地球に供給するエネルギーを確保するため単独で月に派遣された男性の苦悩と隠された秘密を描く、原作、監督はデヴィッド・ボウイの息子であるダンカン・ジョーンズ、主演サム・ロックウェル、ケヴィン・スペイシー、ドミニク・マケリゴット他共演のSFドラマの秀作。 |
・SF
・ケヴィン・スペイシー / Kevin Spacey / Pinterest
■ スタッフ キャスト ■
監督:ダンカン・ジョーンズ
製作
トレヴァー・ビーティー
ニッキー・ベンサム
ビル・バンゲイ
スチュアート・フェネガン
マーク・フォリーニョ
アレックス・フランシス
マイケル・ヘンリー
ジャスティン・ランチベリー
スティーヴ・ミルン
ディーパク・シッカ
トルーディ・スタイラー
ジュリア・ヴァレンタイン
ビル・ザイスブラット
原作:ダンカン・ジョーンズ
脚本:ネイサン・パーカー
撮影:ゲイリー・ショウ
編集:ニコラス・ガスター
音楽:クリント・マンセル
出演
サム・ベル:サム・ロックウェル
ガーティ(声):ケヴィン・スペイシー
テス・ベル:ドミニク・マケリゴット
イヴ・ベル:カヤ・スコデラリオ
トンプソン:ベネディクト・ウォン
オーバーマイヤーズ:マット・ベリー
技術者:マルコム・スチュワート
サム・ベル(クローン):ロビン・チョーク
イギリス 映画
配給 ソニー・ピクチャーズ・クラシックス
2009年製作 97分
公開
イギリス:2009年7月17日
北米:2009年6月12日
日本:2010年4月10日
製作費 $5,000,000
北米興行収入 $5,009,680
世界 $9,800,000
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
2035年。
地球のエネルギーは底をつき、世界最大の核燃料生産企業”ルナ・インダストリー”は、太陽エネルギーを含んだ石を月の裏側で採掘し、それを原料としたクリーン燃料”ヘリウム3”で、地球エネルギーの7割を供給した。
月、サラン採掘基地。
3年契約で単独で作業をするサム・ベル(サム・ロックウェル)は、A.I./人工知能のガーティ(ケヴィン・スペイシー/声)だけを相手に日々を過ごし、2週間で任期を終えようとしていた。
衛星の故障で通信が途絶え、唯一の楽しみだった家族との交信もできなくなっていたために苛立つサムは、木星リンク経由で送られて来た、妻テス(ドミニク・マケリゴット)と娘イヴの映像を見る。 その後、幻覚を見るようになったサムは、基地外の作業中に事故を起こしてしまい、診療室で目覚める。 何も覚えていないサムは、事故に遭ったことをガーティから知らされる。 その後、故障した採掘機を修理しようとしたサムは、基地の外に出ることを、ガーティや会社のトンプソン(ベネディクト・ウォン)とコーバーマイヤー(マット・ベリー)から許可されない。 わざと事故を起こし、外壁を調べることをガーティに提案したサムは、チェックだけということで外に出ることを許される。 採掘機の事故現場まで向かったサムは、そこで発見した自分のような人物を連れて帰り、診療室に連れて行くようガーティに指示する。 目覚めた男(ロビン・チョーク)は、この場に誰かがいることをガーティに尋ねて不思議に思う。 起き上がれるようになった男は、サムからクローンだと言われ、不審に思われながらも生活を始める。 木星に向かう計画を中止して救助のために宇宙船”イライザ”を送るという連絡が入る。 サムとクローンは、14時間後に救助班が到着することをトンプソンとコーバーマイヤーから知らされる。 どちらが本当の自分かで議論になったサムは、模型の仕上がり具合などを見て、他にもクローンがいて隠し部屋があると考える。 基地内部を調べ始めたサムは、抵抗するクローンと争いになり怪我をしてしまう。 サムと喧嘩をしてしまったことをガーティに伝えたクローンは、テスのことなどを話すものの、基地のこと以外は答えてもらえない。 自分が”複製”であることをガーティから説明されたクローンは、テスやイヴのことは移植された記憶だと言われる。 ショックを受けたクローンは、ガーティに慰められるものの、何も答えずに部屋に向かう。 その後、クローンと話し合ったサムは、自分達は会うはずではなかったと伝える。 自分が監禁中に見つけことをクローンに伝えたサムは、診療室で目覚めた時に、ガーティが会社とライブで交信していたことを知らせる。 通信衛星は故障しているはずだと言うクローンだったが、全てが嘘で、基地の外部で妨害をしているとサムから言われる。 月面車で基地から離れた二人は、それぞれが妨害塔を見つける。 気分が悪くなったクローンは基地に戻り嘔吐してしまい、歯が抜けたことに気づく。 ガーティにパスワードを教えてもらい、サムのデータにアクセスしたクローンは、何人ものサムが、帰還のために低温ポッドに入る映像を確認する。 その場を確認したクローンは、ポッドに関してと滞在期間中の労をねぎらう、技術者(マルコム・スチュワート)の映像を確認する。 床の下に空間があると考えたクローンは、そこを開けようとする。 戻ったサムは、別の妨害塔を三つ見つけたことをクローンに伝え、部屋を見つけたと言う彼と共に地下に向い、多数のクローンを確認する。 部屋に戻り通信機を手にして外に向かおうとしたクローンは、なぜパスワードを教えてくれたのかをガーティに問い、手伝いが仕事だと言われる。 