視聴率競争の犠牲になる元人気アンカーマンを取り巻く業界人を描く、監督シドニー・ルメット、主演フェイ・ダナウェイ、ウィリアム・ホールデン、ピーター・フィンチ、ロバート・デュヴァル他共演による実力派スター競演のドラマ。 |
・ドラマ
■ スタッフ キャスト ■
監督:シドニー・ルメット
製作
ハワード・ゴットフリード
パディ・チャイエフスキー
フレッド・C・カルーソ
脚本:パディ・チャイエフスキー
撮影:オーウェン・ロイズマン
編集:アラン・ハイム
音楽:エリオット・ローレンス
出演
ダイアナ・クリステンセン:フェイ・ダナウェイ
マックス・シューマッカー:ウィリアム・ホールデン
ハワード・ビール:ピーター・フィンチ
フランク・ハケット:ロバート・デュヴァル
ネルソン・チェイニー:ウェズリー・アディ
アーサー・ジェンソン:ネッド・ビーティ
ハリー・ハンター:ジョーダン・チャーニー
バーバラ・シュレジンジャー:コンチャータ・フェレル
エドワード・ジョージ・ルディ:ウィリアム・プリンス
ロバート・マックダナウ:レイン・スミス
ルイーズ・シューマッカー:ベアトリス・ストレイト
ロリーン・ホブス:マーリーン・ウォーフィールド
弁護士:ランス・ヘンリクセン
アメリカ 映画
配給
MGM
ユナイテッド・アーティスツ
1976年製作 121分
公開
北米:1976年11月27日
日本:1977年1月29日
製作費 $3,800,000
北米興行収入 $23,689,880
■ アカデミー賞 ■
第49回アカデミー賞
・受賞
主演男優(ピーター・フィンチ)
主演女優(フェイ・ダナウェイ)
助演女優(ベアトリス・ストレイト)
脚本賞
・ノミネート
作品・監督
主演男優(ウィリアム・ホールデン)
助演男優(ネッド・ビーティ)
撮影・編集賞
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
1975年9月22日。
テレビ界の大物である、ネットワーク局UBSのイブニング・ニュースのアンカーマン、ハワード・ビール(ピーター・フィンチ)は、かつては高視聴率を上げていた。
しかし、今では視聴率も低下し、会社側はビールを二週間後に解雇することを決め、ニュース部門の責任者マックス・シューマッカー(ウィリアム・ホールデン)がそれを彼に伝える。
シューマッカーと飲み歩いたビールは、番組の最中に自殺してしまいたいとジョークを漏らす。
翌日、いつものように番組を始めたビールは、降板について語り始め、そして、来週の番組中に頭を撃ち抜き自殺することをカメラの前で予告してしまう。
社内は騒然となり、各テレビ局もこの件を一斉に報道し始める。
副会長フランク・ハケット(ロバート・デュヴァル)は、この不祥事に対しシューマッカーに怒りをぶちまける。 とりあえず、混乱を避けるために、シューマッカーはビールを自宅に連れて行くが、彼は翌日、姿を消してしまう。 その後、現れたビールは、番組に出て視聴者に別れを言いたいことをシューマッカーに伝え、彼はそれを許可する。 同じ頃、経営不振に悩むUBSは、報道部門の縮小を株主総会で発表する。 寝耳に水のシューマッカーは、会長エドワード・G・ルディ(ウィリアム・プリンス)に真意を問質すが回答を得られない。 9月24日。 ディレクターは、再び過激になり始める可能性のあるビールの発言を止めようとするが、シューマッカーはそれを続けさせる。 それを知ったルディは、シューマッカーを呼び出して責任を追及する。 しかし、シューマッカーは、社長ネルソン・チェイニー(ウェズリー・アディ)も前にして、大株主の通信企業CCAの影で何かを企むルディに噛み付く。 ルディは、CCAとの関係を深め、事を急ぎすぎるハケットの行動を気にしつつ、実はシューマッカーへの配慮を考えていたのだが、今回の番組放送で彼を見限り、辞表の提出を求める。 同じ頃、編成部長のダイアナ・クリステンセン(フェイ・ダナウェイ)は、世間の注目を集めるビールに目を付ける。 前日の視聴率を調べたクリステンセンは、ハケットに、さらにその上を狙えることを伝える。 クリステンセンは、ビールを、現代の預言者、そして怒りの代弁者として番組に出し続けることを提案し、興奮しながら熱弁を振るう。 ハケットは、反対するチェイニーを説得し、それに乗ることを決め、ビールを番組に出演させる。 会社を去る準備をしていたシューマッカーは、ビールとの昔話に花を咲かせていた。 その時、シューマッカーの後任ロバート・マックダナウ(レイン・スミス)が現れて、ハケットが、ビールの続投を決めたことを知らせ、ビールは大いに張り切る。 シューマッカーもそれを後押し、背後にCCAがついているハケットの暴走を警戒したルディは、彼に辞職を考え直させる。 