クリント・イーストウッドを、一躍ハリウッドのトップスターにした作品「ダーティハリー」(1971)の続編で、ジョン・ミリアス原案、脚本で製作された作品。 連続殺人に絡む警察内部の正義の暗殺団に立ち向かう刑事の活躍を描く、監督テッド・ポスト、主演クリント・イーストウッド、ハル・ホルブルック、ミッチェル・ライアン、デイヴィッド・ソウル共演による犯罪アクション。 |
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■ スタッフ キャスト ■
監督:テッド・ポスト
製作:ロバート・デイリー
原案:ジョン・ミリアス
脚本
ジョン・ミリアス
マイケル・チミノ
撮影:フランク・スタンリー
編集:フェリス・ウェブスター
音楽:ラロ・シフリン
出演
ハリー・キャラハン:クリント・イーストウッド
ニール・ブリッグス警部補:ハル・ホルブルック
チャーリー・マッコイ:ミッチェル・ライアン
ジョン・デイヴィス:デイヴィッド・ソウル
フィル・スウィート:ティム・マシスン
アラン”レッド”アストラハン:キップ・ニーヴン
マイク・グライムズ:ロバート・ユーリック
アーリントン”アーリー”スミス:フェルトン・ペリー
フランク・ディジョルジオ:ジョン・ミッチャム
J・J・ウィルソン:アルバート・ポップウェル
カーマイン・リッカ:リチャード・デヴォン
フランク・パランシオ:トニー・ジョージオ
ルー・ガズマン:クリフォード・A・ペロー
アメリカ 映画
配給 ワーナー・ブラザーズ
1973年製作 122分
公開
北米:1973年12月25日
日本:1974年2月1日
北米興行収入 $44,680,470
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
サンフランシスコ。
犯罪者カーマイン・リッカ(リチャード・デヴォン)が釈放され、それに反対する市民のデモが起きる。
その後、サンフランシスコ市警のパトロール警官のバイクが、リッカの車を追う。
そして、車を止めた警官は、運転手に尋問を始め、リッカや弁護士らを射殺してしまう。
市警の刑事ハリー・キャラハン(クリント・イーストウッド)と相棒のアーリー・スミス(フェルトン・ペリー)は、担当ではないものの、事件に興味を持ち現場に駆けつける。
そこに、キャラハンと反りの合わないニール・ブリッグス警部補(ハル・ホルブルック)が姿を現す。
ブリッグスに殺人課を追い出されたキャラハンは、嫌味を言う彼を相手にせず、何食わぬ顔でその場を立ち去る。 その後キャラハンは、空港で起きたハイジャック事件に遭遇し、機長に成り済まして機内に向かう。 犯人に離陸させるよう指示されたキャラハンは、急ブレーキをかける。 その混乱の隙に、キャラハンは一人の犯人を叩きのめし、容赦なく別の男を射殺し、現れたブリッグスに皮肉を言って引き上げる。 ある夜、射撃訓練場に向かったキャラハンは、駐車場で同僚警官のチャーリー・マッコイ(ミッチェル・ライアン)に出くわす。 チャーリーは、世の中の不正やそれに対する警察のあり方に不満を抱き、その怒りをキャラハンにぶつけ去って行く。 その後キャラハンは、射撃場で新人の4人、ベン・デイヴィス(デイヴィッド・ソウル)、ジョン・グライムス(ロバート・ユーリック)、フィル・スイート(ティム・マシスン)、レッド・アストラカン(キップ・ニーヴン)と顔を合わせる。 キャラハンは、自分の携帯する”44マグナム”をスイートに試し撃ちさせて、その腕前に驚く。 そしてキャラハンは、他の三人が、彼と同等かそれ以上の腕前だということを知る。 数日後、犯罪組織の大物が来客と共に、サブ・マシンガン(S&W M76)を所持した、パトロール警官の手によって皆殺しにされる。 三度目の離婚をすると言っていた、マッコイの言葉が気になったキャラハンは、彼の妻の様子を見に行く。 そこに、ショッピング・ストアーを襲おうとする、強盗事件の連絡が入り、キャラハンは現場に急行する。 相棒のスミスがレジ係に扮し、到着したキャラハンはマジック・ミラー越しに犯人の出方を監視する。 