1958年に発表されたグレアム・グリーンの同名小説の映画化。 キューバ革命前夜のハバナを舞台に、現地在住のイギリス人商人が地区担当の諜報員として活動する姿を描く、製作、監督キャロル・リード、主演アレック・ギネス、バール・アイヴス、モーリーン・オハラ、ノエル・カワード、ラルフ・リチャードソン他共演のサスペンス・コメディ。 |
■ スタッフ キャスト ■
監督:キャロル・リード
製作:キャロル・リード
原作・脚本:グレアム・グリーン
撮影:オズワルド・モリス
編集:バート・ベイツ
音楽:フランク・デニーズ
出演
ジェームズ・ワーモルド/59200-5号:アレック・ギネス
カール・ハッセルバッカー:バール・アイヴス
ベアトリス・セヴァーン:モーリーン・オハラ
ホーソーン/59200号:ノエル・カワード
C:ラルフ・リチャードソン
セグラ警部:アーニー・コヴァックス
ミリー・ワーモルド:ジョー・モロー
ヒューバート・カーター:ポール・ロジャース
ルディ:ティモシー・ベイテソン
サンチェス教授:フレディ・マイン
イギリス 映画
配給 コロンビア・ピクチャーズ
1960年製作 107分
公開
イギリス:1959年12月30日
北米:1960年1月27日
日本:1960年6月
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
革命前のキューバの首都ハバナ。
イギリス人紳士ホーソーン(ノエル・カワード)は、店を開き”原子炉掃除機”なる輸入品を売る、同郷のジェームズ・ワーモルド(アレック・ギネス)を訪ねる。
その場にいたドイツ人医師カール・ハッセルバッカー(バール・アイヴス)は、”赤いハゲタカ”の異名を持つ警官セグラ警部(アーニー・コヴァックス)に呼び止められる。
セグラは、ワーモルドの店に入ったホーソーンについてハッセルバッカーに質問して立ち去る。
ホーソーンは、ワーモルドに、彼の娘ミリー(ジョー・モロー)やパスポートのことを尋ねただけで店を出る。
娘ミリーが人生の全てと考えるワーモルドは、彼女に不自由ない生活をさせるために必死に働いていたものの、金銭的な悩みを抱えながら暮らしていた。 そんなワーモルドは、ミリーの誕生日のプレゼントに、何が欲しいかを聞くと、彼女は既に愛馬を手に入れていたことに驚いてしまう。 ミリーは、セグラ警部に気に入られたらしく、恋仲ではないが、馬屋も提供されたことをワーモルドは聞かされる。 パブでワーモルドを見かけたホーソーンは、自分がイギリス諜報部カリブ地区責任者59200号だということを彼に明かし、キューバに関する詳細な情報提供協力を要請する。 気乗りしないワーモルドだったが、”カントリークラブ”に入りたいというミリーの顔を見た彼は、情報提供の謝礼金に飛びつき、それを受けることを決める。 ロンドンに戻ったホーソーンは、情報局部長のC(ラルフ・リチャードソン)に、カリブの準備が整ったことを伝える。 しかし、59200-5号(ワーモルド)が情報源を持たずに、カントリークラブに入会したいとだけホーソーンは連絡を入れてくる。 Cは、そういうところでこそ情報が得られると、金に糸目を付けず、カントリークラブの入会を許可するようホーソーンに伝える。 カントリークラブの会員にはなれたものの、知人も情報収集能力もないワーモルドは会員達に相手にされず、本国からの情報提供催促を受けて焦ってしまう。 仕方なくハッセルバッカーに相談したワーモルドは、どうせ謝礼は自分達の税金なので、情報をでっち上げて報告すればいいと彼から言われる。 そこでワーモルドは、全くうまくいかなかった情報収集を、あたかも有力情報のように仕立て上げて、ホーソーンに報告してしまう。 さらにワーモルドは、商品の”原子炉掃除機”をモデルに、山中に、最新鋭ロケット建造工場があるというスケッチまで送ってしまう。 ロンドンのCは、期待以上の59200-5号(ワーモルド)からの情報に満足し、彼にボーナスまで出そうとする。 しかしホーソーンは、山中の工場の絵がワーモルドの掃除機だと気づき、頭を抱えてしまい対処しようとする。 Cは、ホーソーンの仕事振りを評価し、代わりに59200-5号に秘書をつけ、援助をさせることを決める。 ハバナに到着した、ワーモルドの美しい秘書ベアトリス・セヴァーン(モーリーン・オハラ)を見て、ミリーが、分別をわきまえるよう父に忠告する。 ワーモルドは、ベアトリスと無線士であるルディ(ティモシー・ベイテソン)に、自分の嘘がばれないかと気が気ではなくなる。 さらに、でっち上げた情報提供者とベアトリスが、接触しないようにするのに苦労する。 ハッセルバッカーの家に招待されたワーモルドとベアトリスは、ホーソーンとの情報のやり取りに使ったチャールズ・ラムの”シェイクスピア物語”が、彼の部屋にあったことに気づき不審に思う。 