1957年に発表された、ネヴィル・シュートの同名小説の映画化。 第3次大戦の核爆弾使用により絶滅の危機を迎えた人々が家族や祖国の愛に支えられながら残された時間を生き抜こうとする姿を描く、製作、監督スタンリー・クレイマーが生々しく描く、主演グレゴリー・ペック、エヴァ・ガードナー、フレッド・アステア、アンソニー・パーキンス他共演によるSFドラマ。 |
・グレゴリー・ペック / Gregory Peck / Pinterest
・エヴァ・ガードナー / Ava Gardner / Pinterest
■ スタッフ キャスト ■
監督:スタンリー・クレイマー
製作:スタンリー・クレイマー
原作:ネヴィル・シュート”渚にて”
脚本:ジョン・パクストン
撮影:ジュゼッペ・ロトゥンノ
編集:フレデリック・ナドソン
音楽:アーネスト・ゴールド
出演
グレゴリー・ペック:ドワイト・ライオネル・タワーズ艦長
エヴァ・ガードナー:モイラ・デイヴィッドソン
フレッド・アステア:ジュリアン・オズボーン
アンソニー・パーキンス:ピーター・ホームズ大尉
ドナ・アンダーソン:メアリー・ホームズ
ジョン・テイト:ブライディー提督
ローラ・ブルック:ホズグッド
ジョン・メイロン:ラルフ・スウェイン
アメリカ 映画
配給 ユナイテッド・アーティスツ
1959年製作 134分
公開
北米:1959年12月17日
日本:1960年2月
■ アカデミー賞 ■
第32回アカデミー賞
・ノミネート
編集・音楽賞(ドラマ・コメディ)
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
1964年1月。
第3次世界大戦の核爆弾による放射性降下物による影響で地球の北半球は壊滅し、その脅威は南半球にも迫っていた。
メルボルン。
オーストラリア海軍の大尉ピーター・ホームズ(アンソニー・パーキンス)には、若い妻メアリー(ドナ・アンダーソン)と幼い子供がいた。
ブライディー提督(ジョン・テイト)に呼ばれたホームズは、アメリカ海軍の原子力潜水艦”ソーフィッシュ”の連絡員として、それに乗り込む命令を受ける。
既に入港していた、”ソーフィッシュ”のドワイト・ライオネル・タワーズ艦長(グレゴリー・ペック)に会ったホームズは、彼に食事に誘われる。
数日後、ホームズは自宅のパーティーにタワーズを招き、友人のモイラ・デイヴィッドソン(エヴァ・ガードナー)が彼を迎え、二人は意気投合する。
パーティーの席上、科学者ジュリアン・オスボーン(フレッド・アステア)が、酔った勢いで放射能が襲ってくる絶望感を口にしてしまい、ホームズの妻メアリーがショックを受けてしまう。 パーティーも終わり、タワーズは、北半球から来た自分が見てきた現実をモイラに話す。 モイラは、タワーズには既に亡くなっているはずの妻子がいることを知り、辛さに堪えて任務に就く彼の心情を聞きながら身を寄せて酔い潰れてしまう。 翌日、モイラはタワーズを訪ね、昨日の醜態を謝罪し、潜水艦内を案内してもらえることになる。 その場に来ていた、ブライディー提督に呼ばれたタワーズは、サンディエゴから発信されている意味不明のモールス信号を、二日前から受信していることを知らされる。 生存者はいないはずだが、打電していることは確かであるため、提督はタワーズにその調査を任せる。 今回の航海が長くなるため、ホームズは、来るべき時のことを考え、妻子が自ら命を絶つ方法などで悩む日々が続いていた。 自殺薬を手に入れたホームズは、それをメアリーに渡すが、結局は、子供を先に死なせなければならないことを考えると耐えられなかった。 タワーズとモイラはデートを繰り返すが、彼は亡くなった家族のことを思うと、彼女を手放しで受け入れる気持ちになれなかった。 アルコール依存症のモイラは、タワーズと別れた後、酔いながら、かつて愛し合っていたジュリアンの元に向かう。 今は頼る男が誰もいないモイラは、タワーズの妻が生きていれば、力ずくでも彼を奪ったとジュリアンに語る。 ジュリアンは、翌早朝”ソーフィッシュ”で出航するために、泊めてほしいというモイラの申し出を断り、彼女を送っていく。 出港した”ソーフィッシュ”は、安全と見られていた南極に向かうのだが思惑が外れ、サンフランシスコに向けて航路を変える。 ホームズは、メアリーに薬のことを話した時のことを、側に居たジュリアンに語るが、彼は心配する者がいるだけ幸せだと伝える。 それを聞いたホームズは、ジュリアンに感謝し、最後の時に、家族の元に帰れればもう愚痴はこぼさないと語る。 ”ソーフィッシュ”はサンフランシスコに到着し、乗組員は、人気のない、廃墟と化した街を目の当たりにして愕然とする。 その直後、乗組員のラルフ・スウェイン(ジョン・メイロン)が、故郷である街に向かうために艦を脱出してしまう。 スウェインを救出することは出来ず、タワーズは、彼の体調を気遣いながら別れを告げてサンディエゴに向かう。 サンディエゴ。 タワーズは部下達と苦笑いし、任務を果たしメルボルンへと向かう。 そして、タワーズはモイラの元に戻り、ホームズはメアリーと子供に再会して喜びを噛みしめる。 数日後、タワーズは海軍の司令長官の退役に伴い、後任に指名されて提督となるが、既にブリスベンに、放射能の被害が及んでいることも知らされる。 ジュリアンは趣味のカーレースで、死を覚悟したような猛烈な走りを見せて優勝してしまう。 祖国を見て心の整理がついたタワーズは、モイラとの愛を深めていく。 その後タワーズは、部下が明らかに放射能による体調不良を訴えたため、終わりが近づいていることを悟る。 多くの人々に異変が起き始め、自殺薬の一般配布も始まり、タワーズは、部下達が帰国を希望していることを知る。 ブライディー提督は、女性秘書ホズグッド(ローラ・ブルック)と、最後の酒を酌み交わす。 覚悟を決めたジュリアンは、レースで優勝した愛車と共に自ら命を絶つ。 モイラを港に呼び寄せたタワーズは、彼女に帰国することを伝え別れを告げる。 ホームズは、既に精神的に不安定になっていた妻メアリーと子供と共に、自殺薬を飲み眠りにつこうとする。 そして、出港するタワーズを、モイラはいつまでも見つめていた。 その後、メルボルンの街に人影がなくなり、全てが静止する。
...全てを見る(結末あり)
謎の信号の発信元を調査した乗組員は、それが、発電所内の、ブラインドのひもに引っかかっていた、コカコーラの瓶だということを知り、それをタワーズに報告する。
*(簡略ストー リー)
人類は、第3次世界大戦の核爆弾使用による放射能の影響で絶滅の危機を迎え、既に北半球の人々は死滅していた。
メルボルン。
アメリカ海軍の原子力潜水艦”ソーフィッシュ”の艦長ドワイト・ライオネル・タワーズは、安全だと言われる南極と、サンディエゴから発信される謎の信号の調査命令を受ける。
連絡員として乗り込むことになったオーストラリア海軍大尉ホームズは、来るべき最後の時に備え覚悟を決めるよう、妻メアリーに言い聞かせる。
タワーズはホームズと親交を深め、彼の友人の女性モイラと知り合い親しくなっていく。
しかしタワーズは、戦場の自分が助かり、安全だと思われた妻子を失ったことで心に傷を負い、モイラと深い関係になる気になれないでいた。
その後、出航したタワーズは、南極が安全でないことを確認して、進路を祖国のサンフランシスコに向け、謎の信号の調査向かうのだが・・・。
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この世の終わりを、絶望感もなく受け入れる紳士達、新しい命を授かりながら、その子に愛を与える時間のない切なさに悲しむ若い夫婦、既に命を落とした家族を想いながら、任務に就く潜水艦艦長と彼を愛する女性など、様々な人間模様と、全てが死に直面していることの恐ろしさを見事に描いた作品。
第32回アカデミー賞では、編集、音楽賞(ドラマ・コメディ)にノミネートされた。
オーストラリア第二の国家と言える、ワルチング・マチルダが全編に渡り効果的に使われている。
宣伝効果絶大だった、”謎の信号”の原因であるコカコーラの瓶が登場するシーンはも有名だ。
妻や子供達と共に、年老いていくことを夢見ていたにも拘らず、家族を失い、辛い過去を背負いながらも任務に就く艦長を演じたグレゴリー・ペックは、抑えた演技で好演している。
出会ったばかりで恋に落ち、短い時を過ごしただけで、お互い死を覚悟し別れなければならない女性を演じ、希望もなく、絶望と悲しみが入り混じりながら、主人公をいつまでも見つめるラストのエヴァ・ガードナーの表情は忘れ難い。
奔放な科学者、趣味がカーレースという、歌も踊りもないフレッド・アステアの演技も注目だ。
家族の死が近づくことに苦しむ青年将校アンソニー・パーキンスと、その妻ドナ・アンダーソン夫妻の悲しい結末は、心が締め付らけれる思いだ。
主人公に命令を下す提督ジョン・テイト、その秘書ローラ・ブルックなどが共演している。
後に「クロコダイル・ダンディー」(1986)などで活躍するジョン・メイロンが、故郷のサンフランシスコで、潜水艦から逃げ出してしまう乗組員を演じている。