ジョン・スタインベックの原案を基に製作された、沈没した客船の救命艇で漂流する生存者達を描く、監督アルフレッド・ヒッチコック、主演タルーラ・バンクヘッド、ウィリアム・ベンディックス、ウォルター・スレザック、メアリー・アンダーソン、ジョン・ホディアク、ヒューム・クローニン他共演のサスペンス・ドラマ。 |
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■ スタッフ キャスト ■
監督:アルフレッド・ヒッチコック
製作:ケネス・マッゴーワン
原作:ジョン・スタインベック
脚本:ジョー・スワーリング
撮影:グレン・マックウィリアムズ
編集:ドロシー・スペンサー
音楽:ヒューゴー・フリードホーファー
出演
コンスタンス”コニー”ポーター:タルーラ・バンクヘッド
ガス・スミス:ウィリアム・ベンディックス
ウィリー:ウォルター・スレザック
アリス・マッケンジー:メアリー・アンダーソン
ジョン・コヴァック:ジョン・ホディアク
チャールズ・J”リット”リッテンハウス:ヘンリー・ハル
スタンリー”スパークス”ギャレット:ヒューム・クローニン
ヒグリー夫人:ヘザー・エンジェル
ジョー・スペンサー:カナダ・リー
アメリカ 映画
配給 20世紀FOX
1944年製作 96分
公開
北米:1944年1月12日
日本:未公開
製作費 $1,590,000
北米興行収入 $1,000,000
■ アカデミー賞 ■
第17回アカデミー賞
・ノミネート
監督・原案・撮影賞(白黒)
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
第二次世界大戦下、北大西洋。
イギリスに向かう客船が、ドイツ軍のUボートの攻撃を受けて沈没する。
Uボートも撃沈され、船の残骸やドイツ兵乗組員の死体などが海面に浮かぶ。
一隻の救命艇には、無事だったアメリカ人コラムニストのコンスタンス”コニー”ポーター(タルーラ・バンクヘッド)が乗っていた。
そこに機関士のジョン・コヴァック(ジョン・ホディアク)が泳ぎ着き、Uボートが砲撃を受けて沈んだことをポーターから知らされる。
ポーターはそれらの様子を撮影していたことをコヴァックに語り、浮かんでいる哺乳瓶まで撮ろうとする。
憤慨したコヴァックは、拾ったテニスのラケットで哺乳瓶を割り、誰かの声が聞こえたため舵を取ろうとする。 その拍子にポーターのカメラが海中に落ちてしまい、彼女はコヴァックを批判するものの、生きているだけましだと言われる。 コヴァックは泳いできた船員のスタンリー”スパークス”ギャレット(ヒューム・クローニン)を助ける。 その場にあったアメリカ陸軍の看護師アリス・マッケンジー(メアリー・アンダーソン)の帽子が浮いていたことをポーターから聞いたスタンリーは、笛を吹いてアリスの名を呼ぶ。 アリスが返事をして二人と一緒だと知ったスタンリーは、怪我をしている船員でドイツ系アメリカ人ガス・スミス(ウィリアム・ベンディックス)をボートに乗せる。 ポーターは、アリスと一緒だった知人の実業家である富豪チャールズ・J”リット”リッテンハウス(ヘンリー・ハル)の無事を喜ぶ。 アリスがスミスの手当てをするが、彼は脚を切断することになるのではないかと心配する。 そこに、客室係の船員で黒人のジョー・スペンサー(カナダ・リー)が、赤ん坊を連れたイギリス人女性ヒグリー夫人(ヘザー・エンジェル)を助けて泳ぎ着く。 アリスは子供が死んだことを確認するが、放心状態のヒグリー夫人はそれを理解できないまま子供を抱く。 もう一人の男性が船に上がるが、客船を攻撃したUボートの船員ウィリー(ウォルター・スレザック)だった。 ドイツ語が話せるポーターが通訳して、ウィリーが攻撃をしたことを後悔していることを伝え、命令だったことなども分かる。 ただの船員だというウィリーだったが、ドイツ人には変わりがないと言うコヴァックは彼を放り出そうとする。 戦時中であり軍人が命令に従っただけだとポーターは擁護するが、コヴァックはヒグリー夫人と子供を見ろと言って反論する。 