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殺人狂時代 Monsieur Verdoux (1947)

大恐慌により長年、真面目に勤めた銀行を解雇された男性が家族を養うために始めたのは”殺人”だった・・・。
製作、監督、脚本、音楽チャールズ・チャップリンによるブラック・コメディの傑作。

アカデミー賞 ■ ストーリー ■ 解説


ドラマ(コメディ)


スタッフ キャスト ■
監督:チャールズ・チャップリン

製作:チャールズ・チャップリン
原案:オーソン・ウェルズ
脚本:チャールズ・チャップリン
撮影:ローランド・トザロー
編集:ウィラード・ニコ
音楽:チャールズ・チャップリン

出演
アンリ・ヴェルドゥ/ヴァルネー/ボヌール/フローレイ:チャールズ・チャップリン
アナベラ・ボヌール:マーサ・レイ
ジャン・ラサール:ウィリアム・フロウリー
マリー・グロネイ:イソベル・エルソム
リディア・フローレイ:マーガレット・ホフマン
モーリス・ボテロ:ロバート・ルイス
出所間もない娘:マリリン・ナッシュ
グロネイ夫人のメイド:マージョリー・ベネット
モナ・ヴェルドゥ:メイディ・コレル
モロー刑事:チャールズ・エヴァンス

アメリカ 映画
配給 ユナイテッド・アーティスツ
1947年製作 124分
公開
北米:1947年4月11日
日本:1952年9月2日
製作費 $2,000,000
北米興行収入 $60,630


アカデミー賞 ■
第20回アカデミー賞

・ノミネート
脚本賞


*詳細な内容、結末が記載されています。
ストーリー ■
1930年代初頭、フランス
30年もの間、銀行で真面目に勤めていたアンリ・ヴェルドゥ(チャールズ・チャップリン)は、大恐慌による不況で解雇され、以来、家族を養うために、重婚を繰り返し女性を殺めることをビジネスにしていた。

フランス北部、ワイン商、クーヴェ家。
ヴェルドゥと結婚した家族の女性が、預金を解約して連絡がとれなくなったことで、一家は彼を不審に思い、通報するべきかを話し合う。

フランスの小さな村。
書留郵便を受け取ったヴァルネー(ヴェルドゥ)は、妻が解約した6万フランを手に入れて株に投資する。

クーヴェ家の者達は司法警察に出向き、家族の行方が分からないことを届け出る。
...全てを見る(結末あり)

三年間で12人の中年女性が失踪している事件と、今回のケースが似ていることから、その確証を得るためにモロー刑事(チャールズ・エヴァンス)は捜査を始める。

妻を亡くしたことになっていたヴェルドゥは、家を売却することを考え、不動産業者を伴い現れた中年女性マリー・グロネイ(イソベル・エルソム)を歓迎する。

ヴェルドゥは、マリーが未亡人だと知り突然、言い寄り、彼女は気分を害してその場を立ち去る。

パリ
株価暴落で5万フランの損失を出したヴェルドゥは、妻の一人リディア・フローレイ(マーガレット・ホフマン)を訪ねる。

経済危機で、銀行が潰れるとリディア伝えたヴェルドゥは彼女を慌てさせて、銀行から全財産7万フランを下させる。

リディアを殺害して現金を手に入れたヴェルドゥは、翌朝、証券会社に5万フランを送金することを伝える。

ヴェルドゥは、足の不自由な本妻モナ(メイディ・コレル)と息子の元に戻り、彼女は、自分達のために尽くす夫に感謝する。

モナや息子の前でヴェルドゥは、善良で模範的な夫、そして父親だった。

船長に扮したヴェルドゥは、妻の一人アナベラ・ボヌール(マーサ・レイ)の元に向かう。

ヴェルドゥは、アナベラの財産管理の問題を指摘し、下した現金が隠してあることを知り、詐欺師から彼女を守るように見せかける。

仕事で旅立つ予定だったヴェルドゥは、それをキャンセルして、アナベラと楽しむことにする。

クロロホルムを手に入れたヴェルドゥは、あるキャバレーで、アナベラが投資しようとした、海水をガソリンに変える会社の社長と争いごとを起こす。

帰宅したヴェルドゥは、アナベラをクロロホルムで眠らせて殺害しようとするが、解雇したメイドが戻って来たために、それを諦めてパリに戻る。

ヴェルドゥはマリーの住所を調べ、偶然に出くわしたように見せかけて彼女に話しかける。

それを迷惑に思うマリーは、ヴェルドゥとまともに話そうともせずに自宅に入る。

花屋に向かったヴェルドゥは、マリーに、2週間バラを届けるよう指示する。

自宅に戻ったヴェルドゥは、友人モーリス・ボテロ(ロバート・イス)から、証拠の残らない可能性のある毒薬の製法を聞き、保険金詐欺で百万長者になれる話などで盛り上がる。

