オーストラリアの作家パメラ・L・トラバースが1930年代から発表した児童文学”メリー・ポピンズ・シリーズ”を基に製作された作品。 ウォルト・ディズニー製作の歌や踊りさらにはアニメーションや特殊効果をふんだんに使った、監督ロバート・スティーブンソン、主演ジュリー・アンドリュース、ディック・ヴァン・ダイク、デヴッド・トムリンスン、グリニス・ジョーンズ、エルザ・ランチェスター他共演による心温まるファンタジー・ミュージカルの秀作。 |
■ スタッフ キャスト ■
監督:ロバート・スティーブンソン
製作:ウォルト・ディズニー
原作:パメラ・トラバース”メアリー・ポピンズ”
脚本
ドン・ダグラディ
ビル・ウォルシュ
撮影:エドワード・コールマン
特殊効果
ピーター・エレンショー
ユースタス・ライセット
ロバーA・マッティ
アニメーション:ハミルトン・ラスク
美術
ウィリアム・H・タントク
キャロル・クラーク
編集:コットン・ウォーバートン
振付
マーク・ブロウ
ディ・ディ・ウッド
音楽:リチャード・M・シャーマン&ロバート・B・シャーマン
主題歌:“Chim Chim Cher-ee”
編曲:アーウィン・コスタル
出演
メリー・ポピンズ:ジュリー・アンドリュース
バート/ドース頭取:ディック・ヴァン・ダイク
ジョージ・バンクス:デヴッド・トムリンスン
ウィニフレッド・バンクス:グリニス・ジョーンズ
ジェーン・カロライン・バンクス:カレン・ドートリス
マイケル・バンクス:マシュウ・ガーバー
ケイティ・ナンナ:エルザ・ランチェスター
ブーム提督:レジナルド・オーウェン
アルバート伯父さん:エド・ウィン
エレン:ハーミオネ・バドレイ
ドースJr.:アーサー・マレット
ジョーンズ巡査:アーサー・トリーチャー
ハトの餌売りおばあさん:ジェーン・ダーウェル
アメリカ 映画
配給 ウォルト・ディズニー・ピクチャーズ
1964年製作 139分
公開
北米:1964年8月29日
日本:1965年12月18日
製作費 $6,000,000
北米興行収入 $102,300,000
■ アカデミー賞 ■
第37回アカデミー賞
・受賞
主演女優(ジュリー・アンドリュース)
編集・作曲・歌曲・視覚効果賞
・ノミネート
作品・監督・脚色・撮影(カラー)・美術・(カラー)衣装デザイン(カラー)・音楽・録音賞
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
1910年の春、ロンドン。
大道芸人のバート(ディック・ヴァン・ダイク)は、風が東から吹くと、何か不思議なことが起きると予感する。
バートは、町の名士ブーム提督(レジナルド・オーウェン)から、チェリー通り17番地のジョージ・バンクス氏(デヴッド・トムリンスン)の家で、”暴風”(揉め事)が吹き荒れると言われる。
銀行家のバンクスの家の乳母ケイティ・ナンナ(エルザ・ランチェスター)は、やんちゃなバンクス家の子供達ジェーン(カレン・ドートリス)とマイケル(マシュウ・ガーバー)に手を焼いて、出て行ってしまう。
母親のバンクス夫人ウィニフレッド(グリニス・ジョーンズ)は、婦人参政権運動に夢中になり、子供達に無関心なために、家政婦エレン(ハーミオネ・バドレイ)も呆れてしまう。 世の中の情勢も仕事も順調なバンクスは、陽気に帰宅するが、妻ウィニフレッドから、子供達が行方不明だと聞き慌ててしまう。 警察に連絡したバンクスだったが、警邏警官ジョーンズ(アーサー・トリーチャー)が、凧揚げをしていて迷子になった子供達を連れて来る。 厳格なバンクスは、新しい乳母の募集広告を出すことにする。 子供達は、理想の乳母の要望書を両親に見せるのだが、バンクスはそれを破り、暖炉に投げ捨ててしまう。 しかし、その要望書は暖炉から煙突を上り消え去る。 その後バンクスは、自分の考えた乳母の応募広告を新聞に掲載し、多くの応募者がバンクス家に殺到する。 そこに、突然、東から強風が吹き、応募者達は飛ばされていってしまう。 風が収まると、ある応募者が傘をさしながら空から舞い降りてやってくる。 