南米のチリのクーデターの混乱に巻き込まれ失踪したアメリカ人青年の行方を追う父親と妻の懸命の捜索を描く、監督、脚本コスタ=ガヴラス、主演ジャック・レモン、シシー・スペイセク他共演の社会派ドラマ。 |
■ スタッフ キャスト ■
監督:コスタ=ガヴラス
製作総指揮
ピーター・グーバー
ジョン・ピーターズ
製作
エドワード・ルイス
ミルドレッド・ルイス
原作:トーマス・ハウザー”The Execution of Charles Horman: An American Sacrifice”
脚本
コスタ=ガヴラス
ドナルド・スチュワート
撮影:リカルド・アロノヴィッチ
編集:フランソワーズ・ボノー
音楽:ヴァンゲリス
出演
エドワード・ホーマン:ジャック・レモン
ベス・ホーマン:シシー・スペイセク
テリー・サイモン:メラニー・メイロン
チャールズ・ホーマン:ジョン・シェア
レイ・タワー米海軍大佐:チャールズ・シオッフィ
フィル・パットナム:デヴィッド・クレノン
フランク・テルッジ:ジョー・レガルブート
デヴィッド・ホロウェイ:キース・ザラバイカ
アメリカ大使:リチャード・ヴェンチャー
ショーン・パトリック大佐:ジェリー・ハーディン
ケイト・ニューマン:ジャニス・ルール
アンドリュー・バブロック:リチャード・ブラッドフォード
アメリカ 映画
配給 ユニバーサル・ピクチャーズ
1982年製作 122分
公開
北米:1982年2月12日
日本:1982年10月
北米興行収入 $7,431,580
世界 $14,986,790
■ アカデミー賞 ■
第55回アカデミー賞
・受賞
脚色賞
・ノミネート
作品
主演男優(ジャック・レモン)
主演女優(シシー・スペイセク)
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
1973年9月、南米、チリ。
作家志望のアメリカ人チャールズ・ホーマン(ジョン・シェア)は、友人のテリー・サイモン(メラニー・メイロン)と共に、アメリカ海軍大佐レイ・タワー(チャールズ・シオッフィ)に送られて、軍事クーデターが起きた戒厳令下の首都サンチャゴに戻る。
翌日、チャールズは、妻ベス(シシー・スペイセク)の様子を見に行き、彼女の無事を確認する。
その後、帰国する方法を各方面で探っていたチャールズとテリーは、ニューヨークのフリー記者ケイト・ニューマン(ジャニス・ルール)に出会い、出国できるまで安全な場所にいるよう助言される。
ホテルに部屋を取るようテリーに指示したチャールズは、ベスを呼んで戻ると言って立ち去る。
知人のデヴィッド・ホロウェイ(キース・ザラバイカ)とフランク・テルッジ(ジョー・レガルブート)の元に行っていたベスは、帰りの交通手段がなくなり、身を隠して街角で夜を明かす。
自宅に戻ったベスは、兵士によって部屋が荒らされたのを知り、そしてチャールズの消息は不明となる。
ベスから、チャールズの失踪を知らされた父親エドワード・ホーマン(ジャック・レモン)は、政府の協力も得られないままチリに向かう。 現地に着いたホーマンは、領事フィル・パットナム(デヴィッド・クレノン)の出迎えを受け、ベスの元に送られる。 ホーマンは、自立しきれない息子チャールズが何をしたのかをベスに問う。 パットナムのセッティングで、アメリカ大使(リチャード・ヴェンチャー)やタワー大佐に面会したホーマンとベスは、全面的な協力を約束されて安心する。 しかし、チャールズが失踪して2週間、既に同じ話しばかり聞かされていたベスは、不快感を露にする。 その後、ホーマンとベスは、テリーからクーデターが起きた時のことを聞く。 テリーと共に、リゾート地ビーニャ・デル・マールに滞在していたチャールズは、軍に関与していたアメリカ人アンドリュー・バブロック(リチャード・ブラッドフォード)に出会った。 バブロックが、軍に関係している仕事をしていたことを聞いたベスは、クーデターにアメリカが関与していたことを確信する。 タワーが将軍に会うと聞いていたベスは、テリーと彼の家に向かうものの将軍は現れず、二人はホテルに戻る。 ホーマンは、タワーの家で、入浴までしたというベスや、チャールズと行動を共にしていたテリーに不信感を抱く。 翌日、チャールズが連れ去られた時の目撃証言を聞いたホーマンとベスは、ホテルでニューマンと接触する。 そこにパットナムとタワーらが現れっるが、ホーマンに朗報を伝えることは出来ず、逆にベスからの情報提供を求める。 チャールズが、左翼系新聞”FIN”の記事翻訳の仕事をしていたことで、軍人を装った左翼の拉致や、政府を混乱させる自作自演説も浮上する。 ベスは当然それを否定し、ホーマンは軍内部の秘密組織を使った捜査を依頼するが、パットナムは記者との接触を控えるよう忠告する。 その後ホーマンは、タワーに渡す友人のリストを作らないベスと、理想を追うばかりで不平不満ばかりを言い並べる、チャールズを含めた若者の生き方を非難する。 翌日、チャールズの友人で”FIN”に関わっていたデヴィッドに会ったホーマンとベスは、彼がフランクと共に捕らえられた時の話を聞く。 デヴィッドは翌日釈放され、連れ去られた後に帰国したというフランクは、消息が不明だった。 大使に会ったホーマンは、アメリカが警察を訓練する組織などに関与していないことを確認する。 