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赤い風車 Moulin Rouge (1952)

フランスの画家アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレックの晩年を描く、製作、監督、脚本ジョン・ヒューストン、主演ホセ・ファーラーザ・ザ・ガボールコレット・マルシャンシュザンヌ・フロンピーター・カッシングクリストファー・リー他共演のドラマ。

アカデミー賞 ■ ストーリー ■ 解説


ドラマ


スタッフ キャスト
監督:ジョン・ヒューストン
製作
ジョン・ヒューストン
ジョン・ウルフ
原作:ピエール・ラミュール”ムーラン・ルージュ”
脚本
ジョン・ヒューストン
アンソニー・ヴェイラー
撮影:オズワルド・モリス
編集:ラルフ・ケンプレン
美術・装置
ポール・シェリフ
マルセル・ヴェルテス
衣裳デザイン:マルセル・ヴェルテス
音楽:ジョルジュ・オーリック

出演
アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレックホセ・ファーラー
アルフォンス・ド・トゥールーズ=ロートレック伯爵:ホセ・ファーラー
ジャンヌ・アヴリルザ・ザ・ガボール
アデル・ド・トゥールーズ=ロートレック伯爵夫人:クロード・ノリエ
マリー・シャルレ:コレット・マルシャン
ミリアム・ハイアム:シュザンヌ・フロン
アイシャ:ミュリエル・スミス
ラ・グーリュキャサリン・カス
ルーベ夫人:メアリー・クレア
ヴァランタン・ル・デゾセ:ウォルター・クリシャム
シャルル・ジドラーハロルド・カスケット
バルタザール・パトゥ巡査部長:ジョルジュ・ランヌ
モーリス・ジョワイヤン:リー・モンタギュー
ドニーズ・ド・フロンティアック:モーリン・スワンソン
アイシャのダンスパートナー:トゥッテ・レムコウ
サラ:ジル・ベネット
セルビア公ミラン4世セオドア・ビケル
マルセル・ド・ラ・ヴォアジエ:ピーター・カッシング
モイーズ・ド・カモンド伯爵:チャールズ・カーソン
ババール:ウォルター・クロス
ジョルジュ・スーラクリストファー・リー
ドドー:マイケル・バルフォア
ピカード:エリック・ポールマン

イギリス 映画
配給
ユナイテッド・アーティスツ
British Lion Films
1952年製作 119分
公開
イギリス:1953年3月13日
北米:1952年12月23日
日本:1953年5月13日
製作費 $1,500,000
北米興行収入 $11,810,000
世界 $13,333,890


アカデミー賞
第25回アカデミー賞

・受賞
美術・衣裳デザイン賞
・ノミネート
作品・監督
主演男優(ホセ・ファーラー
助演女優(コレット・マルシャン
編集賞


*詳細な内容、結末が記載されています。
ストーリー
1890年、パリモンマルトル
キャバレー”ムーラン・ルージュ”に夜ごと通う画家のアンリ・ド・トゥールーズ=ロートレックホセ・ファーラー)は、ダンサーのラ・グーリュキャサリン・カス)、アイシャ(ミュリエル・スミス)、ヴァランタン・ル・デゾセ(ウォルター・クリシャム)らの華やかな踊りを楽しみながら酒を飲み、テーブルクロスにスケッチしていた。

親友で画廊のオーナーのモーリス・ジョワイヤン(リー・モンタギュー)から、モイーズ・ド・カモンド伯爵(チャールズ・カーソン)が絵を気に入ったと言われたアンリだったが、それに興味を示さない。

あおるようにコニャックを飲み続けるアンリは、ライバル心をむき出しにするラ・グーリュとアイシャの争いを見て楽しむ。
...全てを見る(結末あり)

二人に手を焼く創設者兼支配人のシャルル・ジドラーハロルド・カスケット)は、アンリの絵を見て感心し、店のポスターを描いてくれれば酒代1か月分をタダにすることを約束する。

スター歌手のジャンヌ・アヴリルザ・ザ・ガボール)が登場し、”ムーラン・ルージュの歌”を歌う。

歌い終わりテーブルに来たジャンヌと話すアンリは、彼女を描く。

その後、”カンカン”が始まり、店内は大いに盛り上がる。

閉店となった店を出たアンリは、酔った男に背が低いことをからかわれて子ども扱いされ、杖を振り上げて彼を追い払い、過去を思い出す。
__________

何代も続く伯爵家に生まれて不自由なく育ったアンリは、帰宅した父アルフォンス(ホセ・ファーラー)を迎えようとして階段から転げ落ちてしまう。

骨折した箇所が接合できないアンリは、手術に失敗して骨は成長しないと診断され、いとこ同士のアルフォンスと妻アデル(クロード・ノリエ)の近親婚が原因だと医師は指摘する。

