1955年に発表された、ウラジーミル・ナボコフの小説”ロリータ”を基に製作された作品。 下宿の未亡人の娘に心奪われた大学教授の禁断の愛と破滅を描く、監督エイドリアン・ライン、主演ジェレミー・アイアンズ、ドミニク・スウェイン、メラニー・グリフィス、フランク・ランジェラ他共演のドラマ。 |
・ドラマ
■ スタッフ キャスト ■
監督:エイドリアン・ライン
製作
ジョエル・B・マイケルズ
マリオ・カサール
原作:ウラジーミル・ナボコフ”ロリータ”
脚本:スティーヴン・シフ
撮影:ハワード・アサートン
編集
デヴィッド・ブレナー
ジュリー・モンロー
音楽:エンニオ・モリコーネ
出演
ハンバート・ハンバート:ジェレミー・アイアンズ
ハンバート・ハンバート(少年期)ベン・シルヴァーストーン
ドロレス“ロリータ”ヘイズ:ドミニク・スウェイン
シャーロット・ヘイズ:メラニー・グリフィス
クレア・キルティ:フランク・ランジェラ
プラット校長:スザンヌ・シェパード
リガー牧師:キース・レディン
モナ:エリン・J・ディーン
ミス・ラボーン:ジョアン・グローヴァー
メリニック医師:エド・グレイディ
ビール:マイケル・グッドウィン
ホームズ夫人:アンジェラ・ペイトン
アナベル・リー:エマ・グリフィス・マリン
リー:マイケル・カルキン
ハンバート:ロナルド・ピックアップ
少女:ハリー・ハーシュ
アメリカ 映画
配給 The Samuel Goldwyn Company
1997年製作 137分
公開
北米:1998年7月22日
日本:1999年5月1日
製作費 $62,000,000
北米興行収入 $1,071,260
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
血だらけで放心状態のまま車を蛇行運転するハンバート・ハンバート(ジェレミー・アイアンズ)は、手にしていたヘアピンの見つめながら、自分の腕の中ではいつも”ロリータ”だったドロレスのことを想い出す。
ハンバートは、アナベルに出会わなければロリータを愛さなかっただろうと考える。
1921年、フランス、カンヌ。
14歳のハンバート(ベン・シルヴァーストーン)は、父が所有するホテルに宿泊したアナベル・リー(エマ・グリフィス・マリン)と出会い、激しい恋に落ちる。
4か月後、アナベルはチフスで死亡し、悲しみのあまり心が砕けたハンバートは彼女の面影を探し求め、その後、愛した女性はいなかった。
1947年、ニューイングランド。 亡き叔父の友人の家を借りる予定だったハンバートは、そこが火事で焼け落ちていたため、未亡人のシャーロット・ヘイズ(メラニー・グリフィス)の家の部屋を借りることにする。 シャーロットに迎えられたハンバートは部屋を見せてもらい、落ち着ける雰囲気でないために断ろうとする。 何とか部屋を借りてもらいシャーロットは、ハンバートを庭に案内する。 芝の上で雑誌を読みながら横たわるドロレス(ドミニク・スウェイン)の姿に心奪われたハンバートは、部屋を借りることを決める。 その後ハンバートは、アナベルを想いながら、ロー/ドロレス”ロリータ”のことについて手帳に書き綴る。 ローのことを意識するハンバートは、シャーロットがこの世から消え去り、ローが自分の腕に抱かれてくれることを願ってしまう。 ローから、自分に夢中だというシャーロットを湖に誘ってほしいと頼まれたハンバートは、それに従う。 湖に向かったハンバートは、シャーロットから、夏のキャンプが終わった後にローは寄宿学校に入れると言われてショックを受ける。 キャンプに行くローから抱きつかれてキスされたハンバートは、この上ない喜びを感じてしまう。 ローを送って行ったシャーロットからの愛を伝える手紙を受け取ったハンバートは、戻る前に出て行って欲しいが、残るのなら生涯の伴侶として求めてもらいたいという内容を確認する。 ローと別れることなど考えられないハンバートは、2週間後にシャーロットと結婚する。 