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ミュンヘン Munich (2005)

1984年に発表された、ジョージ・ジョナスの小説”標的(ターゲット)は11人 モサド暗殺チームの記録”を基に製作された作品。
ミュンヘンオリンピック開催中に起きたパレスチナの過激派組織によるイスラエル選手団人質殺害事件に対するイスラエル側のモサド極秘抹殺チームの報復作戦を描く、製作、監督スティーヴン・スピルバーグ、主演エリック・バナジェフリー・ラッシュダニエル・クレイグ他共演の社会派サスペンス。

アカデミー賞 ■ ストーリー ■ 解説


ドラマ(社会派)

スティーヴン・スピルバーグ / Steven Spielberg 作品一覧


スタッフ キャスト ■
監督:スティーヴン・スピルバーグ

製作
スティーヴン・スピルバーグ

キャスリーン・ケネディ
バリー・メンデル
コリン・ウィルソン
原作:ジョージ・ジョナス
脚本
トニー・クシュナー

エリック・ロス
撮影:ヤヌス・カミンスキー
編集:マイケル・カーン
音楽:ジョン・ウィリアムズ

出演
エリック・バナ:アヴナー・カウフマン
ジェフリー・ラッシュ:エフライム
ダニエル・クレイグ:スティーブ
マチュー・カソヴィッツ:ロバート
キーラン・ハインズ:カール
ハンス・ツィシュラー:ハンス
イヴァン・アタル:トニー
ギラ・アルマゴール:アヴナーの母親
アイェレット・ゾラー:ダフナ・カウフマン
マイケル・ロンズデール:パパ
マチュー・アマルリック:ルイ
モーリッツ・ブライプトロイ:アンドレアス
ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ:シルヴィー
マリ=ジョゼ・クローズ:ジャネット
リン・コーエンゴルダ・メイア

アメリカ 映画
配給
ユニバーサル・ピクチャーズ(北米)
ドリームワークス/UIP(世界)
2005年製作 163分
公開
北米:2005年12月23日
日本:2006年2月4日
製作費 $75,000,000
北米興行収入 $47,379,100
世界 $130,358,910


アカデミー賞 ■
第78回アカデミー賞

・ノミネート
作品・監督・脚色・編集・作曲賞


*詳細な内容、結末が記載されています。
ストーリー ■
1972年9月5日、ミュンヘンオリンピックの開催中。
パレスチナの過激派組織”黒い九月”のメンバー8名が、オリンピック村のイスラエル選手団2名を殺害し、9人を人質に選手村に立てこもり、イスラエルに収監されている234人のパレスチ人解放を求める。

イスラエル側は、自国軍隊派遣を西ドイツ(当時)に打診するが、法律上の問題で西ドイツはそれを拒否し、自国で処理しようとする。

長時間の交渉の末、犯人らをエジプトカイロに脱出させることに同意し、当局は、彼らと人質を空港に移送することになる。

実はそれは表向きの行動で、 西ドイツ側は犯人殺害を計画する。

しかし、計画は失敗に終わり、人質9人は全員死亡、犯人は3名が逃走を図るが逮捕される。
...全てを見る(結末あり)

イスラエル
首相ゴルダ・メイア(リン・コーエン)は、パレスチナゲリラ基地空爆では手ぬるいという、側近の意見に同調する。

メイアは、平和を忘れ自分達の強さを示すため、首謀者アリ・ハッサン・サラメ他の抹殺報復強行作戦(神の怒り作戦)実行を決定する。

モサド(イスラエル諜報特務庁)の元警護官であるアヴナー・カウフマン(エリック・バナ)は、首相ゴルダ・メイアに呼ばれ、数年間、祖国及び家族と離れることになる、 危険を伴う極秘任務を言い渡される。

決断猶予一日で、それを受けることに同意したアヴナーは、作戦の工作管理官エフライム(ジェフリー・ラッシュ)との契約を済ませる。

そしてアヴナーは、ミュンヘン事件に関与した、11人のパレスチナ人の抹殺を、4人の各分野のプロと共に行動するよう、エフライムから命ぜられる。

アヴナーは、モサドを一旦、辞めさせられ、身元不明者に成りすまして、車のプロのスティーヴ(ダニエル・クレイグ)、爆弾の専門家ロバート(マチュー・カソヴィッツ)、文書偽造のハンス(ハンス・ツィシュラー)、そして暗殺後の死体処理係カール(キーラン・ハインズ)らと合流し、提供された豊富な資金を使い情報を収集する。