パリ
ボテロから聞いた話を基に、薬剤を調合したヴェルドゥは、それを試すために、街で見かけた娘(マリリン・ナッシュ)に声をかけて、彼女を家に連れて行く。

ヴェルドゥは、娘が病院か刑務所にいたことを見抜き、彼女が窃盗罪で逮捕され、出所したばかりだという話を聞く。

娘が空腹だと知り食事をすることになり、ヴェルドゥは、薬剤入りのワインを用意する。

彼女にワインを注いだヴェルドゥは、ボトルを入れ替え自分のグラスにもそれを注ぎ、彼女が食事をするのを観察する。

なかなかワインを飲まない娘と、愛や、戦傷者として亡くなった夫のことを話したヴェルドゥは、彼女が希望を失っていいることを知る。

実験を思い止まったヴェルドゥは、娘のグラスを替えてワインを注ぎ乾杯する。

ヴェルドゥは娘に金を渡し、彼の優しさに心打たれた彼女は涙し、再び人を信じられるかもしれないことを語る。

娘に、物事を見極めながら生きるよう忠告したヴェルドゥは彼女を見送る。

ヴェルドゥは、マリーからの伝言がないかを花屋で確認し、夫人失踪事件の捜査を始めたモロー刑事が彼の行動を追う。

モローは、家具商ということになっている、ヴェルドゥの家を訪ね、ヴァルネー、フローレイ、ボヌール各夫人のことを尋ねる。

ヴェルドゥは、モローが2週間自分を付けていたことを知り、何らかの確証を得ていたことに気づく。

それを自信有り気に話すモローは、ヴェルドゥが出した薬剤入りのワインを飲む。

殺人は立証できないというヴェルドゥに、モローは重婚罪で追い続けることを伝える。

ヴェルドゥは、妻モナに会わせてくれたら自白することを約束して、モローと共に彼女の元に向かう。

汽車の中で睡魔に襲われたモローは眠ってしまい、その場を離れたヴェルドゥは、その後、彼が心臓麻痺で死亡したことを知る。

街角で娘に再開したヴェルドゥは、自分に近づかない方がいことを伝えて冷たく接し、金を渡してその場を去る。

脱色剤の瓶に薬剤を詰めたヴェルドゥは、アナベラの元に向かう。

ヴェルドゥが目を話した隙に、メイドが脱色剤の瓶を割ってしまい、本物の瓶をその場に置く。

脱色剤をワインの瓶に入れたヴェルドゥは、それをアナベラが飲むのを見ていたが、誤って自分もそれを飲んでしまう。

焦ったヴェルドゥは取り乱すが、駆けつけた医師により胃を洗浄されて騒ぎは収まる。

田舎に静養に行くことにしたヴェルドゥとアナベラは、湖でボートを借りて楽しむことにする。

その場でアナベルを殺そうとしたヴェルドゥだったが、結局はそれに失敗する。

パリ
ヴェルドゥは、根負けしたマリーからのメッセージを花屋で受け取り、彼女に電話をして愛を伝える。

マリーの家を訪れ歓迎されたヴェルドゥは、その後、彼女と結婚することになる。

結婚式当日。
ヴェルドゥは、マリーの友人の夫ジャン・ラサール(ウィリアム・フロウリー)らと談笑していたが、その場にアナベラがいることを知り驚いてしまう。

ヴェルドゥは、アナベラに見つからないよう、身を隠すことに必死になるが、式が始りどうすることもできず、その場から逃げ去る。

その後、マリーやクーヴェ家の者達は、警察でヴェルドゥが関わっていると思われる事件について知ることになる。

株価が大暴落し、銀行が破綻して暴動が起き、ヴェルドゥも破産してしまう。

世の中の混乱に乗じてファシズムが台頭し、ヴェルドゥは心の沈む日々を送っていた。

そんな時ヴェルドゥは、ある裕福な婦人(マリリン・ナッシュ)に声をかけられて車に乗せられる。

ヴェルドゥは、婦人が、自分が親切にした娘だと気づき、彼女が、軍需工場の経営者と出会ったことを知る。

