サイトアイコン That's Movie Talk!

マージン・コール Margin Call (2011)

リーマン・ショック/世界金融危機”が起きる直前の時期をモデルに、窮地に陥った大手投資銀行の内情を描く、監督、脚本J・C・チャンダー、主演ケヴィン・スペイシーポール・ベタニージェレミー・アイアンズザカリー・クイントサイモン・ベイカースタンリー・トゥッチデミ・ムーアペン・バッジリー他共演のドラマ。

アカデミー賞 ■ ストーリー ■ 解説


ドラマ

ケヴィン・スペイシー / Kevin Spacey / Pinterest


スタッフ キャスト
監督:J・C・チャンダー
製作総指揮
ジョシュア・ブラム
マイケル・コルソ
カーク・ダミコ
カシアン・エルウィズ

ローズ・ガングーザ
アンソニー・グダス
ランディ・マニス
ローラ・リスター
製作
ロバート・オグデン・バーナム
マイケル・ベナローヤ

ニール・ドッドソン
ザカリー・クイント

脚本:J・C・チャンダー
撮影:フランク・G・デマルコ
編集:ピート・ボドロー
音楽:ネイサン・ラーソン

出演
サム・ロジャース:ケヴィン・スペイシー

ウィル・エマーソン:ポール・ベタニー
ジョン・トゥルド:ジェレミー・アイアンズ
ピーター・サリヴァン:ザカリー・クイント
セス・ブレッグマン:ペン・バッジリー
ジャレッド・コーエン:サイモン・ベイカー
エリック・デール:スタンリー・トゥッチ
サラ・ロバートソン:デミ・ムーア
ラメシュ・シャー:アーシフ・マンドヴィ
ヘザー・バーク:アシュリー・ウィリアムズ
メアリー・ロジャース:メアリー・マクドネル
ルイス・カーメロ:アル・サピエンザ

アメリカ 映画
配給
ライオンズゲート

Roadside Attractions
2011年製作 106分
公開
北米:2011年10月21日
日本:未公開
製作費 $3,500,000
北米興行収入 $5,354,040
世界 $19,504,040


アカデミー賞
第84回アカデミー賞

・ノミネート
脚本賞


*詳細な内容、結末が記載されています。
ストーリー
ニューヨークウォール街
大手投資銀行で突然のリストラが始まり、多くの社員が職場を離れることになる。

トレーディング管理部長ウィル・エマーソン(ポール・ベタニー)は、若手社員ピーター・サリヴァン(ザカリー・クイント)やセス・ブレッグマン(ペン・バッジリー)と共に、解雇勧告担当者ヘザー・バーク(アシュリー・ウィリアムズ)らが現われたことを気にする。

ピーターの上司で、リスク管理部門の責任者エリック・デール(スタンリー・トゥッチ)は、解雇勧告担当者に実務をストップさせられる。

個人情報や携帯電話の使用、社内への出入りも禁止されたピーターは、荷物をまとめて会社から退去するよう命ぜられる。

ウィルから声をかけられたエリックは、今回の解雇が部長のサラ・ロバートソン(デミ・ムーア)の指示だと知り苛立つ。

エリックは遣りかけの仕事を誰かに任せようとするが、ウィルは、とにかく社外に出ることを彼に勧める。

ピーターは、世話になったエリックに感謝して別れを告げ、彼から、”用心しろよ”と言われてUSBメモリを渡される。

会社を出たエリックは、携帯電話が使用できないことに気づき、その場にいたサラを罵倒し、電話を叩き壊して立ち去る。

ウィルは、今回の大規模なリストラの件を投資部門責任者上司サム・ロジャース(ケヴィン・スペイシー)と話し合うため、彼のオフィスに向う。
...全てを見る(結末あり)