その女性メリー・ポピンズ(ジュリー・アンドリュース)が、子供達の書いた要望書を持ちバンクスの前に現れたため、それを破り捨てたはずの彼は驚いてしまう。 メリー・ポピンズは、バンクスを自分のペースに巻き込み、そそくさと子供達の元に向かう。 早速、子供部屋をチェックしたメリー・ポピンズは、鞄の中から色々な物を出し、魔法を使って部屋を片付け、子供達を驚かせる。 次にメリー・ポピンズは、子供達を連れて公園に向かい、知り合いのバート(ディック・ヴァン・ダイク)の描いた絵の中に入って行く。 着飾ったメリー・ポピンズとバート、そして子供達は、絵の中の動物達と歌い踊り大いに楽しむ。 メリーゴーランドの馬で、競馬に参加したメリー・ポピンズは、レースで優勝してしまったりもする。 しかし、突然の雨でバートが描いた絵が水で流れてしまい、4人は公園に戻り、メリー・ポピンズと子供達は帰宅する。 楽しい一日を過ごした子供達は、その夜興奮して眠ることが出来なかったが、メリー・ポピンズの子守唄で二人は直ぐに眠りに就く。 メリー・ポピンズが家に来てから、家中の人々は陽気になりはしゃぎ回るが、気難しいバンクスはそれが気に入らず不機嫌になってしまう。 子供達を連れて外出したメリー・ポピンズは、アルバート伯父さん(エド・ウィン)の様子がおかしいと知らされて彼の元に向かう。 笑い上戸のアルバートは、部屋で宙に浮いてしまい、その場にいたバートも笑い始めて宙に浮く。 メリー・ポピンズだけが冷静で、ついに子供達まで宙に浮いてしまう。 仕方なくメリー・ポピンズも宙に浮き、そして皆でお茶をすることになる。 帰りの時間になり、メリー・ポピンズが子供達を連れて帰ろうとしたため、悲しくなったアルバートは床に降りてしまう。 夕方になり、帰宅したバンクスは、昼間の出来事を興奮して話す子供達に呆れてしまう。 そして、バンクスはメリー・ポピンズに、子供の育て方で彼女に説教を始める。 特に訳の分からない”スーパーカリフラジリスティックエクスピアリドーシャス”なる言葉を口にする、子供達の様子を気にするバンクスだった。 しかし、またしてもメリー・ポピンズのペースで話は進められたバンクスは、翌日、子供達を銀行に連れて行くことになってしまう。 そのことを、子供達に伝えたメリー・ポピンズは、セント・ポール大聖堂の前で、ハトの餌を売るおばあさん(ジェーン・ダーウェル)の話を歌い聞かせ二人を眠らせる。 翌日、バンクスは、子供達に社会勉強をさせるという名目で、二人を銀行に連れて行く。 マイケルは、メリー・ポピンズに言われた、ハトの餌売りのおばあさんから、餌を2ペンスで買おうとするが、父親に無駄遣いだと止められてしまう。 銀行に出社したバンクスは、子供達に銀行業務を体験させるために預金させると上役に伝える。 2ペンスは、ハトの餌代だと言い張るマイケルに、銀行の頭取ドース(ディック・ヴァン・ダイク/二役)が無理に預金をさせようとする。 マイケルが、大声で”お金を返して!”と叫んでしまったため、それを聞いた預金者達は、銀行の現金が引き出せなくなるものと勘違いし、人々は、窓口に殺到して大混乱になる。 銀行から逃げ出した子供達は、父親に嫌われてしまったと悲しむが、煙突掃除の帰りのバートに出くわして励まされ家まで送られる。 奉仕活動に出かけるバンクス夫人から、煙突掃除を頼まれたバートは、メリー・ポピンズと子供達を連れて屋上に行き、仲間達と歌い踊り楽しい時を過ごす。 仲間達はバンクス家の中まで入り込んでしまい、帰宅したバンクスは驚いてしまうが、メリー・ポピンズに相手にされない。 その夜、バンクスは、銀行のドース頭取から呼び出されて動揺するが、バートや子供達に励まされ、2ペンスを渡されて銀行に向かう。 銀行に着いたバンクスは、頭取からマイケルの行為に対する釈明を求められて困惑し、ただ謝罪するだけだった。 しかし、マイケルに貰った2ペンスと、困った時に口にするメリー・ポピンズの魔法の言葉”スーパーカリフラジリステックエクスピアリドゥーシャス”のことを思い出す。 すると途端に、頭取に責められていたいたことが気に ならなくなり、彼に悪態をついてその場から立ち去る。 