自分の責任で起きた死亡事故で嘘の証言をしたことが罪悪感となり苦しむ少女の心の葛藤を描く、製作シドニー・ポラック、アンソニー・ミンゲラ、出演アンナ・パキン、マット・デイモン、マーク・ラファロ、監督、脚本ケネス・ロナーガンによるドラマ。 |
・ドラマ
■ スタッフ キャスト ■
監督:ケネス・ロナーガン
製作総指揮:アンソニー・ミンゲラ
製作
ゲイリー・ギルバート
シドニー・ポラック
スコット・ルーディン
脚本:ケネス・ロナーガン
撮影:リシャルト・レンチェウスキ
編集:アン・マッケイブ
音楽:ニコ・マーリー
出演
リサ・コーエン:アンナ・パキン
アーロン・ケイジェ:マット・デイモン
ジェラルド・マレッティ:マーク・ラファロ
ポール・ハーシュ:キーラン・カルキン
モニカ・スローン:オリヴィア・サールビー
マーガレット・マレッティ:ローズマリー・デウィット
ジョーン・コーエン:J・スミス=キャメロン
ジョン・アンドリュー:マシュー・ブロデリック
モニカ・パターソン:アリソン・ジャニー
ラモン・キャメロン:ジャン・レノ
エミリー・モリソン:ジーニー・バーリン
ミッチェル刑事:スティーヴン・アドリー=ギアギス
デイヴ:マイケル・イーリー
ラッセル・ドイチェ:ジョナサン・ハダリー
アビゲイル:ベッツィ・アイデム
ダレン・ロディファー:ジョン・ギャラガーJr.
カート・メイサー:マット・ブッシュ
カール:ケネス・ロナーガン
アメリカ 映画
配給 フォックス・サーチライト・ピクチャーズ
2011年製作 150分 特別編186分
公開
北米:2011年9月30日
日本:未公開
製作費 $14,000,000
北米興行収入 $46,500
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
ニューヨーク、アッパー・ウェスト・サイド。
高校生のリサ・コーエン(アンナ・パキン)は、テストのことで教師アーロン・ケイジェ(マット・デイモン)に、人の手を借りたことを注意されるものの、彼女は気にもしない。
クラスメイトのダレン・ロディファー(ジョン・ギャラガーJr.)と下校したリサは、彼に映画に誘われるものの即答を避ける。
父親と牧場に行くため、テンガロン・ハットを買いに行ったリサは、気に入った物が見つからない。
店を出たリサは、バスのドライバー、ジェラルド・マレッティ(マーク・ラファロ)が素敵なハットを被っていたため、走り出した彼に声をかけてバスを止めようとする。
マレッティはリサに気を取られ、赤信号に気づかず歩行者モニカ・パターソン(アリソン・ジャニー)を轢いてしまう。 リサは、血まみれのモニカに駆け寄り抱きかかえ、意識がある彼女にも、”リサ”という娘がいたことを知らされる。 動揺するモニカは話し続けるものの、息を引き取り、リサとマレッティは、警察の事情聴取を受ける。 リサは、マレッティを意識して混乱しながらも、信号が青だったことを、ミッチェル刑事(スティーヴン・アドリー=ギアギス)に話し、不慮の事故であったと警官に伝える。 帰宅したリサは、異変に気づいた母親ジョーン(J・スミス=キャメロン)に事情を話し、気分を晴らすために街に出かける。 舞台女優のジョーンは、ファンである実業家のラモン・キャメロン(ジャン・レノ)から声をかけられる。 ダレンと映画を観たリサは劇場に向かい、ジョーンと共に食事をして帰宅する。 翌日、登校するリサは、事故のことが頭から離れずに思い悩む。 ラモンに誘われて食事をしたジョーンは、警察に行って自分の証言を確認するというリサから相談を受ける。 マレッティの人生に関わることであるため、慎重に考えて話すことを、ジョーンはリサに助言する。 翌日の放課後、ジョーンと共に警察に向かったリサは、モニカが信号無視したとミッチェルに証言してしまう。 ラモンと付き合い始めたジョーンは、彼とリサを会わせようともする。 しかし、悩みや不安が募る一方のリサは、ジョーンに反発して、二人は意見が食い違ってしまう。 その後リサは、ドラッグを教えてもらったポール・ハーシュ(キーラン・カルキン)に連絡して家に誘い、ダレンからの電話にまともに答えず切ってしまう。 現れたポールに、リサは、なぜいつも冷静でいられるのかを尋ね、その後、二人は愛し合う。 モニカのいとこアビゲイル(ベッツィ・アイデム)の連絡先を調べて連絡したリサは、彼女の友人エミリー・モリソン(ジーニー・バーリン)が、ニューヨークにいることを知らされる。 エミリーは、信仰心のなかったモニカのために、葬儀ではなく集会を開き、リサもそれに出席する。 その夜リサは、母と別れた父カール(ケネス・ロナーガン)に事故のことを話すものの、自分のすべきことの結論が出ない。 