統合失調症の女性患者に魅了される作業療法士の苦悩を描く、製作、監督、脚本ロバート・ロッセン、主演ウォーレン・ベイティ、ジーン・セバーグ、ピーター・フォンダ、キム・ハンター、ジェシカ・ウォルター、ジーン・ハックマン他共演のドラマ。 |
・ドラマ
■ スタッフ キャスト ■
監督:ロバート・ロッセン
製作:ロバート・ロッセン
原作:J・R・サラマンカ”Lilith”
脚本:ロバート・ロッセン
撮影:オイゲン・シュフタン
編集:アラム・アヴァキアン
音楽:ケニヨン・ホプキンス
出演
ヴィンセント・ブルース:ウォーレン・ベイティ
リリス・アーサー:ジーン・セバーグ
スティーヴン・エフシェフスキー:ピーター・フォンダ
ベア・ブライス医師:キム・ハンター
イヴォンヌ・ミーガン:アン・ミーチャム
ローラ:ジェシカ・ウォルター
ノーマン:ジーン・ハックマン
ラヴリアー医師:ジェームズ・パターソン
ハウイー:ルネ・オーベルジョノワ
患者:オリンピア・デュカキス
患者:チャールズ・タイナー
ボブ・クレイフィールド:ロバート・ライリー
アメリカ 映画
配給 コロンビア・ピクチャーズ
1964年製作 114分
公開
北米:1964年10月1日
日本:未公開
製作費 $1,100,000
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
メリーランド州、ロックヴィル。
元軍人のヴィンセント・ブルース(ウォーレン・ベイティ)は、精神科医療施設”ポプラ・ロッジ”に向かう。
職員の採用についてベア・ブライス医師(キム・ハンター)と話をしたヴィンセントは、施設内を案内され患者の様子も見る。
ヴィンセントは、作業療法士見習いとして働くことを決める。
町に戻ったヴィンセントは、ローラ(ジェシカ・ウォルター)と再会して簡単な会話を交わし、夫を紹介すると言われて別れる。
帰宅したヴィンセントは、考え込みながら、一緒に暮らす祖母に施設で働くことを伝える。
その後ヴィンセントは、自分の部屋でテレビを見ながら、亡くなった母のことを想う。
翌日ヴィンセントは、患者のイヴォンヌ・ミーガン(アン・ミーチャム)を紹介され、一緒にカードをする。
その傍らにいた患者のスティーヴン・エフシェフスキー(ピーター・フォンダ)は、惹かれている統合失調症の患者リリス・アーサー(ジーン・セバーグ)が気になり、彼女の部屋を見つめる。 リリスは笛を吹き、それを制限したことで、スティーヴンは職員に不満を訴える。 その態度が気に障ったイヴォンヌは、職員と共にその場を去り、ヴィンセントはスティーヴンを誘いピンポンをする。 ピクニックで患者を”グレート・フォールズ”に連れて行くことになり、付き添うヴィンセントはリリスを呼びに行く。 現地で楽しい時間を過ごした患者たちだったが、やがて雨が降り出す。 ヴィンセントは、激流を見ながら写生するリリスとスティーヴンが話す様子を監察する。 リリスは、勇気と能力を示した限られた人としか話をしないとスティーヴンに伝える。 雨が上がり、職員から帰ると言われたヴィンセントは、リリスの絵筆を拾おうとしたスティーヴンが、激流に落ちそうになっていることに気づく。 ヴィンセントは、岩にしがみついているスティーヴンを助ける。 施設に戻ったヴィンセントは、リリスがわざと筆を投げたのではないかと疑い、その件でブライスと話をする。 スティーヴンが自分を思っているか、そして勇気があるかをリリスが確かめようとした可能性があると考えるブライスは、今回のことは自分の責任だと言いながら、訓練のつもりで同行させたことをヴィンセントに謝罪する。 スティーヴンと話をしたヴィンセントは、彼のリリスに対する気持ちを理解する。 施設の責任者ラヴリアー医師(ジェームズ・パターソン)は、統合失調症について職員に解説する。 リリスと話をしたヴィンセントは、彼女に誘われて散歩をする。 