そして、ターゲットの一人をイタリアローマで見つけたアヴナーは、くじ引きで決まったロバートと殺害を実行しようとする。

最初の仕事に、二人はナーバスになり動揺するものの、暗殺には成功する。

続いてアヴナーは、フランスパリで正体不明の情報提供者ルイ(マチュー・アマルリック)と接触する。

同じ頃、ミュンヘン事件の実行犯の3人が、ハイジャック事件で釈放されたことも知る。

ジャーナリストを装い、第2のターゲットに接触したロバートは、電話機に爆弾を仕掛ける下調べをする。

その後ロバートは、アヴナーとカールと共にそのアパートに侵入し、爆弾仕掛けの電話機とすり替える。

爆破実行の時が近づき、アヴナーとカールは、ターゲットの娘が電話の受話器を上げようとしているのに気づく。

一旦、爆破を中止し、その後、予定通り爆破は実行されるものの、爆薬の威力が小さく、ターゲットは負傷に終わる。

その結果、ロンドンパレスチナ側(黒い九月)の報復事件が起きてしまう。

アヴナーは妻ダフナ(アイェレット・ゾラー)の出産のため、極秘にイスラエルに戻り、 ダフナと子供をニューヨークに移そうとする。

チームは次なるターゲットを追いキプロスに向かい、アヴナーがホテルの部屋をとる。

ベッドに仕掛けた爆弾で、隣の部屋のターゲットを殺す計画は、アヴナーが合図することになる。

準備は整い、カールは、アヴナーに子供が生まれたことを祝福し、入院中だった第2のターゲットが死亡したことを伝える。

そして爆破は実行されるが、今度はロバートの設置した爆弾の威力が大きすぎて、アヴナーは、危うく命を落としかけてしまう。

ロバートは、爆薬を調達したルイによって、それがすり替えられたと主張し、彼を疑い始める。

エフライムは、情報提供者(ルイ)の名前を吐くようアヴナー達に言い寄る。

しかし、アヴナーらが口を割らないまま、情報収集のためにベイルート行きを望む彼らの意見を、イスラエル国防軍のコマンド部隊を同行させることを条件に、エフライムは聞き入れることにする。

ベイルート
アヴナーらは、でコマンド部隊と合流して、パレスチナ人のリーダーのアジトを襲撃して3人を殺す。

その後も、敵側と激しい戦闘を繰り広げたアヴナーらは、無事目的を達成する。

パリでルイと接触したアヴナーは、彼の父で、闇組織の黒幕パパ(マイケル・ロンズデール)に会うことになる。

パパの協力を得られることになったアヴナーは、ルイから、”黒い九月”とKGBの連絡員が、アテネに居るという情報を得る。

ルイに提供された宿舎に着いたアヴナーらは、その夜、4人のPLO(パレスチナ解放機構)メンバーが部屋に入ってくるのに気づき、 両者銃を構えて一触即発となる。

しかし、ロバートが、自分達はETA(バスク祖国と自由)、RAF(ドイツ赤軍)、ANC(アフリカ民族会議)メンバーだと相手に伝え、事態は収まる。

次のターゲットの爆殺が実行されるが爆破に失敗して、ハンスが手榴弾で目標を爆破する。

アヴナーは、ロシア人と接触していたパレスチナ人と銃撃戦になり、PLOのリーダーをカールが射殺して逃げ延びる。

ロバートは、失敗を続ける爆破作業を非難され、自分が爆弾解体が専門だということを暴露する。

ルイは、ミュンヘン事件の首謀者サラメロンドンに居ることと、彼がCIAの手先だということもアヴナーに知らせる。

アヴナーらは、サラメを追いロンドンに向かうが、CIAだと思われる男達の妨害に遭う。

その後アヴナーは、ホテルのバーでジャネット(マリ=ジョゼ・クローズ)に誘惑されるものの、それを断る。

ダフナに電話をかけたアヴナーは、成長した娘の声を聞き涙する。

カールは、バーで会ったジャネットの誘惑に負け、その後、死体で発見される。

そして、パパとルイの情報で、ジャネットがオランダ人の殺し屋だと分かり、アヴナーらは、容赦なく彼女を抹殺する。

数ヶ月の間にターゲットを次々と殺し、アヴナーをはじめメンバーらが、その重圧や、任務に対する道徳性などに疑問を抱きだした頃、ハンスが何者かに刺殺され、その後、ロバートは爆殺される。