ハンバートは、夫としての務めを避けるために、シャーロットに睡眠薬を飲ませた。 それも効果がなく、メリニック医師(エド・グレイディ)に相談したハンバートは、強い睡眠薬が欲しいことを伝えて協力してもらう。 帰宅したハンバートは、鍵のかかった秘密の引き出しを開けてローの手帳を読んでしまったシャーロットから、ケダモノ呼ばわりされる。 出て行くと言うシャーロットは、家はあげるがローには二度と会わせないと伝えてハンバートを罵倒する。 執筆中の小説の一部だと弁解したハンバートは、手紙を書くシャーロットに無視され、飲み物を作るためにキッチンに向かう。 かかってきた電話に出たハンバートは、シャーロットが死んだと言われたために不思議に思う。 シャーロットがいないことに気づき外に出たハンバートは、彼女が車に轢かれて即死したことを知り、駆け付けた警官から遺体の確認を求められる。 少女(ハリー・ハーシュ)から手紙を渡されたハンバートは、それを出そうとしたシャーロットが、ポストに向かっていたことを知らされる。 ショックは受けるものの複雑な気持ちのハンバートは、家に戻りグラスの酒を飲み干し、シャーロットがローに出そうとした手紙を暖炉で燃やす。 ローの洋服をスーツケースに入れて、彼女のヘアピンを手にして旅に出たハンバートは、途中でホテルに電話をして予約を入れる。 キャンプ場のローを迎えに行ったハンバートは、シャーロットが病気で入院したことを伝える。 今日はホテルに宿泊して明日、見舞いに行くことを伝えたハンバートは、ローから、キスしてくれないので自分を嫌っていると言われる。 車を停めたハンバートは、ローに迫られてキスされる。 ホテルに着いたハンバートは、遅れたために予約していたツインルームに宿泊できなくなり、ダブルルームに泊まることになる。 ロビーにいた犬の飼い主の紳士と話したローは、ハンバートと共に部屋に向かい、ダブルベッドだったために気にする。 同じ部屋に寝るつもりなのかと訊かれたハンバートは、簡易ベッドを用意してもらい、自分がそれに寝るとローに伝える。 その後、食事をしたハンバートは、ローから、作家のクレア・キルティ(フランク・ランジェラ)に似た男性がいると言われ、ロビーに犬といたことを知らされる。 部屋に戻ったローは、キャンプでした悪いことをハンバートに話そうとするが、今日は眠るようにと言われる。 その後、ポーチで酒を飲んでいたキルティから話しかけられたハンバートは、ローや母親のことなどを訊かれるものの、多くを語らずに部屋に戻る。 ローが眠るベッドに入ったハンバートは、一瞬、目覚めた彼女に拒まれず、朝までそのままで過ごす。 キャンプでチャーリーという青年としたことを話したローは、ハンバートと愛し合う。 ホテルを発ったハンバートは、チャーリーが初めての相手なのかローに尋ねるものの、その話はしたくないと言われる。 トイレに行きたいローのためにガソリンスタンドに寄ったハンバートは、母に電話をしたいと言う彼女に、シャーロットが亡くなったことを伝える。 ホテルに宿泊したハンバートは、泣き続けるローを抱き寄せて慰めることしかできなかった。 アメリカ各地を巡るハンバートとローの旅は始り、最終目的地はビアズリー大学だった。 天国にいるような日々が続くハンバートだったが、母を思い出すローは、時々涙した。 ビアズリー女子学院。 部屋を借りたハンバートは、男子校との芝居に出たがるローに許可を与えなかったものの、誘惑されてそれを認める。 リハーサルを見に行ったハンバートは、ローの友人のモナ(エリン・J・ディーン)から、芝居はキルティの原作だと知らされる。 再びプラット校長とリガー牧師に呼ばれたハンバートは、ローの性的成熟について意見される。 ローが性的なことに無関心であるために、父親がセックスについて教えるべきだと言われたハンバートは動揺してしまう。 ハンバートから、その件については任せてほしいと言われたプラットは安心する。 家に戻り、ローがピアノのレッスンを休んだことを知ったハンバートは、どこにいたのかを問い、公園でモナと芝居の稽古をしていたと言われる。 