2005年に発表された、コーマック・マッカーシーの”No Country for Old Men”の映画化。 麻薬取引現場の大金が奪われたことをきっかけに起きる事件を描く、製作、監督、脚本、編集ジョエル&イーサン・コーエン、主演トミー・リー・ジョーンズ、ハビエル・バルデム、ジョシュ・ブローリン、ウディ・ハレルソン、ケリー・マクドナルド、ギャレット・ディラハント他共演の犯罪ドラマ。 |
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■ スタッフ キャスト ■
監督:ジョエル&イーサン・コーエン
製作
ジョエル&イーサン・コーエン
スコット・ルーディン
製作総指揮:
ロバート・グラフ
マーク・ロイバル
原作:コーマック・マッカーシー”No Country for Old Men”
脚本:ジョエル&イーサン・ コーエン
編集:ジョエル&イーサン・ コーエン
撮影:ロジャー・ディーキンス
音楽:カーター・バーウェル
出演
トミー・リー・ジョーンズ:エド・トム・ベル保安官
ハビエル・バルデム:アントン・シガー
ジョシュ・ブローリン:ルウェリン・モス
ウディ・ハレルソン:カーソン・ウェルズ
ケリー・マクドナルド:カーラ・ジーン・モス
ギャレット・ディラハント:ウェンデル保安官補
テス・ハーパー:ロレッタ・ベル
バリー・コービン:エリス
スティーブン・ルート:シガー、ウェルズらの雇い主
ベス・グラント:アグネス
ロジャー・ボイス:エル・パソの保安官
アナ・リーダー:プールサイドの女性
ジョシュ・ブレイロック:自転車に乗る少年
ジーン・ジョーンズ:ガソリンスタンド経営者
アメリカ 映画
配給
ミラマックス(北米)
パラマウント・バンテージ(世界)
2007年製作 122分
公開
北米:2007年11月21日
日本:2008年3月15日
制作費 $25,000,000
北米興行収入 $74,283,630
世界 $171,627,170
■ アカデミー賞 ■
第80回アカデミー賞
・受賞
作品・監督
助演男優(ハビエル・バルデム)
脚色賞
・ノミネート
撮影・編集・録音・音響編集賞
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
1980年6月、テキサス州西部、テレル郡。
祖父も父親の後を継ぎ25歳から保安官を続けるエド・トム・ベル(トミー・リー・ジョーンズ)は、凶悪犯罪が増え続けることを理解できず嘆き悲しむ。
逮捕された殺し屋アントン・シガー(ハビエル・バルデム)は、保安官補を殺して、武器の圧縮ボンベのエアーガンを持ちパトカーで逃亡する。
一般の車を止めたシガーは、運転していた男性を降ろし、何のためらいもなくエアガンで殺害して車を奪う。
リオ・グランデ川近郊。
プロングホーン狩りをしていた、ルウェリン・モス(ジョシュ・ブローリン)は、死体が散乱している麻薬の取引現場を発見する。
そこには、銃弾を受けた瀕死のメキシコ人や大量のヘロインが残されていた。
取引の現金があるはずだと考えたモスは、小高い丘の木陰に向かう。
モスは、死体と共にケースに詰まった大金を見つけて、それを持ち去る。
トレーラーハウスに戻ったモスは、拳銃や見慣れないケースなどを持ち帰ったことを気にする妻カーラ・ジーン(ケリー・マクドナルド)の質問に、まともに答える気はなく眠ろうとする。
その後モスは、現場のメキシコ人が気になり眠れず、様子を見に行く。 その場でモスは、現われた現金の行方を追う者に見つかり、逃げながら傷を追い川に飛び込む。 放たれた犬に追われたモスは、拳銃で射殺して逃げ延びる。 何とか家に戻ったモスは、カーラ・ジーンをオデッサの実家に帰し、現金の入ったケースを持って逃亡の旅に出る。 自分のルール通りにためらいなく殺人を繰り返すシガーは、モスの持ち去った現金を取り戻すために雇われる。 麻薬の売人に取引現場に呼ばれたシガーは、モスの車の登録プレートを外し、金に仕組まれた発信機を渡され男たちを射殺する。 ベルは、妻ロレッタ(テス・ハーパー)の馬を借りて、ウェンデル保安官補(ギャレット・ディラハント)と共に事件の捜査を始める。 現場に向かう途中でベルとウェンデルは、焼け焦げた車を調べて、保安官補を殺して逃げた犯人の仕業だと確信する。 馬に乗り麻薬取引現場に向かい調べたベルとウェンデルは、残された車と死体から、モスが事件に関与していると考える。 シガーは、モスのトレーラー・ハウスのドアの鍵をエアガンで吹き飛ばして侵入し、電話会社の請求書を手に入れて、現金の行方を追い始める。 どんな相手に追われているかモスが知っている限り、何としても逃げようとすると考えたベルは、彼の身柄の保護と殺し屋を捕えようとする。 