アヴナーは自分にも襲い掛かる危険を察知し、精神的に追い込まれていくが、サラメを殺せば、家族の元に戻れることも事実だった。

スペインに滞在する、サラメの住居を突き止めたアヴナーとスティーヴは、その敷地内に侵入するが、 警備員に発見されて、その場から逃走する。

作戦の終わりを迎え、エフライムの元に向かったアヴナーは、情報源ルイが敵側に彼らを売り、メンバー3人が死亡したと伝えられる。

それを信じないアヴナーは、エフライムに、この作戦で知り得た情報を話すよう強要されるが、彼はそれを拒む。

息子の憔悴した顔に、アヴナーの母(ギラ・アルマゴール)は、彼がしたことには興味を示さず、ただ国のために尽くしたと彼を励ます。

ニューヨークでの休養後、任務に復帰するようエフライムに言われたアヴナーは、それを断り妻子の元に急ぐ。

アヴナーは、妻子に会っても精神的な苦しみから抜けられず、フランスのパパに連絡を取り、自分が狙われているのかを問い質す。

パパから、危険は及ばないことを確認したアヴナーだったが、家族の危険を感じ、イスラエル領事館に押し入り、取り押さえられてしまう。

アヴナーは、自分を連れ戻しにきたエフライムに、平和を求める方法に疑問を投げかけ、帰国要請を拒む。

遠い祖国から訪れたエフライムを夕食に招いたアヴナーは、友好的な話し合いを提案するのだが、それを断られる。


解説 評価 感想 ■

*(簡略ストー リー)
1972年9月5日。
ミュンヘンオリンピック開催中、イスラエル選手団11人が、パレスチナの過激派組織”黒い九月”に殺害される事件が起きる。
強硬姿勢をとるイスラエルゴルダ・メイア首相は、首謀者サラメを含めた、関与した者達の抹殺を指示する。
そのために組織された極秘抹殺チームのリーダーで、モサドに所属するアヴナー・カウフマンは、名誉ある任務を遂行していくのだが、彼はそれが、平和への解決策なのかに疑問を持ち始める・・・。
__________

シンドラーのリスト」(1993)、「プライベート・ライアン」(1998)に続く、スティーヴン・スピルバーグの歴史的事実を基に脚色された作品で、リアルな映像や報復工作などの描き方が、物議を呼び話題になった作品。

第78回アカデミー賞では、作品、監督、脚色、編集、作曲賞にノミネートされた。

北米興行収入は約4700万ドルに留まったが、全世界では約1億3000万ドルのヒットとなった。

平和の祭典オリンピック開催中に起きた歴史的事件の背景に潜む、イスラエルパレスチナの問題を、どちらかに偏っているのではなく、両者を批判した描き方になっている。

イスラエルモサド側は、当然この内容を批判し、報復作戦自体を否定し、テロ防御作戦だったことを主張している。

また、ラストで登場する2001年の同時多発テロで崩壊した世界貿易センタービルのCG映像も、イスラエルとそのテロを混同しているとの抗議が多数あったのも事実だ。

確かにやや押し付けがましい演出、映像ではある。

ジョン・ウィリアムズの音楽は、「シンドラーのリスト」(1993)を思い起こさせる楽曲だが、主人公の心情、国家民族の埋まらない深い溝を表現する、もの悲しいテーマ曲は心に残る。

冒頭でミュンヘン事件があっさりと描かれているが、主人公が作戦計画に疑問を持ちはじめるとともに、フラッシュバックで、その詳細映像が挿入されていく演出及び編集は実に見事だ。

父の後を継ぎ優秀な諜報工作員となるが、国家や家族のために就いた任務に次第に疑問を抱きはじめ、その結果、任務遂行後に”英雄”と呼ばれながらも心に深い傷を負う主人公をエリック・バナは好演し、終盤の生気を失った表情が非常に印象的だ。

ラストで、主人公からの友好的な話し合いをきっぱり断り、国家の強行姿勢を象徴的に演ずるモサドの工作管理官ジェフリー・ラッシュ、本作での印象的な演技により、翌年「カジノ・ロワイヤル」(2006)でブレイクする、報復チームでただ一人、最後まで平常心を保つダニエル・クレイグ、爆弾の解体専門技師だった、最終的には爆殺されるマチュー・カソヴィッツ、クールでスマートな死体処理係だが、女殺し屋の罠にはまるキーラン・ハインズ、冷酷さを漂わせながら任務をこなす文書偽造のプロ、ハンス・ツィシュラー、闇社会の黒幕マイケル・ロンズデールと強かなその息子マチュー・アマルリック、主人公の母親ギラ・アルマゴールと妻アイェレット・ゾラー、”神の怒り作戦”を実行する首相ゴルダ・メイア役のリン・コーエン、女殺し屋マリ=ジョゼ・クローズなどが共演している。


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