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硫黄島からの手紙 Letters From Iwo Jima (2006)

太平洋戦争末期の激戦地”硫黄島の戦い”をアメリカ側から描きクリント・イーストウッドスティーブン・スピルバーグが組んで製作され2ヶ月前に公開された「父親たちの星条旗」(2006)の姉妹作品。
主演渡辺謙二宮和也伊原剛志他共演。

アカデミー賞 ■ ストーリー ■ 解説


ドラマ(戦争)

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スタッフ キャスト ■
監督:クリント・イーストウッド

製作
クリント・イーストウッド

スティーブン・スピルバーグ
ロバート・ロレンツ
原作
栗林忠道”「玉砕総指揮官」 の絵手紙”
吉田津由子

原案
アイリス・ヤマシタ

ポール・ハギス
脚本:アイリス・ヤマシタ
撮影:トム・スターン
編集:ジョエル・コックス
音楽
カイル・イーストウッド

マイケル・スティーヴンス

出演
栗林忠道中将:渡辺謙

西郷昇一等兵:二宮和也
西竹一中佐(バロン西):伊原剛志
清水洋一上等兵:加瀬亮
伊藤大尉:中村獅童
藤田正喜中尉:渡辺広
谷田大尉:坂東工
野崎一等兵:松崎悠希
樫原一等兵:山口貴史
大久保中尉:尾崎英二郎
花子:裕木奈江
大杉少将:阪上伸正
小澤一等兵:安東生馬
遠藤衛生伍長:ソニー斉藤
大磯中佐:安部義広
岩崎大尉:県敏哉
足立大佐:戸田年治
林少将:ケン・ケンセイ
市丸利之助少将:長土居政史
アメリカ軍士官:マーク・モーゼス

アメリカ/日本 映画
配給
ドリームワークス

ワーナー・ブラザーズ
2006年製作 140分
北米:2006年12月20日
日本:2006年12月9日
製作費 $19,000,000
北米興行収入 $13,753,930
世界 $68,673,230


アカデミー賞 ■
第79回アカデミー賞

・受賞
音響編集賞
・ノミネート
作品・監督・脚本賞


*詳細な内容、結末が記載されています。
ストーリー ■
2005年。
太平洋戦争末期の激戦地、小笠原諸島硫黄島で、発掘調査をする日本人考古学者らが何かを発見する。
__________

1944年6月8日。
硫黄島に派遣されていた西郷昇陸軍一等兵(二宮和也)は、何の愛着もない不毛の地で、延々と塹壕堀をさせられて、愚痴ばかりこぼしていた。

同じ頃、小笠原兵団・第109師団師団長、栗林忠道陸軍中将(渡辺謙)が硫黄島に赴任する。

西郷の、非国民ともとれる発言を聞いた上官谷田大尉(坂東工)は、彼に鞭打ちの懲罰を加える。

そこに、既に島の視察を始めていた栗林が現れ、懲罰を止めさせる。
...全てを見る(結末あり)

