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汚名 Notorious (1946)

ナチのスパイと疑われる実業家を探る任務を受けた情報員と父親のスパイ容疑で汚名を着せられた女性の関係を描く、製作デヴィッド・O・セルズニック、監督アルフレッド・ヒッチコック、主演ケイリー・グラントイングリッド・バーグマンクロード・レインズ他共演によるサスペンスの傑作。

アカデミー賞 ■ ストーリー ■ 解説


ドラマ(サスペンス/犯罪)

アルフレッド・ヒッチコック Alfred Hitchcock 作品一覧
アルフレッド・ヒッチコック / Alfred Hitchcock / Pinterest
ケイリー・グラント / Cary Grant / Pinterest
イングリッド・バーグマン / Ingrid Bergman / Pinterest


スタッフ キャスト ■
監督:アルフレッド・ヒッチコック

製作:デヴィッド・O・セルズニック
脚本:ベン・ヘクト
撮影:テッド・テズラフ
編集:スローン・ウォース
音楽:ロイ・ウェッブ

出演
T・R・デヴリン:ケイリー・グラント

アリシア・ハバーマン:イングリッド・バーグマン
アレクサンダー・セバスチャン:クロード・レインズ
アンナ・セバスチャン:レオポルダイン・コンスタンティン
ポール・プレスコット:ルイス・カルハーン

アメリカ 映画
配給 RKO Radio Pictures

1946年製作 101分
公開
北米:1946年8月15日
日本:1949年11月20日
製作費 $2,000,000
北米興行収入 $24,464,740


アカデミー賞 ■
第19回アカデミー賞
・ノミネート
助演男優(クロード・レインズ
脚本賞


*詳細な内容、結末が記載されています。
ストーリー ■
1946年4月24日、午後11時20分、フロリダ州、マイアミ
アリシア・ハバーマン(イングリッド・バーグマン)は、ナチのスパイ容疑で国家反逆罪に問われた父親が有罪となったために汚名を着せられる。

当局に監視されながら日々を過ごしていたアリシアは、知り合ったT・R・デヴリン(ケイリー・グラント)と共に知人達とのパーティーを楽しむ。

アリシアは酔ったままデヴリンとドライブに出かけ、パトロール警官に車を止められる。
...全てを見る(結末あり)

警官はデヴリンに証明書を見せられ、謝罪して何も問わずにその場を去る。

不審に思ったアリシアは、デヴリンが当局の者だと気づき取り乱す。

デヴリンはアリシアを黙らせて気絶させ、彼女の自宅に戻り眠らせる。

目覚めたアリシアは、デヴリンがブラジルナチのスパイについてを探る目的で、自分に協力させようとしていることを知らされる。

父親がスパイであることの証拠である、自分との盗聴音声を聴かされたアリシアは、協力するしかなかった。

ブラジルへ向かう機内で、アリシアの父親が独房で服毒自殺をしたことを上司ポール・プレスコット(ルイス・カルハーン)から知らされたデヴリンは、それを彼女に伝える。

アリシアは、数年前に父親の正体を知った時から愛情はなくなったことをデヴリンに話す。

リオデジャネイロ
自然の成り行きでアリシアと惹かれ合うようになったデヴリンは、プレスコットに呼ばれる。

プレスコットに会ったデヴリンは、ドイツの実業家でスパイ活動の首謀者と思われるアレクサンダー・セバスチャン(クロード・レインズ)が惹かれていたアリシアを、彼に近づける計画を知らされる。