リリスから母のことを訊かれたヴィンセントは、何も語ろうとしない。 その後ヴィンセントは、リリスと過ごした内容を、ブライスの前でラヴリアーに報告する。 ヴィンセントは、誘惑されたという感覚でもなく、リリスは自分の世界に誘っている気がすると話し、”陶酔”だと言うラヴリアーの言葉は相応しい表現だと考える。 ラヴリアーは、滝に落ちて亡くなった弟のことをリリスが話したか尋ね、それを否定するヴィンセントに、質問すれば大変なことになると伝える。 ヴィンセントは、18歳から施設にいるリリスが完治する可能性が低いことを知り、他人に心を開かない彼女との関係を良好に保っていることを、ラヴリアーに評価される。 スティーヴンは、ヴィンセントとサイクリングに出かけるリリスに声をかけ、来週の誕生日に渡すプレゼントを作っていることを伝える。 自分も同行したいと伝えたスティーヴンは、断ったヴィンセントとリリスのことが気になる。 ローラも、ヴィンセントと若い女性がサイクリングをする姿を見かける。 転倒したリリスは動揺し、気遣ってくれるヴィンセントに、愛を告白してほしいと伝える。 答えないヴィンセントに苛立つリリスは、この仕事を大切にしたいと言う彼の言葉に失望する。 その後ヴィンセントは、リリスの言葉が気になり悩み始める。 ラヴリアーと話したヴィンセントは、その件は話さずに問題ないと伝える。 ヴィンセントは、槍の試合を見たいと言っているリリスの要望を話し、ラヴリアーにそれを許可してもう。 リリスと共に会場に向かったヴィンセントは、イギリスから伝わった、小さなリングを槍に通す伝統競技を子供の頃よくやったと彼女に話す。 リリスは、スイカを売っている少年に声をかけて氷をひとかけもらい、唇に触れさせて、代金の代わりにキスする。 その様子を、ヴィンセントは見つめていた。 競技に参加したヴィンセントは、3つのリングをゲットして最速タイムで見事に優勝し、商品の花の冠をリリスに被せる。 馬で森に向かったヴィンセントは、リリスに愛と告げる。 リリスと愛し合ったヴィンセントは、その後も関係を続ける。 ヴィンセントと話をしたイヴォンヌは、リリスを話題に出して彼を牽制する。 散歩に出かけたリリスとイヴォンヌに付き添ったヴィンセントは、森の中の納屋で2人が愛し合ったことを知る。 憤慨してイヴォンヌを追い出したヴィンセントは、リリスを押し倒して愛し合う。 スティーヴンは、リリスにプレゼントするための手彫りの絵の具箱を作り、それをヴィンセントに見せる。 ある雨の夜、ローラは通りがかったと言うヴィンセントに気づき、夫ノーマン(ジーン・ハックマン)も喜ぶと伝えて家に招き入れる。 市民活動の会合で出かける予定のノーマンだったが、ヴィンセントを歓迎して話をする。 施設で働いていることなどを聞いたノーマンは、楽しいこともあるだろうと意味ありげな質問をして、精神異常だったヴィンセントの母親について話題にしてしまう。 気まずい雰囲気になってしまったノーマンは、出かける時間だと言って後をローラに任せ、ヴィンセントに声をかけて家を出る。 今でもヴィンセントに思いを寄せるローラは、女性と自転車で通る姿を見かけたと話し、患者だと言う彼に、立派な作業療法士になれると伝える。 ローラは、帰ろうとするヴィンセントに、かつて婚するまで寝ないと言ったが、今は結婚していると伝えて寝室に向かう。 ヴィンセントは、何も語らずにその場を去る。 翌日ヴィンセントは、リリスを連れて買い物に向かう。 リリスは、槍競技の会場にいた少年のことを思い出しながら、その場にいた少年デヴィッドに話しかける。 先日の少年に接するリリスの態度が気になっていたヴィンセントは、デヴィッドから彼女を引き離す。 ヴィンセントは、リリスのために魚を飼うための水槽を買う。 その夜、リリスの部屋に忍び込んだヴィンセントは、彼女の人形を水槽に入れてしまう。 その件でリリスに追及されたヴィンセントは、人形のことを否定するが、愛しているから取ったと言ってそれを認める。 