しかしロジャースは、死にかけている愛犬エラのことで頭が一杯で、悲しみに堪えていた。

気を取り戻したロジャースは、”生き残った”部下らを前に、彼らを励ましながら仕事を続けさせる。

夕方になり、飲みに行くセスに誘われたピーターはそれを断り、気になっていた、エリックから受け取ったデータの分析を始める。

ある大問題に気づいたピーターは、エリックに電話をするものの繋がらず、セスに連絡をとり、ウィルと共にオフィスに戻るようにと伝える。

ピーターは、オフィスに戻ったウィルとセスに、”用心しろ”と言われたエリックのデータの分析結果を伝える。

ピーターの説明を受けたウィルは、自社の資産価値以上の損失が出る可能性を知り、携帯電話が通じないエリックの自宅に連絡して彼を捜し、ロジャースを呼び寄せる。

オフィスに戻ったロジャースは、名前も知らないピーターがエリックから引き継いだ、重大な分析結果をウィルから知らされて動揺する。

エリックを捜すよう指示されたピーターとセスは、彼を見つけることが出来ない。

ピーターは、ウィルの年収が250万ドルで、当然ロジャースがそれ以上だということを知り、馬鹿げた話だと思いながら、セスと共にオフィスに戻る。

ロジャースは、ウィルと戻って来たピーターとセスも連れて、上司のジャレッド・コーエン(サイモン・ベイカー)の意見を聞くことになる。

コーエンに迎えられたロジャースらは、リスク管理部長のサラと、上層部のラメシュ・シャー(アーシフ・マンドヴィ)らを紹介される。

ロジャースは、エリックが遣り残しピーターが分析結果を出した資料をコーエンらに配る。

ピーターの経歴などを聞いたサラは、信頼性のあるデータだが、再チェックする必要があると考え、コーエンは事の重大さを理解し”全てを売る”提案をする

ロジャースがそれに意見し、サラとシャーは結論を出す前に再分析することを要求し、コーエンは彼女らに時間を与える。

席を外すようにと言われていたウィル、ピーター、セスの三人は、ビルの屋上に向かい、幹部たちが行おうとしていることについてなどを話す。

年収のことを聞かれたウィルは、たとえ250万ドルでも、それなりになくなってしまうことをピーターとセスに淡々と語る。

その後サラは、エリックとピーターの分析結果が正しいことをロジャースとコーエンに伝える。

コーエンは、自分たちの考える計算式にミスがあったというサラを責める。

CEOのジョン・トゥルド(ジェレミー・アイアンズ)が到着し、明け方近くにも拘らず緊急会議が開かれる。

トゥルドは、分析結果を出したピーターに事態の説明を求める。

ピーターは、MBS/不動産担保証券の取引で、リスク管理上、大きな問題が生じたことを説明する。

今後の状況を率直に求められたピーターは、これらの資産価値が25%下落してしまえば、損失額が自社の資産価値を上回ることを伝える。

重大な問題を話し合う場ではあったが、CEOとして、利益を生むための話を聞けないことが不満なトゥルドは、コーエンとサラにどう対処するのかを問う。

コーエンは全てを売却すると答え、ロジャースから、損失次第でそれが可能だと言われたトゥルドは、それを補うことを考える。

ロジャースは、翌朝、トレーダーに事実を伝えて売却を推し進める方法はあるが、事業停止を覚悟あいながら価値のないものを誰に売るのか疑問を投げかける。

しかしトゥルドは、それを断行するしか自分たちが生き延びる方法がないことを皆に伝える。

1時間で計画書を作ることをコーエンに、そしてエリックを捜し出す指示を出したトゥルドは、ロジャースを個室に呼ぶ。

トゥルドは、これから起きることが始まりであり、世の中の人々と共に大きな損失を被る中で生き延びてみせるとロジャースに伝える。

ロジャースは、事実を知りながら部下に強要することを躊躇するものの、トゥルドは考えを変えない。

売却の強行は避けられない状態で、ロジャースとウィルは覚悟を決める。

サラは、自分を陥れたら道連れにすると言ってコーエンを脅すものの、彼はそれに動じない。

トゥルドの年収が8600万ドルだとウィルから知らされたピーターは、外の空気を吸ってくると言って立ち去る。

エリックが家に帰ったいう妻からの連絡を受けたウィルは、ロジャースの指示でセスと共に彼の家に向かおうとする。

トゥルドは、計画実行をサラに伝え、トレーダーと取締役を説得する役目を彼女に命ずる。

サラは、1年前に警告したことをトゥルドに伝えるものの、彼は、その話を聞く気はなかった。

コーエンは、ロジャースがトゥルドに協力しない場合の措置をウィルと話し合おうとする。

しかし、ロジャースを信頼するウィルは、彼の下す判断は正しいと信じ、セスを連れてエリックの家に向かう。

世が明けて、エリックに会ったウィルは、分析が正しいことを確認して、今日、全資産が売却されることを彼に伝える。

ウィルの説得に応じないエリックだったが、会社側の車も現われる。

