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NY検事局 Night Falls on Manhattan (1997)

元警官の検事が警察内部の汚職に苦悩しつつ正義を貫く姿を描く、監督シドニー・ルメット、主演アンディ・ガルシアイアン・ホルムレナ・オリンリチャード・ドレイファスロン・リーブマンジェームズ・ガンドルフィーニ他共演の社会派ドラマ。

アカデミー賞 ■ ストーリー ■ 解説


ドラマ(社会派)


スタッフ キャスト ■
監督:シドニー・ルメット

製作
トム・マウント

ジョシュ・クレイマー
ジョン・H・スターク
原作:ロバート・デイリー”Tainted Evidence”
脚本:シドニー・ルメット

撮影:デヴィッド・ワトキン
編集:サム・オスティーン
音楽:マーク・アイシャム

出演
ショーン・ケイシー:アンディ・ガルシア

リアム・ケイシー:イアン・ホルム
ペギー・リンドストロム:レナ・オリン
サム・ヴィゴダ:リチャード・ドレイファス
ジョーイ・アレグレット:ジェームズ・ガンドルフィーニ
モーガンスターン:ロン・リーブマン
エリヒュー・ハリソン:コルム・フィオール
ジョーダン・ワシントン:シーク・マハムード=ベイ
ドミニク・インペリテリ判事:ドミニク・チアニーズ
マクガヴァーン:ポール・ギルフォイル

アメリカ 映画
配給 パラマウント・ピクチャーズ

1997年製作 113分
公開
北米:1997年5月16日
日本:1997年11月29日
北米興行収入 $9,889,670


*詳細な内容、結末が記載されています。
ストーリー ■
ニューヨーク
元警察官のショーン・ケイシー(アンディ・ガルシア)は、33歳で地方検事補をめざしていた。

ケイシーの父親で、警察官のリアム(イアン・ホルム)は、相棒ジョーイ・アレグレット(ジェームズ・ガンドルフィーニ)と共に、麻薬ディーラーのジョーダン・ワシントン(シーク・マハムード=ベイ)を捕える準備をしていた。

応援を呼ばずにワシントンのいる部屋に踏み込もうとした二人だったが、リアムは銃撃されて重傷を負う。

ジョーイは救援を要請し、64、65、74各分署の警官が駆けつけて、リアムは救急車で搬送される。

ワシントンは、その場を脱出して警官を二人殺し、犯人と間違えられた警官も犠牲になる。

パトカーを奪ったワシントンは、現場から逃走して行方をくらます。
...全てを見る(結末あり)

