ルイス・R・フォスターの原作を基に製作された作品。 フランク・キャプラ(製作、監督)による、政治腐敗を鋭く皮肉った人情喜劇と社会派ドラマを併せ持つ傑作ドラマ。 主演ジェームズ・スチュワート、ジーン・アーサー、クロード・レインズ、エドワード・アーノルド、トーマス・ミッチェル、ハリー・ケリー共演。 |
・ジェームズ・スチュアート / James Stewart / Pinterest
■ スタッフ キャスト ■
監督:フランク・キャプラ
製作:フランク・キャプラ
原作:ルイス・R・フォスター
脚本:シドニー・バックマン
撮影:ジョセフ・ウォーカー
美術・装置:ライオネル・バンクス
編集
ジーン・ヘイヴィック
アル・クラーク
音楽:ディミトリ・ティオムキン
出演
ジェファーソン”ジェフ”スミス:ジェームズ・スチュワート
クラリッサ・サンダース秘書:ジーン・アーサー
ジョセフ・ハリソン・ペイン上院議員:クロード・レインズ
ジム・テイラー:エドワード・アーノルド
ヒューバート”ハッピー”ホッパー州知事:ガイ・キビー
ディズ・ムーア:トーマス・ミッチェル
上院議長:ハリー・ケリー
チック・マクギャン:ユージン・パレット
ノージィ:チャールズ・レイン
アグニュー上院議員:H・B・ワーナー
スーザン・ペイン:アストリッド・オールウィン
ケネス・アレン:ラッセル・シンプソン
スウィーニー・ファレル:ジャック・カーソン
スミスの母:ビューラ・ボンディ
アメリカ 映画
配給 コロンビア・ピクチャーズ
1939年製作 124分
公開
北米:1939年10月19日
日本:1941年10月9日
製作費 $1,500,000
■ アカデミー賞 ■
第12回アカデミー賞
・受賞
原作賞(ルイス・R・フォスター)
・ノミネート
作品・監督
主演男優(ジェームズ・スチュワート)
助演男優(クロード・レインズ/ハリー・ケリー)
脚本・編集・作曲・録音・美術賞
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
地元上院議員が死亡し、彼をうまく利用していたジョセフ・ペイン上院議員(クロード・レインズ)と財界の大物ジム・テイラー(エドワード・アーノルド)、ヒューバート・ホッパーミシシッピ州知事(ガイ・キビー)、チック・マクギャン(ユージン・パレット)の周辺は慌しくなる。
ペインらは、テイラーの息のかかった人物を後任候補にしようとするが、ホッパー知事が、それがうまくいきそうにないことをテイラーに報告する。
悩むホッパー知事は家族との食事の際に、子供達からもテイラーの暴挙を非難されてしまう。
そんな子供達は、少年警備隊団長ジェファーソン・スミス(ジェームズ・スチュワート)を上院議員に推薦する。
子供のたわ言と、それに聞く耳を持たないホッパー知事だったが、スミスの人気を新聞で知り、彼を後任にすることを決定する。
それに反対するテイラーだったが、政治には全く縁の無い素人だからこそ自分達が思うままに操れると、知事はテイラーを説得し、ペインやマックギャビンもスミスを担ぎ出すことに賛成する。 彼らは、スミスの子供じみた理想主義を煽って、自分達の私利私欲のために利用しようとしたのだ。 その昔スミスの父は、新聞記者として、ペインと共に不正に立ち向かい凶弾に倒れた人物で、そんな旧友の息子を利用するのを心苦しくも思うペインだった。 そしてスミスは、ペインとマクギャビンと共に、希望に燃えてワシントンD.C.に到着する。 駅でペインと別れたスミスは、マクギャビンを置き去りにして市内見物を始めてしまう。 ペインらに、スパイとして送り込まれた秘書のクラリッサ・サンダース(ジーン・アーサー)は、スミスの行方を捜す。 