ウソだと決めつけるハンバートはモナの電話番号を訊き、それを確かめる。 モナから公園で稽古をしたと言われるものの信じないハンバートは、自分との関係も話したかという問いに真面目に答えないローを叱る。 興奮して叫ぶローから、母と同じように殺せばいいと言われたハンバートは、取り乱す彼女に謝罪する。 雨の中、自転車で走り去ったローを捜すハンバートは、ドラッグストアで彼女を見つける。 ハンバートの謝罪を受け入れたローは、ビアズリー女学院をやめて旅に出たいことを伝える。 新たな旅が始まり、尾行されていることに気づいたハンバートは、車のナンバーを控え、相手は探偵だと考える。 何台もの車に乗り換えた尾行の男は突然、姿を消し、あるガソリンスタンドでローが男に話しかけられていることに気づいたハンバートは、刑事かもしれない相手と何を話したのかを知ろうとする。 警戒しながら街道を走るハンバートは、タイヤがパンクしたために車を停めて降りる。 現れた車に近づいたハンバートは、自分の車が動き出したためにそれを追い、ローが何とか停車させる。 ローが控えたナンバーを書き替えてしまったことを知ったハンバートは憤慨し、車を停めて彼女の頬を叩く。 泣き出して車を降りたローを追ったハンバートは、彼女に謝罪して抱きしめる。 コテージに宿泊したハンバートは、バナナが欲しいと言うローのために買い物に出かける。 バナナを買って戻ったハンバートは、ローが出かけたことを知る。 誰と会ったか知りたがるハンバートは、ベッドに押し倒したローから相手の名前を聞き出そうとしながら愛し合う。 その後、警戒するハンバートは持参していた拳銃を確認し、その場を離れて次の町のモーテルに宿泊しようとする。 気分が悪いと言うローを病院に連れて行ったハンバートは、ウィルス性の風邪だと診断され、一晩、入院することになる。 翌朝、病院に電話をしたハンバートは、熱が下がったローが、犬を連れた叔父が迎えに来たために退院したことを知る。 動揺してパジャマのまま病院に向かったハンバートは、医師に言い寄り襲い掛かって取り乱し、看護師に取り押さえられる。 パトカーが来たことに気づいたハンバートは冷静になり、飲み過ぎたと言って謝罪し、その場を去る。 その後ハンバートは、数か月かけて宿泊した場所を回り、ローを連れ去った者が偽名を使っていることに気づき、宿帳の筆跡の特徴などを調べながら捜し続けて、ビアズリーに戻る。 3年後。 郊外に向かったハンバートは、射撃の練習をしてローの家を訪ね、彼女に歓迎される。 裏で作業をする夫が連れ去った男でないと考えたハンバートは、ローが男の話をしたがらないために帰ろうとする。 男がキルティだと知ったハンバートは、ローから、夢中になったのは彼一人だと言われる。 ”自分は?”と尋ねたハンバートだったが、ローは何も答えない。 キルティは少女が好きで、屋敷に集めて撮影していたと言うローは、自分は拒んだので追い出されたと話す。 ローをどれだけ愛しているか再確認したハンバートは、再び一緒に暮らすことを提案する。 断っても現金は渡すと言われたローは、封筒に4000ドルも入っていたために驚く。 一緒には行けないと言うローは、キルティの元に戻りたいと伝え、涙するハンバートは、自分のことを忘れられるか彼女に問う。 ローが何も答えないために車に乗ったハンバートは、彼女が小悪魔だった頃の少女に見える。 キルティの屋敷に向かい彼と話したハンバートは、拳銃を手にしながらローの父親だと伝える。 それを信じないキルティは発砲されたために驚き、ローとは何もできなかったと言いながら、隙を見てハンバートに襲い掛かる。 落とした銃を拾ってキルティに向けたハンバートは、自分の唯一の救いを奪ったと言って、死んで償えとキルティに伝える。 ローを奪ってはいないと言うキルティは、幸せを求めた彼女自ら望んで来たと話し、快適なこの屋敷に越すことを提案しながら動揺するハンバートに迫る。 逃げたキルティに発砲するハンバートは、突然ピアノを弾き始めた彼を銃撃する。 寝室に向かったキルティはベッドに入り、出て行けと言われたハンバートは止めを刺す。 街道を蛇行運転するハンバートはパトカーに追われ、道路が塞がれていたために、放牧されている牛の群れに近づく。 車を降りたハンバートは、彼方に見える町を眺めながら、絶望的な孤独はローがいないからではなく、彼女の声が聞こえないからだと考える。 1950年11月16日、ハンバートは動脈血栓で獄死した。 その年のクリスマス、ロリータも難産で死亡した。