月面車で基地から離れたクローンは通信接続に成功し、テスに電話をするものの、対応した女性から数年前に亡くなったと言われる。 娘だと言われたクローンは、彼女が15歳になったイヴ(カヤ・スコデラリオ)であることを確認して、テスの死因を尋ねる。 イヴが父親を呼んだために通信を切ったクローンは、故郷を想い涙する。 イライザ到着まで7時間。 気分が悪そうなクローンを寝かせたサムは、外に持ち出した通信機の記録を確認して、テスが死んだことを知りショックを受ける。 他のクローンを隠し部屋で見つけたことをガーティに伝えたサムは、起きたクローンは、その場には立入禁止だと言われる。 一人起こすように指示されたガーティは、3年契約の終了後だとサムに伝える。 起こさないと自分もクローンも殺されると伝えたサムは、ガーティを説得する。 イライザ到着まで5時間。 事故車に死体がないと救助班が怪しむとクローンに伝えたサムは、起こしたクローンを現場に置いて来る必要があると話す。 救助班が来る前に、ヘリウム3の輸送ポッドで地球に脱出させるとクローンに伝えたサムは、具合の悪そうな彼の様態を気にする。 イライザ到着まで3時間。 救助班、到着まで1時間40分。 自分を守るのが仕事だとガーティから言われたサムは、それに従うことにする。 イライザ到着まで24分。 プログラム通りうまくやると言われたサムは、自分達は人間だと伝えてガーティの電源を切る。 イライザ到着まで8分。 救助班は到着し、クルーはサムを捜す。 目覚めたクローンは、再起動したガーティから事故に遭ったと言われる。 ポッドは地球に向けて発射され、事故現場の瀕死のクローンはそれに気づき、現れた救助班に確認される。 採掘機は妨害塔に衝突して、基地の通信機能は回復する。 輸送ポッドは地球に到着し、告発されたルナは株価を大きく下げ、サム・ベルのクローンが証人として委員会に出席して、論争を巻き起こす。
...全てを見る(結末あり)
基地に戻ったクローンは、到着する救助班は自分達を生かしておかないとサムに伝える。
目覚めたクローンは、診療室に横たわっているのは別のクローンだとサムから知らされる。
自分は無理だと言うクローンから地球に向うようにと指示されたサムは、弱っている彼を事故現場に運ぶ。
目覚めてから全てを記録しているため、メモリを調べられれば危険だとサムに伝えたガーティは、記録の消去を求める。
再起動を出発後にセットしたことをガーティに伝えたサムは、新しいサムとうまくやると言われる。
輸送ポッドに入ろうとしたサムは、移動させた採掘機の進路を変更させる。
*(簡略ストー リー)
2035年。
地球のエネルギーは底をつき、世界最大の核燃料生産企業”ルナ・インダストリー”は、太陽エネルギーを含んだ石を月の裏側で採掘して、クリーン燃料”ヘリウム3”を作り世界に供給していた。
月、サラン採掘基地、3年契約で単独で作業をするサム・ベルは、A.I./人工知能のガーティだけを相手に日々を過ごし、地球帰還まで2週間に迫っていた。
通信システムの故障で、唯一の楽しみである家族との交信もできなくなったサムは、幻覚を見るようになってしまう。
ある日、基地外の作業中に事故を起こしたサムは、診療室で目覚める。
外部での作業を禁じられたサムだったが、強引に許可を取り事故現場に向い、自分に似ている男を発見して基地に連れ帰る。
どちらが本当の自分なのか、相手がクローンだと考えたサムは、会社が何か秘密を隠していると考え、それを探ろうとするのだが・・・。
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近未来の月を舞台に、地球のエネルギー資源採掘のために派遣された、単独で作業する男性の苦悩と隠された秘密を描く、SFドラマの秀作。
デヴィッド・ボウイの息子であるダンカン・ジョーンズの原作を基にした、彼にとっては監督デビュー作品。
1970年代からブームになったSF映画へのオマージュ的な作品であり、主要登場人物は二人だけで、舞台も採掘基地と現場周辺だけに限定された内容で描かれている。
そのシンプルな設定と静寂だけで”宇宙”をイメージするダンカン・ジョーンズの感性なども注目で、低予算で製作されたとは思えない完成度の高い映像感覚、主人公の孤独感が募ると共に明かされる秘密が、サスペンス・タッチで描かれる見事な仕上がりとなっている。
3年契約という設定になっている保管されているクローンが、延々とその作業を繰り返している事実が判明する終盤で、そのクローンが、”人間の尊厳”を追求しようとする行動が胸を打つ。
孤独な生活で疲弊する主人公を演ずるサム・ロックウェルの好演が見所の作品で、予備知識がないと、クローン役は特殊効果で彼自身が演じていると思う方がいるかもしれない。
クローンを演ずるのはサム・ロックウェルと容姿が似ているロビン・チョークであり、顔の傷のメイクなどにより、同一人物が演じているように見える工夫や細やかな演出も見逃せない。
主人公に協力するA.I./人工知能のケヴィン・スペイシー/声、主人公の妻ドミニク・マケリゴット、娘カヤ・スコデラリオ、”ルナ・インダストリー”の社員ベネディクト・ウォンとマット・ベリー、技術者マルコム・スチュワートなどが共演している。