2004年にブロードウェイで上演されたスティーヴン・ベルバー演出の”Match”を基に製作された作品。 元バレエ・ダンサーのダンス・インストラクターが自分が実の父親であることを確かめようとする男性と妻と共に戸惑いながら葛藤する姿を描く、監督、脚本スティーヴン・ベルバー、主演パトリック・スチュワート、カーラ・グギーノ、マシュー・リラード他共演のドラマ。 |
・ドラマ
■ スタッフ キャスト ■
監督:スティーヴン・ベルバー
製作
デヴィッド・パーマット
マット・ラトナー
リック・ローゼンタール
戯曲:スティーヴン・ベルバー”Match”
脚本:スティーヴン・ベルバー
撮影:ルーク・ガイスビューラー
編集:マドレーヌ・ギャヴィン
音楽:スティーヴン・トラスク
出演
トバイアス”トビー”パウエル:パトリック・スチュワート
リサ:カーラ・グギーノ
マイク:マシュー・リラード
ラウル:ジェイミー・ティレリ
キャビー:マドューカ・ステディ
ダリル:ジェフリー・ノーフツ
ジム:ロブ・ヤン
アメリカ 映画
配給 IFC Films
2014年製作 92分
公開
北米:2014年1月14日
日本:未公開
北米興行収入 $37,290
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
ニューヨーク、”ジュリアード音楽院”。
ダンス・インストラクターのトバイアス”トビー”パウエル(パトリック・スチュワート)は、レッスンを終えて同僚のダリル(ジェフリー・ノーフツ)から声をかけられる。
山で週末を過ごすパーティーに誘われたトビーは、それを断る。
アパートで一人暮らしのトビーは、編み物を楽しみ、切った爪を瓶にためていた。
そんなトビーは、友人のラウル(ジェイミー・ティレリ)のダイナーである夫婦と待ち合わせをする。
マイク(マシュー・リラード)と妻のリサ(カーラ・グギーノ)は、ダイナーで待っていてくれたトビーに歓迎される。
会いに来た理由を尋ねたトビーは、リサから、バレエと振り付けの歴史を研究するための論文を書いていると言われる。 会話を録音する許可を取ったリサは、トビーに経歴を尋ねる。 話し始めたトビーは、店を出ても語り続けながら、リサとマイクと共にアパートに向かう。 言いたいことを口にするトビーにややイラつくマイクは、それリサに伝える。 マイクはバレエの話に戻し、リサは、レッスンを始めた1960年代と現代の生徒達の違いを尋ねる。 指導は子育てに似ていると言うトビーは、厳しく接することが大切だと伝える。 マイクも1960年のことを尋ね、ダンサー仲間について聞きたいと言われたトビーは、昔のことを思い出すにはマリファナを吸うのがいいと伝えて二人を誘う。 切った爪をトビーが瓶にとってあることを知ったマイクは、妙に落ち着くと言われて驚き、マリファナを吸いながら、業界の裏話を聞く。 妻のリアーナの話をしたトビーは、毛皮商人と浮気をしたために離婚したことを二人に伝える。 スペイン人のリアーナと出会いジュネーブで結ばれたと言うトビーは、不倫発覚前の4年半は幸せだったと話す。 自分は離婚はしないと断言するマイクに、トビーは、結婚が破綻した仮定の話をしてからかう。 マイクの職業を訊き、警察官だと知ったトビーは思わず笑ってしまい、シアトル市警の彼が非番だということを確認して、自己裁量で動くと言う彼に更にマリファナを勧める。 マイクから、ニューヨークに来た頃の性生活を訊かれたトビーは、リサからも1960年代のこととダンサー仲間について知りたいと言われる。 話し始めたトビーは、マイクからゲイなのかと訊かれ、リサが質問を続ける。 話に割って入り1967年のことを尋ねたマイクは、自分は生まれていなかったと伝えて、トビーから、1960年代のダンサーの性生活を知ってどうするのかと訊かれる。 明確に答えないマイクは酒を取りに行き、リサは彼の態度を謝罪する。 以前にもゲイと勘違いされたと言うトビーは、同期の女性に会い話を聞いたと言うリサに、当時は多くの相手と関係を持ったと伝える。 話を聞いた相手を尋ねたトビーは、グローリア・リナルディだと言われ、彼女のことはよく覚えているが40年以上も会っていないと伝えながら懐かしく思う。 