そんな時、ワーモルドの偽の情報提供者が、次々と事件に巻き込まれる。 先手を打ってそれを助けようとしたワーモルドとベアトリスは、セグラ警部の元に連行されてしまう。 ハッセルバッカーも、スパイ活動をしていたことが分かるが、ワーモルドの、架空の情報提供者が本物と思われてしまっていたのだ。 セグラは、国内退去命令をちらつかせて、ワーモルドに二重スパイになることを迫る。 ホーソーンからの呼び出しを受けたワーモルドは、自分の暗殺計画が進行中だということを知らされる。 ビジネスの商社連合会のランチで、自分の命が狙われると聞いたワーモルドは、ベアトリスの制止も聞かずにプライドのために会場に向かう。 ハッセルバッカーが会場に現れ、ワーモルドに暗殺を警戒するよう伝える。 ワーモルドは臨席、周囲を気にしながらランチの席につき、何も起こらないままに彼のスピーチが始る。 携帯の酒を勧めてきたヒューバート・カーター(ポール・ロジャース)が、ハッセルバッカーと密通していた相手だと気づいたワーモルドは、酒をわざとこぼして難を逃れる。 その後、ハッセルバッカーが射殺され、身の安全の保障を盾に、セグラはワーモルドに、ミリーとの結婚許可を迫る。 友人の死のショックと逃れようのない危険、ワーモルドは、悩んだ末にベアとリスに真実を話す。 ワーモルドは、ミリーの件でセグラを自宅に呼び、酒瓶を駒にチェッカーを始める。 セグラにわざと駒を取らせて酔わせたワーモルドは、彼の拳銃を奪いカーターの元に向かう。 カーターを見つけて街に誘ったワーモルドは、彼を射殺してハッセルバッカーの仇を討ち、セグラが目覚める前に帰宅する。 ハッセルバッカーの葬儀の日、セグラはワーモルドに国外退去を命ずる。 そしてセグラは、ワーモルドがハバナを飛び立とうとする際、何も言わずに彼に二発の薬きょうを渡す。 ロンドンの情報部では、59200-5号(ワーモルド)の情報が作り事だとわかるが、59200号(ホーソーン)とベアトリスは、彼の人柄などを称える。 しかし、59200-5号の国家反逆罪は、免れようのない状況だった。 そして情報局に到着したワーモルドを、彼に惹かれていたベアトリスが迎える。 Cは59200-5号に、全ての計画が中止されたために施設なども撤去され、任務を遂行したは彼には、勲章も授与されることを告げる。 さらに、Cは59200号に、全てを速やかに葬り去るよう指示を出し、仲むつまじい59200-5号とベアトリス、そしてミリーを見つめる。 街頭販売のおもちゃに興味を示したワーモルドは、それが日本製だと知り感心する。
...全てを見る(結末あり)
*(簡略ストー リー)
革命前のキューバの首都ハバナ。
”原子炉掃除機”なる輸入品を販売する商人、気の好いイギリス人ジェームズ・ワーモルドは、同郷の紳士ホーソーンの訪問を受ける。
その後ホーソーンは、自分がイギリス諜報部のカリブ地区責任者だということをワーモルドに伝えて、キューバに関する情報提供の協力を要請する。
気乗りしないワーモルドだったが、カントリークラブに出入りしたいという、愛娘ミリーのために謝礼金に飛びつき、その要請を引き受ける。
本国の許可を得てカントリークラブに入会したものの、情報収集能力のないワーモルドは、仕方なく、でっち上げた情報をホーソーンに報告してしまうのだが・・・。
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原作者グレアム・グリーンは本作で脚本も担当している。
単純なコメディと思いきや、現地の唯一の友人が窮地に立たされ、更にに殺されてしまってからの主人公の行動や展開などは、真のスパイ劇として、キャロル・リードらしい緊張感溢れる演出が光り、見応え十分。
イギリス映画の重鎮達が登場する爆笑コメディとして始る序盤から中盤にかけての、アイデア満載のユーモラスなシーンの中で、その存在自体に皮肉が込められている、”原子炉掃除機”から発想する、ミサイル工場のスケッチを見て、真剣に討議を始める、イギリス諜報局上層部の慌てぶりは最高に可笑しい。
親ばかで頼りない気のいい商人を、彼独特の、抜群の”間”で好演するアレック・ギネスが、友情や本能、さらにプライドをかけて敵と戦う終盤は頼もしく、ラストで、おもちゃを見て平凡な市民に戻る姿は実に微笑ましい。
強烈な存在感のため、何か裏がありそうな雰囲気が見事に生かされている、ドイツ人医師バール・アイヴス、逆に控えめな主人公の秘書モーリーン・オハラ、飄々としたイメージが実にいい味を出している地区責任者ノエル・カワード、クライマックスで大英断をして、全てを丸く収める情報局部長ラルフ・リチャードソン、いかにも嫌味な警官ながら、主人公に情けを見せるアーニー・コヴァックス、そして、美しい主人公の娘ジョー・モローなど、豪華キャストの好演も見ものだ。