ポーターが、ドイツ語が堪能で衣服の乱れもなく余裕で救命艇に乗れたこともコヴァックは気に食わない。 二人は口論になるがリッテンハウスが間に入り、助け合わなくてはいけない時に争いはするべきでないことを伝える。 コヴァックが納得いかない様子であるため、リッテンハウスはウィリーの処遇を多数決で決めることを提案する。 ウィリーを殺せば自分達はナチと同罪であり、節度を持って接すれば彼の考えも変わるだろうとリッテンハウスは語る。 自分はシカゴ生まれのアメリカ人だが両親はチェコ出身だというコヴァックは、あくまでウィリーに罪の償いをさせると言い張る。 スミスもそれに賛成し、ナチのせいで本名”シュミット”が恥で名乗れないことを伝え、ウィリーがサメの餌になればいいとまで言う。 自分達にそんな権利はないと言うスタンリーは、ウィリーは戦争捕虜であり軍に引き渡すべきだと語る。 スタンリーは軍に関わるアリスの意見を求めるが、看護師である彼女は明確な答えは示さず、なぜ殺し合いをしなければならないのかを疑問に思う。 それならばどうして軍に入ったかをノヴァックに聞かれたアリスは、負傷者を助けるためだと答え、ウィリーを殺すことには反対する。 ポーターも情報を聞き出すべきだという考えで、ジョーは答えることを拒み、ヒグリー夫人は子供が死んでいることに気づきウィリーに殴り掛かる。 その後、子供は水葬にされてジョーが祈りを捧げ、ポーターのミンクのコートを着せられて満足するヒグリー夫人だったが、子供がいないことに気づく。 ポーターに子供は亡くなったと言われたヒグリー夫人は、ウィリーのせいだと呟き息子を捜そうとする。 ヒグリー夫人がボートから落ちないようにコヴァックがロープを胴体に巻きつけ、彼女を落ち着かせる。 翌朝、スタンリーから遭難した際の話を聞いたリッテンハウスは、今回は水や食料そして装備が不足し、何よりもコンパスがないことが不安だと言われる。 その後、ヒグリー夫人の姿が見えないことに気づいたポーターらは、彼女が海に身を投げたことを知り、見張りのリッテンハウスは暗くて分からなかったと話す。 コヴァックは、海中に垂れたロープをナイフで切る。 コンパスを隠し持っていたウィリーは、方角を確認する。 帆を張る準備をする生存者達に、リッテンハウスは役割分担を与えようとする。 スタンリーはナビゲーター、ジョーは食料、ポーターは航海日誌の記述、アリスは看護の担当を指示される。 船長気取りのリッテンハウスがいつまでもつかを、スタンリーらは考える。 破れてはいるがボートは帆を張り、海には詳しいウィリーにポーターが方角を聞くが、コヴァックは当然しれを信用しない。 リッテンハウスがそれに意見し、船長なのかと言われた彼はそれを決めようとする。 ポーターはこの際ウィリーが適任者だというが、コヴァックが名乗り出て、スタンリーやスミスそしてアリスもそれに賛成する。 リッテンハウスは多数決に従うと答え、バミューダに向かおうとするボートを、コヴァックはウィリーの意見を無視して自分の決めた方角に向かわせる。 帆を動かした際ロープが触れて、ポーターのタイプライターが海に落ちてしまう。 その場でできることを楽しむしかない生存者達だったが、スミスの足の状態が悪化し、壊疽のため切断する必要があるとウィリーが指摘する。 アリスは処置の仕方が分からないため、戦前は医師だったウィリーがその役を買って出る。 ダンスが生き甲斐である恋人のためにそれを拒むスミスだったが、ポーターがうまく説得して処置を受けることになる。 麻酔の代わりにブランデーを飲んだスミスは、酔って意識を失う。 海が荒れる中で手術は始まり無事に成功する。 その後、向かっている方角のことで意見が割れ、明確に答えないウィリーが何かを隠していると考えるコヴァックは不審に思う。 コヴァックは進路の変更を指示するが、ウィリーは余裕でコンパスを確認する。 ”遭難してよかった”と言っていたアリスの言葉を気にしたポーターは、男性関係で悩んでいることに女の勘で気づいたと彼女に語る。 