カーラ・ジーンをバスに乗せて実家に向かわせたモスは、デル・リオのモーテルに宿泊して、現金をエアダクトに隠す。 電話記録をチェックしたシガーは、モスの妻カーラ・ジーンの実家に電話をする。 護身用のショットガンとテントを買ったモスは、モーテルに戻り、借りていた部屋の奥の部屋も借りる。 デル・リオに着き、現金の発信信号をキャッチしたシガーは、モスの居場所が近いと考える。 モスは、テントのポールなどを使い、借りた部屋のエアダクトから隠した現金のケースを取り出そうとする。 同じ頃シガーは、受信機が反応するモーテルで、現金があると思われる部屋を確認する。 モスが最初に借りた部屋に忍び込んだシガーは、雇われた別の殺し屋を殺害して金を探す。 エアダクトが気になったシガーはそこを調べ、ケースを引きずった跡と現金がないことを確認する。 現金の所有者(スティーブン・ルート)は、雇ったシガーが危険過ぎると考え、別にカーソン・ウェルズ(ウディ・ハレルソン)を雇う。 イーグル・パス。 その時、シガーのエアガンで撃ち抜かれたドアの鍵が、モスの脇腹に命中する。 窓からケースを放り投げて逃げたモスは、ベトナム帰還兵の自分ならシガーを始末し出来ると判断し、彼に立ち向かい傷を負わせる。 負った傷で苦しみながら国境に向かったモスは、ケースをフェンス越しに草むらに投げ込む。 国境を越えて路上で意識を失っていたモスは、目の前で歌うバンドに金を渡し、病院に運んでもらう。 負傷するものの、仕留められない獲物はないと考えるシガーは、薬局の前に駐車してある車を爆破し、その間に奪った医療品で傷の手当てをして、再びモスを追う。 病院で目覚めたモスは、現れたウェルズから、金と引き換えにシガーから守ると言われ、妻カーラ・ジーンの危険も知らされる。 カーラ・ジーンに会ったベルは現状を把握し、数十年の自分のキャリアを考え、悪は必ず倒せると信じるのだった。 国境付近を調べたウェルズは、草むらのケースを確認する。 ホテルでウェルズを待ち構えていたシガーは、邪魔なウェルズを容赦なく殺す。 シガーは、ウェルズに電話をしてきたモスと話し、金を渡せば妻の命は見逃すと伝える。 ウェルズからシガーの流儀を知らされていたモスは、対抗しようとして電話を切る。 ベルは、モスの家とデル・リオのモーテルの部屋の鍵を吹き飛ばした手口が同じことから、モスを殺し屋が追っていると考える。 病院を出たモスはケースを取りに草むらに向かい、カーラ・ジーンをエル・パソのモーテルに呼び出し、現金を預けようとする。 シガーは、ウェルズを雇った雇い主を殺害する。 母アグネス(ベス・グラント)と共に、エル・パソに向かおうとするカーラ・ジーンは、モスの安全を保障する条件でベルに彼の居場所を知らせる。 その間アグネスは、親切にしてくれたメキシコ人に目的地のホテルの名前を教えてしまう。 エル・パソのモーテルに着いたベルだったが、モスは殺し屋の銃弾に倒れていた。 理解できない犯行を嘆く地元保安官(ロジャー・ボイス)と話をしたベルは、犯行現場のモーテルに向かう。 ベルは撃ち抜かれたドアの鍵を確認し、犯人が中に潜んでいると考え、拳銃を抜き部屋に入る。 しかし、部屋には人影はなく、腰を下ろして気を落ち着かせたベルは、エアダクトの蓋が開けられていることに気づく。 その後ベルは、元保安官補である叔父で車椅子生活を送るエリス(バリー・コービン)を訪ね、引退することを知っている彼に、最近の暴力に対抗する力が足りな言って嘆く。 エリスは、”この国は人に厳しく、何も止められない、変えられると考えるのは間違いだ”とベルに伝える。 病死したアグネスの葬儀を終えたカーラ・ジーンは家に戻り、シガーが家の中にいることに気づく。 シガーは、妻を殺すことをモスと約束したことをカーラ・ジーンに伝える。 カーラ・ジーンは理解できないものの、自分の考える筋を通そうとするシガーは、コインの裏表で彼女の生死を決めさせようとする。 それを拒んだカーラ・ジーンは、決めるのはコインではなくあなただと伝える。 シガーは、自分はコインに従ってきたとカーラ・ジーンはに伝える。 カーラ・ジーンの家を出たシガーは、ブーツの汚れをチェックして、車でその場を立ち去る。 バックミラーに映る自転車の子供を気にしながら運転していたシガーは、交差点でステーションワゴンに衝突される。 腕を骨折したシガーは、近所の人が救急車を呼んだと言う子供(ジョシュ・ブレイロック)からシャツを買い取る。 シガーは、自分のことは誰にも話すなと子供に伝えて、シャツで腕を吊りその場を去る。 その後、引退したベルは、妻ロレッタに、亡くなった父親がでてくる、二つの夢を見たことを話し始める。 夢では父親は自分よりも20歳若く、一つ目のは、どこかの町で父に金をもらい、それを無くしたような夢だった。 二つ目は二人で昔に戻ったような夢で、ベルは馬に乗り、夜中に寒くて雪も積もる山道を越える。 父は何も言わず、体に毛布を巻きつけて、うなだれながら進みベルを追い抜く。 父は、昔のように、月に似た光る火を入れた牛の角を持っていた。 夢の中でベルは知っていた。 先に行った父が、闇と寒さの中で火を焚いていると、そして自分が行く先に父がいることを。 そこで目が覚めたと、ベルはロレッタに伝える。