銃を持った犯人らは店に押し入り、スミスに銃を向けて跪かせた瞬間、キャラハンの銃撃で犯人の一人が射殺される。 スミスも一人を射殺し、キャラハンは店内にいたもう一人を射殺する。 キャラハンは、銃撃戦に顔色も変えることなく立ち去るのだが、スミスは、過酷な仕事に耐えるのがやっとだった。 その後、売春の元締めであるJ・J・ウィルソン(アルバート・ポップウェル)が、パトロール警官に車を止められて射殺される。 ブリッグスに呼び出されたキャラハンは、スミスと共に殺人課に戻ることになり、一連の麻薬や売春組織の関係者の殺人事件の捜査を担当させられる。 キャラハンは、現場で使われた拳銃が”357マグナム”だということと、犯人が警官に扮装して被害者に近づいた可能性を知る。 捜査を指揮するブリッグスは、リッカと対立する犯罪組織のボス、フランク・パランシオ(トニー・ジョージオ)を、キャラハンに見張らせようとする。 キャラハンは、それが見込み違いだと指摘するが、ブリッグスは強引に行動を開始する。 同時に、ブリッグスの命令で、麻薬と売春組織を支配するルー・ガズマン(クリフォード・A・ペロー)を監視していた刑事フランク・ディジョルジオ(ジョン・ミッチャム)は、パトロール中のマッコイが事故を起こすところを目撃する。 幸いマッコイは無事だったが、ガズマンは警官に殺され、その後、マッコイもその警官に射殺される。 その警官はデイヴィスで、マッコイが殺されたことを現場に現れたディジョルジオに知らせる。 それを知らないキャラハンは、犯人はマッコイだとブリッグスに伝える。 ブリッグスは、ガズマンとマッコイが殺され、デイヴィスが偶然、現場を通りがかったことをキャラハンに知らせる。 そしてブリッグスは、事件の実行犯が、リッカと対立していたパランシオだと言い切り、キャラハンに彼の逮捕を命ずる。 数日後、射撃大会の最中、ディジョルジオにデイヴィスが現れた時のことなどを確認したキャラハンは、4人組を疑い始める。 結局、大会は、毎年優勝を争うキャラハンを追い詰めたデイヴィスが優勝する。 キャラハンは、デイヴィスの拳銃(357マグナム)を借りて試し撃ちし、わざと一発ミスる。 その夜、自分が撃ったデイヴィスの弾丸を調べたキャラハンは、犯人は彼らだったと確信し、それをブリッグスに報告する。 ブリッグスは証拠には不十分だと、その弾丸を預かろうとするが、キャラハンはそれを渡さず、自分で処理しようとする。 そして、パランシオの逮捕命令が実行され、キャラハンは、デイヴィスとスイートを同行させることをブリッグスから許可される。 警官に扮した者達の襲撃を、何者かに知らされたパランシオは警戒し、入り口に現れたスイートを射殺してしまう。 激しい銃撃戦の末、キャラハンらはパランシオ一味の壊滅には成功する。 署に戻ったキャラハンは、行き過ぎた行動とスイートを同行させたことをブリッグスに責められる。 キャラハンは、事前に情報が流れたことを指摘するが、怒りの収まらないブリッグスは、彼をクビにしようとも考える。 ブリッグスに証拠の弾丸を要求され、憤慨したキャラハンは、仕方なくそれを彼に投げつける。 その後キャラハンは、スミスに4人組が犯人の可能性があることを伝え、ブリッグスに渡さなかったデイヴィスの弾丸が、マッコイの遺体のものと一致したことを知らせる。 さらにキャラハンは、スイートが自分達まで葬るための犠牲だと言い、警察内の暗殺団の存在も示唆し、スミスに警戒させる。 そして、デイヴィスらはキャラハンの前に現れて正体を明かし、悪に制裁を加えている自分達をの正当性を主張する。 しかし、キャラハンがそれを理解しないことを知った三人は彼の命を狙う。 キャラハンは、アパートの郵便受けのプラスチック爆弾を見つけてスミスに連絡を入れるが、彼は爆殺されてしまう。 ブリッグスに連絡を入れたキャラハンは、彼をアパートで待つ。 現れたブリッグスと車に乗ったキャラハンだったが、彼に拳銃を突きつけられてしまう。 