スミスは、議事堂や”リンカーン記念館”を見た感激を、サンダースや彼女に恋心を抱く、そこに居合わせた記者ディズ・ムーア(トーマス・ミッチェル)に話す。 カルチャーショックに似た思いで興奮するスミスを、愛国者ぶった若造としか見ないサンダースは、先が思いやられる。 自棄になったサンダースは、ペインに辞表を突き出すついでに、特ダネを狙う記者ノージィ(チャールズ・レイン)ら多数の記者と、スミスを合わせる約束をしてしまう。 スミスの奇行はワシントンD.C.の評判となり、それを知ったペインは、辞表を出そうとするサンダースを引き止め、初登院のため、上院本会議場にスミスを連れて行くよう指示する。 本会議場に着き、席に案内されたスミスは、上院議長(ハリー・ケリー)が手際よく議事を進めるのを、緊張気味に見つめる。 そしてスミスは、ペインの発言により承認のため宣誓しようとする。 しかし、ゴシップ・ネタになっているスミスは、議員としての品格を問われてしまう。 スミスに、議員として承認されてもらわなくては困るペインは、すかさず表面上彼を擁護する。 そして、無事に議員として承認されたスミスは、自分をネタに記事を書いた記者らを殴り倒し、真実を伝えるよう迫る。 初日から力み過ぎに見えるスミスを、政治記者ムーアはリラックスさせる。 その後、ペインとテイラーらが結託して進める、ダム建設の法案を、スミスが詳しく調べ上げたいと言い出す。 焦ったペインはスミスに、少年キャンプ場を作る法案に専念することを勧める。 ペインの娘スーザン(アストリッド・オールウィン)に心惹かれたスミスだったが、彼女は、バカ正直な彼に興味がなかった。 スミスは早速、サンダースから法案の作成から提出、さらに、それが検討され承認されるまでの複雑な仕組みを教えられ、彼女の協力で仕事に取り掛かる。 そんな時サンダースは、ペインに利用されているとも知らずに、彼を尊敬して理想を語るスミスの情熱に心打たれる。 ペインやテイラー、そしてマクギャンが絡むダム建設の予定地に、スミスが、キャンプ場を作ろうとしていることを知ったサンダースは、議会で、面白いことが起こるとムーアに耳打ちする。 緊張しながら、法案提出の演説を始めたスミスだったが、案の定、ペインとマクギャンは、その予定地を聞き慌ててしまう。 対策を練るペインは、マクギャンから、スーザンを使うことを提案される。 思わぬ反響に気を良くしたスミスは、サンダースに礼を言うが、彼女は、スーザンがスミスを罠にかけようとしていることを知ってしまう。 スーザンに、パーティーのエスコートを頼まれたスミスは夢見心地になる。 サンダースは、卑劣な手を使うペインやスーザンに腹を立てる。 そしてサンダースは、愚痴をこぼしながら、酔った勢いでムーアに結婚を迫り、スミスの秘書を辞める決心をする。 サンダースはオフィスに戻り、パーティーを終えたスミスに、ダム建設予定地の件とテイラーの陰謀を知らせる。 ムーアと牧師捜しに向かおうとしたサンダースは、強がりを言ってはいるものの泣き出してしまい、その気持ちを察したムーアは、彼女を家に送る。 スミスは、ダム建設と”テイラーの陰謀”についてをペインに問い質すが、彼は白を切り、マクギャンがテイラーに連絡を入れる。 テイラーは、スミスを推薦したホッパー知事を責め、対策を練るために、急遽ワシントンD.C.に向かう。 スミスを潰すために強引な手段をとろうとするテイラーを見て、ペインはこの一件から手を引こうとする。 テイラーは、利権が絡む、この計画に加担したペインを脅そうとする。 スミスを好青年だと認めるペインは、手加減することを条件にテイラーの行動に同意する。 テイラーはスミスと面会し、彼を仲間に引き入れようとするが、スミスは、ペインが彼の手下だと知りショックを受ける。 