異人種間結婚禁止法が違憲だと認めた最高裁判決のきっかけとなった”ラヴィング対ヴァージニア州裁判”の当事者であるラビング夫妻の愛を貫く姿を描く、製作コリン・ファース、監督、脚本ジェフ・ニコルズ、主演ジョエル・エドガートン、ルース・ネッガ、マートン・チョーカシュ、ニック・クロール、マイケル・シャノン他共演の夫婦愛のドラマ。 |
■ スタッフ キャスト ■
監督:ジェフ・ニコルズ
製作
ゲド・ドハティ
コリン・ファース
サラ・グリーン
マーク・タートルトーブ
ピーター・サラフ
製作総指揮:ブライアン・カヴァナー=ジョーンズ
原作:ナンシー・ビュースキー”The Loving Story”
脚本:ジェフ・ニコルズ
撮影:アダム・ストーン
編集:ジュリー・モンロー
音楽:デヴィッド・ウィンゴ
出演
リチャード・ラビング:ジョエル・エドガートン
ミルドレッド・ジーター・ラビング:ルース・ネッガ
ブルックス保安官:マートン・チョーカシュ
バーナード・コーエン:ニック・クロール
グレイ・ヴィレット:マイケル・シャノン
ガーネット:テリー・アブニー
レイモンド・グリーン:アラーノ・ミラー
フィリップ・ハーシュコプ:ジョン・バス
フランク・ビーズリー:ビル・キャンプ
イギリス/アメリカ 映画
配給 フォーカス・フィーチャーズ
2016年製作 123分
公開
イギリス:2017年2月3日
北米:2016年11月4日
日本:2017年3月3日
製作費 $9,000,000
北米興行収入 $7,751,970
世界 $12,957,270
■ アカデミー賞 ■
第89回アカデミー賞
・ノミネート
主演女優賞(ルース・ネッガ)
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
1958年、バージニア州、キャロライン郡。
建設労働者の白人リチャード・ラビング(ジョエル・エドガートン)は、恋人で黒人のミルドレッド・ジーター(ルース・ネッガ)から妊娠していることを知らされ、喜ぶ二人は愛を深める。
ドラッグレースをミルドレッドや親友のレイモンド・グリーン(アラーノ・ミラー)ら黒人と共に見守るリチャードは、友人であるヴァージルが白人に勝ったことを喜ぶ。
ある日、仕事を終えたリチャードは、ミルドレッドを連れて手に入れた土地に向かい、そこに家を建てる計画を話してプロポーズする。
不安はあるもののうれしく思うミルドレッドは、それを姉のガーネットに話し祝福される。 バージニアでは異人種間の結婚は違法であるため、リチャードは、ワシントンD.C.に行って結婚することをレイモンドに伝える。 同棲で十分だと言うヴァージルは、リチャードの考えが理解できない。 ワシントンD.C.。 ミルドレッドの家で暮らしていたリチャードは、実家に戻った際に、母親から保安官補が来たことを知らされ、自分の居場所は話さなかったと言われる。 ある夜、寝室に押し入ってきた保安官ブルックス(マートン・チョーカシュ)に逮捕されたリチャードとミルドレッドは、結婚証明書を見せて夫婦だと伝えるものの、ここでは通用しないと言われて連行される。 ジオリヴァーが、その様子を見つめていた。 二人は留置場に入れられ、翌朝、リチャードは釈放されるもののミルドレッドは残される。 月曜に判事と話すようにと言われたリチャードは納得できず、なぜ保安官にバレたかは分からなかった。 翌日、月曜まで待てないリチャードは、保安官事務所に向かうものの、ミルドレッドの保釈は認められなかった。 ブルックスに呼ばれたリチャードは、ミルドレッドは家族に引き渡すと言われ、人種が入り混じる複雑な土地の事情などの話をされる。 白人と黒人の結婚は見逃さないと言うブルックスは、決して認めないとリチャードに伝える。 