デヴリンがその場にシャンペンを忘れて行ったため、プレスコットは彼とアリシアの関係に気づく。

気が進まないものの、任務であるためそれを承知したデヴリンはアリシアの元に戻り、父親の友人であるセバスチャンに近づくよう指示を出す。

二人は複雑な思いで任務の内容を話し合い、デヴリンはシャンペンを忘れてきてしまったことに気づく。

翌朝、二人は乗馬クラブに向かい、デヴリンはセバスチャンを確認して、アリシアと偶然に出会ったように仕向ける。

セバスチャンはアリシアとの再会を喜び、クラブに向かい、別の席に着いたプレスコットを気にしたため、アメリカ情報部の者だと彼女に知らせる。

アリシアはデヴリンのことを問われ、恋人ではないことを伝え、セバスチャンから食事に誘われる。

翌日、プレスコットからの指示を受けたアリシアは、着飾ってセバスチャンの屋敷に向かう。

アリシアは、セバスチャンの母親アンナ(レオポルダイン・コンスタンティン)に迎えられる。

セバスチャンが現れ、アリシアは招待されていた科学者らを紹介される。

食事の席に着いたアリシアは、その場にあったワイン・ボトルを見て動揺する男性とセバスチャンの態度を気にする。

食事後に話し合ったセバスチャンらは、ボトルの件で失態をした男性の処置を考え実行に移す。

翌日、競馬場でデヴリンに会ったアリシアは、食事の招待客である科学者とワイン・ボトルを見て動揺した男について話す。

アリシアがセバスチャンと関係したことを知ったデヴリンは動揺し、指示に従ったと言う彼女は辛い思いを伝え涙する。

そこにセバスチャンが現れたためデヴリンはその場を去る。

セバスチャンは二人を監視していたことをアリシアに知らせ、会う約束をしていたと問い詰めて関係を疑うものの、愛を伝える。

その後、プレスコットの元に向かったアリシアは、デヴリンを前にセバスチャンから求婚されたことを話す。

アリシアは、それを受ける方向でよいかを確認しに来たのだが、デヴリンは、新婚旅行が長引けば計画が遅れることを指摘する。

プレスコットから、旅行を短期間で済ませることができるかを問われたアリシアは可能だと答える。

都合のよい展開だと判断したプレスコットの意見に反論せずデヴリンは部屋を出たため、アリシアは複雑な思いでたたずむ。

セバスチャンは、結婚が財産目当てだと言う母アンナの意見を聞き入れず、来週式を挙げることを伝える。

式を終え旅行から戻ったアリシアは、書斎に閉じこもり会議を続けるセバスチャンらを気にする。

クローゼットの鍵などを渡されたアリシアは、ワイン貯蔵庫の鍵だけはセバスチャンが持っていることを知る。

デヴリンに会い、貯蔵庫のことなどを伝えたアリシアは辛い胸の内を語る。

アリシアは、結婚披露のパーティーを開くよう指示され、デヴリンは、招待された自分が屋敷を調べることを伝える。

屋敷に戻ったアリシアは、セバスチャンへの愛の深さでデヴリンが気にならなくなったように見せかけ、彼を招待客として招くことになる。

アリシアは、セバスチャンの鍵を確認してそれを奪い、彼に気づかれぬよう隠し持つ。

パーティー当日。
現れたデヴリンを迎えたアリシアは彼に鍵を渡し、二人に気づいたセバスチャンが近づく。

セバスチャンはデヴリンに挨拶して、客の相手をするようアリシアに指示する。

シャンペンの瓶が残り少なくなったことを確認したアリシアは、それをデヴリンに伝え、酒の補給が始まる前に彼は酒の貯蔵庫に向かう。

アリシアが外を見張り、内部を調べたデヴリンは、ワインの瓶を棚から落とし割ってしまう。

それに気づいたアリシアはデヴリンの元に向かい、酒瓶の中に砂のような物が入っていることを確認する。

それを他の瓶に戻したデヴリンは、セバスチャンが現れたことを知り、アリシアを抱き寄せてキスして、わざと彼にその様子を見せる。

二人に気づいたセバスチャンは問い詰めるが、アリシアは、酔ったデヴリンが強引にしたことだと弁解する。

デヴリンは、アリシアを最初に愛したのは事実だが最終的な愛は得られなかったことを認めて、その場を立ち去り屋敷を後にする。

一応、納得したセバスチャンはアリシアに客の接待をするよう指示を出し、貯蔵庫に向かうものの鍵がないことに気づく。

パーティーは終わり、アリシアを疑ったセバスチャンは、平静を装い彼女にとった態度を謝罪して様子を窺う。

夜中に目覚めたセバスチャンは、鍵が戻っていることに気づき貯蔵庫を調べる。

1934年もののワインが一瓶欠けていることに気づいたセバスチャンは、棚の下の割れた瓶の破片などを見つける。

