1988年に初演されたデヴィット・ヘンリー・ファンの戯曲”M.バタフライ”を基に製作された作品。 フランスの外交官と中国人の京劇の歌手との恋を描く、監督デヴィッド・クローネンバーグ、主演ジェレミー・アイアンズ、ジョン・ローン、バルバラ・スコヴァ、イアン・リチャードソン他共演の恋愛ドラマ。 |
■ スタッフ キャスト ■
監督:デヴィッド・クローネンバーグ
製作:ガブリエラ・マルチネリ
製作総指揮
デヴィット・ヘンリー・ファン
フィリップ・サンド
原作:デヴィット・ヘンリー・ファン”M.バタフライ”(戯曲)
脚本:デヴィット・ヘンリー・ファン
撮影:ピーター・サシツキー
編集:ロナルド・サンダース
音楽:ハワード・ショア
出演
ルネ・ガリマール:ジェレミー・アイアンズ
ソン・リリン:ジョン・ローン
ジャンヌ・ガリマール:バルバラ・スコヴァ
トゥーロン大使:イアン・リチャードソン
バーデン夫人:アナベル・レヴェントン
同志チン:シズコ・ホシ
エンタスリン:ヴァーノン・ドブチェフ
アメリカ 映画
配給 ワーナー・ブラザーズ
1993年製作 101分
公開
北米:1993年10月1日
日本:1994年4月23日
北米興行収入 $1,499,800
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
1964年、北京。
フランス大使館の外交官である経理のルネ・ガリマール(ジェレミー・アイアンズ)は、ある夜会で”蝶々夫人”を観劇する。
バーデン夫人(アナベル・レヴェントン)と共に席に着いたガリマールは、主演女優のソン・リリン(ジョン・ローン)の美しさに心を奪われる。
公演後、ソンに声をかけたガリマールは、教養を深めるるため、本当の演劇を知りたければ京劇を観るべきだと言われる。
帰宅したガリマールは、妻のジャンヌ(バルバラ・スコヴァ)に、京劇の歌手の”蝶々夫人”を観たことを話す。 3週間後。 公演後、楽屋に向かったガリマールはソンを家まで送る。 家に着いたソンは、いつか訪ねて来てほしい、もっと教養を深めましょうと伝えてガリマールと別れる。 翌朝ジャンヌは、夜遅く帰り、着替えもせずに眠っていたガリマールの浮気を疑う。 その夜、ソンの家を訪ねたガリマールは歓迎されるものの、これは危険なことであり、スキャンダルが怖いと言われる。 気持ちを抑えきれないガリマールはソンにキスしてしまい、罪を感じる彼女は姿を消す。 あるパーティーに出席したガリマールは、経費の領収書をだすことに不満を抱く情報員に嫌みを言われる。 6週間も姿を見せないガリマールに手紙を書いたソンは、苛立ち始める。 ソンからの手紙を受け取ったガリマールは、その内容を気にしながらトゥーロン大使(イアン・リチャードソン)に呼ばれる。 副領事に昇進させると言われたガリマールは驚き、ソンの元に向かい、それを伝える。 君は”マイ・バタフライ”だと言われたソンは、ガリマールの愛を受け入れ、禁断の恋の道を覚悟し、彼を喜ばせる。 翌日、情報員を集めたガリマールは、不満げな彼らに協力を要請する。 ソンとの親交を深めるガリマールは、彼女と共に”万里の長城”にピクニックに行く。 ベトナムや中国国内の情勢を詳しく知ろうとするトゥーロンは、情報収集能力のないアメリカの出方を含めてガリマールに分析させる。 実は、思想的堕落の罪に問われていたソンは、共産党のスパイとして協力を強要された女装した男だった。 ソンは、現れた同志チン(シズコ・ホシ)に、アメリカ軍が17万人増強することを聞き出したことを伝える。 バーデン夫人とも浮気をしたガリマールは、ソンから妊娠したことを知らされる。 出産のために故郷の村に戻るソンを、ガリマールは駅で見送る。 チンに会ったソンは、混血の男の子を手配してほしいことを伝えるものの、無理だと言われる。 それならば、これ以上ベトナムの情報は手に入れられないと言われたチンは、仕方なくそれに従う。 紅衛兵の活動が活発化し、外国人排斥の理由を探っていると考えられるため、外交官の行動は制限されることになり、トゥーロンは、ガリマールら部下にそれを伝える。 そんな時ガリマールは、男の子を抱いて戻ったソンに結婚を申し込む。 