4人組に制裁の指示を出していたのはブリッグスで、彼はキャラハンのマグナムを取り上げ弾丸を捨てさせる。 キャラハンは、自分達と手を組むようブリッグスに誘われるが、隙を見て彼を叩きのめす。 気を失ったブリッグスを車から放り出し、キャラハンは、追ってきたグライムズに正面衝突して彼を倒し、廃船となった軍艦に逃げ込む。 その後、キャラハンは、現れたアストラハンを殴り殺し、甲板にあった彼のバイクを奪う。 それを追ったデイヴィスだったが、勢い余って海中に転落し死亡する。 意識を取り戻したブリッグスは、キャラハンを待ち構えて銃口を向け、彼を犯人に仕立て上げようとする。 キャラハンは、自分のアパートに仕掛けられた爆薬をセットしてブリッグスの車に仕掛け、その場は彼の言いなりになる。 しかし、署に戻ろうとしたブリッグスの車は爆発炎上し、暗殺団は壊滅する。
...全てを見る(結末あり)
参考:
・「ダーティハリー」(1971)
・「ダーティハリー2」(1973)
・「ダーティハリー3」(1976)
・「ダーティハリー4」(1983)
・「ダーティハリー5」(1988)
*(簡略ストー リー)
犯罪人を制裁するような殺人事件が続発し、殺人課から追い払われていた、市警の刑事ハリー・キャラハンは、相棒のスミスと共に、反りの合わないブリッグス警部補に呼び戻される。
犯人は警官に扮していることが分かるのだが、キャラハンは、悪人や警察組織に不満を抱く同僚のマッコイを疑い始める。
そんな時、マッコイは何者かに殺されてしまい、キャラハンは、現場を通りがかり居合わせたという、新米警官デイヴィスらの犯行を疑う。
そしてキャラハンは、自分達の身の危険も感じながら、真犯人の捜査を進めるのだが・・・。
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前作「ダーティハリー」(1971)には及ばないものの、原題”Magnum Force”の通り、全編でマグナムが炸裂する、迫力シーンが見ものだ。
そのマグナムの威力を見せ付ける、ファンにはたまらないオープニングは、身震いするほどだ。
大型拳銃44マグナムを握る、イーストウッドの手の大きさに驚き、前作での決まりゼリウを彼が発する。
”This is a 44 Magnum, the most powerful handgun in the world, and would blow your head clean off, you’ve got to ask yourself a question: Do I feel lucky?”
そして観客に向かって一撃を喰らわす、実に洒落たオープニングだ。
玄人好みのするテッド・ポストの演出、力強いラロ・シフリンの音楽も素晴らしい!
前作の序盤、銀行強盗を捕まえるシーンでは、ホットドッグを食べている最中の出来事だったが、今回のハイジャックを解決する場面では、空港でハンバーガーをかじろうとする時に事件が起きる。
この頃のイーストウッド作品には、こんなユーモラスなシーンが多く登場したことを懐かしく思いだす。
2008年に83歳で「イントゥ・ザ・ワイルド」(2007)の演技によりアカデミー助演賞候補になった、黒幕の警部補役ハル・ホルブルックの好演も光る。
この頃の作品、「大統領の陰謀」(1976)でも、殆ど姿を見せることのない情報源”ディープ・スロート”役などをこなしていた、息の長い名優だ。
大スターの風格も出てきた、イーストウッドの魅力が生かされ、十分に楽しめる作品。大型バイクが小さく見えるイーストウッドの巨体(193cm)は、細身のようだがかなり鍛えられている。
主人公の同僚で、暗殺団の”制裁”の犠牲になるミッチェル・ライアン、相棒フェルトン・ペリー、実行犯のデイヴィッド・ソウル、ティム・マシスン、キップ・ニーヴン、ロバート・ユーリック、次回作で殉職する同僚、ロバート・ミッチャムの実弟のジョン・ミッチャム、犯罪組織のボス役のトニー・ジョージオ、そしてシリーズの顔、前作の銀行強盗アルバート・ポップウェルが、殺される売春の元締め役で登場する。