帰るようにと言われ、月曜にミルドレッドの家族をよこすよことを指示されたリチャードは、自分が来たら逮捕するとブルックスに警告される。 月曜日。 自分のためにリチャードが家を出たことを知らされたミルドレッドは、彼の実家の方向を見つめる。 その夜、ミルドレッドに会いに行ったリチャードは、怯える彼女に弁護士を雇ったと言って安心させて、暫く人目につかないようにすることを伝える。 部屋を出たリチャードは、ガーネットが自分を見つめていることに気づきながらその場を去る。 翌日、弁護士のフランク・ビーズリー(ビル・キャンプ)に会ったリチャードとミルドレッドは、判事と司法取引をしてきたことを知る。 人種間の結婚に否定的な判事だが、有罪を認めれば執行猶予を付ける考えだと言われる。 それに同意したリチャードとミルドレッドは、婚姻関係を解消しない限り州外退去となると言われ、それが、この州では二人で一緒に滞在することが許されないことを意味していることを知る。 執行猶予期間は25年間だと知った二人は驚き、納得できないリチャードは、実刑を選ぶなら州刑務所に1年収監されると言われる。 刑務所行きか州を離れるかの選択を迫られた二人は悩む。 ビーズリーと共に法廷に向かったリチャードとミルドレッドは、指示に従い有罪を認め、釈放の条件は、25年間は同州に二人同時に滞在しないこととなる。 ワシントンD.C.の友人の兄夫婦の家で世話になるリチャードとミルドレッドは、旅立とうとする。 家族に別れを告げるミルドレッドだったが、妹と別れなければならないガーネットは、違法だと知りながら結婚したリチャードを恨む。 ワシントンD.C.。 考え込むミルドレッドの様子が気になったリチャードは、彼女が助産婦である義母の所で出産したい気持ちを知る。 その望みを叶えようとするリチャードは、ミルドレッドを連れてバージニアに向かう。 迎えに来たレイモンドの車にミルドレッドを乗せたリチャードは、二人と別れて実家に戻る。 家族と共に出産の準備をするリチャードは、ガーネットに感謝される。 翌日、ミルドレッドは無事に出産し、母に感謝したリチャードは、彼女はいい子だが、法を犯したこの結婚は間違いだと言われる。 ブルックスが現れ、覚悟を決めたミルドレッドは、息子のシドニーをガーネットに預けて自らパトカーに乗り、リチャードと共に連行される。 法廷に向かったリチャードとミルドレッドは、執行猶予中の違反に対して、200ドルの支払いを命ぜられる。 遅れて来たビーズリーは、出産時には一時帰郷できると誤って伝えてしまったと言って、判事に情状酌量を求める。 それが認められビーズリーに感謝したリチャードとミルドレッドは、二度と戻るなと言われ、次はないと警告される。 ワシントンD.C.に戻ったリチャードとミルドレッドは、その後は平穏に暮らし、次男ドナルドと長女ペギーも生まれる。 訪ねて来たガーネットを歓迎したミルドレッドは、ここが子供を育てる環境ではないことを伝える。 人種差別撤廃を求めるデモ行進が行われる中、そのことをローラと話したミルドレッドは、ケネディ司法長官に平等を求める手紙を書くことを勧められる。 行進のことなどは別世界の話だと思っていたミルドレッドだったが、ケネディ司法長官に手紙を書く。 数日後、ACLU/アメリカ自由人権協会の紹介だと言う弁護士バーナード・コーエン(ニック・クロール)からの電話を受けたミルドレッドは、司法長官に手紙を送ったことを確認される。 その手紙を読んだ司法長官がそれをACLUに送り、弁護の依頼がきたことをコーエンから知らされたミルドレッドは、夫婦での話し合いを求める彼から、弁護士費用は不要だと言われる。 その件をリチャードに話したミルドレッドは、弁護士に会いに行くことを伝える。 友人のオフィスを借りたコーエンは、現れたリチャードとミルドレッドを歓迎する。 