ルディは、CCAの会長アーサー・ジェンソン(ネッド・ビーティ)との交渉に備えるためにシューマッカーの力を必要とし、彼もそれに応えることを約束する。 しかし、その後のビールの番組は不調で、視聴率も下がってしまい、クリステンセンはシューマッカーに対し、自分に任せて欲しいことを直訴して、内容に変化を与えようとする。 それに耳を傾けるシューマッカーだったが、ビールをこれ以上、笑い者にしておくのは耐え難く、彼を元に戻そうとする。 とは言うものの、シューマッカーは、クリステンセンが学生時代から自分に憧れていたことを聞き、二人は食事を共にして彼女のアパートで愛し合う。 翌日、シューマッカーは、ビールを”預言者”から戻す指示を、番組スタッフに出す。 しかし、ビールは番組で、昨夜ある声を聞いたことを話し始め、彼を病気だと判断したシューマッカーは、降板させようとる。 ビールは、新たな魂を吹き込まれたような、特別な感覚などをシューマッカーに語り、興奮して卒倒してしまう。 シューマッカーの家に連れて行かれたビールは、夜中に姿を消してしまう。 昨日の放送後、局には電話が殺到し、その反響にハケットは興奮する。 ビールには治療が必要だと、浮かれているハケットに意見するシューマッカーは、彼を番組には戻さないことを伝える。 ハケットは、既に番組をクリステンセンの手に渡したことを伝え、シューマッカーを解雇してしまう。 シューマッカーは、病人を利用して番組を作ろうとする二人を痛烈に批判し、その場から立ち去る。 その夜、ビールはスタジオに姿を現し、ずぶ濡れのコートとパジャマのままカメラに向かう。 興奮しながら話し始めたビールは、”怒りも限界に達した、もう我慢できない!”と叫び続ける。 それを見た視聴者は、ビールに言われたように窓を開け、彼と同じように叫び始める。 シューマッカーはその様子を見て、正気の沙汰とは思えず窓を閉めてしまう。 番組は、とてつもない占拠率を記録し、報道番組としては異例の人気となる。 その後、番組はショー化され、ビールは、亡くなったルディに代わる新会長ハケットや、テレビについてもお構いなしに皮肉の対象にして真実を追究し、そしてステージ上で気を失ってしまう。 ハケットは、UBSの黒字転換と、今後も期待できる業績見通しを、CCAのジャンセンに報告する。 シューマッカーは、ルディの葬儀の帰りにクリステンセンと街で出くわし、わだかまりも消えた今、付き合いたいことを彼女に伝える。 その後、二人の関係は続き、シューマッカーは妻ルイーズ(ベアトリス・ストレイト)にそれを告白する。 ルイーズは取り乱して夫を追い出そうとするが、後悔するのを承知で、クリステンセンの元に向かおうとする彼が、必ず戻るだろうとも考える。 ロサンゼルス。 その頃、ビールは番組の中で、CCAがサウジアラビアの企業体に買収されるという情報を話してしまう。 さらにビールは、アラブ人に国を売ることになる行為を阻止するため、”ホワイトハウス”に100万通の電報を送ろうなどとまで言い始め、視聴者を扇動する。 身の破滅を悟ったハケットは、チェイニーやクリステンセンの前で、ビールに対し殺意まで感じていることを伝える。 CCAのジェンソンはビールと会い、世の中は全てビジネスだという”企業世界論”を伝える。 ビールには、その話が神の啓示のように思え、翌週の番組でそれを聴衆に伝え、”非人間化”についてを延々と語る。 しかし、それは大衆受けすることなく、その後、番組の視聴率と占拠率が落ち始め、クリステンセンは焦る。 シューマッカーは、そんなクリステンセンを見て、家族に後ろめたさを感じながらいる自分を、真剣に愛して欲しいことを伝える。 番組に映像を提供し契約していた、共産主義者である過激派のロリーン・ホブス(マーリーン・ウォーフィールド)も、自分達が不利な立場になることを恐れて、ビールを降板させるようクリステンセンに詰め寄る。 その後、更に視聴率は落ちてしまい、収拾不能な状況に陥ったクリステンセンは、ビーンの降板させるしかないことをハケットに伝える。 クリステンセンの元を去ろうとしたシューマッカーは、自分が唯一、彼女が人間らしさを感じられる、助けになれる男なだけだと悟ったことを伝える。 そして、人の喜びや悲しみに、全く無関心なクリステンセンが接触するものが、全て破壊されるのを見る辛さ、空虚さを伝え、シューマッカーは彼女の元を去る。 ハケットとクリステンセン、そしてチェイニーらは、ジェンセンがビールを降ろすことを認めないことで議論となり、彼の暗殺が検討される。 そして、視聴者の前で、番組に関係していた過激派”世界解放軍”のメンバーに、ビールは暗殺される。 各局は一斉にビールの死を伝える。
...全てを見る(結末あり)
番組を始めたビールは、正気を失った自殺発言についてを語り始める。