モニカが現れる、悪夢まで観るようになったリサは、マレッティの自宅の住所を調べて彼を訪ねる。 マレッティの妻マーガレット(ローズマリー・デウィット)に迎えられたリサは、話をしたいだけだと言って、歓迎できない様子の彼と家の外で話す。 心配するマーガレットを家に向かわせたマレッティは、事故のことで、余所見はさせたが、信号は赤だったことをリサに言われる。 帽子のことを聞きたかったリサと、バスから離れるよう手を振ったと言うマレッティの意見は食い違う。 動揺するマレッティは、不慮の事故だということで調査も済んだことを強調するが、リサは真実を話したい自分の気持ちを伝える。 マレッティは、リサがそれを話した場合、自分の人生の破滅を意味することを伝え、納得しない彼女に対して、好きにすればいいと告げてその場を去る。 リサはエミリーに会い、苦しい胸の内を伝えて、母を頼らず一人で警察に行くことを彼女に伝える。 ミッチェル刑事を訪ねたリサは、信号が赤だったことを伝えるが、信号無視では刑事事件にはならないと言われる。 リサの様子を気にしたミッチェルは、彼女の気持ちを察し、もう一度、調べ直してみることを伝える。 エミリーはリサを呼び出し、知り合いの弁護士デイヴ(マイケル・イーリー)の意見を聞く。 モニカの遺言執行者のエミリーは、被害に遭った彼女の苦痛の代償30~50万ドルを請求する訴訟を、バスを運営する運輸公社に起こすことができることを知らされる。 その場合、マレッティがクビになるかは判断できず、リサが一度、虚の証言をしたことも問題だった。 不利な条件の中、リサとエミリーは、マレッティを辞めさせて公社に反省させることが目的で、金銭の問題でないことを伝えるが、訴訟を起こすことは難しかった。 エミリーは、誰かに責任をとってもらいたいだけだと言って怒りを堪える。 その後もリサは、ジョン・アンドリュー(マシュー・ブロデリック)の、英文学の授業なども身に入らない。 ミッチェルに連絡したリサは、マレッティに会った彼から、訴訟を起こすことは難しいことを知らされて苛立つ。 デヴィッドに呼ばれたリサとエミリーは、マレッティを私立探偵に調べさせた結果、彼には過去に事故歴がある他、処罰が一度もないことを知らされる。 労働争議を抱える運輸公社が、社員の解雇で組合側を刺激したくないことも分かった。 デヴィッドは、公社の雇用状況の怠慢さをつけば訴えられることを二人に伝え、彼は専門でないために辞退し、ラッセル・ドイチェ(ジョナサン・ハダリー)を紹介する。 ドイチェに会ったリサとエミリーは、早速、訴訟の準備を始める。 リサとの会話もほとんどなくなったジョーンは、エミリーに会い、学業などに影響が出始めている、娘を心配する気持ちを伝える。 帰宅したリサは、来年は父親と暮らす可能性があることをジョーンに伝える。 ジョーンは、自分に相談もせずに勝手なことを決めるリサに激怒し、二人は声を荒げて言い合う。 モニカのことでは、迷惑しているとまで言っていた、彼女のいとこアビゲイルは、数十万ドルの訴訟になると知り、一転して協力的になる。 その後リサは、モニカの死に際に、亡くなった12歳の娘と間違えられたことをエミリーに伝える。 その娘が自分と同じだったために、死を前にしたモニカの前では、自分が彼女の娘になった気がしたこともリサは語る。 友人の死を、芝居の物語として楽しんでいるように思える、リサの考えを理解できないエミリーは憤慨する。 誤解だと言って反論するリサは、必死に理解を求める。 相談する相手がいないリサは、教師アーロンを訪ねて理解を求め、好意を持っていたことも伝える。 アーロンは、友達であることをリサに確認するが、結局、二人は愛し合ってしまう。 エミリーを伴い、ジョーンとラモンと共に食事をしたリサは、学校で退席させられた人種問題の発言の話になる。 ラモンが、ユダヤ人を侮辱し始めたため、気分を害したエミリーは、彼にコップの水をかけて席を立つ。 父カールから連絡を受けたリサは、指示したことに真剣に取り組まないことを非難され、牧場旅行は中止となり、一緒に暮らす話も保留にされてしまう。 エミリーが、知人である”ニューヨーク・タイムズ”の記者に頼み、マレッティの過去の事故歴が記事になったため、ドイチェは、和解を焦り始めた相手に強気に出ることをアビゲイルに伝える。 しかしアビゲイルは、単純に賠償金を請求できればいいことだけを伝える。 そんな時、ラモンが心臓発作で倒れ、そのまま帰らぬ人となり、ジョーンはリサと共に彼の葬儀に出席する。 ジョーンは、ラモンの息子から、多くの女性と関係していた父が、自分と会った瞬間に、結婚したいと思ったと言われる。 帰宅したジョーンは、ラモンと行く予定だったオペラの”ホフマン物語”にリサを誘う。 それを承知したリサは、ジョーンにハグを求められるが、母親が望むような心境にはなれない。 