親密な関係にあった女性の一人であり、マイクから寝たのかと訊かれたトビーは、もちろんだと答える。 マイクとはどうも話が合わないトビーは、何に感心があるのか尋ね、自制心だと言われる。 グローリアがダンスをやめたことを知ったトビーは、どんなつてで彼女と会ったかを尋ね、リサから、名前をアーカイブで見つけたと言われ、自分の名前も同様だと確認する。 グローリアとの交際期間を訊かれたトビーは、1~2か月だと答え、詳しい時期も訊かれる。 二人の質問に疑問を感じたトビーは、グローリアからは、1967年に1か月半付き合っていたと聞いたと言われる。 ボイスレコーダーのスイッチを止めたトビーは、インタビューは終わりにしたいと二人に伝える。 マイクから、グローリアと関係していた時期のことを再び訊かれたトビーは、覚えていないと答えるものの信じてもらえない。 グローリアに訊けばいいと伝えたトビーだったが、リサから、2年前に骨のガンで他界したことを知らされる。 ショックを受けたトビーはマイクの本名を尋ねて、”マイク・リナルディ”だと確認し、自分を父親だと思っていることを知る。 マイクは父親を知らないと言うリサは、グローリアが複数の男性と付き合っていたということだったために、確かめに来たことを伝える。 インタビューがウソだったと知ったトビーは、二人を追い払おうとするものの、マイクから質問に答えろと言われる。 この場にいる権利はないと言うトビーは、110%確実に父親ではないとマイクに伝えて声を荒げる。 冷静に話そうとするリサは、関係していた時期を特定しようとするものの、トビーは、グローリアを妊娠させたのは自分ではないと言い張る。 根拠は毎回、避妊していたからだと言うトビーは、気の毒だとは思うとマイクに伝えるものの、グローリアは1967年に妊娠して、どこかの”ホモ”のせいでバレエをやめたと言われる。 グローリアは他の男とも関係していたと言うトビーは、納得しないマイクを落ち着かせたリサから、彼女が妊娠した時期が1967年の11月中旬で間違いないことを知らされる。 子供の父親は自分か”ディミトリ・カルドリ”だと言われたトビーは、知人だったディミトリも1991年に交通事故で死んだことを知る。 ディミトリが父親だと考えるトビーだったが、グローリアが自分だと言っていたと話すマイクから、DNA鑑定を提案される。 トビーは断固としてそれを拒み、グローリアから出産するかどうかという相談を受けた時のことを話し、マイクが生まれたのは自分とは関係ないと伝える。 言い合いになったトビーは、マイクから責任を取れと言われ、預金1万8000ドルで財産もないと伝えるものの、納得してもらえない。 一人で生計を立てた母が辛い思いをしたと話すマイクは、認めてほしくて会いに来ただけだとトビーに伝える。 マイクに帰るべきだと伝えたリサは、トビーに謝罪する。 トビーの頬の細胞を採取しようとするマイクだったが、抵抗されたために乱暴する。 強引に細胞を採取したマイクはリサに非難され、警察に通報すると言うトビーの前で爪の瓶を床に叩きつける。 帰ろうとしないリサを置いて、マイクはその場を去る。 トビーは動揺して部屋に閉じこもり、リサは散らばった爪をまとめる。 謝罪して帰ろうとしたリサは、部屋から出て来たトビーと話し、マイクの行動は想定外で、インタビューをして警戒を解きたかっただけだと伝える。 マイクが向かった場所を訊かれたリサは、ジャージーシティの法医学研究所だと伝え、明日、頼んで監査するつもりだったと話す。 丁寧に頼まれても断ったと言うトビーは、マイクに幻滅した様子のリサを落ち着かせる。 仕事を訊かれたリサは、冷凍食品の流通企業に勤めていると答えて、マイクと結婚して8年で7か月愛し合っていないと伝える。 マイクから、父親を知らない人間に父親は務まらないと言われたために子供はいないのだが、出会った頃は5人は欲しいと張り切っていたとリサは話す。 その後はすれ違いの関係が始まり、父親を捜さないなら離婚すると言ってマイクを説得し、今回の馬鹿げた計画を実行したことを、リサはトビーに伝える。 