翌日。
市長、警察本部長と面会した地方検事モーガンスターン(ロン・リーブマン)は、部下達を集めて、事件解決に手段を選ばず全力で対応するよう厳しく檄を飛ばす。

父リアムの元にいたケイシーは遅れてきたため、彼はモーガンスターンに呼ばれる。

ケイシーはリアムの様子を聞かれ、主席検事補エリヒュー・ハリソン(コルム・フィオール)と共に、モーガンスターンのオフィスに向かう。

モーガンスターンは、ケイシーと話をして庶民派だということを確認し、ワシントンが捕えられ公判が始まった場合の、検事を担当するよう命ずる。

ワシントンの有罪は確実なため、簡単な案件だと判断したモーガンスターンの考えだったが、ケイシーは戸惑ってしまう。

ハリソンは、動揺するケイシーの経験不足を指摘するのだが、モーガンスターンは、リアムのことを考えれば、誰の仕事であるかは明白だと言ってケイシーを説得する。

それに納得のいかないハリソンと、選挙が絡む、お互いの考えを探り合ったモーガンスターンは、激しく罵り合う。

ケイシーは、意識は戻ったものの、危険な状態が続く父リアムを見舞う。

自分がワシントンの公判の検事に決まったことと、重要証人がリアムだということをケイシーは知らせる。

リアムは、ワシントンに必ず法の裁きを受けさせるよう息子に伝えて愛を告げる。

その後、敏腕弁護士のサム・ヴィゴダ(リチャード・ドレイファス)が、ワシントンの弁護を担当することを発表する。

ワシントンを記者達の前に連れて行き、その健康体を確認させたヴィゴタは、彼を連れて警察に出頭する。

モーガンスターンは、ワシントンが出頭した場合は逮捕できないため、それを阻止しようとする。

警察は、ワシントンを強引に逮捕拘束してしまい、それが問題視されてモーガンスターンは非難を受けてハリソンはそれを皮肉る。

そして公判は始り、ケイシーの冒頭陳述後にヴィゴダは、ワシントンが身の危険を感じていたという理由を述べる。

ヴィゴダは、64、65、74各分署の警官が、何年も前からワシントンと取引をしていたことを指摘する。

他の売人がワシントンより良い条件を出し、警察による抹殺を恐れたための彼の行動であり、つまり正当防衛だとヴィゴダは主張する。

ヴィゴダは、3分署の警官17人を証人に呼ぶ予定だったが、モーガンスターンは、あくまで論点は3人の警官の死だと言って強気で攻める。

回復して退院したリアムが証人に呼ばれ、ケイシーの後にヴィゴダが質問を始め、続く警官達にも激しい口調で様々な疑問をぶつける。

ワシントンを証言台に座らせたヴィゴダは、彼の恵まれない生活環境や、ディーラーになった経緯と心得などを語らせる。

関係のあった、賄賂の運び屋である元警官の名前なども出る中、ワシントンは、各分署に月5万ドルを支払ったことを話す。

ケイシーは、汚職事件でないために質問が不適切だと指摘して、それが認められる。

その後ケイシーは、事件の夜のリアムを銃撃した際の様子についてワシントンを追求し、彼は苛立ちケイシーに襲いかかる。

判決は下り、ワシントンは5件の罪で全て有罪となり、検察側はそれを喜び、モーガンスターンは、功労者であるケイシーを称える。

盛大なパーティーが開かれ、ケイシーは、ヴィゴダの事務所のペギー・リンドストロム(レナ・オリン)に誘われて一夜を共にする。

その後、ワシントンの懲役刑期が決まり、心臓発作で倒れたモーガンスターンに代わり、ケイシーが、市長から地方検事候補に推薦される。

汚職の疑いがある警官の死体も見つかり、ヴィゴダに呼び出されたケイシーは、ワシントンを弁護したのは、他の件を追っていたためだと知らされる。

麻薬と汚職警官の関係がなければ、その世界が成り立たないとも言われ、麻薬過剰摂取で死んだ15歳の娘のためにそれを暴きたかったことを、ヴィゴダはケイシーに伝える。

警官だった頃に、汚職警官に関わったことのあるケイシーは、徹底的に調べることをヴィゴダに約束する。

選挙ディベート当日、対抗候補のハリソンは、対立する弁護士事務所の女性と関係を持つ、ケイシーについて語る。

自分が検事に適していることを堂々と述べたハリソンだったが、ケイシーは彼の発言に動ずることなく自信を見せる。

ケイシーはペギーとの結婚も考えるのだが、彼女はそれをためらう。

リアムの相棒アレグレットが、死体で発見された警官の所持していた住所録に載っていたことをケイシーは知る。

捜査担当者は、選挙への影響やリアムが傷つくことを配慮して、ケイシーに、直接アレグレットと話してみてはどうかと提案する。

動揺するアレグレットに会ったケイシーは、彼が、賄賂を渡されるのを断ったことと、相棒の父リアムの潔白を確認する。

リアムを、亡くなった母親の墓の前に呼び出したケイシーは、その場で、父親に潔白かを誓わせる。

ケイシーはリアムの言葉を信じて、アレグレットの潔白を捜査官に報告する。

地方検事に当選し、再び結婚を迫ったケイシーだったが、ペギーはやはり答えを保留し、二人は彼女の家で暮らすことを決める。

ケイシーは、疑われている警官達を取り調べ、療養中のモーガンスターンに意見を求めるものの進展はなかった。

しかし、協力する警官が現れ、ケイシーは、5人の警官を収賄と麻薬取引で起訴したことを発表する。

ケイシーは、この件については引き続き徹底的に調査することを記者達に伝える。

