イギリス、オーストラリア両政府などが関与し大スキャンダルとなった“児童移民”問題を追求したソーシャルワーカーのマーガレット・ハンフリーズが1994年に発表した著書”Empty Cradles”を基に製作された、主演エミリー・ワトソン、デビッド・ウェナム、ヒューゴ・ウィーヴィング他共演、監督ジム・ローチによる社会派ドラマ。 |
■ スタッフ キャスト ■
監督:ジム・ローチ
製作
エミール・シャーマン
カミーラ・ブレイ
原作:マーガレット・ハンフリーズ”Empty Cradles”
脚本:ロナ・マンロ
撮影:デンソン・ベイカー
編集:ダニー・クーパー
音楽:リサ・ジェラルド
出演
マーガレット・ハンフリーズ:エミリー・ワトソン
レン・コネリー:デビッド・ウェナム
ジャック:ヒューゴ・ウィーヴィング
マーヴ・ハンフリーズ:リチャード・ディレーン
ヴェラ・ウィルソン:ケイト・ラッター
ベン・ハンフリーズ:ハーヴェイ・スクリムショウ
レイチェル・ハンフリーズ:モリー・ウィンザー
ポーリー:タラ・モーリス
ボブ:グレッグ・ストーン
ニッキー:ロレイン・アッシュボーン
シャーロット:フェダレイ・ホームズ
イギリス/オーストラリア 映画
配給
Icon Film Distribution(イギリス)
Cohen Media Group(北米)
2011年製作 105分
公開
イギリス:2011年4月1日
オーストラリア:2011年6月9日
北米:2011年10月21日
日本:2012年4月14日
製作費 $4,500,000
北米興行収入 $100,200
世界 $2,539,020
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
1986年、イギリス、ノッティンガム。
地元のソーシャルワーカーのマーガレット・ハンフリーズ(エミリー・ワトソン)は、ある夜、見知らぬ女性シャーロット(フェダレイ・ホームズ)に話しかけられる。
4歳の時に両親を亡くしたシャーロットは、施設に入れられた後、オーストラリアに連れて行かれ、ノッティンガムが記憶の中にあったというのだ。
子供だけが200人移送されたという話に、それが違法であり不可能だと指摘するマーガレットだったが、資料を渡し真実を訴えて姿を消したシャーロットが気になった。
帰宅したマーガレットは、夫マーヴ(リチャード・ディレーン)や娘レイチェル(モリー・ウィンザー)息子ベン(ハーヴェイ・スクリムショウ)が寝静まった後、シャーロットの資料に目を通す。 その後マーガレットは、集会に出席していた女性ニッキー(ロレイン・アッシュボーン)から、里子に出されたはずの兄ジャック(ヒューゴ・ウィーヴィング)から、数年前に手紙が届き、彼がオーストラリアにいたという話を聞く。 マーガレットは、それがシャーロットの話と同じことに驚き、何も記録がないはずがないと考え、オーストラリア大使館に向かう。 ロンドン。 マーガレットは、シャーロットの母親ヴェラ・ウィルソン(ケイト・ラッター)が亡くなっていないことを知る。 マーヴと共にあるパブに向かったマーガレットは、その場働くヴェラに声をかける。 マーガレットに、家族の話だと言われたヴェラは顔色を変え、養子に出したはずの娘シャーロットが、オーストラリアで孤児院に入れられたと知り動揺する。 帰国したシャーロットは、マーガレットの計らいでヴェラと再会し、養子に出した理由などを聞かされる。 マーガレットは、夫マーヴの理解を得て、ニッキーと共にオーストラリアに向かう。 メルボルン。 マーガレットは、母親のことで悩み続けているジャックの苦悩を知る。 母親を捜す作業は容易ではないことをジャックに伝えたマーガレットは、ノッティンガムに戻る。 マーヴの調べで、慈善団体や教会など、多くの組織が植民地への子供の移送に関係していることを知ったマーガレットは、それが政府も関与した児童移民計画だと考える。 マーガレットは、オーストラリアで数百人から家族捜しを頼まれていたため、覚悟を決めてこの件に対処することをマーヴに告げる。 福祉局の理解を得られたマーガレットは責任者となり、新聞社の協力でこの件が記事になり、関係者と思われる、自分の出生が不明な人々からの手紙が殺到する。 オーストラリア、パース。 マーガレットは、強制移民させられ児童が、虐げられて育った苦悩をラジオでも訴える。 移民の人々から聞いた話に心を痛めるマーガレットは、クリスマスの前に帰国する。 クリスマスを祝う気になれないマーガレットだったが、マーヴに励まされる。 その後、マーガレットを訪ねて来たジャックは、彼女の助手となり母親を捜し始める。 オーストラリアで、児童移民調査のための機関が発足されるのだが、マーガレットは脅迫電話を受ける。 教会などからの圧力もかかるマーガレットだったが、彼女は、虐げられた子供達のことを考え、それに動ずることはなかった。 不躾なレンと面談したマーガレットは、彼自身をを含めた子供達が、当時、母親に捨てられたという考えを抱いていることを知る。 ジャックを呼び寄せたマーガレットは、調査の結果、母親が亡くなっていたことを彼に伝える。 