妻殺害容疑で死刑を宣告されたサックス奏者の奇怪な体験を描く、カルト・ムービーの鬼才デヴィッド・リンチが5年振りに監督(脚本兼)した、主演ビル・プルマン、パトリシア・アークエット、バルサザール・ゲティ、ロバート・ロッジア、リチャード・プライヤー、ジョヴァンニ・リビシ他共演によるサスペンス・スリラーの快作。 |
■ スタッフ キャスト ■
監督:デヴィッド・リンチ
製作
ディーパック・ネイヤー
トム・スタンバーグ
メアリー・スウィーニー
脚本
デヴィッド・リンチ
バリー・ギフォード
撮影:ピーター・デミング
編集:メアリー・スウィーニー
音楽
アンジェロ・バダラメンティ
トレント・レズナー
出演
フレッド・マディソン:ビル・プルマン
レネエ・マディソン/アリス・ウェイクフィールド:パトリシア・アークエット
ピート・レイモンド・デイトン:バルサザール・ゲティ
エディ/ディック・ロラント:ロバート・ロッジア
謎の男:ロバート・ブレイク
シーラ:ナターシャ・グレグソン・ワグナー
アーニー:リチャード・プライヤー
アンディ:マイケル・マッシー
スティーヴ”V”:ジョヴァンニ・リビシ
ビル・デイトン:ゲイリー・ビジー
フィル:ジャック・ナンス
アメリカ 映画
配給 October Films
1997年製作 135分
公開
北米:1997年2月21日
日本:1997年6月14日
製作費 $15,000,000
北米興行収入 $3,796,700
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
ロサンゼルス
ある朝、サックス奏者のフレッド・マディソン(ビル・プルマン)は、玄関のインターフォンで、”ディック・ロラントは死んだ”という男の声を聞く。
フレッドは、二階から外の様子を見るが、誰かがいる気配はなかった。
その夜、仕事に同行しなかった妻レネエ(パトリシア・アークエット)に電話をしたフレッドだったが誰もでない。
帰宅したフレッドは、レネエがベッドで寝ていることを確認する。
翌朝、レネエは玄関の会談に置いてあったビデオ・テープに気づき、フレッドとそれを見る。
しかし、それは、家の玄関を映しただけの映像だった。 その夜、レネエと愛し合ったフレッドは、ベッドに寝ていた彼女が別人だった夢を見たことを話す。 次の朝もビデオは届けられ、その内容は、家の中と二人が寝ている姿が撮影されていた。 動揺したレネエは警察に連絡を入れ、現れた二人の刑事は、一応、家や周辺を調べて、監視することを伝えて引き上げる。 その夜、バンドマネージャーのアンディ(マイケル・マッシー)のパーティーで、フレッドは、黒ずくめの謎の男(ロバート・ブレイク)に声をかけられる。 会ったことがあると言う男に、自分が今現在家にいる言われたフレッドは、彼の携帯電話で自宅に電話をしてみる。 男が電話に出たため、それが理解できないフレッドだったが、薄気味悪い笑みを浮かべた男は、会えてよかったと言って立ち去る。 フレッドは、男が”ディック・ロラント”の友人だと言われて動揺し、レネエと共にその場を後にする。 帰宅したフレッドは、誰かが家の中にいることを警戒する。 翌朝、再び届いたビデオを確認したフレッドは、自分がレネエを殺してバラバラにする映像を見てしまう。 ショックを受けて意識を失ったフレッドは、その後、警察で殺人の疑いをかけられて尋問を受け、裁判の結果、死刑宣告を受ける。 刑務所の独房に入れられたフレッドは、眠れないまま苦しむ日々を送り、幻覚に襲われた末に、ピート・レイモンド・デイトン(バルサザール・ゲティ)という青年と、入れ替わってしまう。 その後の調べで、ピートは自動車窃盗罪で逮捕歴があり保護観察処分中で、両親と暮らしていることが分かる。 ピートは父ビル(ゲイリー・ビジー)と母に引き取られ、警察に監視される。 何があったのかを思い出せないピートは、以前働いていたアーニー(リチャード・プライヤー)の自動車修理工場に戻り働き始める。 ピートは、馴染み客で、自分を信頼してくれる、ギャングのボス、エディ(ロバート・ロッジア)のベンツの調子を見るために、彼に連れられて工場を出る。 途中で車の調整をしたピートだったが、エディは、あおってきた後続車の男の車を止めて、彼を脅して痛めつける。 工場に戻ったピートは、エディに感謝されてチップをもらい、監視していた警官は、エディのことを”ロラント”だと確認する。 その夜、恋人シーラ(ナターシャ・グレグソン・ワグナー)を誘ったピートは、警察に監視されながら、彼女と車の中で愛し合う。 翌日、ピートは、エディの別の車キャデラックの整備を頼まれ、同行していたアリス・ウェイクフィールド(パトリシア・アークエット/二役)に惹かれてしまう。 その夜、工場に現れたアリスに誘われたピートは、ためらいながらも、誘惑に負けて彼女と愛し合い、その後も密会を続ける。 