パリで一緒に住むことを提案したガリマールは、妻とは別れることを伝える。 芸術家は犯罪者だと紅衛兵から言われているソンは無理だと答え、ガリマールに別れを告げる。 アメリカの分析が正しくなかったガリマールは責任を追及され、帰国することになる。 ソンの家に向かったガリマールは、そこが共同生活の場であることを知り、ソンの姿はなかった。 その頃ソンは、過酷な肉体労働を課せられていた。 1968年、パリ。 そんなある日、訪ねてきたソンの姿に驚くガリマールは、彼女を歓迎する。 外交文書の郵便配達員をしていたガリマールは、情報局のエンタスリン(ヴァーノン・ドブチェフ)に連行される。 出廷したガリマールは、スパイだった男のソンが証言するのを見守る。 当局に息子が押さえられているということを伝え、ガリマールを言うなりにして外交文書を入手したことをソンは語る。 ソンは、一緒に暮らしても、ガリマールは東洋的な愛情表現に応じてくれたため、性器に一度も降らなかったという信じ難い証言をする。 ガリマールと同じ護送車に乗せられたソンは全裸になり、その姿を見せられたガリマールは苦しむ。 ただの男を想っていた自分を嘆くガリマールに近づくソンは、最初の日の芝居小屋のことを語る。 目を閉じて触れるソンの肌は、ガリマールにとって”マダム・バタフライ”の感触だった。 愛してほしいと言われたガリマールは、真の姿を見せたソンに、愛したのは幻だと伝える。 男が演じた女を愛していたと言うガリマールは、それに代わるものはないと伝えてソンから遠ざかる。 刑務所に収監されたガリマールは、囚人達を前に、自分は完璧な女に愛された男だと言いながら、”蝶々夫人”の曲を流して女装し始める。 その頃ソンは、国外退去処分を受ける。 女装を終えたガリマールは、自分の名前の後に、別名”マダム・バタフライ”と語り、喉を切って自ら命を絶つ。
...全てを見る(結末あり)
街の劇場に京劇を観に行ったガリマールは、ソンの美しさに魅了されてしまう。
かつての北京を想いながら学生運動を見守るガリマールは、ジャンヌと別れ一人で暮らしていた。
*(簡略ストー リー)
1964年、北京。
フランス大使館の外交官である経理のルネ・ガリマールは、ある夜会で”蝶々夫人”を観劇し、主演女優のソンの美しさに心奪われる。
ソンと話したガリマールは誘われて京劇も鑑賞し、彼女に魅了される。
押さえきれない思いをソンに伝えたガリマールは、心を許した彼女との親交を深める。
その後ガリマールは、ソンの秘密を知らないまま、その関係はやがて愛に変わるのだが・・・。
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1988年にトニー賞を受賞したデヴィット・ヘンリー・ファンの戯曲”M.バタフライ”を基に、デヴィッド・クローネンバーグが監督したラブ・ストーリー。
「戦慄の絆」(1988)で組んだデヴィッド・クローネンバーグとジェレミー・アイアンズが再び挑んだ異色の恋愛劇で、撮影のピーター・サシツキー、編集のロナルド・サンダース、そして音楽のハワード・ショアなど、同作とほぼ同じスタッフで製作された作品。
文化大革命前夜の北京で始まる物語は、思想的堕落の罪に問われていた女優(男)が、当局にスパイ活動を強要され、東洋的な愛情表現を利用ししながらフランス人外交官と関係を持ち、それが愛に変わる姿を情緒的に描く内容となっている。
実力派として高い評価を受けるジェレミー・アイアンズの繊細な感情表現は見事だ。
人生の浮き沈みを経験しながら、その瞬間に味わった最高の喜びを想いつつ命を絶つ男性を深く演じている。
主人公が心奪われる”女優”を演ずるジョン・ローンの女装姿に無理があり、男に戻った姿の方が美しさを感じてしまう。
相手がいくら東洋的な愛情表現に応じてくれたとは言え、子供まで生まれる関係を違和感なく演出するのには無理がある。
主人公の妻バルバラ・スコヴァ、フランス大使のイアン・リチャードソン、主人公と関係する夫人アナベル・レヴェントン、ソン(ジョン・ローン)にスパイを強要する当局員シズコ・ホシ(マコ岩松夫人)、フランス情報局員のヴァーノン・ドブチェフなどが共演している。