爪をまとめてくれたから自分のことは許すと言われたリサは、先月、マイクが行き過ぎた捜査で停職となったことも話す。 マイクが、マリファナの売人を逮捕して理由もなく殴ったことを知ったトビーは、グローリアが1年と2か月入院している間、マイクは寝る間も惜しんで看病した話を聞く。 リサは、グローリアが亡くなる間際に父親は誰かを訊き、あなたを捜せと言われたことをトビーに伝える。 父親がいないことへの腹いせで、マイクはダンサーを毛嫌いするようになったと知ったトビーは、自分のような人間には耳が痛い話だと考える。 ジャージーシティ。 最後に愛し合ったのは覚えていないと言うトビーは、生徒には手を出さないとリサに伝える。 編み物をすると言うトビーは、家族のために編んだセーターを見せて、完成前に亡くなった母のセーターを、遠慮するリサにプレゼントする。 他にも見せたいものがあると言うトビーは、フェンシングの本とジュネーブにいた時に、たまたま目にした1986年の新聞記事の切り抜きを取り出す。 全米12位のフェンシングの選手だったマイクの記事であり、トビーは彼が自分の息子であることを認める。 妊娠した夜のことをグローリアから知らされたトビーは、その夜は避妊しなかったことを話し、彼女の期待に反して父親になることを断ったとリサに伝える。 それでも産む気だったグローリアの無事を祈ったと言うトビーは、マイクが生まれた後で、考え直してほしいいう電話があったものの、再びそれを断ったと話す。 その後グローリアから、自分と息子に二度と連絡を寄こすなという手紙が届き、17年後にこの記事を読んで、マイクが経済的な理由で進学できないと知ったと言うトビーは、1万5000ドルの小切手を学費の足しにしてくれと書き添えて送ったことを伝える。 ハガキ一枚が返事だったことは当然だと考えるトビーは、リサから大金だと言われる。 マイクを捨てたことを後悔するトビーは、せめて進学させてあげたかったと言って涙する。 それをマイクが知っているか訊かれたトビーは、彼は感謝していなかったはずだとリサに伝える。 絶景が見られると言うトビーは、リサを屋上に誘う。 美しい景色に驚くリサは、マイクに嘘をついた理由を尋ね、面目なかったからだと答える。 君達もウソをついたはずだと言うトビーは、今更、父親を捜しても意味はないことだが、マイクは殺意を抱くほど憎いはずだとリサに伝える。 後悔しているため、やり直せたらと思っているが手遅れだと言うトビーは、マイクにとって愛してくれる唯一の存在なのに、父親に固執して妻を大事にしていないと伝え、その通りだと思うリサは、元に戻れると考えていた。 会いに来ても45年前の過ちの修復はできないと言うトビーに、”過ち”だと思うのかとリサは尋ねる。 リサから自分にはできないと言われたトビーは、部屋に戻る。 マイクからのメールを受け取ったリサは、研究所から戻った彼が自分を捜しているとトビーに伝えて、食事を用意すると言われる。 6年間、誰にも触れていないと言うトビーは、セックスは自然からの贈り物で、生きる喜びにつながると話し、リサと意見が一致する。 バレエのレッスンで行う瞑想を試してみる気になったリサは、悩みを全て掃き出して涙し、トビーを抱きしめる。 戻ってきたマイクをインターホン越しに非難したトビーは、ドアを開けて、今は彼に会いたくないとリサに伝えて後を任せる。 現れたマイクに、トビーに謝ってほしいと伝えたリサは、泣いていたことを気にする彼を落ち着かせる。 トビーを呼んだマイクは、リサを泣かせた理由を問い、バレエを教えたと言われる。 敬意を払わないマイクに、大事なものを全て失うと伝えたリサは、彼に言い寄られる。 それを制止したトビーは、自分の問題でリサに迷惑をかけるなとマイクに伝える。 何をしてほしいか自分の目を見て話せと言われたマイクは、息子に向かって話しているいるのか尋ねる。 他人に話しているのであって、自分達は親子でないと言われたマイクは、二人だけで話したいとトビーに伝えて奥の部屋に向かう。 マイクから、自分の存在を知りながら向き合おうとしなかったと言われたトビーは、責任を取らせることなどできない、産み育てると決めたのはグローリアだと伝える。 