婦人とクラブに向かったヴェルドゥは、今回の混乱で妻子を失ったことを語る。

その場に現れた、クーヴェ家の者達はヴェルドゥに気づき警察に通報する。

それを知ったヴェルドゥは彼らを部屋に閉じ込めて、婦人に別れを告げて、彼女からもらった名刺を破り捨てる。

ヴェルドゥは、駆けつけた警察が現れても逃げようとせずに逮捕される。

審理は進み、ヴェルドゥは有罪となり、彼は、刑の宣告の前に発言を許される。

世の中は、殺人のために大量破壊兵器を作っているが、その点では自分はアマチュアであるとヴェルドゥは語る。

傍聴席にいた、ヴェルドゥに世話になった婦人は、涙を浮かべて彼を見つめる。

処刑を前にしたヴェルドゥは、戦争や紛争を含めて、殺しはビジネスであり、一人を殺せば悪人で、100万人なら英雄だと語る。

その後、ヴェルドゥは神父を迎え、自分を救いたいという彼に言葉をかけられ、係官に斬首刑執行を言い渡される。

ヴェルドゥは、勧められたタバコを断り、ラム酒を飲み干し、神父に祈りを捧げられながら処刑場に向かう。


解説 評価 感想 ■

*(簡略ストー リー)
1930年代初頭、フランス
アンリ・ヴェルドゥは、30年間勤めた銀行を、大恐慌による不況で解雇される。
以来ヴェルドゥは、足の不自由な妻モナと息子を養うために、富豪女性を狙い重婚による殺人をビジネスにしていた。
家族がヴェルドゥと結婚した一家は、失踪した身内の件を警察に届け出て捜査は始まる。
その女性を殺害し、大金を手にしたヴェルドゥは、それを株式に投資して、次のターゲットを狙う。
しかし、株価が暴落したことで、ヴェルドゥは妻の一人リディアを殺害して財産を手に入れ、家族の元に向かう。
更にヴェルドゥは、もう一人の妻アナベラの殺害に失敗してしまう。
その後、友人から、証拠の残らない可能性のある毒薬の製法を聞いたヴェルドゥは、それを、街で見かけた娘に試そうとするのだが・・・。
__________

1920年代、フランスに実在した殺人犯アンリ・デジレ・ランドリューをモデルにした作品への出演をオーソン・ウェルズに依頼されたチャールズ・チャップリンが、一旦はそれを断るものの、その後、アイデアを加えて製作した作品。

殺人をビジネスと割り切る中年男性を描き、戦争や紛争を続ける世界は、それを規模で正当化しようとしていることをシニカルに伝えている作品。

オーソン・ウェルズのアイデアを基に、チャップリンの、社会性をテーマにしたコメディ・ドラマであり、社会批判を象徴する、”一人の殺人は悪で、100万人の殺人は英雄となる”は、名セリフとなった。

作品は様々な問題を抱え、公開の段階になって在郷軍人カトリック団体などから激しい抗議を受け、興行的には大失敗した作品でもある。
紆余曲折あり、反戦運動が活発化した1970年代以降に評価は高まった。

第20回アカデミー賞では、脚本賞にノミネートされた。

内容はともかくとして、50代後半のチャップリンの、表現力や身のこなしは衰えを見せることなく、計算し尽くされた職人芸には圧倒される。

国民、軍への慰問活動などによる長年の貢献で、大統領自由勲章も授与されたコメディアン、怪演が光る主人公の妻の一人マーサ・レイ、主人公に狙われる未亡人のイソベル・エルソム、妻の一人マーガレット・ホフマン、主人公に毒薬の製法を教える友人ロバート・ルイス、主人公に親切にされる娘マリリン・ナッシュ、未亡人のメイド、マージョリー・ベネット、主人公の妻メイディ・コレル、殺害される刑事チャールズ・エヴァンスなどが共演している。


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