悲しみに堪えながら、ジャックはニッキーと共に母親の墓参りをする。 事件を過去のこととして処理しようとする政府に対して、マーガレットとマーヴは、移民させられた人々が自分自身を知りたいだけだと言って協力を求める。 子供の面倒も見ずに、他人の母親を捜しているとまで言われたマーガレットはショックを受ける。 その後マーガレットは、訪ねて来たレンからの、感謝の気持ちの小切手を受け取らず、信頼を得て彼の故郷に向かい、母親と再会させる。 マーガレットは、オーストラリアでも嫌がらせを受けるようになり、心配したマーヴは、彼女の世話をジャックに頼む。 帰国したマーガレットは、精神的に限界に達して、医師から心的外傷後ストレス障害と診断される。 活動ができなくなり、家に閉じ籠っていたマーガレットだったが、訪れたシャーロットとヴェラ母娘の絆を確認して勇気づけられる。 オーストラリア。 レンは、子供達が虐待を受けた施設があるビンドゥーンを、実際に見ることが必要だと提案するが、マーガレットはそれを拒む。 しかしレンは、自分がマーガレットに心を開いた時の言葉を返し、彼女を納得させる。 ビンドゥーンに着いたマーガレットは、その場の施設で受けた体験を語る、移民の話を想い起す。 レンに案内され、マーガレットはためらいながら施設内に入り、食事中の神父達を紹介される。 何も語らない神父達を前に、居たたまれない気持ちを抑えて、マーガレットはその場を後にする。 マーガレットは、全てが癒される時は来ないのであって、自分には、失ったものを返すことはできないと、動揺してレンに語る。 レンは、マーガレットの態度に驚きもせず、子供時代に泣くことを忘れたしまった自分達の、”涙”を感じ取ってくれる彼女に感謝する。 マーガレットが闘い、味方だということだけで、それ以外は何もいらないとレンは付け加える。 クリスマスを現地で過ごしたマーガレットは、自宅に戻るレンとの別れを惜しみ見送る。 最後の児童移民から23年後、イギリス、オーストラリア両政府は公式に謝罪した。 移送させられ子供達は13万人以上だった。 マーガレット・ハンフリーズとマーヴは、今でも調査を続けている。 レンは、母親との絆を取り戻そうと努力している。
...全てを見る(結末あり)
大使館に記録がないことを確認したマーガレットは、政府の記録保管室に向かう。
ジャックは、ニッキーとマーガレットを歓迎し、彼と同じ境遇の人を捜す作業が始まる。
現地に向かったマーガレットは、家族捜しの依頼者との面談を始めて、風変わりで横柄なレン・コネリー(デビッド・ウェナム)という男性には手を焼く。
現地の活動に復帰し、レンに呼ばれたマーガレットは、家族同様だと言って彼に感謝される。
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*(簡略ストー リー)
1986年、イギリス、ノッティンガム。
ソーシャルワーカーのマーガレット・ハンフリーズは、ある日、児童養護施設からオーストラリアに移送されたという女性シャーロットに話しかけられる。
シャーロットから資料を渡され、それが気になったマーガレットは、後日、里子に出されたはずの兄ジャックが、オーストラリアにいることを知ったニッキーの話を聞く。
マーガレットは、二件の話が偶然とは思えなくなり、大使館や政府の資料保管庫で記録を捜す。
児童大量移民の記録は見つからなかったものの、夫マーヴの協力を得たマーガレットは、亡くなったはずのシャーロットの母ヴェラを捜し出し母娘を再会させる。
マーガレットは、ニッキーと共にオーストラリアに向かい、母を想うジャックの苦悩を知る。
帰国したマーガレットは、移民児童の過酷で悲惨な体験と、それに慈善団体や教会、そして政府が関与していた可能性を知り、使命を感じて活動を始めるのだが・・・。
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移民として海を渡り成長した大人が、自分の出生についてを探り母親を捜そうとする物語で始まる。
進行と共に、その子供時代に遭った過酷な労働や虐待が明らかになり、国家政府の裏で行なわれた行為の非道さに心を痛めた方は多いはずだ。
公式に謝罪したとはいえ、正に迫害とも言える、イギリス、オーストラリア両政府の責任は大きい。
ケン・ローチの息子ジム・ローチの演出は、長編映画デビューではあるが、自国の汚点を真正面から見つめる厳しさと力強さが感じられる。
音楽は、「グラディエーター」(2000)でも知られるリサ・ジェラルドが担当している。
イギリスを代表する実力派女優エミリー・ワトソンは、その眼差しだけで信念を伝える見事な演技を見せてくれる。
風変わりな男として登場するデビッド・ウェナムは、後半で、事件で心を病むまでになる主人公を支える人物を好演している。
同じく、移民として苦悩の日々を歩んだヒューゴ・ウィーヴィング、その姉ロレイン・アッシュボーン、主人公の夫役リチャード・ディレーン、娘モリー・ウィンザー、息子のハーヴェイ・スクリムショウ、移民のグレッグ・ストーン、フェダレイ・ホームズ、その母ケイト・ラッターなどが共演している。