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マイ・フェア・レディ My Fair Lady (1964)

1913年に上演されたバーナード・ショーの舞台劇”ピグマリオン”を基に製作された「ピグマリオン」(1938)をミュージカルにした”マイ・フェア・レディ”の映画化。
監督ジョージ・キューカー、主演オードリー・ヘプバーンレックス・ハリソンスタンリー・ホロウェイグラディス・クーパー他共演のミュージカル。

アカデミー賞 ■ ストーリー ■ 解説


ドラマ(ミュージカル)

オードリー・ヘプバーン / Audrey Hepburn 作品一覧
オードリー・ヘプバーン / Audrey Hepburn / Pinterest


スタッフ キャスト ■
監督:ジョージ・キューカー

製作:ジャック・L・ワーナー
戯曲:バーナード・ショーピグマリオン
脚本:アラン・ジェイ・ラーナー

撮影:ハリー・ストラドリング
編集:ウィリアム・H・ジーグラー
美術・装置
ジーン・アレン

セシル・ビートン
ジョージ・ホプキンス
衣装デザイン:セシル・ビートン
音楽:アンドレ・プレヴィン

出演
オードリー・ヘプバーン:イライザ・ドゥーリトル
レックス・ハリソン:ヘンリー・ヒギンズ教授
スタンリー・ホロウェイ:アルフレッド・ドゥーリトル
ウィルフリッド・ハイド=ホワイト:ヒュー・ピカリング大佐
グラディス・クーパー:ヒギンズ夫人
ジェレミー・ブレット:フレディ・アインスフド=ヒル
セオドア・バイケル:ゾルタン・カーパシー
モナ・ウォッシュボーン:ピアス夫人
イソベル・エルソム:アインスフド=ヒル夫人

アメリカ 映画
配給 ワーナー・ブラザーズ
1964年製作 172分
公開
北米:1964年12月25日
日本:1964年12月26日
製作費 $17,000,000
北米興行収入 $72,000,000


アカデミー賞 ■
第37回アカデミー賞

・受賞
作品・監督
主演男優(レックス・ハリソン
撮影(カラー)・美術
(カラー)衣装デザイン(カラー)
録音・音楽賞
・ノミネート
助演男優(スタンリー・ホロウェイ
助演女優(グラディス・クーパー
脚色・編集賞


*詳細な内容、結末が記載されています。
ストーリー ■
ロンドン
音声学者のヘンリー・ヒギンズ教授(レックス・ハリソン)は、街角で花売りをするイライザ・ドゥーリトル(オードリー・ヘプバーン)の、余りに汚い言葉遣い(コックニー)に憤慨して彼女を罵倒する。

しかしヒギンズは、インド語の研究者ヒュー・ピカリング大佐(ウィルフリッド・ハイド=ホワイト)と出くわし、お互いが会おうとしていたことを確認して意気投合する。

ヒギンズに言葉を注意され、彼に言い寄るイライザだったが、彼から小銭を渡され、それで満足してしまう。

飲んだくれの父親アルフレッド(スタンリー・ホロウェイ)に飲み代を渡したイライザは、自分が教えれば、侍女か一流店の店員にもなれると言った、ヒギンズの言葉が気になる。
...全てを見る(結末あり)

