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麦秋 Our Daily Bread (1934)

大恐慌時代、農業に夢を託し苦難に立ち向う人々を描く、製作、原作、監督、脚本キング・ヴィダー、共同脚本ジョセフ・L・マンキウィッツ、主演カレン・モーリイトム・キーンジョン・クォーレン他共演のドラマ。

アカデミー賞 ■ ストーリー ■ 解説


ドラマ


スタッフ キャスト ■
監督:キング・ヴィダー

製作:キング・ヴィダー
原作:キング・ヴィダー
脚本
エリザベス・ヒル
キング・ヴィダー

ジョセフ・L・マンキウィッツ
撮影:ロバート・H・プランク
編集:ロイド・ノスラー
音楽:アルフレッド・ニューマン

出演
メアリー・シムズ:カレン・モーリイ

ジョン・シムズ:トム・キーン
クリス・ラーセン:ジョン・クォーレン
サリー:バーバラ・ペッパー
ルイ・フエンテ:アディソン・リチャーズ
アンソニー:ロイド・イングラム

アメリカ 映画
配給 ユナイテッド・アーティスツ

1934年製作 76分
公開
北米:1934年10月2日
日本:1935年3月
製作費 $125,000


*詳細な内容、結末が記載されています。
ストーリー ■
大恐慌の時代。
苦しい生活を続けていたメアリー・シムズ(カレン・モーリイ)は、家賃の催促を何とかやり過ごす。

帰宅したメアリーの夫ジョン(トム・キーン)は、家賃の支払いを明後日まで待ってもらえることを妻から知らされる。

おじのアンソニー(ロイド・イングラム)を夕食に招待し、借金を頼んでみると言うメアリーは、ジョンにチキンを調達してもらおうとする。

部屋にあったウクレレを手にしたジョンは肉屋に向い、小さいチキンだったがそれと交換してもらう。

アンソニーと共に食事をしたジョンは、職探しをしていることなどを話し、今は価値がなく手放そうとしていた農場で働いてみる気があるかを問われる。
...全てを見る(結末あり)

借金取りに追われるよりはましだと言うメアリーは、ジョンがやる気ならどこにでも行くことを伝え、二人は農場に向かう決心をする。

農場に着いたジョンとメアリーは、荒れてはいたが暖炉もある家で食事をして、寝床を作り寄り添って眠る。

翌日からジョンは張り切って働こうとするが、乾燥して固い土を耕すことの難しさを知る。

街道で車が立ち往生していた移住者のクリス・ラーセン(ジョン・クォーレン)に声をかけたジョンは、カリフォルニアの砂金を掘りに行くと彼に言われる。

もう無理かもしれないと言うクリスが農業に詳しいことを知ったジョンは、自分が全くの素人なので、この農場で働かないかと提案する。

意気投合したジョンとクリスは、水を撒いて土地を耕し始める。

その夜も缶詰を食べようとしたジョンとメアリーは、現れたクリスに誘われ、彼の妻が作ったうさぎのシチューをご馳走になる。

ジョンとメアリーは、久し振りにまともな食事ができて満足する。

クリスの働き振りに感心するジョンは、彼のような人材は世の中に多くいるはずで、それを集めて共同体を作り助け合うことを考え、メアリーもそれに賛成する。

不況下で仕事がない人々は、家賃が要らないという農場に続々と集まる。

様々な職業に就いていた者達を歓迎したジョンは、助け合う気持ちを伝えて皆の心を一つにする。

各人に役目を与えたジョンは、民主主義のお蔭でこんな世の中になったという意見を聞く。

利益や何もかもを一つの組織が管理する、社会主義的システムが望ましいという発言も出る。

話はまとまらないものの、ボスが必要なのは確かだと言うクリスは、ジョンを推薦して皆の賛同を得る。

翌日から、馬や車そしてサイドカーなどを使って大地を耕し始めた人々は、それぞれの家も建てる。

助け合い分け合うというルールを守らない者も現れるが、ルイ・フエンテ(アディソン・リチャーズ)は、それを破る者を許さない。

人々が小さいながらも自分達に家を持てた頃、メアリーは、耕した土地に作物の目が出たことを確認し、それをジョンに知らせる。

クリスがそれを人々に知らせ、皆は神に感謝する。

農場で初めての子供も生まれ、それを祝うパーティーが開かれる。

ところが、農場が保安官により競売にかけられることになり、自分の土地ではなかったジョンは、その場を手放す覚悟を決める。

競売は始まり、4000ドル以上の資産価値である土地を買おうとする者が現れるが、農民はそれを阻止しようとする。

1ドル75セントから1ドル85セントの値がつき、話にならないと言って去ろうとする保安官だったが、法律では二つの値がつけば競売は成立すると法律に詳しい農民の一人に言われる。