夜が明けて動揺するセバスチャンは、母アンナの部屋に向かい、アリシアがアメリカのスパイだったことを伝え助言を求める。

失態により自分も殺されることを恐れたセバスチャンは怯えるが、アンナは、それを仲間達に知られないようにして、アリシアを病死させる計画を考える。

その後アリシアは、薬物を入れた飲み物などを飲まされる。

気分がすぐれないままプレスコットの元に向かったアリシアは、瓶の中身を調べた結果、それがウラニウムの原鉱だったことを知らされる。

その出処を探るよう指示されたアリシアは、連絡員の交代によりデヴリンがスペインに向かうことも知らされる。

デヴリンに会ったアリシアは、気分がすぐれないことを酒のせいだと思われながら、簡単な会話を交わして別れる。

その後アリシアは、セバスチャンとマリアに薬物を飲まされていることに気づくが、体の自由がきかなくなりベッドで過ごす日が続き、デヴリンと連絡もできなくなる。

5日間姿を見せないアリシアの身を案じたデヴリンは、彼女が二日酔いではなく病気だと考え、セバスチャンの屋敷に向かう。

セバスチャンが仲間達と会議中だったため待たされたデヴリンは、執事からアリシアが病気だと言われ、隙を見て彼女の部屋に向かう。

デヴリンは、アリシアがパーティーの日から毒を飲まされていたことを知る。

アリシアに会った時から愛していたことを伝え安心させたデヴリンは、睡眠薬も飲まされたという彼女を励まし、その場を脱出しようとする。

デヴリンは、ウラニウムの場所を突き止めたことをアリシアから知らされ、現れたセバスチャンに、彼女を病院に連れて行くことを伝える。

仲間達に全てを話すと言われたセバスチャンは手を出せず、デヴリンとアリシアを送り出す。

セバスチャンは、仲間達の視線を気にしながら二人を車に乗せて、自分も同行したいことを伝えるが、デヴリンはそれを無視して走り去る。

恐怖に怯えるセバスチャンは仲間達に戻るよう言われ、死を覚悟しながら屋敷内に向かう。


解説 評価 感想 ■

★ヒッチコック登場場面
上映64分後、結婚披露パーティーの際、主人公二人が近づくテーブル・カウンターで、シャンペンを飲み立ち去る男性がヒッチコック

*(簡略ストー リー)
情報員T・R・デヴリンは、ナチのスパイ容疑で有罪になった父親のせいで汚名を着せられたアリシア・ハバーマンに近づく。
デヴリンはアリシアを利用し、リオデジャネイロでスパイ活動をしていると思われるドイツの実業家セバスチャンについて調べる任務を命ぜられていた。
そんな二人は、自然の成り行きで惹かれ合うようになりながら、アリシアは、父親の友人であり自分に好意を抱くセバスチャンに接触するのだが・・・
_________

全体的にサスペンスの要素を保ちつつ、主人公二人のロマンスに重点を置いた作品で、終戦直後の時代背景を考えると、ケイリー・グラントイングリッド・バーグマンの濃厚なラブシーンは注目であり、それが大いに話題にもなった。

情報員と協力者が、あまりにもあっさりと惹かれ合ってしまう設定に難はあるが、主人公が終盤まで、はっきりと愛を口にしないところがポイント。

南米に潜伏するナチ・シンパの活動を探るスパイ劇の面白さと、時代を代表するスター、主演の二人の魅力を引き出すアルフレッド・ヒッチコックの演出手腕は冴え渡り、アカデミー賞にノミネートされたはベン・ヘクトの脚本も素晴らしい。

また、主人公が忘れたシャンペン・ボトルのワンショットで、彼と協力者の女性の関係を伝える細やかな演出なども秀逸だ。

二日酔いのヒロインの視線が定まらない、目線で捉えたカメラアングルや、広い屋敷内の天井付近からの撮影と階段へのカメラの移動の仕方など、臨場感のある斬新な手法も注目だ。

第19回アカデミー賞では、助演男優(クロード・レインズ)、脚本賞にノミネートされた。

2006年、アメリカ議会図書館が、国立フィルム登録簿に登録した作品でもある。
同じヒッチコック作品「断崖」(1941)を思わせる、ユーモアを抑えたケイリー・グラントの演技、撮影当時30歳を手前にしたイングリッド・バーグマンの美しさも際立ち、二人の登場場面は画面に吸い込まれてしまうほどだ。

アカデミー助演賞候補となり、主演二人とは違う個性で好演する、全てを思い通りに操れる雰囲気で登場するスパイ活動の首謀者クロード・レインズが、次第に追い詰められ死を覚悟するラストは恐ろしい。

その母親を冷淡に演ずるレオポルダイン・コンスタンティン、主人公の上司ルイス・カルハーンなどが共演している。


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