その後、アルフォンスには認められなかったものの、興味を持っていた絵を描く日々が続くアンリは、血族婚が原因となったことで、これ以上、子供は作らない考えのアルフォンスが、屋敷を去ることを知り悲しむ。

胴体の成長は正常だったものの、下半身の成長が止まったアンリは、幼馴染のドニーズ・ド・フロンティアック(モーリン・スワンソン)に好意を伝えるものの、バケモノ呼ばわりされて傷つく。

そんなアンリは、パリに向かい画家になることをアデルに伝えて、自分の人生を生きることを決意する。
__________

家に向かうアンリは、駆け寄って来た娼婦のマリー・シャルレ(コレット・マルシャン)から、一緒にいるふりをしてほしいと言われる。

マリーはバルタザール・パトゥ巡査部長(ジョルジュ・ランヌ)に追われていたのだが、自分を知る彼から、アンリは無礼な態度を謝罪される。

アンリから逃げて行った女を見たと言われたパトゥは、今回だけは見逃すと伝える。

行き場のないマリーを泊めることになったアンリは家に向かい、不躾な彼女から体のことを訊かれたために追い出そうとする。

気にするそぶりも見せないマリーにアンリは、子供の時の骨折が接合できなかったことを伝える。

眠るために服を脱ごうとしたマリーは浴室に向かい、バスタブがあったために驚き、入っていいかアンリに尋ねる。

マリーの他愛もない話を聞きながらベッドに入ったアンリは、再び脚の話をするマリーに出ていけと言って声を荒げる。

アンリを落ち着かせたマリーは、脚のことなどどうでもいいと言ってソファーで眠る。

その後、憎めないマリーを滞在させてシルクのストッキングなどを貢いだアンリは、ドレスを会に行こうとする。

自分で買ってくると言うマリーに100フラン渡したアンリは、喜んでキスしてくれた彼女が戻ってくることを信じる。

しかし、翌日になってもマリーは戻らないままで、寂しく思うアンリは、気を遣ってくれる家政婦のルーベ夫人(メアリー・クレア)の用意した食事も断り、カフェに向かう。

画家仲間のジョルジュ・スーラクリストファー・リー)らと話したアンリは、苛立っていたために、独立芸術家協会やルーヴル美術館、その場に展示されている”モナ・リザ”やダヴィンチのことを批判して席を立つ。