事件の際の、リアムとアレグレットがとったはずの逮捕状の原本が見つからず、ケイシーは、それがよくあることだという秘書の言葉が気になる。

その後、リアムの家で食事をしたケイシーは、その場にいたアレグレットに、汚職警官から金を受け取っていたことを知らされる。

アレグレットをかばおうとするリアムは、取引に応じなかった捜査官に、検事の立場で口添えしてくれとケイシーに頼む。

それを拒んで立ち去ろうとしたケイシーだったが、8人の警官が、ワシントンを殺そうとしていたこともアレグレットから知らされる。

それを聞いてリアムは驚き、8人の一人であり、仲間を裏切ろうとするアレグレットを、ケイシーは痛烈に批判する。

アレグレットは、言葉を返せずにその場を立ち去り、リアムは、逮捕状を偽造したことをケイシーに伝える。

それを責めるケイシーだったが、リアムは、もう一歩でワシントンを仕留められる確信があった為に、仕方なくしたことだと言い張る。

期限切れの逮捕状の原本を渡されたケイシーは、それが隠せないなら、自分で偽造を告白するとリアムに言われる。

アレグレットは、車内で酒を飲みながら、絶望して自殺する。

翌朝、アレグレットの自殺をペギーに知らされたケイシーは、電話に出ないリアムの家に向かう。

ケイシーは誰もいないことを確認し、ペギーは逮捕状を見つけてそれを持ち去る。

オフィスに向かったケイシーを追ったペギーは、涙しながら逮捕状のことを彼に問う。

それをヴィゴダに渡すと言うペギーだったが、愛を告げてケイシーに逮捕状を返す。

ドミニク・インペリテリ判事(ドミニク・チアニーズ)を訪ねたリアムは、真相を話して自首することを伝える。

正直でありたいと考えるケイシーだったが、逮捕状をシュレッダーにかける。

ケイシーはインペリテリ判事からの電話を受け、判事は、逮捕状を書きながら、原本はこの場にあり、別の物は破棄するよう指する。

リアムと電話を替わってもらったケイシーは、悲しい知らせがあると言って、アレグレットのことを伝える。

ケイシーは、ショックを受けて涙するリアムに話しかけるのだが、返事はなかった。

ヴィゴダに会ったケイシーは、判事に借りができ、リアムも誰かに迷惑をかけ、ペギーも逮捕状を渡さなかったことなど、同じことが今後も続くと嘆く。

自分が逮捕状を受取っても、公表したとは限らないと言うヴィゴダは、全てが思うようにはならない現実を伝える。

正しい人間かをヴィゴダに問われたケイシーは、今はもう違うと答える。

郡地方検事局の、行政次官第二補佐官マクガヴァーン(ポール・ギルフォイル)は、地方検事が言葉を述べることを検事補候達に伝える。

ケイシーは、自分を理解するには時間がかかること、法に対して忠実ではあるが間違いも犯すと語り、神が見捨てないことを祈っていると語る。

挫折感も味わう厳しい職務、それに耐える覚悟がある者は歓迎することもケイシーは伝える。

そしてケイシーは、”仕留めろ、健闘を祈る・・”という、退職した刑事(リアム)の言葉を付け加えて話を締めくくる。


解説 評価 感想 ■

*(簡略ストー リー)

元警官の検事補ショーン・ケイシーは、刑事の父親リアムが重傷を負った麻薬ディーラー、ワシントンの公判で担当検事に指名される。
3人の警官が死亡し、リアムが負傷した事件は、ワシントンが敏腕弁護士ヴィゴダと出頭したため急展開となる。
公判は始まるが、ワシントンが、賄賂を渡していた警官に、命を狙われたという証言をしたことから、事件は警察内部の汚職事件捜査に発展する。
ワシントンの有罪は確定し、その功績から、検事候補、そして選挙で当選したケイシー検事となり、汚職事件の徹底捜査を始める。
ところが、事件の当事者リアムの相棒であるアレグレットの汚職の疑いが発覚する。
そして、父親リアムもそれに関わっている可能性もあり、ケイシーの苦悩しながらの調査は続くのだが・・・。
__________

ロバート・デイリーの小説”Tainted Evidence”を基に製作された作品。

衰えを知らない70歳を過ぎたシドニー・ルメットが脚本も担当した意欲作。

アメリカの大きな社会問題である、警察内部の汚職、麻薬問題をテーマに、シドニー・ルメットの、リアリズムを追求した鋭い演出は説得力がある。

やや使い古されたテーマではあるが、中堅やベテランを含めた、演技力のある実力派出演陣の、確かな演技を堪能できる作品でもある。

”正直でありたい・・・”という基本信念を揺るがす終盤の展開は注目で、対抗する弁護士からアドバイザー的な存在になっていくリチャード・ドレイファスが、思うようにならない現実を淡々と語るシーンなども印象的だ。

伊達男風イメージを抑え気味に、正義の追及と肉親、友人への疑念の狭間で苦悩する検事を好演するアンディ・ガルシア、その父親を重厚に演ずるイアン・ホルム、謎めいた雰囲気から、主人公を裏切るのかと思いきや、愛を貫くレナ・オリン、敏腕弁護士から人間味も感じさせる人物を熱演するリチャード・ドレイファス、主人公の父親の相棒で自殺するジェームズ・ガンドルフィーニ、演技派らしく、前半、存在感を発揮する地方検事ロン・リーブマン、出世を狙うエリート、主席検事補コルム・フィオール、麻薬ディーラーのシーク・マハムード=ベイ、判事ドミニク・チアニーズ、冒頭とラストで登場する検事局行政次官ポール・ギルフォイルなどが共演する。


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