西向きの風が吹き、メリー・ポピンズは、悲しむ子供達に別れを告げ、バンクス家を去ろうとする。 行方不明になったバンクスを、妻ウィニフレッドやジョーンズ巡査が捜し回る中、彼は陽気に歌いながら帰宅する。 心が晴れ晴れしたバンクスは、妻と子供達を連れて公園にに向かい凧揚げをする。 そこでは、バートをはじめ、町の人々と共に銀行の重役達ドースJr.(アーサー・マレット)らも一緒に凧揚げをしていた。 頭取は、バンクスの言葉を聞いて幸せそうに息を引き取り、それにより、バンクスは重役に指名される。 そして、バンクス家の、家族の触れ合いや愛を取り戻させたメリー・ポピンズは、大空に飛び立ち、バートがそれを見送る。
...全てを見る(結末あり)
*(簡略ストー リー)
厳格な銀行家バンクス氏の子供達、ジェーンとマイケルの乳母選びが難航していた。
そんな時、子供達の願いを聞いた、魔法を使えるメリー・ポピンズが、バンクス家に現れる。
メリー・ポピンズは、バンクスの指示を無視して、子供達に自由奔放な教育を始め、気難しい主人の機嫌を損ねてしまう。
しかし、メリー・ポピンズを気に入った子供達は、色々な体験をして、彼女を慕うようになる。
やがて、子供達が、銀行で事件を起してしまい、家族より仕事第一と考えるバンクスは、窮地に立たされるのだが・・・。
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第37回アカデミー賞では作品賞をはじめ13部門にノミネートされ、主演女優(ジュリー・アンドリュース)、編集、作曲、歌曲、視覚効果賞を受賞した。
・ノミネート
作品、監督、脚色、撮影(カラー)、美術(カラー)、衣装デザイン(カラー)、音楽、録音賞
リチャード&ロバート・シャーマン兄弟の、心に残る楽曲の数々は、ディズニー映画のスタンダード・ ナンバーとして広く愛され続けている。
悪人ではないが厳格過ぎる父や、子供達を乳母任せにする母親が、ラストで、町の人々と共に家族の幸せを手に入れるというストーリーが感動を呼ぶ。
主演のジュリー・アンドリュースは、本作でアカデミー主演賞を受賞し、翌年もミュージカルの傑作「サウンド・オブ・ミュージック」(1965)に主演することになる。
この年は「マイ・フェア・レディ」(1964)と本作がアカデミー賞を争っが、舞台「マイ・フェア・レディ」の主役だったジュリー・アンドリュースが、本作で主演賞を獲ったのは皮肉な話で、映画「マイ・フェア・レディ」の主役オードリー・ヘップバーンはというと、ノミネートすらされなかった。
そのため、こう言ってはジュリー・アンドリュースには気の毒だが、演技力を発揮したというよりも、やや同情票が集り、好感度抜群のキャラクターの人気が先行したようにも思える。
共演のディック・ヴァン・ダイクも、陽気な大道芸人をコミカルに演じ、銀行の頭取役の二役をもこなす熱演ぶりだった。
いかにもイギリス人という雰囲気の彼なのだが、実はアメリカ人である。
こちらは生粋のイギリス人、デヴッド・トムリンスンも、歌も披露した好演が光る。
彼はこの後「ラブ・バッグ」(1968)、「ベッドかざりとほうき」(1971)などでもディズニー映画に出演している。
呑気な母親バンクス夫人のグリニス・ジョーンズ、子供達カレン・ドートリスとマシュウ・ガーバーの可愛らしい腕白ぶりも実に楽しい。
その他、乳母を辞めて去って行くエルザ・ランチェスター、提督のレジナルド・オーウェン、主人公の伯父役のエド・ウィンなど、イギリスの名優がしっかりと脇を固めている。
個人的に最も印象に残るのは、ジョン・フォード作品の常連であり、本作が遺作となった、ハトの餌売りおばあさん ジェーン・ダーウェルの出演だ。
フォード作品などでは、印象深い婦人役を演じた彼女の寂し気な役柄は。涙なしには見られない。
バンクス家の家政婦ハーミオネ・バドレイ、頭取の息子アーサー・マレット、警邏巡査アーサー・トリーチャーなども共演している。
日本のテレビ番組「コメットさん」は、本作をヒントにしている。