そして、ピカリングと意見交換をしていたヒギンズの元にイライザが現れ、一流の花屋の店員になるために、言葉の授業を受けたいと、自分の希望を伝える。

傲慢なヒギンズは、イライザに法外な授業料を提示して彼女を追い払おうとするが、ピカリングが、その費用を賭けようと提案する。

成功すればヒギンズは天才だと言うピカリングは、それが失敗することに賭け、イライザは半年間ヒギンズの屋敷に住み込んで実験を受けることになる。

その後、家政婦のピアス夫人(モナ・ウォッシュボーン)に部屋に案内されたイライザは、無理矢理に入浴させられて大騒動になる。

実験を引き受けたヒギンズだったが、それに関与した責任のあるピカリングは、彼に、イライザには”誠実”に接するようにと忠告する。

好きなように生きるため、女性に左右される生活を嫌うヒギンズは、ピカリングに、自分が独身主義者だと言い切る。

働きもせず、娘イライザの稼ぎを当てにするアルフレッドは楽天家であったため、彼女がヒギンズ邸に世話になっていると聞き一応は喜ぶ。

そして、ヒギンズ邸を訪れたアルフレッドは、イライザを返すように伝えて大演説を始め、権利として5ポンドを要求して、それを受け取り引き上げる。

そんなアルフレッドの雄弁さに感心したヒギンズは、彼をアメリカのある大富豪に紹介しようとする。

何日経っても、母音でさえまともに発音できないイライザに苛立つヒギンズだったが、ピカリングは、気長に訓練を続けるよう彼をなだめる。

しかし、ヒギンズの訓練は日増しに厳しくなり、使用人達も呆れてしまい、イライザも耐え切れなくなる。

ヒギンズは、格調高い”英語”は国民の財産であり、必ずそれを話すようになれると、珍しくイライザを心から励ます。

それを聞いたイライザは、ついに正しい発音を発することが出来るようになり、ヒギンズやピカリングと共に喜ぶ。

これで、人前にイライザを出せると言うヒギンズの言葉に、彼女は夢見心地になりながら眠りにつく。

ヒギンズは、イライザを大使館の舞踏会デビューさせるために、予行演習として、彼女を”アスコット競馬場”に連れて行く。

母親(グラディス・クーパー)に協力を頼んだヒギンズは、貴婦人に変身したイライザとエスコート役のピカリングを迎える。

ヒギンズ夫人は、アインスフド=ヒル夫人(イソベル・エルソム)や、その息子フレディ(ジェレミー・ブレット)にイライザを紹介する。

フレディは一目でイライザが気に入り、彼女はヒギンズの監視の下、好き勝手な会話を始める。

イライザは、所々で相応しくない言葉を話し、ヒギンズやピカリングを冷や冷やさせる。

そしてレースが始り、興奮したイライザはついに下品な言葉を大声で発してしまう。

ヒギンズは、最初のテストにしてはまずまずといったところだと判断するが、母親のヒギンズ夫人は、見込み無しと決め付けてしまう。

恥をかいたイライザの心は痛み、彼女を忘れることが出来ないフレディが訪れても、会う気になれなかった。

舞踏会まで6週間に迫り、ピカリングはイライザが全てをマスターするのを無理だとして、賭けを降りようとしながらその当日を迎える。

ピカリングは、直前になっても、イライザを人前に出すのに否定的な意見をヒギンズに伝える。

しかし、ドレスに身を包み、落ち着き払ったイライザを見たピカリングは、ため息を漏らす。

トランシルヴァニア大使館主宰の同国女王と皇太子を招いた舞踏会会場で、ヒギンズは教え子でもあるハンガリー人の音声学者ゾルタン・カーパシー(セオドア・バイケル)に再会する。

語学を鼻にかけるスパイのようなカーパシーは、ヒギンズとピカリングに同行する、イライザの素性を探るようにとある貴婦人に依頼される。

早速イライザに近づこうとするカーパシーを、彼女から引き離したヒギンズは、女王から声をかけられたイライザが、一気に注目の的となったのをピカリングと確認する。

そしてイライザは、女王の指名で皇太子と踊り舞踏会が始る。

イライザに隙のないことを悟ったヒギンズは、カーパシーを彼女と踊らせる余裕を見せる。

帰宅したヒギンズとピカリングは、見事にイライザを貴婦人に仕立て上げることに成功し、勝利に酔いしれる。

しかし、役目の終わったイライザは、今後の自分を考えると不安でならない。

そんなイライザにヒギンズは、好きな人生を送ればいいと心無い言葉しかかけないでいた。

屋敷を出たイライザは、毎日外で彼女を待ち、手紙を書いていたフレディと、以前花売りをしていた場所へ向かう。

その場の労働者は、イライザを見て口々に”レディ”と呼ぶのだが、彼女は以前の自分を懐かしむ。

そこに、パブから出てきた、身なりのいい父親アルフレッドが現れる。

アルフレッドはイライザに気づくと、自分が、アメリカ人の富豪である、道徳改善教会の創設者から、イギリス一の独創的道徳家として評価され、遺産を年に1000ポンドも残されていたことを彼女に伝える。