リリスは新しい絵の具箱を見せて、弟のロニーからのプレゼントだとヴィンセントに伝える。 ロニーはもう死んだと言われたリリスは、弟に酷いことをしたと話しながら、絵の具箱をくれたスティーヴンと明日、散歩に行きたいとヴィンセントに伝える。 部屋に戻ろうとしたヴィンセントはスティーヴンに声をかけられ、リリスとプレゼントの話をしたか訊かれ、絵の具箱を見せてもらったと答える。 リリスの気持ちを感じると言うスティーヴンは、ヴィンセントがその場に絵の具箱を置いて去ったためにショックを受ける。 翌朝、騒ぎに気づいたヴィンセントは、遺体で運び出されるスティーヴンが、ナイフで胸を刺して自殺したことをブライスから知らされる。 リリスの元に向かったヴィンセントは、ロニーが運ばれたと言う彼女に、スティーヴンだと伝える。 混乱するリリスはヴィンセントの話を信じることができず、自分のために絵の具箱を渡したと言う彼に、愛している者は殺さないが、ロニーを殺したと伝える。 ロニーが自分を愛することを拒んだためにジャンプさせて、飛び降り自殺したと、リリスはヴィンセントを医師だと思いながら話す。 ヴィンセントが心配になったブライスは、リリスの部屋の水槽の人形を確認し、彼女の写真と共にヴィンセントの母親の写真が並んでいることに気づく。 ブライスは、バーで酔っていたヴィンセントと話す。 意味不明なことを話したヴィンセントは、その場を去る。 翌日、リリスの部屋に向かったヴィンセントは、その場が荒らされていたために驚く。 別の部屋でリリスが正気を失っていることを知ったヴィンセントは、精神的に限界に達する。 ブライスは、建物を出て庭を歩く、様子がおかしいヴィンセントが気になる。 ヴィンセントに近づこうとしたブライスは、ラヴリアーに制止される。 ラヴリアーとブライスに近づいて話しかけたヴィンセントは、2人に助けを求める。
...全てを見る(結末あり)
*(簡略ストーリー)
メリーランド州、ロックヴィル。
元軍人のヴィンセント・ブルースは、精神科医療施設”ポプラ・ロッジ”の作業療法士見習いとして働き始める。
医師ブライスの指導を受けたヴィンセントは、心を閉ざす統合失調症の患者リリスが気になる存在になる。
その後ヴィンセントは、リリスと親交を深めて誘惑されるのだが・・・。
__________
1961年に発表された、J・R・サラマンカの小説”Lilith”を基に製作された作品。
統合失調症の女性患者に魅了される作業療法士の苦悩を描くドラマ。
戦争体験や辛い過去を背負いながら、人のために働こううとする青年が、精神患者と親交を深めた結果、心が破壊されてしまう姿を、製作と脚本を兼ねるロバート・ロッセンが、衝撃的な映像もまじえて繊細なタッチで描いた作品。
普通の男女の愛情と共に、同性愛や近親相姦そして少年に対する愛情などが描かれた、当時としては刺激的な内容の問題作として話題になった。
舞台となる歴史的建造物である精神科施設”チェストナット・ロッジ”や、美しい”グレート・フォールズ”でのロケなども印象に残る。
主演のウォーレン・ベイティは、悩みを抱えながら人のために働くものの、精神が破壊されてしまう青年を見事に演じている。
ヒロインを演ずるジーン・セバーグは、主人公他を誘惑する統合失調症患者を好演し、ゴールデングローブ賞最優秀主演女優賞にノミネートされた。
ヒロインに惹かれる精神的に不安定な患者ピーター・フォンダ、主人公を指導する施設の医師キム・ハンター、ヒロインと関係を持つ患者アン・ミーチャム、かつて主人公と恋仲だった女性ジェシカ・ウォルター、その夫で、短い出演ながら、演技者としての才能を感じさせる印象に残る演技を見せるジーン・ハックマン、施設の責任者である医師のジェームズ・パターソン、患者のルネ・オーベルジョノワ、オリンピア・デュカキス、チャールズ・タイナーなどが共演している。