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ミルドレッド・ピアース Mildred Pierce (1945)

1941年に発表された、ジェームズ・M・ケインの同名小説を基に製作された作品。
傲慢な娘に人生を捧げながら事業を成功させた女性が苦悩の末に関る殺人事件を描く、監督マイケル・カーティスジョーン・クロフォードジャック・カーソン共演によるフィルム・ノワールの傑作ドラマ。

アカデミー賞 ■ ストーリー ■ 解説


ドラマ


スタッフ キャスト ■
監督:マイケル・カーティス

製作総指揮:ジャック・L・ワーナー
製作:ジェリー・ウォルド
原作:ジェームズ・M・ケイン
脚本
ラナルド・マクドゥガル

ウィリアム・フォークナー
撮影:アーネスト・ホーラー
編集:デヴィッド・ワイスバート
音楽:マックス・スタイナー

出演
ミルドレッド・ピアース・ベラゴン:ジョーン・クロフォード

ウォリー・フェイ:ジャック・カーソン
モンティ・ベラゴン:ザカリー・スコット
アイダ・コーウィン:イヴ・アーデン
ヴィーダ・ピアース・フォレスター:アン・ブライス
アルバート”バート”ピアース:ブルース・ベネット
マギー・ビーダーホフ:リー・パトリック
ピーターソン:モローニ・オルセン
ケイ・ピアース:ジョー・アン・マーロー
ロッティ:バタフライ・マックイーン

アメリカ 映画
配給 ワーナー・ブラザーズ

1945年製作 110分
公開
北米:1945年9月24日
日本:未公開
製作費 $1,453,000


アカデミー賞 ■
第18回アカデミー賞

・受賞
主演女優賞(ジョーン・クロフォード
・ノミネート
作品
助演女優(イヴ・アーデン/アン・ブライス
脚色・撮影賞


*詳細な内容、結末が記載されています。
ストーリー ■
ロサンゼルス
ある夜、ビーチハウスでモンティ・ベラゴン(ザカリー・スコット)が銃撃され、”ミルドレット”と言い残して息絶える。

レストラン経営者のミルドレッド・ピアース・ベラゴン(ジョーン・クロフォード)は、放心状態のまま桟橋から海面を見つめていたが、警官に声をかけられ、その場を立ち去る。

不動産業者の知人ウォリー・フェイ(ジャック・カーソン)に呼び止められたミルドレッドは彼を誘う。

ビーチハウスに着いたミルドレッドは、時を見計らってその場を外し、家を出てウォリーを閉じ込めてしまう。

ウォリーは、異変に気づいた後モンティの死体を発見して、窓を割って外に出るのだが、駆けつけた警官に取り押さえられる。
...全てを見る(結末あり)

自宅に戻ったミルドレッドは、待ち構えていた警官に同行を求められ、裁判所の犯罪課オフィスに向かう。

ミルドレッドはその場で、ウォリーと前の夫アルバート”バート”ピアース(ブルース・ベネット)を見かける。

その後ミルドレッドは、ピーターソン刑事(モローニ・オルセン)に呼ばれ、犯人が、動機のないウォリーではなくバートだと言われ戸惑ってしまう。

ミルドレッドはバートをかばい、彼がウォリーと共同で不動産業を始めていた頃のことから語り始める。
__________

不景気になり、ウォリーと手を切り職を失ったバートは、専業主婦のミルドレッドが、娘のヴィーダ(アン・ブライス)の才能を伸ばしたいと言って、習い事などをさせていることを不満に思っていた。