幻覚のようなものが見えるようになったピートは、ある夜、シーラを連れて戻ってきた際、男を連れていたという話を父ビルから聞かされる。 何も覚えていないピートに、ビルはそれ以上何も語らなかった。 翌日、エディが工場に現れ、アリスに近づく男がいたら殺すと、銃を手にしてピートに伝える。 アリスに会ったピートは、全てがばれているという思いで、不安を隠せない彼女から、ある男の家の現金を奪い逃亡する提案をされる。 その男アンディの紹介で、アリスはエディの元に向かい、ポルノ映画の女優となったのだった。 帰宅したピートは、その場にいたシーラに浮気をしていることで責められ、彼女が帰った直後に、エディからの電話を受ける。 エディはピートの様子を窺い、その場にいた謎の男と電話を代わる。 男は、自宅で会ったことをピートに伝えるが、彼にはその記憶がない。 アンディの家に向かい、現れた彼を殴り倒したピートは、その場にいたアリスと計画を進めようとする。 起き上がり襲いかかってきたアンディは、勢い余ってテーブルの角に額が突き刺さり死亡する。 金を奪おうとした二人だったが、ピートは、アリスとレネエが写っている写真を見て気分が悪くなり、幻覚が見え始める。 動揺するピートは、故買屋で盗品を現金にしたアリスと砂漠に向かう。 ある小屋に着いた二人は、誰もいないことを確認して外で愛し合う。 アリスが小屋に入った直後、ピートはフレッドに入れ替わり、小屋の中から出てきた謎の男に呼び寄せられる。 男は、その場にいないアリスがレネエだと伝え、ビデオ・カメラを回し始め、フレッドはその場から車で走り去る。 フレッドは、密会に使っていたホテルに向かい、違う部屋ではレネエとエディが愛し合っていた。 レネエが部屋を出たことを確認したフレッドは、エディの部屋に向かい彼を叩きのめし、車のトランクに押し込めて走り去り、それを謎の男が目撃していた。 砂漠で車を止めたフレッドは、エディと揉み合いになり、その場にいた謎の男に渡されたナイフで、エディの喉を切り裂く。 男は、エディが作ったポルノ・ビデオを見せて彼を射殺し、フレッドに何かを伝える。 アンディの殺害現場を検証していた警察は、フレッドの妻レネエがロラントと関係していたことと、ピートの指紋が至る所あることを疑問に思う。 自宅に戻ったフレッドは、インターフォンに向かい”ディック・ロラントは死んだ”とつぶやく。 警察が現れたためにフレッドは車で走り去り、錯乱して叫び声を上げながら逃走する。
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*(簡略ストー リー)
ロサンゼルス。
サックス奏者フレッド・マディソンは、ある朝、インターフォン越しに”ディック・ロラントは死んだ”と言われる。
翌朝、フレッドは、玄関に届いた、家のを映したビデオ・テープを妻レネエと確認し、翌日も届けられたビデオで、自分達の寝姿が盗み撮りされていることを知る。
不安に思い警察に届けた二人は、監視してもらえることにはなる。
バンドマネージャー、アンディのパーティーで、不気味な謎の男に声をかけられたフレッドは、自分の家にいるという彼と、その場で電話で会話をして、その男がロラントの友人だと知る。
翌日、再び届いたビデオに、自分がレネエを殺しバラバラにする姿が映し出されたのを確認したフレッドは、容疑者として有罪になり死刑を宣告される。
その後、刑務所の独房で眠れないまま苦しむフレッドは、幻覚に襲われ、そして、ピートという青年に入れ替わってしまう・・・。
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混乱しながら入れ替わる二人の主人公、そしてそれに絡む二人の女性とギャング、観る者の思考能力を試すかのごとく、パラレル・ワールドを行き交うような不条理スリラーとして、デヴィッド・リンチの世界観を堪能できる作品。
時に、錯乱状態に陥る主人公の異様な体験を描きながら、官能的なシーンを多用した耽美な描写も、デヴィッド・リンチならではの映像感覚と言える。
倒錯の世界に紛れ込む主人公ビル・プルマン、その妻とギャングの愛人を体当たりで熱演するパトリシア・アークエット、主人公と入れ替わり、中盤からは主役として好演する、石油王である実業家ジャン・ゲティの孫として知られるバルサザール・ゲティ、ギャングのボスを貫禄で演ずる名優ロバート・ロッジア、インパクトのある不気味な謎の男を演ずるロバート・ブレイク、ピート(B・ゲティ)の恋人ナターシャ・グレグソン・ワグナー、彼にしては大人しい役である、ピートの父親役ゲイリー・ビジー、自動車整備工場主で、端役程度の出演が寂しいリチャード・プライヤー、悪党であるバンドマネージャーのマイケル・マッシー、ジョヴァンニ・リビシなども出演している。
また、「イレイザーヘッド」(1997)の主人公を演じたジャック・ナンスは、公開を待たずに亡くなり本作が遺作となった。