仕方なく競売を続けた保安官だったが、それ以上の値はつかずに土地は農民の手に渡り、それをジョン名義で管理することが決まり、人々は一層、団結する。

そんな時、雨の中現れた若い女性サリー(バーバラ・ペッパー)は、ジョンらに歓迎される。

酔った父親が車で寝ているとサリーに言われたジョンらは、後部座席の父親が既に亡くなっていることを知る。

人々は葬儀を済ませて失意のサリーを励まし、彼女は農場に滞在させてもらうことにする。

部屋に閉じ篭ったサリーがレコードをかけ始めたため、ジョンは驚く。

美容院を開くことにジョンも賛成してくれたとルイに話したサリーだったが、既婚者には手を出すなと彼に忠告される。

その後、食料の補給は減り今後の見込みも立たないため、ルイはある考えをクリスに伝える。

実は脱獄囚だったルイは、自分を差し出し500ドルの賞金を手に入れるようクリスに伝える。

クリスはそれを拒み、飢え死にした方がましだとルイに伝える。

サリーを連れて町に向かったルイは、彼女をジョンの妻ということにして500ドルを手に入れさせる。

農場に戻ったサリーは、共同体の運営に疲れたと言うジョンの話しを聞き、気分転換させるために彼を散歩に誘う。

金策に悩むジョンに500ドルを渡したサリーは、詳しいことはクリスから聞いてくれというルイからの手紙も見せる。

喜んだジョンは食料を補給し、法廷のルイも寛大な裁きを受けることなども分かる。

育った作物には雨が必要であり、クリスは日照り続きを心配するが、ジョンはしばらくすれば雨が降ると楽観的に考える。

しかし、干ばつとなり作物は枯れる寸前で、数日で全てが終りだとメアリーはクリスから知らされる。

人々は気落ちして水を運ぶ気力もなく、農場を出るという者も現れていた。

打つ手がないジョンは、人々の自分に対する期待を負担に思う。

自信を失ったジョンを励ますメアリーだったが、ジョンは全てを諦めようとする。

サリーに原因があると考えたメアリーは、彼女の元に向う。

ジョンが変わったのはサリーが来てからだと伝えたメアリーだったが、彼女はジョンが勝手に自分に好意を寄せたと答える。

何よりも自分が大切だとジョンが言ったと伝えるサリーを、メアリーは農場から追い出そうとする。

出て行くつもりのサリーは、ジョンも一緒だと言い放つ。

考えを巡らせるジョンは、結局、サリーと共に農場を出るものの、ルイのことを思い出す。

動揺するジョンは、車を止めた場所で発電所が再開したことに気づき、農場に水を引けるかもしれないと考える。

サリーを残し農場に戻ったジョンは、寝ていた人々を起こして発電所のことを知らせ、水を引く計画を語る。

ジョンが本気なのかを疑う人々だったが、クリスが考えていた灌漑が実現できることをジョンは熱心に訴える。

クリスがそれに同意したため、人々はジョンと共に作業を始める。

人々は大地を掘り進み岩をどけて林を通り、夜を徹して休みなく働き続ける。

以前のジョンに戻ったことを知ったメアリーは喜び、そして誇りに思う。

翌日も作業は続き、溝は女と子供達の待つ農場に達する。

クリスは溝堀りが修了したことを伝え、それは水源のジョンに知らされる。

川の水は溝を流れ始め、ジョンらは貴重な水が溝から溢れないよう補修しながら農場に向かう。

そして、水はトウモロコシ畑に達し人々は歓喜する。

やがて、人々は豊かな収穫の時期を迎える。


解説 評価 感想 ■

*(簡略ストー リー)
大恐慌の時代。
苦しい生活を続けていたメアリー・シムズと夫のジョンは、おじの勧めで農場経営をすることを決心する。
荒れ果てた農場に着いたジョンは、農業のことは全くの素人であったが、通りがかった移住者のクリスと知り合い、彼が農業の専門家だと知り意気投合する。
クリスと共に農作業を始めたジョンは、彼の仕事ぶりに感心する。
この不況下なら同じような境遇の人々がいるはずだと考えたジョンは、共同体を作り大規模な農場計画を進める。
やがて人々は大挙して集まり、様々な職業を経験した者達の共同生活は始まるのだが・・・。
_________

製作、原作、監督、脚本を担当したキング・ヴィダーの意欲作である。
彼自身の監督、脚本による1928年のサイレント映画”The Crowd”の続篇でもあり、主人公のメアリーとジョン・シムズ夫婦が再び登場する。(配役は違う)

邦題は”麦秋(むぎのあき)”なのだが、主要作物はトウモロコシで、終盤でその畑に灌漑用水を引くシーンが感動的に描かれている。

社会主義的内容とも言われているが、正に大恐慌の真っただ中で製作された作品でもあり、不況下で職の当てもない人々が生き抜くための手段を描く物語で、問題視する必要はない。

ドラマ内でも、農場に集まった人々の中で社会主義的システム導入を提案をする意見が出るが、皆がそれに賛同するわけでなく、助け合いを強調する結果の共同体運営が描かれている。

それよりも、ドキュメント・タッチの映像効果や、疲弊しきった人々に希望を与えるキング・ヴィダーの力強いメッセージを感じさせる演出に注目したい。

貧しく苦しい生活の中で夫を見守り励まし続けるカレン・モーリイ、挫折も経験しながら困難に立ち向かうその夫を熱演するトム・キーン、二人に協力する農夫を印象深く演ずる、ジョン・フォード作品の9作に出演した”フォード一家”の一員として知られるジョン・クォーレン、ジョン(トム・キーン)の心を惑わす若い女性で、撮影当時まだ10代だったバーバラ・ペッパー、脱獄囚ではあるが自分を犠牲にして農場を救う人間味のある役柄を演ずるアディソン・リチャーズ、主人公に農場経営を勧めるおじのロイド・イングラムなどが共演している。


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