そして、チャールズが、どんな姿であっても戻るよう最善を尽くして欲しいことをホーマンは訴える。 その後、ホーマンとベスは、一般の病院から精神病院まで回りチャールズを捜すが、彼は見つからなかった。 政治犯が収容されている競技場で、デヴィッドとフランクの逮捕記録がないことを確認したホーマンとベスはフィールドに向かう。 ベスは、チャールズが観客席の政治犯の中にいるかもしれないと考えながら、彼らに話しかける。 ニューマンに接触したホーマンは、捕らえられたチャールズらしき男を見かけた警官から、その場にチリの諜報機関の長官がいたことを知る。 そしてホーマンは、捕らえられていた男が、殺されたであろう事実を知らされ呆然とする。 その男がチャールズかは不明だったが、彼がビーニャで何かを知ったのではないかと考える。 チャールズがつけていたノートを確認したホーマンとベスは、ショーン・パトリック大佐(ジェリー・ハーディン)やタワー、軍に関与するバブロックがいたことで、クーデターがビーニャで計画されたことを、チャールズが知ったのではないかというニューマンの考えを聞く。 ホーマンとベスは遺体安置所に向かい、フランクの死体は確認するがチャールズは見つからなかった。 1週間が経ち、一連の調査を通してホーマンは、ベスの勇敢さとチャールズとの愛が深かったことを理解し、彼女に今までの態度を謝罪する。 そして、ホーマンはある筋の情報で、チャールズが失踪から3日後に処刑された可能性が高いことを知る。 大使に呼ばれたホーマンは、チャールズの無事を知らされるものの、それを信ずることはなく、国家の利益の犠牲になった息子の死を認めその場を立ち去る。 ホテルに戻ったホーマンは、ベスが警察に連行されるのに同行しようとする。 そこに、チャールズの遺体が競技場の壁の中から見つかったという、パットナムからの連絡が入る。 ホーマンはベスの元に向かい、彼女に帰国する意思を伝え、チャールズの死を知らせる。 帰国するホーマンはパットナムとタワーに対し、関係者全員を訴えることを告げ、ベスと共に搭乗口に向かう。 ホーマンは、国務長官のヘンリー・キッシンジャーを含む11人を、チャールズの死に対する共謀と怠慢で告訴する。 しかし、数年に及ぶ訴訟後も、国家機密ということで情報は未公開となり、訴訟は棄却された。
...全てを見る(結末あり)
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*(簡略ストー リー)
1973年9月、チリ。
作家志望のアメリカ人チャールズ・ホーマンは、軍事クーデター直後に、妻ベスを残して失踪してしまう。
チャールズの父エドワード・ホーマンは現地入りして、大使や領事の協力を約束され、ベスと共に息子を捜し始める。
ところがホーマンは、政府から満足できる協力は得られずに、戒厳令が敷かれる街で危険を覚悟しながら独自の捜査を進める。
進展が見えない中、理想ばかりを追っていた息子チャールズの考えや、ベスとの意見の食い違いに苛立つホーマンだった。
やがてホーマンは、チャールズの周囲からの情報を入手していく間に、自分自身を探求していた息子やベスの行動を理解していくのだが・・・。
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1978年に発表された、トーマス・ハウザーの著書”The Execution of Charles Horman: An American Sacrifice”を基に映画化された作品。
*原作再版時タイトル”Missing”
チリの軍事クーデター(1973年9月11日)発生時に、反政府軍が、アメリカ政府からの多大な支援を受けたことによる犠牲者として扱われている実在のアメリカ人チャールズ・ホーマン失踪事件を基に、コスタ=ガヴラスが、リアリズム溢れる映像でその真相を鋭く描いた作品。
第55回アカデミー賞では脚色賞を受賞した。
作品、主演男優(ジャック・レモン)、主演女優賞(シシー・スペイセク)にノミネートされた。
第35回カンヌ映画祭で、見事にパルム・ドールを受賞した。
メキシコでのロケは緊迫感があり、冷戦下での、アメリカによる社会主義政権打倒の図式が生々しく描かれている。
ラストでもあるように、アメリカ政府は、国家機密としてその情報公開はしていないが、ドラマでは、自国民を巻き添えにした国家を批判するかたちで終わり、その権力と戦った勇気を称えているところが、またアメリカらしい。
コメディアンとして高い人気と評価を得たジャック・レモンは、1970年代に入りシリアスな演技でもその実力を発揮し、本作でも息子の生き方を理解できない一方、命を懸けて彼を救おうと国家まで敵に回す父親を、気迫に満ちた演技で熱演している。
日本人の感覚では考え難い義理の親子関係は友人のようでもあり、真っ向から意見し合う青年の妻役シシー・スペイセクが、見かけは華奢なのだが骨のある女性を、実力派らしく好演している。
失踪するチャールズ・ホーマン役のジョン・シェア、主人公の友人であり協力者のメラニー・メイロン、ジョー・レガルブート、キース・ザラバイカ、政府側の大佐チャールズ・シオッフィ、ジェリー・ハーディン、領事デヴィッド・クレノン、アメリカ大使のリチャード・ヴェンチャー、主人公達に協力するフリー記者役のジャニス・ルール、軍の関係者役のリチャード・ブラッドフォードなどが共演している。