スーラは、アンリがなぜ不機嫌なのか気になる。

現れたモーリスに呼び止められたアンリは、”フィガロ”の記者が絵に興味を持ってくれたことを知らされるものの、話を聞く気にもなれない。

家に戻ったアンリは、ドレスを着てその場にいたマリーを歓迎する気になれず、出て行ってほしいと伝える。

出て行こうとしたマリーは、病気の妹の看病をしていたことをアンリに話し、信じていいのかと言う彼が自分に惹かれていることを知る。

アンリが自分を好意を抱き嫉妬していたことを知ったマリーは、初めての体験だと言って喜び、心配無用であなたに夢中だと伝えてキスする。

マリーをモデルにして絵を描くアンリは、その絵が気に入らず批判する彼女を再び追い出そうとする。

憤慨して出て行ったマリーだったが、戻って来た彼女はアンリに謝罪し、納得した彼は気晴らしに食事に出かける。

高級レストランに連れて行かれたマリーは人目が気になり、席を立って店を出てしまい、アンリは彼女を追う。

苛立つマリーは、早く歩けないアンリに再び脚の話したために、黙れと言われてしまう。

怒りが収まらないマリーは、スラムに帰れと自分を追い払うアンリに、二度と戻らないと言い残してその場を去る。

その後、戻ってきて謝罪するマリーを無視するアンリは、部屋のドアを開けようとしない。

諦めたマリーは憤慨しながらその場を去り、アンリは窓から彼女を見つめる。

部屋に閉じこもるアンリを心配して訪ねて来たアデルは、息子が女性のことで悩んでいることをルーベ夫人から知らされて彼の話を聞く。

マリーの自由を奪ってしまったために、自分から逃げて行ったと話すアンリは、彼女は外見ではなく、自分自身を見て受け入れてくれたとアデルに伝える。

アルフォンスに相談してみることを提案されたアンリは、父が娼婦との恋愛を認めるわけがないと考える。

アンリを連れて帰ろうとしたアデルだったが、悪いことばかりでないと言うアンリは、創作活動に励めた結果描けた、たくさんの絵を指さす。

絵は家でも描けると言うアデルに、画家の友人ゴッホの話をするアンリは、彼のような絵は自分には描けないが、貧民街の踊り子は彼には描けないと伝える。

娼婦のマリーを愛したと言うアンリが、最近は描いていないと知ったアデルは、生きていくために彼女を捜すべきだと助言する。

その後、マリーを捜したアンリは、あるバーで彼女を居場所を知る。

バーでマリーを見つけたアンリは、酔った彼女から友人の恋人ビベルトを紹介され、彼のための金づるだったと言われてショックを受ける。

その場を去ろうとしたアンリは、気を遣うビベルトから、マリーは酔っているだけで、本当は自分が好きなはずだと言われる。

ビベルトの話を聞く気になれないアンリはその場を去り、マリーは泣き崩れる。

帰宅したアンリは、ガスの栓を開けて自殺しようとする。

自分の作品を眺めたアンリは、未完成だった”ムーラン・ルージュのラ・グリュ”を描く気になり、ガス栓を閉めて窓を開ける。

完成した絵を持参してムーラン・ルージュに向かいジドラーと話したアンリは、絵をポスターにすることを提案する。

自分を描いていないことが不満なジャンヌに、アンリは、ダンサーの方が簡単に描けると伝える。

ジドラーからも、絵が店の雰囲気でないと意見されたアンリは、自分が描かれていることに気づいたヴァランタンも、顔が違うことを指摘する。

誇張して描くのが画家の個性だと伝えたアンリだったが、ジャンヌから、これではまるでラ・グーリュがスターだと言われ、ヴァランタンは自分と違う個所に注文を付ける。

ラ・グーリュは満足するが、アイシャに嫌味を言われて喧嘩を始める。

翌日、リトグラフ工房に向かったアンリは、職人に絵を見せるものの、リトグラフにはない色を使っていると言われる。

諦めないアンリは、苦労して”ムーラン・ルージュ”ポスターを完成させて、それは街中に貼られる。

パトゥに再会したアンリは、結婚する娘のために肖像画を描いてほしいという頼みに快く応じ、その代わりに、1500フランを渡してマリーの名義で屋台の許可証が欲しいことを伝える。

ポスターは人々の間で話題になるが賛否両論で、アンリは、訪ねて来たアルフォンスから、ロートレック家の名を汚したと批判される。

サインしたからには自分の”作品”だと言う、アンリの言葉を聞き入れようとしないアルフォンスは、汚らわしい絵は芸術ではないと伝える。

生まれながらに特権が与えられ、労働したことのないアルフォンスや一族の者に理解できるはずがないと言うアンリは、その考えは時代遅れであり、決まり切った人生を歩まず自分は働くと反論する。

孤独や醜い容姿、障害を忘れるために酒も飲み続けると言うアンリは、アルフォンスに絶縁される。

店は繁盛したものの、おとなしくなってしまった雰囲気を好きになれないジドラーは、アンリにその気持ちを伝える。

上品になったラ・グーリュも、気取ってアンリと話す。

1900年。
アレクサンドル3世橋”の上でたたずむ女性ミリアム・ハイアム(シュザンヌ・フロン)を見かけたアンリは、彼女が自殺を考えているように思えたため、馬車を降りて声をかける。