たかりの生活から、たかられる立場になり、窮屈な人生を送るアルフレッドは、イライザに不満を漏らす。

アルフレッドは、イライザをヒギンズに押し付けられたと思い込み、彼女を突き放してしまう。

そしてイライザは、父アルフレッドに別れを告げて、フレディと共にその場を去る。

そしてアルフレッドは、望みもしない結婚式に向かう。

翌朝、イライザがいないことに気づいたヒギンズは、どうして彼女が出て行ったのか、女心を理解できずにいた。

ヒギンズ夫人の屋敷を訪ねたイライザは、彼女に家出した理由を話し、夫人も息子のわがままに呆れてしまう。

そこにヒギンズが現れ、彼は依然イライザを恩知らず呼ばわりする。

それに対してイライザは、自分を”レディ”にしてくれたのは、花売り娘扱いしなかった、ピカリングのお陰だったと夫人に話す。

負けじと反論するヒギンズだったが、自分がイライザ無しで生きていけるのかと、素直な気持ちを語り始める。

それが”楽しいから”と言うヒギンズに、イライザは優しい接し方を求める。

さらに、イライザも、ヒギンズとの生活は楽しかったと語り、好意も感じていることを伝える。

イライザは、それでも気持ちを変えないヒギンズに愛想を尽かし、フレディと結婚することを告げ、カーパシーの助手にまでなると言い出す。

ヒギンズとの生活で、人間としても成長したイライザは、完全に彼の心を手中にして勝ち誇る。

それでも、一人で輝く人生を送るというヒギンズの元からイライザは去っていく。

しかし、ヒギンズ夫人は、イライザが息子の心を射止めたことを理解する。

大見得を切ったヒギンズだったが、イライザのことが忘れられず、彼女が生活の一部になっていたことに気づく。

帰宅したヒギンズは、彼女の訓練や全てが懐かしく、また愛しく思う。

そして、屋敷に戻ったイライザに気づいたヒギンズは安堵するが、”スリッパはどこだ”と、精一杯の強がりを見せる。


解説 評価 感想 ■

*(簡略ストー リー)
傲慢で女性を蔑視する音声学者ヘンリー・ヒギンズ教授は、”コックニー”訛りのある花売り娘イライザ・ドゥーリトルを罵倒する。
それがきっかけで、ヒギンズはイライザを貴婦人にする実験を始め、礼儀作法などを教え込む。
ヒギンズは、育ちの悪いイライザの教育に苦労しながら、彼女を貴婦人にすることに成功し、社交界にデビューさせる。
しかし、ヒギンズが、人や女性として自分を扱わないことにイライザは心を痛め、彼の元を去ってしまう・・・。
__________

原作は、1913年に初演されたバーナード・ショーの舞台劇”ピグマリオン”であり、1938年のアンソニー・アスキンレスリー・ハワード監督による「ピグマリオン」として映画化された。
ブロードウェイで1956年3月15日に初演され7年半にも及ぶロングランを記録した、当時の最大のヒット作となった””マイ・フェア・レディの映画化。

舞台のオリジナルキャストである、レックス・ハリソンスタンリー・ハロウェイが、そのまま出演している。

ジョージ・キューカーの、無駄のない、研ぎ澄まされた演出は冴え、奥行きのある大掛かりなセットや、絢爛豪華な衣装も楽しめる。

コメディ要素の強いストーリー展開などで、3時間弱の長編でも全く飽きが来ない。

お馴染みの、アンドレ・プレヴィンの楽曲、オリジナル・ナンバーも素晴らしい。

当時としては破格の製作費1700万ドルをかけた大作で、北米興行収入は7200万ドルという記録的な大ヒットとなった。

第37回アカデミー賞では12部門でノミネートされて、作品、監督、主演男優(レックス・ハリソン)、衣装デザイン(カラー)、撮影(カラー)、美術(カラー)、録音、音楽賞の8部門を受賞した。
・ノミネート
助演男優(スタンリー・ハロウェイ
助演女優(グラディス・クーパー
脚色、編集賞

ジョージ・キューカーにとっては5度目のノミネートであり、ついに本作で監督賞を受賞した。

最も話題になったことは、舞台でイライザを演じていたジュリー・アンドリュースを、ネームヴァリュー問題でオードリー・ヘップバーンに入れ替えたことだ。
歌手が本業でないヘップバーンは、マーニ・ニクソンの吹き替えに頼ることになり、結局これが徒となったのか、熱演にも拘らずアカデミー賞ではノミネートすらされなかった。
更に、なんとハリウッドでの知名度を疑われ、役を取られたジュリー・アンドリュースが、対抗作の「メリー・ポピンズ」(1964)の演技でアカデミー主演賞を獲得するという、皮肉な結果となった。

そこで気になるのが、ヘップバーンの歌唱力の問題。
大女優の吹き替えで有名なマーニ・ニクソンの声は素晴らしいのだが、鼻にかかるようなヘップバーンの声に合わない気がする。
その後の改訂版などでは、”Just You Wait”を歌うヘップバーンの歌声を聴くことができる。
その場面をじっくり観察していると、突然M・ニクソンの声に変わってしまい、違和感を感じる。
個人的な意見としては、役柄を考えるとそこまで完璧な歌唱力が必要だったのかとも思えるのだが・・・。
ヘップバーンの好演や美しさを考えると、彼女が全てを歌った方が良かったのではないかとも考える。

また、この役を映画版でもジュリー・アンドリュースが演じていたとしたら、間違いなく「メリー・ポピンズ」(1964)を抑え、彼女がオスカーを獲得したとも思う。

興味深いのは、”アスコット競馬場”のレースシーンで、右回りのはずが、なぜか左回りのアメリカ・スタイルで撮影されていることだ。
アングルや構成を考えてのことだったのか、アメリカ映画だと主張したかったのか、または全く意識していなかったの・・・。
細かいことだが気になってしまった。

見事にアカデミー主演賞を獲得した、役を知り尽くしている、はまり役のレックス・ハリソンの熱演は圧巻で、上流階級で博学だが偏屈で傲慢、しかし、どこか憎めない人間味あるキャラクターは、彼のイメージに見事にマッチしている。

イライザの父親で好き勝手に人生を楽しむスタンリー・ホロウェイ、ヒギンズの傍らで冷静に”実験”を見守る、女性に好かれる紳士の見本のような大佐ウィルフリッド・ハイド=ホワイト、ヒギンズの母親グラディス・クーパー、イライザに恋焦がれる上流階級の青年ジェレミー・ブレット、ヒギンズの教え子で強かな音声学セオドア・バイケル、ヒギンズ邸の家政婦モナ・ウォッシュボーンなどが共演 している。


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