それを認めたアリアスは、既婚者である医師との叶わぬ恋で悩み、彼がいるロンドンには行きたくなかったことをスタンリーに話す。 アリスを励ますスタンリーは、話題を変えて夜空の星を眺めるが、その位置でボートがバミューダに向かっていないことに気づく。 コヴァックらは話し合い、時計を持っているはずのウィリーが、時間を聞いていたことを不審に思う。 眠っているウィリーの時計を奪うよう元スリのジョーに命じたコヴァックは、それがコンパスであることを確認して彼を殺そうとする。 リッテンハウスはそれを制止するが、嵐が近づき海が荒れ始め海中に落ちたスミスを皆で救う。 舵を取るウィリーはボートを守るよう英語で指示するが、マストが折れてしまい、死を覚悟したコヴァックはポーターにキスする。 嵐は静まりボートは何んとか持ち堪えるが、水や食料は流されてしまった。 なぜか体力を維持しボートを漕ぐウィリーは、英語を話さなかった理由を聞かれ、皆が信用できなかったからだと答える。 リッテンハウスはスミスの様子がおかしいことに気づき、ポーターとコヴァック、アリスとスタンリーは心触れ合うようになっていた。 コヴァックが貧困街の出身だと知ったポーターは、自分も同じだと言って彼に迫る。 それが嘘だと気づいたコヴァックはポーターを突き放し、苛立つ彼女は責められて泣き崩れる。 コヴァックとリッテンハウスは、ポーターの手帳で作ったカードでポーカーを楽しむ。 負け続けていたリッテンハウスは、フォーカードだったために全てを賭けた大勝負に出る。 しかし、突風でカードが飛んでしまい、フルハウスだったコヴァックは、フォーカードだったと言い張るリッテンハウスに証拠を見せろと迫る。 憤慨したリッテンハウスはコヴァックに襲いかかろうとするが、その時、待望の雨が降り始める。 ところが、雨は一瞬にして上がってしまい、我慢の限界に達したスミスは海水を汲み飲んでしまう。 その後、正気を失いかけていたスミスは、ウィリーが酒瓶に隠してあった水を飲んでいることに気づく。 それをスタンリーに伝えたスミスだったが信じてもらえず、ウィリーに言い包められながら海に突き落とされる。 スミスの助けを求める声を聞くものの、スタンリーはそれを無視して眠る。 その後、スミスの姿が見えないことに気づいたスタンリーは、彼が身を投げたとウィリーに言われる。 スタンリーは、スミスが何かを言おうとしていたことを気にする。 ウィリーの額の汗で彼が水を飲んでいることに気づいたポーターとコヴァックの言葉で、ウィリーが水を持っているとスミスが言ったことをスタンリーは思い出す。 ジョーはウィリーの水の瓶を奪い、それは床に落ちて割れてしまう。 嵐の際に水を確保し支給された栄養剤も持っていることを伝えたウィリーは、直に補給艦に遭遇すると言って、生きるためには計画が必要だと語る。 スミスを愚かな男だと言うウィリーの言葉に憤慨したアリスは彼に襲いかかる。 皆も加わりウィリーを痛めつけ、彼を海に突き落とす。 客船を沈没させたウィリーを助けて水や食料を与えたにも拘らず、裏切りスミスまで見殺しにした彼の気持ちをリッテンハウスは理解できない。 漕ぎ手もいなくなり覚悟を決めるスタンリーは、無事に戻れたら求婚するつもりだったことをアリスに伝える。 それを受け入れる気のあるアリスに、スタンリーはその場でプロポーズする。 二人を祝福したポーターは、妻に先立たれ子供もいないリッテンハウスから、膨大な財産しか残っていない虚しさを聞く。 ウィリーを暴行したことを悔やむリッテンハウスに、捕えられ収容所に入れられる身で考えることでもないと伝えたポーターは、意気地のない男であるコヴァックと何もしなかったジョーも非難する。 海には魚が大量にいることに今更ながら気づいたポーターは、カルティエのブレスレットをルアーの代わりにして魚を釣ることを考える。 直ぐに大魚が食いつくが、ジョーが船が近づいたことに気づく。 驚いたコヴァックは釣り糸代わりのロープを放してしまい、魚とブレスレットは海に沈み、それを見たポーターは笑うしかなかった。 