セーヌ川を眺めていただけだと言うミリアムは、アンリから、失恋したのではないかと訊かれ、身投げしたりはしないと伝える。

送ろうとしたアンリだったが、それを断ったミリアムは、持っていた鍵を川に捨ててその場を去る。

酔って画廊に現れたアンリを気遣うモーリスは、彼を奥の部屋に向かわせる。

カモンドと値段の交渉をしたモーリスは、横から口を挟み絵を購入すると言う紳士(セオドア・ビケル)から名刺を渡され、彼がセルビア公ミラン4世だったために驚く。

眠っていたアンリはモーリスが現れたために目覚め、まじめに働くようにと言って説教をする彼を迷惑に思う。

酒だけはやめられないと言うアンリに、このままでは早死にするとモーリスは忠告する。

画家は短命と決まっているので、自分の絵を売ることに専念すれば儲かるとモーリスに伝えたアンリは飲みに行く。

コンサートのドレスを選びに行くジャンヌに付き添ったアンリは、マヌカンのミリアムに挨拶して、会うのは二度目だと言われる。

ジャンヌからコンサートに誘われたミリアムは、アンリに迎えに来てもらうことになる。

アンリは、ミリアムがガードが堅い女性だということをジャンヌから知らされる。

ミリアムと共にジャンヌのコンサートに向かったアンリは、彼女のステージを楽しむ。

ジャンヌと新しい恋人と共に歓談したアンリは、ミリアムから自分の絵を評価されても、それほど喜ぶ気にはなれない。

酒のことをアンリに尋ねたミリアムは、父親がアルコール依存症であったために心配する。

ジャンヌから、初対面の男性に話すことではないと言われたミリアムは、アンリに送ってもらい、面白いものがあると伝えて彼を部屋に誘う。

部屋に飾られていたマリーの絵を見て驚いたアンリは、それをフリーマーケットで手に入れたことをミリアムから知らされる。

絵のことを訊かれたアンリは、モデルの名前はマリーで屋台のオーナーだと答える。

いい投資だと言われたミリアムは、安くはなかったとアンリに伝える。

セルビア公は4000、カモンドは6000、自分は全財産の2フランを払ったと言って、仕立屋の見習いとして毎日十時間働き1フランを得て、さらに家で内職をして小銭を稼ぎんがら、食べることよりもこの絵を大切にしたとミリアムは話す。

アンリからその理由を訊かれたミリアムは、マリーの冷たくて乾いた目が気に入ったと答える。

美しい女性は孤独とは無縁だと言うアンリは、愛した人が死んだとしたらどう思うかと訊かれ、失言をミリアムに謝罪する。

川に身投げしようとしたのは、投げ捨てた鍵が関係しているのかと訊かれたミリアムは、恋人は5年前に死に、捨てたのは、結婚したら住む予定だった部屋の鍵であり、まだ一人でいたいので、自分は賢い女ではないようだと伝える。

翌日のオペラにミリアムを誘ったアンリは、その約束をしてた立ち去る。

その後、ミリアムと街で出くわしたアンリは、彼女と共に競馬場に向かう。

その場で知人のマルセル・ド・ラ・ヴォアジエ(ピーター・カッシング)から声をかけられたミリアムは、アンリを紹介する。

マルセルの持ち馬をスケッチしていたアンリは、それを彼に渡す。

その場を去った、裕福でハンサムな紳士マルセルに引け目を感じたアンリは、ミリアムから、見た目がすべてではないと言われる。

毎日のようにアンリと行動を共にするミリアムは、マリーのことを彼に尋ねる。

愛していたのかという問いに対しアンリは、マリーは自分の心の扉を開いたと言って、その後の恋のことも訊かれた彼は、恋は一度で十分だと答える。

落ちぶれて酔ったラ・グーリュを街頭で見かけたアンリは、周囲の人々に笑われる彼女に声を変える。

ムーラン・ルージュのスターだったラ・グーリュに敬意を表するアンリは、彼女とミリアムを馬車に乗せて病院に向かう。

自分のポスターのせいでムーラン・ルージュが高級店になり、ラ・グーリュは居場所を失ったとミリアムに話すアンリは、自分も同じだと伝える。

その後、マルセルから結婚を申し込まれたことをアンリに伝えたミリアムは、思い通りになったと言われたために彼を非難する。

謝罪したアンリだったが、結婚すると思うのかと訊かれ、長身で裕福でハンサムな紳士は自分とは違って女性の理想だと伝える。

嫌味を言われたミリアムは、アンリの自分に対する愛を確かめるものの、同情していたのだろうと言われる。

卑下するのはやめるべきだとアンリ伝えたミリアムは、マルセルをじらすことを考えているはずだと言い残して去る彼を見送る。

翌日、ミリアムを迎えに行ったアンリは、”未だにマリーを愛していることがわかり、愛されようと努力したけど無駄だった、愛はないがマルセルと結婚する”という彼女からの手紙を受け取る。

