最長在位64年を誇るヴィクトリア女王の秘められた愛の物語を描く、監督ジョン・マッデン、主演ジュディ・デンチ、ビリー・コノリー、ジェラルド・バトラー他共演の歴史劇ドラマ。 |
■ スタッフ キャスト ■
監督:ジョン・マッデン
製作総指揮
ダグラス・レイ
アンドレア・コールダーウッド
レベッカ・イートン
ナイジェル・ウォーレン・グリーン
製作:サラ・カーティス
脚本:ジェレミー・ブロック
撮影:リチャード・グレートレックス
編集:ロビン・セールズ
音楽:スティーヴン・ウォーベック
出演
ヴィクトリア女王:ジュディ・デンチ
ジョン・ブラウン:ビリー・コノリー
ベンジャミン・ディズレーリ:アントニー・シャー
ヘンリー・ポンソンビー:ジェフリー・パーマー
アーチー・ブラウン:ジェラルド・バトラー
ジェンナー医師:リチャード・パスコ
エドワード王太子:デヴィッド・ウェストヘッド
ジェラルド・ヴァレリアン・ウェールズリー:オリヴァー・フォード・デイヴィース
イギリス 映画
配給
ミラマックス
ブエナビスタ
1997年製作 103分
公開
イギリス:1997年9月5日
北米:1997年7月18日
日本:1999年1月
北米興行収入 $9,217,930
■ アカデミー賞 ■
第70回アカデミー賞
・ノミネート
主演女優(ジュディ・デンチ)
メイクアップ賞
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
1864年。
1861年前に、夫アルバート公に先立たれたイギリス国王ヴィクトリア女王(ジュディ・デンチ)は、3年もの間、ワイト島のオズボーン・ハウスで喪に服していた。
憔悴するヴィクトリア女王の身を案ずる側近達は、かつてアルバート公に仕えた、スコットランド人の従僕のジョン・ブラウン(ビリー・コノリー)を女王の愛馬の世話係として呼び寄せる。
オズボーン・ハウスに到着したブラウンは、秘書官ヘンリー・ポンソンビー(ジェフリー・パーマー)から女王に紹介され、彼女の想像以上の悲しみの様子に驚き、余計な言葉をかけてしまう。
従者であるブラウンの弟アーチー(ジェラルド・バトラー)は、女王の側近の言葉に従おうともしなかった兄に驚く。 動揺した女王は、ブラウンを下がらせ席を外してしまうが、彼はそれに動じることもなかった。 その後、ブラウンは庭で女王の愛馬と共に立ち続け、女王の命令でそれを止めるようポンソンビーが彼に注意する。 しかし、ブラウンはそれを無視し庭に立ち続け、新鮮な空気を吸うのは女王のためだと直接意見し、彼女を乗馬に連れ出してしまう。 やがて、ブラウンは使用人を仕切り始め、公務復帰を拒む女王は、次第に彼の言葉に耳を貸すようになる。 1866年。 ブラウンの存在を煙たがるエドワード王太子(デヴィッド・ウェストヘッド)は、首相ベンジャミン・ディズレーリ(アントニー・シャー)にそれを嘆く。 ある日、従者の中に密偵者がいることを疑ったブラウンは、彼らの前で声を張り上げそれを排除することを告げる。 ブラウンは、女王への侮辱を歓迎するような大衆の風潮を許さず、それに目をつぶろうとするポンソンビーや侍医ジェンナー医師(リチャード・パスコ)らを非難する。 1867年。 ”ブラウン夫人”とまで言われるようになった女王は、間もなく喪が明けるなどと新聞に書かれ激怒するが、あくまでブラウンを擁護しようとする。 そんなブラウンは、女王に会いたがるエドワードを無能呼ばわりして力ずくで追い払う。 ウィンザー城に戻った女王一行だったが、ブラウンが厩舎で襲われてしまう。 骨折しながらも仕事に戻ろうとするブラウンを、弟アーチーは女王に利用されているだけだと忠告する。 しかし、ブラウンは女王からの手紙を見せ、心から信愛されているとアーチーを非難して、彼を部屋から追い出してしまう。 女王は、王女などからブラウンの解雇要請を受けるのだが、司祭ジェラルド・ヴァレリアン・ウェールズリー(オリヴァー・フォード・デイヴィース)から、”親友”との触れ合いによる心の安らぎは、愛した者への思いを汚すことにはならないと助言される。 そして、女王は自分への指示は不要だと、ブラウンの解雇要請への返答を、エドワードや王女らに告げる。 ブラウンは職を辞することを考え、それを女王に伝えるが、彼女はそれを許さず、心の支えになり側近達から自分を守るよう伝える。 1868年。 