数日後ドイチェは、エミリーとリサも同席した場で、35万ドルの和解金で相手側と合意したことを、インターフォンでアビゲイルと夫に知らせる。 4人の同意を確認したドイチェは、マレッティの解雇には応じられないという、公社側の条件を伝える。 それに納得できないリサだったが、全てに決定権のあるアビゲイルは、それを聞き入れない。 自分がモニカを殺し、マレッティにも罪を償わせねば意味のないことを訴えるリサは、取り乱してエミリーらを罵倒し席を外す。 アーロンの元に向かったリサは、中絶したことを彼に伝える。 リサは、父親は何人かの男性の可能性があることだけを伝えて、アーロンが動揺もしないためにその場を立ち去る。 その夜、ジョーンと劇場に向かおうとしたリサは、バスを運転するマレッティを目撃する。 オペラ”ホフマン物語”の第二幕は始り、席に着いたリサは、鬱積した感情の高まりを抑えきれず涙する。 それに気づいたジョーンも涙し、オペラが続く中、リサと抱き合い、母娘は心触れ合う。
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*(簡略ストー リー)
ニューヨーク、アッパー・ウェスト・サイド。
高校生のリサ・コーエンは、走り出したバスの運転手マレッティを呼び止める。
マレッティはリサに気を取られ、赤信号に気づかず、歩行者モニカを轢き殺してしまう。
リサは、自分の腕の中で息絶えた、モニカの死に大きなショックを受ける。
マレッティを意識しつつ、リサは警察の事情聴取で、信号が青だったと嘘の証言をしてしまう。
人の死に直面し動揺したとはいえ、嘘をついたリサは罪悪感を感じ、その思いを母親ジェーンや優しく接してくれる教師アーロンにうまく伝えられない。
そんなリサは、自分とマレッティが罪を負うべきだと判断して、モニカのいとこや友人のエミリーとコンタクトをとる。
そしてリサは、警察に向かい証言を訂正するのだが・・・。
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本作の公開は2011年(日本・劇場未公開)なのだが、撮影は2005年9~11月に行われ、2007年には劇場公開される予定であった。
その後、製作側のトラブルなどで公開が延期された経緯がある。
マット・デイモンなどが若く見えるのはそのためで、主演のアンナ・パキンは、30歳手前に思われ、高校生には見えないと批判する声もあり実際は当時23歳だが、主人公のような雰囲気の高校生は多くいるので、彼女の役柄に違和感はない。
それはともかく、撮影から公開の間に、製作者であるアンソニー・ミンゲラやシドニー・ポラックが亡くなった。
ブロードウェイの雑踏の中の死亡事故現場で、目撃者が主人公とバスの運転手しかいないのが疑問だとか、事故の原因は、走行途中の公営バスを、無理に止めようとした主人公の責任が重いと思えるが、自分の罪を・・と言いながら、運転手を徹底的に責めようとする姿を単純に不自然と捉えた場合、本作は全くの駄作に思えるだろう。
時に、現実とは道理に合わないものであり、タイトルの”マーガレット”の意味を考えてみる必要がある。
ドラマの中で、イギリスの詩人”ジェラルド・マンリー・ホプキンス”の”Spring and Fall, To a Young Child”を、英文学教師マシュー・ブロデリックが、授業の教材にする場面がある。
その内容を聞く主人公は、舞い落ちる枯葉を見て悲しむ幼子”マーガレット”の思いが、自分の心境に近いことに気づく・・・・これが作品のタイトルとなった。
”人の命は枯れゆくもので、嘆くのは自分のためである・・・”
拡大公開もされずに、商業作品とは言えない本作だが、本国アメリカではまずまずの評価を受け、理解不能な行動も、作品の意味を考えれば納得できる、主人公を演ずるアンナ・パキンの熱演と、明確な自己主張が印象的な、事故の被害者の友人ジーニー・バーリン、主人公の父親も演ずる、脚本も兼ねるケネス・ロナーガンの演出なども、各映画賞で高い評価を受けた。
主人公と関係してしまう、高校の教師を地味に演ずるマット・デイモン、事故の当事者であるバスのドライバー、マーク・ラファロ、その妻ローズマリー・デウィット、娘と心触れ合うことができずに苦悩する、主人公の母親を好演するJ・スミス=キャメロン、彼女と付き合う実業家のジャン・レノ、英文学教師役のマシュー・ブロデリック、事故の被害者アリソン・ジャニー、刑事スティーヴン・アドリー=ギアギス、弁護士マイケル・イーリーとジョナサン・ハダリー、被害者のいとこベッツィ・アイデム、クラスメイト役のキーラン・カルキン、オリヴィア・サールビー、ジョン・ギャラガーJr.、マット・ブッシュなどが共演している。