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失はれた地平線 Lost Horizon (1937)

1933年に発表された、ジェームズ・ヒルトン同名小説の映画化。
混迷する地から逃れ導かれるように理想郷”シャングリラ”に到着した外交官が人間のあるべき姿をみつける姿を描く、製作、監督フランク・キャプラ、主演ロナルド・コールマンジェーン・ワイアットH・B・ワーナーサム・ジャフェトーマス・ミッチェル他共演によるファンタジー・アドベンチャーの傑作。

アカデミー賞 ■ ストーリー ■ 解説


ファンタジー


スタッフ キャスト ■
監督:フランク・キャプラ

製作:フランク・キャプラ
原作:ジェームズ・ヒルトン
脚本:ロバート・リスキン
撮影:ジョゼフ・ウォーカー
編集
ジーン・ヘイヴリック

ジーン・ミルフォード
美術・装置:スティーブン・グーソン
音楽:ディミトリ・ティオムキン

出演
ロバート・コンウェイ:ロナルド・コールマン

ソンドラ・ビゼット:ジェーン・ワイアット
チャン:H・B・ワーナー
高僧(ペロー神父):サム・ジャフェ
ヘンリー・バーナード:トーマス・ミッチェル
ジョージ・コンウェイ:ジョン・ハワード
アレグザンダー・P・ラヴェット:エドワード・エヴェレット・ホートン
マリア:マーゴ
グロリア・ストーン:イザベル・ジュエル

アメリカ 映画
配給 コロンビア・ピクチャーズ

1937年製作 132分
公開
北米:1937年3月3日
日本:1937年4月
製作費 $2,000,000


アカデミー賞 ■
第10回アカデミー賞

・受賞
編集・美術賞
・ノミネート
作品・助監督
助演男優(H・B・ワーナー
録音・作曲賞


*詳細な内容、結末が記載されています。
ストーリー ■
1935年3月10日、中国、バスクル。
暗雲立ち込める戦乱の地から脱出しようとしていた、イギリス人外交官ロバート・コンウェイ(ロナルド・コールマン)は、弟のジョージ(ジョン・ハワード)、古生物学者のアレグザンダー・P・ラヴェット(エドワード・エヴェレット・ホートン)、元企業家であるヘンリー・バーナード(トーマス・ミッチェル)、そして、肺病を患うグロリア・ストーン(イザベル・ジュエル)と共に飛行機で上海に向かう。

しかし、その機は何者かに奪われ、上海ではなく西に向かってしまう。

それに気づいたラヴェットらは動揺するが、コンウェイは操縦士に銃を向けられ、仕方なく成り行きに任せることにする。
...全てを見る(結末あり)

機は砂漠の集落に着陸し、燃料を補給した後に再び飛び立ち、山岳地帯に向かう。

コンウェイらが行方不明になったことが、上海からロンドンに伝わり、イギリス政府は、中国に対し彼らの捜索を依頼する。

行き先のわからないコンウェイら一行は困惑し、グロリアは取り乱してしまう。

やがて、エンジンが故障した飛行機は、雪山に不時着して操縦士は死亡するが、コンウェイは、その場所が未開の地の果てだということを知る。

助かる見込みのないことを知ったジョージは絶望し、気を取り戻していたグロリアは開き直る。

やがて、寒さを凌ぎ野草で飢えに耐えていた一行の前に、ラマ教寺院のチャン(H・B・ワーナー)らが現れる。

友好的なチャンらは、コンウェイら一行を連れて出発する。

そして、吹雪の中、険しい山道を進んだ一行は、四方を山に囲まれた、安定した気候の別世界”シャングリラ”に到着する。

宮殿に案内された一行は、衣服や豪華な食事で歓迎されるが、病にかかるグロリアだけは塞ぎこむ。

食事も終わり、早速、帰国の話を切り出した一行だったが、チャンは、外界と連絡する手段がないことを彼らに告げる。

困惑するジョージに、コンウェイは、初めて来た”シャングリラ”が懐かしい気がすると語り、自分達は、導かれることになっていたのではと思い始める。

コンウェイは、”シャングリラ”は全てが適度な満足で成り立ち、犯罪や争い、財産も存在しないことを知らされる。

この地には金脈があり、それで全ての物を物々交換しているということだった。

そしてコンウェイは、宮殿の住人である美しい女性ソンドラ・ビゼット(ジェーン・ワイアット)に心を奪われ、ジョージは若い女性マリア(マーゴ)と出会う。

バーナードが金脈を見つけ、それをグロリアに話して、咳き込む彼女を励まし、ラヴェットは、不可思議な地で人々を警戒する。

乗馬に出かけたソンドラを追ったコンウェイは、泉で水浴をする彼女の衣服に悪戯して気を引こうとする。

その日の夕食の際、自分のことを何も語らないバーナードが、会社を破産させて、多くの株主に損害を与えた人物だとわかり”詐欺師”呼ばわりされる。

自分も損害を受けたラヴェットが、帰国後にバーナードを警察に突き出すと言った言葉をきっかけに、ジョージが取り乱して銃を発砲してしまう。

仕方なく、ジョージを殴り気絶させたコンウェイは、チャンに、自分達が囚われの身である理由を問い質す。

チャンは、全ては”高僧”が知っていると語り、コンウェイを高僧の元に案内する。

高僧(サム・ジャフェ)に面会したコンウェイは、200年近く前に”シャングリラ”を作ったと聞いていた、”ペロー神父”が彼だということを知り、その長寿に驚いてしまう。