ペインのオフィスに向かったスミスは、大人の世界では妥協が必要だと、自分を認めながらも子ども扱いする、理想を失ったペインに幻滅してしまう。 スミスは、議会でダム法案に関する質問を始めるが、ペインが割って入り、彼を追放するべきだと発言する。 異様なムードとなった本会議場はただらぬ事態になり、議員や記者達が集まってくる。 少年キャンプ場予定地を、寄付金で購入すると言ったスミスだったが、実はその土地は彼の私有地であり、個人的な利益のために法案を提出したとペインは言い張る。 ペインは更に、スミスの議員としての適性検査を要請し、汚職議員として追求し始めてしまう。 公聴会に呼ばれたホッパー知事は、テイラーが差し向けたケネス・アレン(ラッセル・シンプソン)と手を組み、スミスの私有地に関する契約書を捏造して提出する。 後ろめたさを感じながらも、スミスを陥れようとするペインは、圧倒的な優位に立ったテイラーらの浮かれる姿を見ても喜ぶ気になれない。 一方、ワシントンD.C.を去ろうとするスミスは、絶望の余り、リンカーン記念館で涙を流す。 そこに現れたサンダースは、スミスを見捨てられず、彼を励まし、議会発言で反撃に出る準備を始める。 そして議会は始まり、自分を追放させる採決を求める議員達に対し、スミスは議長に発言を求める。 公平に議会を進行する議長は、スミスの発言を認め、彼は不正を正す正義のため発言を始める。 発言権を譲る必要がないことをサンダースから聞いていたスミスは、他の議員に発言を譲ろうとしない。 自分が罠にかけられたというスミスは、発言ではない抗議をペインから受ける。 ペインはあらゆる悪態をついて、ついには本会議場から姿を消してしまう。 発言を止めないスミスに対し、議員らもペインに続き席を立つ。 しかし、スミスは全く動ずることなく、長期戦のために水筒や食事を用意し、議長と差し向かいで発言を続ける。 スミスは、傍聴席のサンダースの指示で、議会法により、議員を席に着かせることが出来ることを申し出て議長はそれを命ずる。 そして、ムーアやスウィーニー・ファレル(ジャック・カーソン)ら記者達は、久し振りの特ダネに興奮する。 手を尽くしたペインだったが、テイラーはスミスの息の根を止めさせる裏工作を始め、ペインを議会に戻す。 テイラーはマスコミを利用しスミス批判を始めるが、起立している限りスミスの発言を止めることが出来ず、議員達は体力勝負となる。 発言開始から7時間が過ぎ、議員から翌日まで休息を取る提案が出るが、スミスは再開後、議長が認めない限り発言が出来ないことを確認し、休息を拒否して発言を続ける。 スミスは、サンダースからの言伝を受け取り、記者達が自分を支持していることと、彼女からの”愛している”という言葉に勇気付けられる。 そしてスミスは、”アメリカ合衆国憲法”の朗読を始める。 しかし、ムーア達の必死の取材にも拘らず、テイラーの妨害で、一切ニュースが報道されないことをサンダースは知らされる。 サンダースは、スミスの母親(ビューラ・ボンディ)に連絡して、少年新聞の編集部に記事を送り新聞を発行させる。 翌朝、倒れそうになりながらも発言を続けるスミスのために、夜を徹して発行した新聞を子供達が配り始める。 テイラー側は容赦なくそれを妨害し、各地はスミス擁護派と反対派の衝突が起きる。 そしてついに、子供達の乗った車までが襲われてしまい、スミスの母親は、それをサンダースに知らせ、スミスの発言を止めさせるしかなくなってしまう。 気力を振り絞り、丸一日近く発言を続けたスミスに対し、ペインは5万通にも及ぶ、彼に対する地元の非難の声を提出する。 電報を見たスミスは、それがテイラーの仕掛けた罠だと知りながら、正義を信じ父と共に闘ったはずのペインに絶望する。 自分一人でも諦めないことを誓いながら、スミスは、ついに倒れてしまう。 スミスは無事だったが、それを見たペインは、良心の呵責を感じて耐え切れず、自殺を図り全ての不正を暴露する。 そして、大混乱になった議会を仕切ろうとする議長は、満足気に笑みを浮かべながら議場を見つめる。