バートにかかってきた、マギー・ビーダーホフ(リー・パトリック)からの電話をきっかけに、二人は言い争いになり彼は家を出てしまう。

ミルドレッドは、帰宅した娘ヴィーダとケイ(ジョー・アン・マーロー)に、バートとの別居を決意したことを伝える。

自分のせいで、傲慢に育ってしまったヴィーダに戸惑いながら、ミルドレッドはその後、生活に行き詰まり、そんな時に、彼女が想い出すのがバートだった。

その後、ウォリーがミルドレッドに言い寄り、彼女はそれを拒むものの、ヴィーダは、財力のある彼との結婚を母に勧める。

愛のない結婚をする気はないミルドレッドは、働く決心をして職探しを始める。

そしてミルドレッドは、たまたま入ったレストランで、アイダ・コーウィン(イヴ・アーデン)に誘われてウエイトレスになる。

一人前になったミルドレッドは、これが天職だと感じ、3ヶ月でチーフ・ウエイトレスになる。

自宅では、メードのロッティ(バタフライ・マックイーン)を雇い、店で出すパイを焼き、ミルドレッドは、寝る間を惜しんで働き、娘達の習い事を続けさせることも出来た。

そんなミルドレッドは、自分のしている仕事が、ヴィーダに知られることを心配する。

しかし、それをヴィーダに知られたことで、ミルドレッドは自分の店を持つことを決心する。

ミルドレッドはウォリーに相談し、目をつけていた物件の所有者の、富豪ベラゴンに会いに二人で向かう。

ベラゴンに熱意を伝えたミルドレッドは、成功後の返済を承諾されて物件を手に入れる。

希望に燃えるミルドレッドだったが、物件の権利が、夫バートの債権者に狙われる危険をウォリーに指摘される。

バートに離婚を拒まれたミルドレッドは、訴訟と共に開店の準備も始め、その間、ベラゴンと親交を深めていく。

そんな時ミルドレッドは、最愛の娘ケイを肺炎で亡くしてしまい、悲しみに耐えながらようやく店をオープンさせる。

ミルドレッドの思惑は当たり、アイダを支配人に招いた店は大盛況となり、そしてバートは、ベラゴンに敵意を見せながら離婚に同意する。
__________

そこまでの話を聞いたピーターソンは、アリバイがなく動機があるバートが犯人であることを確信し、それをミルドレッドに告げる。

そこにある情報が入り、ビーチハウスに、夫ベラゴンの死体があるのを承知で、ミルドレッドがウォリーを誘ったことを知ったピーターソンは、何かを隠していると彼女を追求する。

ミルドレッドは、自分がベラゴンを殺したことをピーターソンに伝え、その理由を語り始める。
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その後も店は繁盛し、3年間に5店舗の支店を構えるようになったミルドレッドは、ヴィーダのために裕福になり続ける必要があった。

ヴィーダは、レディとして上流の若者達と付き合うようになり、その頃から、ベラゴンの財政状態が悪化し、ミルドレッドは彼への資金援助を始める。

それに苦言を呈するウォリーだったが、ミルドレッドは聞く耳を持たない。

ベラゴンへの愛はなくなっていたミルドレッドは、ヴィーダまで彼に利用されていることを、アイダから知らされる。

ミルドレッドは、ヴィーダから離れるようベラゴンに伝え、手切れ金を渡して彼を追い払う。

ある日、ミルドレッドは、ヴィーダが富豪の青年と結婚してしまったことを知り、彼女に愛のないことを確認し、直ちにそれを解消しようとする。

ヴィーダは妊娠していると言って、相手側から1万ドルを手に入れるが、ミルドレッドはそれが嘘だったことを知る。

さらに、その金が自分から逃れるための資金だと言われたミルドレッドは、腐りきった心のヴィーダを見限り追い出してしまう。

何もかも忘れようと、メキシコに旅行に出かけたミルドレッドだったが、ヴィーダが気になり家に戻る。

その夜、バートに誘われたミルドレッドは、ウォリーの店で歌手として働くヴィーダの元に連れて行かれる。

関係改善を願ったミルドレッドは、ヴィーダが未だにベラゴンのような生活を求めていることを知る。

ベラゴンを訪ねたミルドレッドは、ヴィーダのためを思い彼に結婚を申し込む。

家名だけは引き継いでいるプライドのあるベラゴンは、共同事業者として権利の1/3を要求し、ミルドレッドはそれを承諾して、二人の契約結婚は成立する。

その後ミルドレッドは、バートの説得で現れたヴィーダが戻ったことを喜び、改心した娘を抱きしめる。

ヴィーダの誕生パーティーが開かれていた夜、ミルドレッドは、娘への浪費で経営が悪化し、破産しかけていることを知らされる。

ベラゴンも自分を見捨て、自社株を売っていることをウォリーから聞いたミルドレッドは、拳銃を手にしてビーチハウスに向かう。
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そこまでの話を聞いたピーターソンは、ビーチハウスには他の人物もいたことを指摘する。

ピーターソンは、高飛びしようとしていた犯人のヴィーダを呼び、殺人の理由を聞く。

自分を助けると言っていたミルドレッドに、ヴィーダがそれを問質したため、ピーターソンは、それが、彼女の犯行の自白と判断する。

そして、ミルドレッドは、事件の真相を語り始める。
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ビーチハウスに着いたミルドレッドは、ヴィーダとベラゴンが愛し合っていることを知る。

