方は多いはずだ。
アカデミー助演賞候補にもなったクラウス・マリア・ブランダウアーも、育ちは良いが素行が悪い貴族を、抑えた演技で丁寧に演じている。
その後、「アウトブレイク」(1995)などにも出演する、マリック・ボウエンズが召使い役を好演している。
ラストで、主人(メリル・ストリープ)を、尊敬と友情の眼差しで見つめるアップが特に印象に残る。
役者志望で映画界に入り、俳優として自らの作品以外にも多数出演作品のあるシドニー・ポラックだが、個人的にどうもスクリーンに登場する彼の姿が好きになれないのだが・・・。
*自ら監督した「トッツィー」(1982)のエージェント役は良かった。
彼は、惜しまれながら2008年5月26日に癌で亡くなり、遺作は「近距離恋愛」(2008)の出演で、監督としての最後の作品は「ザ・インタープリター」(2005)となった。
冒険家デニス(R・レッドフォード)の友人で黒水熱で亡くなるマイケル・キッチン、農園管理人シェーン・リマー、デラメア男爵マイケル・ガフ、料理人になる少年役のジョセフ・シアカ、伯爵夫人レイチェル・ケンプソン、主人公の知人役スザンナ・ハミルトン、総督レスリー・フィリップスなどが共演している。
当時、流行っていた”愛と・・”シリーズのような邦題は、本作にのみ付けられたのならまだいいのだが、同様のタイトルを乱立させて、本作のような名作の品位を逆に落としてしまうという考えに至らないのだろうか不思議でならない。
本作は、原題”Out of Africa”のままで、何の問題もないと思うのだが・・・。