トゥルドは、ロジャースの協力を得るために小切手を渡すが、彼はそれを拒む。

ウィルは、解雇されることを気にするセスに、市場を支配する者の喜びを伝える。

それを批判する一般人を非難するウィルは、現時点では何が起きても気にしないとセスに伝える。

ビルの前でロジャースを見かけたピーターは、何か他の方法がないものかと訊かれるものの、それが誰のためになのか答えが見つからない。

ウィルとの話でショックを受けたセスは、トイレで独り涙するが、それを知ったコーエンは、平然とヒゲを剃り新しい一日ための身支度をする。

有無を言えない条件を突きつけられたエリックはオフィスに戻り、解雇されたサラに迎えられ、わだかまりを捨てる。

トレーダーを集めたロジャースは、コーエンに監視されながら、命令書に従いMBSの93%を売却する指示を出し、高額ボーナスが支給されることを伝える。

会社のために犠牲になることを、部下に強いらねばならないロジャースは言葉に詰まりそうになるが、彼らを称えて仕事を始めさせる。

市場は開き、ウィルらは強引な取引を始める。

そして夕方になり、コーエンは難を乗り切ったことをロジャースに伝えるが、既にその時点で社内の解雇勧告が始まっていた。

自分が残れることを知ったロジャースは席を外し、トゥルドの元に向かい辞職を申し出る。

そんなロジャースの泣き言を聞き流し、トゥルドは全てが金であり、そして勝ち負けだと言い切る。

ロジャースは辞職を撤回し、コーエンと共に現れたピーターが、能力を認められて昇進したことを知らされる。

その後ロジャースは、別れた妻メアリー(メアリー・マクドネル)に渡した屋敷の庭に、愛犬エラを埋めようとしていた。

ロジャースは、それに気づいたメアリーにエラのことを話し、息子サミーの会社は、損失を被ったものの破産は免れたことを知る。

メアリーは家に戻り、ロジャースは再び穴を掘り始める。


解説 評価 感想
*(簡略ストーリー)
ニューヨークウォール街
大手投資銀行で、突然、大規模なリストラが始まる。
トレーディング管理部長のウィルは、リスク管理部門の若手社員ピーターとセスに、冷静に振舞うよう指示を出す。
そんな中、ピーターの上司エリックが解雇勧告を受け、会社から即刻、退去を命ぜられる。
世話になったエリックを気遣うピーターは、別れ際に、彼から”用心しろ”と言われUSBメモリを渡される。
残業してデータを分析したピーターは重大な問題に気づき、ウィルとセスをオフィスに呼び戻す。
自社の資産価値以上の損失が出る可能性を知ったウィルは、投資部門責任者のサム・ロジャースをオフィスに呼び、対処しようとするのだが・・・。
__________

リーマン・ショック/世界金融危機”が起きる直前の時期をモデルに、窮地に陥った大手投資銀行の内情を描くドラマ。

冒頭から、最近ではよく見られるリストラ勧告シーンで始まり、アメリカ社会の平社員と管理職のフランクな関係なども興味深く描かれている。

その後の大事件の可能性と共に、重役、CEOと次々と登場する人物の役職と資質がレベルアップしていく描写など、J・C・チャンダーのシャープな演出でドラマに引き込まれる。

ザカリー・クイントの製作会社による作品であり、ドキュメンタリー映画を中心に活躍していたJ・C・チャンダーの初監督作品で、彼自身の脚本は第84回アカデミー賞で脚本賞にノミネートされた。

出演者の顔ぶれだけで、見逃すわけにはいかないと思わせる豪華キャスト、作品自体も見応えあるのだが、北米では拡大公開には至らず、日本では劇場未公開に終わったのは残念だ。

平社員で数千万円、幹部でその10倍以上、CEOに居たっては、数十億の年収を受け取る組織構造が強調されていて、庶民感覚を逸脱した現実、利益追求に手段を選ばない、身勝手な経営方針などに対する批判と強烈な皮肉を込めて描かれている。
*数百億単位の年収を得る経営者も少なくない。

主演のケヴィン・スペイシーは、リストラが行われている最中に、日に1000ドルの治療費をかけていた瀕死の愛犬のことを考え涙している人物から、危機に直面し、部下や社を思う人間味溢れる重役を、いつもながら深みのある演技で熱演している。

中堅幹部としてインパクトある役柄のトレーディング管理部長を好演するポール・ベタニー、善悪は抜きにして、危機を冷静に分析し自らを敗者としないための計画を断行するCEOジェレミー・アイアンズ、自社の危機を分析によって知る若手社員のザカリー・クイント、その同僚ペン・バッジリー、投資部門統括責任者サイモン・ベイカー、リスク管理部門管理職で、分析を遣り残して解雇されるスタンリー・トゥッチ、その部門責任者デミ・ムーア、上層部のアーシフ・マンドヴィ、解雇勧告員のアシュリー・ウィリアムズ、主人公の妻役のメアリー・マクドネル、重役のアル・サピエンザなどが共演している。


モバイルバージョンを終了