ベラゴンを自分と離婚をさせ、結婚すると言い放つヴィーダを見て愕然としたミルドレッドは、銃を手にするものの思い止まり、それを捨てて立ち去る。

ヴィーダは、結婚する約束などしてないとベラゴンから言われ、取り乱して彼を射殺してしまう。

銃声を聞いたミルドレッドは、全てを諦めて警察に通報しようとするが、動揺して助けを求めるヴィーダを見捨てられず受話器を置く。
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ピーターソンの前で泣き崩れるミルドレッドは、自分の責任を感じて、ヴィーダを助け罪を受けようとしたことを伝える。

しかし、ピーターソンは、罪は本人が償うべきだと言って、ヴィーダを逮捕して連行させる。

ピーターソンは、警察官の辛い役目をミルドレッドに説明し彼女を送り出す。

そして、失意のミルドレッドは、彼女を待ち構えていたバートに寄り添われて裁判所を後にする。


解説 評価 感想 ■

*(簡略ストー リー)
ある夜、ビーチハウスでベラゴンという男性が殺される。
レストラン経営者である、ミルドレッド・ピアース・ベラゴンは、知人のウォリーを、夫の死体があるビーチハウスに誘い、彼を犯人に仕立てあげようとする。
その後、帰宅したミルドレッドは警察に呼ばれ、ウォリーと元夫バートが、その場にいることを確認する。
ピーターソン刑事から、バートが犯人だと言われたミルドレッドは驚き、彼女は自分の歩んできた人生と、バートやウォリーについてを語り始める。
娘のヴィーダに、人生を捧げていたミルドレッドは、そのせいで彼女が傲慢な性格に育ってしまったことを知りつつも、バートに意見され、彼との別居を決意する。
職探しを始めたミルドレッドは、あるレストランでウエイトレスを始め、それが天職だと感じ、がむしゃらに働き、その後、自分の店を開くことを計画する。
不動産業者のウォリーに相談したミルドレッドは、富豪のベラゴンの物件に目を付け、彼と交渉してそれを手に入れる。
そして、オープンした店は、ミルドレッドの思惑通りに大繁盛し、彼女は財力を得て、ヴィーダに贅沢な生活をさせる。
同時にミルドレッドは、ベラゴンとの親交を深め、財産が奪われないよう、バートとの離婚も成立させる。
そして、ミルドレッドは着実に成功を手に入れていくのだが・・・。
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サスペンス・タッチで始まる、ショッキングな殺人シーン、明らかに成功している主人公の、謎めいた事件を語り始める苦悩の表情など、マイケル・カーティスの斬新な映像表現に圧倒され、観客は冒頭から、早くも画面に引き込まれていく。

第二次大戦終結直後の公開作品なのだが、その後も日本では劇場未公開に終わった。
今観ても刺激的な場面など、見応え十分な仕上がりに加え、個性豊かな出演者の演技も魅力である一級の作品と言える。

1996年、アメリカ議会図書館が、国立フィルム登録簿に登録した作品でもある。

第18回アカデミー賞では、主演女優賞(ジョーン・クロフォード)を受賞した。
・ノミネート
作品
助演女優(イヴ・アーデン/アン・ブライス
脚色・撮影賞

マックス・スタイナーのドラマチックな音楽も、作品を大いに盛り上げる。

既にキャリアを重ね、貫禄などと言う言葉では言い尽くせない、男性陣をも圧倒する存在感を示すジョーン・クロフォードは、傲慢な娘を最後まで守ろうとする、波乱の人生を歩む女性を見事に演じ切っている。

何度か突き放す場面はあるものの、見捨てられない娘に対する主人公の気持ちを、受け入れられるか否か・・・。
議論の的となる展開を、語り合うのも面白い。

彼らしい軽いノリの役柄ながら、人間味を兼ね備えた主人公の知人を好演するジャック・カーソン、富豪から凋落しつつある時期に主人公に出会う、殺人の被害者ザカリー・スコット、主人公に雇われる支配人として、彼女をサポートする印象深い役柄のイヴ・アーデン、結局は改心することない小悪魔的な主人公の娘アン・ブライス、最後まで妻と娘を見守るブルース・ベネット、その愛人リー・パトリック、刑事モローニ・オルセン、肺炎で亡くなる主人公の娘ジョー・アン・マーロー、メードのバタフライ・マックイーンなどが共演している。


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