ディズレーリは、女王が国民の前に姿を現すことを切望していることを彼女に伝えるが、女王は今の幸せを満喫していると答える。 従者達に軽蔑されながらも女王を守ろうとする、心身ともに疲労困憊のブラウンの体を、弟アーチーは気遣う。 ロンドンに戻る前に、ディズレーリはブラウンを山歩きに誘い、女王に危険が近づいている中、彼女が公務に戻ることこそが、安全の確保だとブラウンに告げる。 ディズレーリは、女王に仕えることが使命だと語るブラウンに、それを伝え説得させようとする。 ブラウンは女王の安全を考え、仕方なく彼女にロンドンへ戻るように説得するが、結局は女王の怒りを買ってしまう。 11月。 エドワードを”愚かな息子”とまで言っていた女王だったが、さすがに動揺しウィンザー城の彼の元に向かう。 幸いエドワードは回復し、女王は次期国王を救ってくれた神に感謝し、”聖ジョージ大聖堂”で礼拝することを側近達に約束する。 そして女王は、大衆に姿を見せる決心をして、それをブラウンらに告げる。 女王の姿を見た国民が歓声をあげる中、警戒していたブラウンが暴漢を取り押さえ、彼に勲章が授けられることになる。 ディズレーリ首相は、議会で国民が君主制を支えていく意志を固めたことを演説する。 1883年。 エドワードはブラウンの胸像を投げ捨て、ポンソンビーは彼の日記を預かる。 その日記は見つかることはなく、ヴィクトリア女王は国民の人気を取り戻し、その後18年間君臨した。
...全てを見る(結末あり)
スコットランド、バルモラル城。
休暇を過ごす女王は見違えるほど活動的になり、やがて世間では、彼女とブラウンの関係が噂されるようになる。
依然公務に復帰しない女王に対して不満も高まり、議会では君主制の廃止を求める議員もいた。
アイルランド国教会のイングランド国教会からの離脱の件で、首相ディズレーリがスコットランドにいる女王の元を訪れる。
病み上がりの女王は、エドワード王太子が夫アルバート公と同じ腸チフスで闘病生活を送っていることを知らされる。
15年間女王の警護を務めたブラウンは、肺炎のため女王に看取られながらこの世を去る。
*(簡略ストー リー)
イギリス国王ヴィクトリア女王は、夫アルバート公を亡くし失意の内に、長きに渡り喪に服していた。
側近達は、政治的配慮から女王の公務復帰を望むが、憔悴する彼女自身の心の病を考えて、愛馬の世話係、スコットランド人の従僕ジョン・ブラウンを呼び寄せる。
女王にさえも、傲慢で諂うことのない態度で接するブラウンに周囲は驚くが、そんな彼の強引な手法で、女王の閉ざされた心は次第に開かれていく。
やがて二人の関係が噂になり、側近や従者仲間からも軽蔑の眼差しで見られるブラウンだったが、彼はそれを意に介さず、女王に全てを捧げ、彼女を守り抜こうとする・・・。
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ヴィクトリア女王が、愛にも似た感情を見せて、その彼女に忠誠を誓った侍従の、親密な友情の物語という雰囲気の描き方になっている。
第70回アカデミー賞では、主演女優(ジュディ・デンチ)とメイクアップ賞にノミネートされた。
実際には、秘密結婚までしていたのではないかと言われている、微妙な二人の関係を、重厚なに描くジョン・マッデンの演出も見ものだ。
王室の居住城であるウィンザー城やオズボーン・ハウス、バルモラル城などに似た雰囲気のロケ地を効果的に使い、当時の社会や風習文化を映し出した映像やセットなども素晴らしい。
既に”007シリーズ”のM役で世界的な知名度を得ていたベテランのジュディ・デンチは、翌年にも同じジョン・マッデンの「恋におちたシェイクスピア」(1998)で”エリザベス1世”を演じ、アカデミー助演賞を受賞した。
恋をしたように描かれていく過程での、微妙に美しくなっていく彼女の表情が印象的で、感情的になる場面の迫力も貫禄十分というところだ。
偏屈にも思えるが、女王と二人だけの世界では、人間味と男気がある人物としてジョン・ブラウンを演じ切ったビリー・コノリー、その弟役で、これがデビュー作のジェラルド・バトラー、首相ベンジャミン・ディズレーリのアントニー・シャー、秘書官のヘンリー・ポンソンビーの役ジェフリー・パーマー、侍医のリチャード・パスコ、エドワード王太子役のデヴィッド・ウェストヘッド、司祭ジェラルド・ヴァレリアン・ウェールズリーのオリヴァー・フォード・デイヴィースなどが共演している。