シャングリラ”の人々のような、優しく穏やかで思いやりのある世界を世の中に築くため、必要な人物としてこの地に導かれたことを、コンウェイは高僧から知らされる。

高僧の志の高さに心打たれたコンウェイは、自分の使命を理解する。

それを他の者達には語らず、コンウェイは”シャングリラ”の人々の暮らしを観察し始める。

コンウェイは、ソンドラが、自分の著書を読み呼び寄せたことを高僧から聞いていた。

ソンドラから、自分が”何も成し遂げてない空虚な人生”だとコンウェイは言われてしまう。

ソンドラと親しくなったコンウェイは、懐かしさと親しみを感じる”シャングリラ”についての思いを彼女に語る。

そんなコンウェイに、心の中で、この地を求めていたのだとソンドラは語りかける。

帰国を望んでいたラヴェットだったが、日が経つにつれて”シャングリラ”での生活を楽しめるようになる。

未だに気分が晴れないジョージは、マリアと親密になっていたが、純粋に愛を語ろうとする彼女に”シャングリラ”についての探りばかり入れてしまう。

やがて、コンウェイとソンドラは愛し合うようになり、一体感まで感じられるようになる。

人々のために尽くしたくなったラヴェットは、教育者として、子供達に学問を教えたいことをチャンに提案し快諾される。

バーナードは、未だに井戸を使っている人々のために、水道設備を作ることをチャンに提案するが、ジョージは依然不機嫌だった。

ジョージは我慢の限界に達して、ついに外界に出て行くと言い出し、コンウェイは高僧に助言を求める。

高僧は、自分の死が近づいていることをコンウェイに知せ、”シャングリラ”の運命を彼に委ねることを告げて息を引き取る。

脱出準備が出来たジョージはコンウェイを誘い、マリアも同行させると言い出す。

20歳にしか見えないマリアだったが、実際には1888年にこの地に来ていたため、外界に出ると70歳の老婆になってしまうことを、コンウェイはジョージに知らせる。

しかし、マリアは誘拐されてきたと言い張り、同行を拒絶していたコンウェイも脱出に合意する。

ラヴェットとバーナード、そしてグロリアを残し、コンウェイらは”シャングリラ”を去り、ソンドラはそれを追うが、境界線で諦める。

シェルパ達を雪崩で失ったコンウェイらは、マリアが老婆となり、息を引き取ったことに気づく。

それを見たジョージは発狂し、崖から転落死してしまう。

激寒の雪山を越え、伝道所にたどり着いたコンウェイは救助され、それがロンドンにも伝わる。

その後コンウェイは、記憶喪失になったと報道されて帰国することになる。

しかし、記憶を取り戻したコンウェイは、”シャングリラ”についてを語り始めた直後に失踪し、やがてその捜査も断念することになる。

そして、不屈の精神で雪山を越えたコンウェイは、ついに”シャングリラ”の境界線にたどり着く。


解説 評価 感想 ■

*(簡略ストー リー)
1935年。
戦況の地中国から脱出した、イギリスの外交官ロバート・コンウェイを含めた、学者、元企業家、病人らの一行を乗せた飛行機は、何者かによって奪われて西に向かう。
やがて飛行機は不時着して、導かれるように地の果ての理想郷”シャングリラ”に向かう。
コンウェイは、なぜか懐かしく思い親しみを感じる夢のようなその地で、高僧の元に案内される。
そしてコンウェイは、その高僧が、200年近く前に”シャングリラ”を作ったいう神父だと知り、長寿に驚いてしまう。
やがて、コンウェイは、高僧の理想を聞き感銘を受け、その地の人々を観察し始める・・・。
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物質的脅威は発展を続け、各地で戦争の火種を抱えていた時代、人間性を求めた理想の世界、人々の持つべき心の拠り所を幻想的に描いたフランク・キャプラが、一風変わった作風で、彼の理想の世界を表現した異色作。

ファンとしては気になる、ディミトリ・ティオムキンの、この頃の音楽と共に実に興味深い作品だ。

当初の予算を遥かにオーバーした製作費200万ドルをかけた、そのセットや特殊効果は見事な仕上がりを見せている。

スタジオ内撮影にしか見えない、激寒の雪山の場面で、俳優達の吐く息が白いリアルさなどは効果抜群で、手抜きのない玄人好みのする仕事振りも見逃せない。

第10回アカデミー賞では作品賞以下7部門にノミネートされ、編集と美術賞を受賞した。
・ノミネート
作品、助監督、
助演男優(H・B・ワーナー
録音、作曲賞

理想郷の後継者として、その人格を認められる外交官を演ずるロナルド・コールマンは、いつもながらの清潔感溢れる紳士を、ゆったりとした雰囲気で見事に演じている。

西洋人がアジア人を演ずる違和感を、不思議に感じない、ラマ教寺院の僧H・B・ワーナーと高僧サム・ジャフェの、物語に溶け込んだ”幻想的”な人物像も印象的だ。

主人公と恋に落ちる、宮殿の住人ジェーン・ワイアット、理想郷に次第に馴染んでいく元企業家のトーマス・ミッチェル、学者エドワード・エヴェレット・ホートン、肺病を患う女性のイザベル・ジュエル、その逆に、現実的な主人公の弟ジョン・ハワード、彼に同行して理想郷を脱出し、結果的に命を落す女性マーゴなどが共演している。


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