...全てを見る(結末あり)
本会議場に見学に来ていた子供達は歓声を上げ、自信がついたスミスに議員らも拍手を贈る。
*(簡略ストー リー)
地元上院議員が死亡し、彼を利用していた同僚議員ペインと財界の大物テイラー、ホッパー知事らの周辺は慌しくなり、彼らは、息のかかった人物を後任候補にしようとする。
人選が難航する中、ホッパー知事の提案で、ペインらは、政治には全く縁の無い素人で、子供達の信頼だけがとりえの、少年警備隊団長ジェファーソン・スミスを、上院議員に推薦する。
ペインらは、スミスの子供じみた理想主義を煽り、自分達の私利私欲のために、彼を利用しようとする。
かつて、スミスの父と共に新聞記者として不正に立ち向かったペインは、旧友の息子を利用することを、心苦しくも思う。
そしてスミスは、ペインらと共にワシントンD.C.に到着する。
ペインは、秘書のサンダースをスパイとして送り込みスミスを監視させる。
そしてスミスは、何も知らないまま、希望に燃えて職務を果たそうとするのだが・・・。
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1989年、アメリカ議会図書館が、国立フィルム登録簿に登録した作品でもある。
第12回アカデミー賞では作品賞以下10部門にノミネートされ、ルイス・R・フォスターが原作賞を受賞した。
・ノミネート
作品、監督、
主演男優(ジェームズ・スチュワート)
助演男優(クロード・レインズ/ハリー・ケリー)
脚本、編集、作曲、録音、美術賞
子供のリーダーを上院議員にするという奇抜なアイデアや軽快なストーリー展開、主人公の誠実さや、笑いの中に、世の中にはびこる不正や汚職に立ち向かうことの尊さを描く、フランク・キャプラのメッセージがよく伝わってくる作品。
当時、上院議員の間から、リアリティーに欠けてばかばかしい作品と、さかんに揶揄されたようだが、大衆からは大絶賛されたのは当然だろう。
テンポのよい場面展開を、効果的に盛り上げる、ディミトリ・ティオムキンの音楽も実に心地よい。
好感度抜群のジェームズ・スチュワートの、人間味溢れる熱演は、全ての人に感動を与える。
前年の「我が家の楽園」(1938)同様、ジーン・アーサーとの息の合った共演も見ものだ。
同じ両作で共演のエドワード・アーノルドも、同じような、迫力ある財界の大物を演じている。
影の大物(E・アーノルド)に操られ、旧友の息子を利用してしまう上院議員を好演ずるクロード・レインズも、根は悪人ではないように描かれているところや、思慮深い公正な議長ハリー・ケリーの味のある演技も印象深い。
二人は、揃ってアカデミー助演賞候補になった。
財界の大物の操り人形的な州知事ガイ・キビーとユージン・パレット、主人公らを支える政治記者トーマス・ミッチェル、同じく記者チャールズ・レイン、上院議員のH・B・ワーナー、ペイン(C・レインズ)の娘アストリッド・オールウィン、テイラー(E・アーノルド)の手下役ラッセル・シンプソン、若手記者ジャック・カーソン、スミスの母親役のビューラ・ボンディなどが共演している。
参戦はしていないものの、ヨーロッパでは同じ時期に第二次世界大戦が始まっていることを考えると、アメリカでは、このようなヒューマン・ドラマが、戦中も次々と作られることに驚かされる。