安心できる生活を送らせるために働くつもりだと二人に伝えたコーエンは、訴訟を連邦裁まで持ち込むと伝える。 それを疑問に思うリチャードは、キャロライン郡の判事と話せばいいことだとコーエンに伝えるものの、それでは解決できない問題であり、最高裁まで進むケースだと言われる。 ミルドレッドがその話に興味を持ったために話を始めたコーエンは、控訴の期限が既に過ぎているこの件を、どのようにして法廷に戻すかが問題だと伝える。 常識を外れた方法だが、二人がキャロライン郡で再び法を破り再逮捕されれば上訴できると伝えたコーエンは、自分が即、釈放することを約束する。 リチャードがそれを拒んだため提案を取り下げたコーエンは、その日の話を終え、少し時間が欲しいと伝えて、部屋を出る二人を見送る。 コーエンの力を借りたいと思うミルドレッドだったが、リチャードは無料の弁護士など信用できないと考える。 数日後、シドニーと空き地で遊んでいたドナルドは、道路に飛び出して車に轢かれてしまう。 幸い軽症で済んだものの、この場では子供を育てられないと判断したミルドレッドは、帰宅したリチャードに事故のことを話し、故郷に戻ることを伝える。 ミルドレッドの気持ちを理解したリチャードは、彼女と子供達を先に出かけさせて途中で合流する。 レイモンドからキングアンドクイーン郡の農場の一軒家を紹介されたリチャードとミルドレッドは、その場に向かい暮らし始める。 ミルドレッドからの手紙を受けっとったコーエンは、恩師に会い、人権派弁護士のフィリップ・ハーシュコプ(ジョン・バス)を紹介される。 今回の件を二人に話したコーエンは、異人種間結婚禁止法を廃止できる糸口になることを伝える。 憲法を変える裁判に挑む決心をしたコーエンは、ハーシュコプに協力してもらえることになる。 連絡を受けたリチャードとミルドレッドはコーエンとハーシュコプに会い、最高裁に進む道が開けたことを知らされる。 雑誌”LIFE”からの取材依頼が来ていることをコーエンから知らされたリチャードとミルドレッドは、今後のことを考えると、記事にしてもらえるのはプラスになると言われる。 ”LIFE”のフリーカメラマン、グレイ・ヴィレット(マイケル・シャノン)を歓迎したリチャードとミルドレッドは、気さくな彼との会話を楽しむ。 その後、リチャードとミルドレッドの上訴は州最高裁でも敗訴となる。 思い通りに事が進んでいるコーエンとハーシュコプだったが、ワシトンD.C.には戻らないリチャードとミルドレッドが逮捕された場合のことを心配する。 ヴィレットの記事に包んであったレンガが車の中に置かれていることに気づいたリチャードは、警戒しながらレイモンドと共に家を見張る。 数日後、記者のインタビューを受けるミルドレッドに意見したリチャードだったが、必要なことだと言われる。 10年も裁判を続けるリチャードは、自分の力で守りたいことをミルドレッドに伝えながら涙する。 そんなリチャードに優しく話しかけるミルドレッドは、そう願っていることを伝える。 訪ねて来たコーエンとハーシュコプから、最高裁が上告を受理したことを知らされたリチャードとミルドレッドは、州側の反論は予想されるが勝算はあると言われる。 リチャードから州側がどのように反論してくるか問われたコーエンは、子供を非嫡出子と主張するだろうと答える。 裁判を傍聴できると言われるものの、リチャードはそれを拒み、ミルドレッドも彼に従う。 リチャードと話したコーエンは、最高裁で審議されるのは400件に一件で、今回のケースは歴史的な快挙だと伝える。 感謝していいると言われたコーエンは、最高裁の判事に伝えたいことをリチャードに尋ねる。 リチャードは、自分は妻を愛していることを伝えてほしいと答える。 最高裁。 州にとって、異人種結婚の何が危険か、脅威となるのかを問うコーエンは、結婚は基本的人権であると語る。 コーエンからの電話を受けたミルドレッドは、勝訴したことを知らされる。 