フランス文学の教授となったハンバートはビアズリー大学に招かれ、新学期の前のテキスト作成のために、田舎町ラムズデールに向かう。
...全てを見る(結末あり)
プラット校長(スザンヌ・シェパード)とリガー牧師(キース・レディン)と話したハンバートは、勉強よりも男女交際が大切だという校風に驚く。
ハンバートはローからの手紙うを受け取り、結婚して妊娠中の彼女は生活苦で、400ドルの小切手を送ってほしいということだった。
__________
参考:
・「ロリータ」(1962)
*(簡略ストー リー)
1947年、ニューイングランド。
フランス文学の教授ハンバート・ハンバートは、ビアズリー大学で教鞭をとることになり、そのテキスト作成のために田舎町を訪れる。
知人の家が焼失したために、未亡人シャーロットの下宿を借りようとしたハンバートは、彼女の娘ロー/ドロレスに心奪われてしまう。
少年時代に愛したアナベルを病気で亡くし、彼女の面影を探し求め、他の女性を愛せなかったハンバートは、ローとの出会いにより幸福を感じる。
ローと離れることが考えられなくなったハンバートは、シャーロットとの結婚を決意するものの、ローへの思いをシャーロットに知られてしまい、追い出されそうになる。
動揺するハンバートだったが、シャーロットが交通事故で突然、この世を去り、夏のキャンプを楽しんでいたローを迎えに行く。
そして、シャーロットが病気だということにしたハンバートは、ローとの二人だけの旅を始めようとするのだが・・・。
__________
スタンリー・キューブリックの監督作品「ロリータ」(1962)に続く、ウラジーミル・ナボコフの小説”ロリータ”の二度目の映画化であり、旧作よりも原作に忠実に描かれている。
しかし、少女愛を描く作品に対する規制などが厳しくなり、その内容から北米での公開は見送られ、1988年に限定1館のみで上映され、1週間で打ち切られてしまった。
そのため、この内容にしては巨額と言える6200万ドルの製作費に対し、北米興行収入はわずか100万ドル強に終わり、商業的には大失敗作となった。
2500人の中から選ばれた、ドロレス“ロリータ”役の15歳のドミニク・スウェインの出演が話題になり、公開当時よりもさらに規制が厳しくなった現在では製作不可能と言ってもいい、かなり際どい内容となっている。
*ドミニク・スウェインは、1か月前に公開された「フェイス/オフ」(1997)がデビュー作。
主人公の切ない思いを伝えるエンニオ・モリコーネの音楽が印象的だ。
主演のジェレミー・アイアンズは、禁断の愛を求める異常者とも言える男性を演じるのだが、清潔なイメージであるためにいやらしさが感じられない。
探し求めていた”理想の少女”と過ごす日々に至上の喜びを感じ、その後、破滅に向かう中年男性を見事に演じ、演技派としての実力を見せてくれる。
主人公と結婚する下宿の未亡人メラニー・グリフィス、少女を愛する作家を怪演するフランク・ランジェラ、主人公の少年期ベン・シルヴァーストーン、ロリータが入学する女学院の校長スザンヌ・シェパード、牧師のキース・レディン、ロリータの友人エリン・J・ディーン、主人公に睡眠薬を渡す医師のエド・グレイディ、主人公が少年時代に愛し合う少女エマ・グリフィス・マリン、主人公に手紙を渡すウサギのコスチュームの少女ハリー・ハーシュ、他マイケル・グッドウィン、アンジェラ・ペイトン、マイケル・カルキン、ロナルド・ピックアップなどが共演している。