やがて、ドイツの補給艦から降ろされたボートが近づくものの、敵艦に気づいた彼らは引き返す。 砲撃が始まり補給艦が迫るものの、救命艇は何とか衝突を回避する。 砲弾を受けた補給艦は大破して沈没し、味方の船が到着することを確信したポーターは身だしなみを整える。 リッテンハウスはジョーに家族がいることを知り、アリスはスタンリーの姓が”ギャレット”であることを確認する。 5万ドルの借りがあるとリッテンハウスに言われたコヴァックは水に流すことを伝えるが、経費で落とすのだから受け取るべきだとポーターは助言する。 コヴァックは、ブレスレットとタイプライターそしてカメラも貸しだとポーターに言われる。 そこに沈没したドイツの補給艦の船員が泳ぎ着き、コヴァックらは彼を助ける。 アリスとポーターは船員を手当てしようとするが、リッテンハウスにウィリーのことを忘れたのかと言われる。 まだ子供だと伝えるポーターだったが、船員はおもちゃのような銃を手にしていた。 ジョーが銃を叩き落とし、ポーターがそれを海に捨てる。 アリスは、”殺さないのか”と言う船員の応急手当をする。 船員の”殺さないのか”という言葉を聞いたコヴァックは、こんな人種をどう扱えばいいのか困惑する。 スタンリーは、ヒグリー夫人と子供そしてスミスを思い出し、同じ考えのポーターは、彼らなら答えられると語る。
...全てを見る(結末あり)
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リッテンハウスは怒りを露わにするが、後は軍に任せるべきだと言うジョーが彼を落ち着かせる。
★ヒッチコック登場場面
上映から約24分、ウィリアム・ベンディックスが読む新聞記事の裏面のやせ薬の広告の写真、使用前、使用後の男性がアルフレッド・ヒッチコック。
非常に分かりやすい。
*(簡略ストー リー)
第二次世界大戦下、北大西洋。
イギリスに向かう客船が、ドイツ軍のUボートの攻撃を受けて沈没する。
Uボートも敵艦の攻撃で撃沈され、コラムニストのコンスタンス”コニー”ポーターら客船の生存者8名は救命艇で漂流することになる。
ところが、そこに客船を沈めたUボートの船員ウィリーが泳ぎ着く。
客船の機関士コヴァックはウィリーを殺すことを主張するが、戦時での命令だということを考慮する者や捕虜として軍に引き渡すべきだという意見が出てボート内は混迷する。
そして、コンパスもなく方角が分からないまま、生存者はバミューダを目指すことになるのだが・・・。
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第二次世界大戦の最中に撮影され、連合軍が北アフリカで勝利しシチリア島からイタリア本土に上陸し、東部戦線では”クルスクの戦い”でソ連軍が勝利した時期に撮影されていたことなどを考えながら鑑賞すると一層、興味深く観れる。
ワンシチュエーション映画の決定版的な作品で、様々な人種そして人生を歩む人々が集いながら、殺意に対する考えや微妙に変化していく人間心理、芽生える恋など様々なドラマが展開する見応えのある作品。
ワンショットでその状況を描写する巧みな手法など、アルフレッド・ヒッチコックの才能が遺憾なく発揮された作品として高い評価を得た。
第17回アカデミー賞では、監督、原案、撮影賞(白黒)にノミネートされた。
人を寄せ付けない堅物的雰囲気で登場するコラムニストの主人公タルーラ・バンクヘッドが、苦難の漂流を続ける間に角が取れて女性らしく変貌していく細やかな演出なども注目だ。
怪我の悪化により足を切断され空腹と渇きで正気を失う船員ウィリアム・ベンディックス、強かなドイツ兵を演ずるウォルター・スレザック、従軍看護師メアリー・アンダーソン、彼女との恋が芽生える船員のヒューム・クローニン、強硬派の機関士で反発し合いながらも主人公と心触れ合うようになるジョン・ホディアク、実業家である富豪のヘンリー・ハル、幼子を亡くし自ら命を絶つ婦人ヘザー・エンジェル。客室係のカナダ・リーなどが共演している。