感激したミルドレッドは、車の整備をするリチャードを見つめて、気がついた彼に微笑む。 記者会見を開いたリチャードとミルドレッドは、カメラに囲まれながら質問を受ける。 故郷に戻り家を建て始めたリチャードは、ミルドレッドと子供達と共に幸せを実感する。 ”ラヴィング対ヴァージニア州裁判”により、異人種間結婚禁止法は違憲となる。 最高裁は、”結婚は生得権である”と宣言した。 判決から7年後、リチャード・ラビングは飲酒運転の車との衝突事故で死亡した。 ミルドレッドは再婚せず、リチャードが建てた家で生涯を暮らした。 英雄視されることを嫌ったミルドレッドだったが、2008年に他界する前に取材に応じた際にこう語った。 ”彼が恋しい 彼は私を守ってくれた”
...全てを見る(結末あり)
リチャードとミルドレッドは、彼女の父シオリヴァーに付き添われ、結婚して夫婦となる。
ブルックスから、父が保釈金を払ったことを知らされたミルドレッドは、釈放されて家に戻る。
ローラに歓迎されたリチャードとミルドレッドは、新生活を始める。
異人種間結婚禁止法は人種隔離法の中でも最も忌むべき法律であり、奴隷法だと判事に伝えたハーシュコプは、多角的な考察を求め、犯罪性ではなく、土地の相続権や子供の人権をはじめとする多くの権利だと主張する。
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■ 解説 評価 感想 ■
(簡略ストーリー)
1958年、バージニア州、キャロライン郡。
建設労働者の白人リチャード・ラビングは、恋人で黒人のミルドレッド・ジーターから妊娠していることを知らされる。
異人種間の結婚が認められるワシントンD.C.で結婚したリチャードとミルドレッドだったが、ブルックス保安官に逮捕されてしまう。
釈放されるものの納得いかないリチャードは、弁護士を雇うものの、このままでは刑務所行きだと知らされる。
仕方なく罪を認めたリチャードとミルドレッドは、25年間は同州で同時に滞在できなくなり、ワシントンD.C.で暮らすことになるのだが・・・。
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ナンシー・ビュースキーの小説”The Loving Story”を基に製作された作品。
異人種間結婚禁止法が違憲だという最高裁判決”ラヴィング対ヴァージニア州裁判”の当事者ラビング夫妻の愛を貫く姿を描く実録ドラマ。
ラビング夫妻の実話に感銘を受けたコリン・ファースが映画化を積極的に進めて、製作に参加した作品。
公民権運動が世の中に大きな影響を与えた時代、異人種間で結婚した田舎町の平凡な夫婦の愛が、憲法を変えた歴史的事実を伝えたドラマ。
第89回アカデミー賞では、ルース・ネッガが主演女優賞に、ゴールデングローブ賞では、彼女と夫役のジョエル・エドガートンがそれぞれ主演賞(ドラマ)に、第69回カンヌ国際映画祭では、ジェフ・ニコルズがパルムドールにノミネートされた。
深い愛で互いを支え合うリチャード・ラビングとミルドレッド・ジーター・ラビングを演ずるジョエル・エドガートンとルース・ネッガの演技は絶賛され、激動の時代に、愛の力で幸せを手に入れる夫婦を好演している。
主人公の二人を厳しく罰しようとする保安官のマートン・チョーカシュ、ACLU(アメリカ自由人権協会)から主人公の弁護を依頼される人権派弁護士バーナード・コーエンのニック・クロール、主人公の二人を取材する”LIFE”のフリーカメラマン、マイケル・シャノン、ミルドレッドの姉テリー・アブニー、リチャードの親友アラーノ・ミラー、主人公を弁護する人権派弁護士フィリップ・ハーシュコプのジョン・バス、キャロライン郡での主人公の弁護士ビル・キャンプなどが共演している。