UBSの年次総会で、局を救ったクリステンセンの功績は称えられる。
*(簡略ストー リー)
ネットワーク局UBSで、かつて高視聴率を上げていた人気アンカーマンのハワード・ビールは、視聴率低迷を理由に番組降板を告げられる。
しかしビールは、その挨拶を兼ねて登場した番組で、自殺を予告してしまう。
社内は騒然となり、経営不振に喘ぐ中の不祥事に、副会長ハケットは、ニュース部門の責任者マックス・シューマッカーに怒りをぶつける。
大株主の通信会社CCAと、密接な関係を持つハケットは、独断で報道部門の縮小を決めていたため、シューマッカーの反感を買う。
シューマッカーは会社側に不信感を抱いたまま、視聴者に別れを告げると言うビールを番組に出してしまい、会長ルディに責められて辞職を迫られる。
同じ頃、世間の注目を集めるルビーに目を付けた編成部長ダイアナ・クリステンセンは、番組の視聴率が上がったことを確認し、彼を利用することをハケットに提案する。
ハケットが、それに乗ったことを知ったルディは、彼の暴走を止めるためにシューマッカーを引き止めて協力を求める。
現代の預言者、怒りの代弁者となってカメラの前に立つビールの番組は、クリステンセンの考えとは裏腹に視聴率は伸び悩んでいた。
しかし、ある声を聞いたというビールは、それを番組で語り大反響となる。
シューマッカーの、正常だとは思えないビールを気遣う意見は聞き入れられない。
そしてクリステンセンは、番組をシューマッカーから奪い取り、ビールを利用して視聴率のアップを狙うのだが・・・。
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社会性のある作品で定評があるシドニー・ルメットが、テレビ業界の内幕を絡めながら、狂人と化したキャスターを操る人間の愚かさを、痛烈に皮肉った作品。
厳しいビジネスの世界を、凄まじいパワーゲームとして描き、また、その中でただ一人、人間らしさを追い求める男の空虚さを、説得力のあるパディ・チャイエフスキーの脚本と共に、見事に表現したシドニー・ルメットの演出手腕が見ものだ。
衝撃のラスト後に、主人公の死を淡々と伝える報道場面で終わる、登場人物の行く末などを一切語らない幕締めが、一層その空しさを協調している。
善悪は抜きにして、ハリウッドを代表する実力派やベテランの、演技のぶつかり合いは見応え十分だ。
2000年、アメリカ議会図書館が、国立フィルム登録簿に登録した作品で、1970年代を代表する一作に数えられる傑作。
第49回アカデミー賞では、主演男優(ピーター・フィンチ)、主演女優(フェイ・ダナウェイ)、助演女優(ベアトリス・ストレイト)、脚本賞を受賞した。
・ノミネート
作品・監督
主演男優(ウィリアム・ホールデン)
助演男優(ネッド・ビーティ)
撮影・編集賞
助演に近い役柄にも拘らず、ドラマのキーマンとして狂気の男を完璧に演ずるピーター・フィンチが、本作公開の1ヵ月半後に急性心不全で急逝したことが大きな話題になった作品でもある。
ピーター・フィンチは本作の演技によりアカデミー賞を受賞、史上初の死後受賞者となった。
また、彼が発する視聴者へのメッセージ、”I’m as mad as hell, and I’m not going to take this anymore!” (怒りも限界に達した、もう我慢できない!)は、名ゼリフとして今でも語り継がれている。
本作がベスト・パフォーマンスであり、極端に言えば、これがピークであったとも言えるフェイ・ダナウェイの演技は秀逸で、途中、もう一人の主人公であるウィリアム・ホールデンに、人間性を説かれてそれに気づくかと思いきや、ついには”最終手段”で危機を乗り越えようとする、恐ろしいまでの野心家を熱演している。
彼女に、人間らしさを求めても無理だと知りつつも惹かれてしまう、男の弱さを表現し、ただ一人、孤独な友人を人として扱う役柄を見事に演じたウィリアム・ホールデンも素晴らしい。
1970年代に入り、50代にして急激に老けてしまった、当時の彼の体調を気にしながら観たことを思い出す。
利益追求策を推し進め、周囲を振り回す局の副会長(後に会長)ロバート・デュヴァル、社長ウェズリー・アディ、局の大株主で、短い出演ながら大物企業家を迫力で演じて、アカデミー助演賞候補になったネッド・ビーティ、番組のディレクター、ジョーダン・チャーニー、編成部スタッフのコンチャータ・フェレル、会長ウィリアム・プリンス、ニュース部門の責任者の後任役レイン・スミス、こちらも、わずか数分の出演ながら、夫の浮気を知り取り乱す演技だけでアカデミー助演賞を受賞した、シューマッカー(W・ホールデン)夫人ベアトリス・ストレイト、過激派のリーダー、マーリーン・ウォーフィールド、そして、ランス・ヘンリクセンが法律家の役で端役出演している。