母には堕ろす選択肢もなかったと言うマイクは、一人で育てるしかなかったと伝える。 自分の望みは、ただ電話をしてほしかっただけだと伝えたマイクは、トビーから、会うことはいつでもできて、今は壊れたものを修復するべきだと言われる。 手伝うことはできないと言うトビーに、殺しても誰にも気づきかれない、愛されることもない人生だとマイクは伝える。 戻ってきたマイクから謝罪されたリサは、帰ることを拒む。 事情があったのは理解し、”ホモ”と言ったこともトビーに謝罪したマイクはその場を去る。 トビーにこれが最後だと伝えたリサは、マイクを追って引き止める。 入口まで下りて来たトビーは、出発する予定や仕事のことなどをマイクに尋ね、自制心を抑えきれず悪いことをしたと言って謝罪する。 そばにいてやれなかったのは自分の責任だと言うトビーは、25年前の新聞の切り抜きを渡し、本を買って読んだ時は人前で泣いたことを話す。 本当は生まれた時から知っていたと言うトビーは、今更、埋め合わせはできないが、自分はここにいるので孫を抱いてあげると伝える。 自分は本当は優しい子だと言われたマイクは涙し、心の底からそう思っていると話すトビーに感謝する。 部屋に戻ろうとしたトビーは、明日、出発する前に食事をすることを提案し、リサは喜んで付き合うと答える。 翌日、ジムから鑑定結果の連絡を受けたマイクは、約束通りトビーのアパートに向かう。 マイクとリサから、DNAが一致しなかったことを知らされたトビーは動揺し、気にすることはないと二人に伝えて席を外す。 気遣ってくれるマイクとリサに年のせいだと伝えたトビーは、空港に向かう二人を見送る。 床に集めてあった爪を捨てたトビーは、友人のダリルに電話して、パーティーに出席することを伝える。 屋上に向かったトビーは、瞑想しながら微笑む。
...全てを見る(結末あり)
仕事は好きかと訊かれたマイクは、確実性が体現できることが好きだと答える。
法医学研究所のジム(ロブ・ヤン)に自分の細胞を採取してもらったマイクは、結果が出たら直ぐに連絡すると言われる。
満足も後悔もしていると言うトビーは、バレエを踊ってみるかリサに尋ね、遠慮する彼女の前で、生徒に指導するように語り始める。
*(簡略ストー リー)
ニューヨーク、”ジュリアード音楽院のダンス・インストラクターのトバイアス”トビー”パウエルは、マイクと妻リサのインタビューを受ける。
二人から、バレエと振り付けの歴史を研究するための論文を書いていると言われたトビーは、快くインタビューに応じる。
1960年代の交友関係などにこだわる二人の質問に疑問を感じたトビーは、マイクが自分を父親であるか確かめるために来たことを知り、それを否定するのだが・・・。
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2004年にブロードウェイで上演されたスティーヴン・ベルバーが演出の”Match”を、彼自身の脚本で監督した作品。
70歳を手前にした元バレエ・ダンサーでダンス・インストラクターの主人公が、孤独を好むように見えて、訪ねて来た夫婦のインタビューに快く応じ語り続ける冒頭のシーンが面白い。
世界各地で公演をしたアーティストらしい身の振る舞い、決して豊かではないが気品を感じさせる主人公が、バレエ、ダンス、その芸術を語る言葉の一つ一つに重みを感じる演出に注目したい。
同僚からの週末のパーティーの誘いを断り、自分のアパートでひっそりと過ごし時間を楽しむ姿も、ダンスのように優雅に見える描写なども興味深い。
レッスン以外は物静かに思える主人公が、夫婦のインタビューに快く応じる場面では、そのテンションの高さに圧倒されてしまう。
主演のパトリック・スチュワートは、芸術家にありがちな過去を持ち、それを振り返りながら人生を考える男性を繊細且つ深く演じている。
警察官の夫マシュー・リラードと共に、彼の父親と思える主人公に会い真実を確かめようとするカーラ・グギーノ、主人公の友人であるダイナーのオーナー、ジェイミー・ティレリ、主人公の同僚ジェフリー・ノーフツ、法医学研究所の研究員ロブ・ヤンなどが共演している。