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ホテルに身を隠したモスは、現金に仕組まれた発信機を見つけて、忍び寄るシガーを迎え撃とうとする。
(簡略ストーリー)
1980年6月、テキサス州西部、テレル郡。
狩りをしていたモスは、死体が散乱する麻薬の取引現場を発見する。
大量のヘロインと大金を見つけたモスは、その現金を持ち去ってしまう。
帰宅したモスは、妻カーラ・ジーンの質問に答えずに眠ろうとするが、現場が気になり再びその場に向かう。
モスは、その場に現れた現金の行方を追う者達に襲撃されて逃亡する。
家に戻ったモスはカーラ・ジーンを実家に帰し、現金を持って逃亡の旅に出る。
その頃、無差別殺人を繰り返す殺し屋シガーは、モスが持ち去った現金を取り戻すために雇われる。
一方、殺人事件を追っていた保安官エド・トム・ベルは麻薬の取引現場に向かい、モスが事件に巻き込まれたことを知るのだが・・・。
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動のジョシュ・ブローリン、恐怖のハビエル・バルデム、静のトミー・リー・ジョーンズ、それぞれが信ずる思惑がいかにしてぶつかり合うか・・・。
自作の中で最も暴力的だと語るコーエン兄弟が、バックミュージックもない、淡々と進む展開の中で、突然訪れる恐怖を容赦なく描く犯罪ドラマの傑作。
主人公の保安官(トミー・リー・ジョーンズ)が、数十年、警察官を勤めたにも拘らず、あまりに無力な自分や、金のために殺し合う人間の愚かさが理解できず、それに逆らうことも対処することも出来ない。
そんな不条理な運命を、コーエン兄弟らしく痛烈な皮肉も込めて描いている。
常にそのことを考えながら捜査を終えて引退した主人公は、結局、この国で自分”老人”には行き場がないことに気づく・・・、それが本作の原題”No Country for Old Men”となっている。
第80回アカデミー賞では8部門にノミネートされ、作品、監督、助演男優(ハビエル・バルデム)、脚色賞を受賞した。
・ノミネート
撮影・編集・録音・音響編集賞
メインタイトル曲などはないが、音楽担当はコーエン兄弟の盟友カーター・バーウェル、同じくロジャー・ディーキンスが撮影を担当している。
北米興行収入は約7400万ドル、全世界では約1億7200万ドルのヒットとなった。
自分の警察人生を見つめ直しながら、黙々と逃亡者と殺し屋を追う、老練保安官を深く演ずるトミー・リー・ジョーンズの好演は光る。
殺人鬼役ハビエル・バルデムの全身から漂う恐怖感は、映画史上に残るキャラクターとも言える。
殺し屋には似合わない独特なヘアースタイル、無表情で不敵な面構えで迫る、圧縮ボンベのエアガンと黒づくめの衣装、そして哲学的とも言える、自分の殺しのルールを徹底して貫き通す姿も印象に残る。
モス(ジョシュ・ブローリン)に撃たれたて、自分の足を治療する手際のよさや、その医療知識から知性も感じるシーンも興味深い。
何を目的に殺しを続けるのか周囲の者には全く理解できない描写で、プロの殺し屋としての恐ろしさを表現している。
スケジュールの関係でシガー役を降板する予定だったハビエル・バルデムの代役は、マーク・ストロングに引き継がれることになっていたが、問題は解決してバルデムが演じたという経緯がある。
恐怖の殺人鬼に怯まない、退役軍人としてのタフさが印象的なジョシュ・ブローリンの好演もに見逃せない。
モス役はヒース・レジャーの予定だったが、生まれたばかりの娘との時間を優先した彼は出演を断り、保安官補役のギャレット・ディラハントも候補だったが、クエンティン・タランティーノとロバート・ロドリゲスのサポートを受けたジョシュ・ブローリンが最終的にモス役を与えられた。
シガーに子供扱いされてあっさり消されてしまう殺し屋のウディ・ハレルソン、理不尽な考えのシガーの餌食になってしまうモスの妻ケリー・マクドナルド、その母親ベス・グラント、殺し屋の雇い主スティーブン・ルート、経験の浅い保安官補ギャレット・ディラハント、主人公ベル保安官の妻テス・ハーパー、ベルの叔父で元保安官補のバリー・コービン、エル・パソの保安官ロジャー・ボイス、モスを誘うプールサイドの女性アナ・リーダー、シガーにシャツを売る自転車の少年ジョシュ・ブレイロック、シガーと話をするガソリンスタンド経営者ジーン・ジョーンズなどが共演している。