動揺したアンリはミリアムの部屋に向かうものの、彼女が引っ越したことを知る。

落ち込むアンリは酒に頼るしかなく、自分を気遣うパトゥを迷惑に思うものの、気を失ってしまう。

アンリを家に連れて帰ったパトゥは、眠っている彼を休ませて、病院に入れて酒を断たせることを考える。

起き上がったアンリは意味不明なことを叫び始め、階段から転げ落ちてしまう。

実家の屋敷に戻ったアンリは神父に祈りを捧げられ、それを両親が見守る。

モーリスからの手紙を読むアルフォンスは、作品のルーヴル美術館展示が決まったことをアンリに伝える。

生前初の展示を知り、誤解していたことをアンリに伝えたアルフォンスは、息子に謝罪する。

ジャンヌラ・グーリュらダンサーのことを考えながら、アンリは安らかに息を引き取る。


解説 評価 感想
*(簡略ストー リー)
1890年、パリモンマルトル

キャバレー”ムーラン・ルージュ”に夜ごと通う画家のアンリ・ド・トゥールーズ=ロートレックは、下半身が成長していない身体的な問題を抱え、差別を受けたストレスにより、酒に溺れる日々を送りつつ絵を描いていた。
あることをきっかけにして娼婦のマリーと暮らすことになったアンリは、不躾で粗暴ではあるものの、自分の心を開いてくれた彼女に惹かれる。
しかし、自分を見る人々の目が気になるマリーはアンリの元を去り、悲しむ彼は心を癒すために酒に頼るしかなかった。
自殺も考えたアンリは思い留まり、ムーラン・ルージュのためにポスターを描き絵に情熱を注を注ぐのだが・・・。
__________

1950年に発表された、ピエール・ラミュールの小説”ムーラン・ルージュ”を基に製作された作品。

身体的なハンデキャップを背負い、そのストレスから酒に溺れながら数々の名画を世に残し36歳の若さで世を去った、フランスの画家アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレックの晩年を描いたドラマ。

ジョン・ヒューストンが製作、脚本を兼ねて監督し、名優のホセ・ファーラーザ・ザ・ガボールらが共演した。

身体障害者として差別を受けていたロートレックが、同じような境遇の貧しい娼婦やダンサーに共感しながら、恵まれた家柄を捨てて自分らしく生きようとした姿を情緒的に描く、ジョン・ヒューストンの演出手腕が光る作品。

第25回アカデミー賞では作品賞以下7部門にノミネートされ、美術、衣裳デザイン賞を受賞した。
*ノミネート
作品・監督
主演男優(ホセ・ファーラー
助演女優(コレット・マルシャン
編集賞

冒頭で紹介される”ムーラン・ルージュ”内の様子などは、さながらミュージカル風でもあり、セットや衣装など、その時代の雰囲気を見事に映し出すカラーの美しい映像も素晴らしい。

伯爵家の跡取りとして生まれながら、不慮の事故などで下半身の成長が止まってしまい、悲しい人生を歩む者の自分らしさを追求する、主人公のロートレックを演ずるホセ・ファーラーの演技は絶賛された。
身長150cm余りだったロートレックを、それほど大柄ではない178cmのホセ・ファーラーが見事に演ずるのだが、機械的な特殊効果などない時代に、小柄な主人公を描写する様々な工夫なども注目したい。
ホセ・ファーラーロートレックの父親役も演じている。

ムーラン・ルージュのスター歌手ジャンヌ・アヴリルを演ずるザ・ザ・ガボールが歌う、ジョルジュ・オーリック作詞、作曲の”ムーラン・ルージュの歌”の美しいいメロディは心に残る。
そのシーンの歌の吹き替えは、ムーラン・ルージュのダンサー役として登場するミュリエル・スミスが担当している。

主人公の母親クロード・ノリエ、主人公が愛する娼婦を好演するコレット・マルシャン、主人公と親交を深めながら彼を愛する女性シュザンヌ・フロンムーラン・ルージュの花形ダンサー、ラ・グーリュキャサリン・カス、同じくダンサー、ヴァランタン・ル・デゾセのウォルター・クリシャム、トゥッテ・レムコウ、主人公の家の家政婦メアリー・クレア、主人公に協力する巡査部長ジョルジュ・ランヌ、主人公の友人リー・モンタギュー、主人公の幼馴染モーリン・スワンソン、主人公の絵を購入するセルビア公ミラン4世セオドア・ビケル、ミリアム(シュザンヌ・フロン)に好意を抱く紳士ピーター・カッシング、主人公の画家仲間ジョルジュ・スーラクリストファー・リー、他マイケル・バルフォアエリック・ポールマンなどが共演している。


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