さらに栗林は、塹壕掘りを中止させて兵士に休息を取らせるよう指示を出す。

西郷や野崎(松崎悠希)、樫原(山口貴史)ら兵卒は、温和な司令官栗林を大いに歓迎する。

その夜、司令部に戻った栗林は、軍備や戦略の不備を指摘し、参謀や伊藤大尉(中村獅童)に、自分の考えを伝える。

士官らは、栗林の独断や常識外れの行動に、戸惑い始める。

島を隈なく視察した栗林は、島民を速やかに本土に帰すよう、副官の藤田正喜中尉(渡辺広)に命ずる。

間もなく、ロサンゼルスオリンピック馬術競技で金メダルを取った、戦車第26連隊を率いる西竹一中佐(伊原剛志)が着任し、栗林と意気投合する。

その夜、西を質素な食事に招いた栗林は、日本軍が受けている壊滅的な打撃の数々と、大本営の発表が嘘で固められていることを知る。

栗林は、山の各地に洞窟を掘り地下要塞を作ることを考え、徹底した防御戦で迎え撃とうとする。

アメリカに、軍事研究のため留学経験のある栗林は、敵の軍事力からして、海岸に上陸して突破されるのは確実だと指摘する。

参謀の大杉少将(阪上伸正)らは、栗林の意見に納得せず反論する。

しかし、連合艦隊が壊滅し、航空機も本土防衛に東京に戻すという命令を受け、島が孤立した現状では、議論の余地がないことを栗林は部下に伝える。

慢性の腹痛で苦しんでいた、親友の梶原が赤痢で死亡し、西郷は補充兵の清水洋一上等兵(加瀬亮)に冷たく接する。

清水の出身地や経歴を聞いた野崎は、彼が憲兵のスパイではないかと西郷に伝え疑い始める。

西郷は、かつて、妻の花子(裕木奈江)とパン屋を営んでいた時に、憲兵隊に商品や道具まで奪われ、その直後に徴兵されたことを想い起す。

栗林は、洞窟掘りなど無駄だと言う大杉少将を本土に戻し、大本営に支援を要請するよう彼に頭を下げる。

大杉は島を去る際、自分に同調する林少将(ケン・ケンセイ)に後を託す。

その様子を知った西は、林に注意するよう栗林に伝えるが、彼は、今はやるべきことをやるしかないことを西に伝える。

同じ頃、新参謀市丸利之助少将(長土居政史)が、栗林の司令部に着任する。

その直後、島は敵機の攻撃を受けて被害を出し、西の愛馬”ジュピター”は死亡する。

そして、アメリカの硫黄島派遣軍がサイパンを出発したとの報告が栗林に入り、彼は総員を配置に着かせる。

栗林は部下達に向かい、本土及び祖国防衛のために、最後の一兵まで戦い、10人の敵を倒すまで死ぬことは禁じ、生きて再び祖国の地が踏めぬことを覚悟するよう伝える。

”予ハ常ニ諸子ノ先頭ニ在リ”と締めくくった栗林は、天皇陛下を称えて覚悟を決める。

1945年2月16日
西郷が、便器の処置を谷田大尉に命ぜられ、洞窟の外に出ると、島の近海に現れたアメリカ軍の大船団を目撃し、直後に敵の艦砲射撃が始まる。

2月19日。
予想通り、アメリカ軍は海岸から大挙して上陸するが、栗林は、物陰や偽装したトーチカに潜んでいた兵士に待機命令を出す。

攻撃開始命令を出した栗林だったが、海岸線は破られてしまい、摺鉢山の占領は免れ、何とかその日を持ちこたえる。

摺鉢山防衛部隊の足立大佐(戸田年治)は、既に陥落寸前であることを栗林に報告し、玉砕の許可を求める。

栗林は、それを認めず避難命令を出すのだが、足立は、機関銃の補充を要請しに来た西郷に、自決命令書を上官に渡すよう命じてしまう。

西郷は上官の谷田に命令書を渡すが、栗林が足立大佐に退却命令を出していたことを伝える。

谷田はそれに耳を貸さず、天皇陛下を称えながら死ぬことを部下達に命ずる。

野崎らは泣きながら手榴弾で自決し、谷田も拳銃で自らのこめかみを貫く。

西郷はその場から逃げ去ろうとするが、清水が彼に銃口を向ける。

自決すべきだと言う清水に、西郷は栗林が足立に出した命令を伝え、彼を説得して友軍と合流するため洞窟を進む。

大磯中佐(安部義広)の部隊に合流した西郷と清水は、洞窟を出て敵の攻撃を受けながら、伊藤大尉の部隊に到着する。

伊藤は、西郷と清水を摺鉢山から逃げてきた脱走兵とみなし、二人は斬首されそうになる。

そこに栗林が現れ、自分の命令に従っただけだと言って伊藤に日本刀を降ろさせる。

摺鉢山が落ちたことを知らされた栗林は、伊藤に最後まで戦う命令を出し司令部に戻る。

しかし、伊藤は栗林を痛烈に非難し、林少将の指揮下に入り摺鉢山を取り戻そうとする。

それを西中佐に止められた伊藤は、上官に逆らい単独で摺鉢山に向かい、西郷と清水は西の部隊に留まる。

林は栗林の命令を無視して、1000名もの尊い兵士を戦死もしくは自決させてしまう。

反撃に転ずる作戦を練る栗林だったが、大本営からの連絡で、友軍の支援を絶たれてしまう。

西はアメリカ兵を狙撃して生け捕りにし、衛生兵遠藤(ソニー斉藤)に手当てをさせて情報を得ようとする。

捕虜に友好的に接した西は、カリフォルニアでの滞在経験や、ダグラス・フェアバンクスメアリー・ピックフォード夫妻とも親交があり、1932年のロサンゼルスオリンピック馬術競技に出場したことなどを話す。

戦いに疲れ果てた西郷は、投降することも考えるが、清水が憲兵隊をクビになったことを知らされる。

憲兵時代、市民への行き過ぎた行為に対し命令に従わなかった清水は、上官への反抗罪で硫黄島に配属されたことを西郷に語る。

その頃、栗林は間近に迫る死を前に、家族に絵手紙を書き心の安らぎを得る。

そして栗林は、アメリカ滞在中の、自分の送別会の際のことを想い起こす。

軍士官(マーク・モーゼス)から、記念に拳銃”M1911”を贈られた栗林は、日米が対戦した場合の意見を求められる。

栗林は、そうなれば国のために任務を果たし、自分の信念を貫くことを伝えたのだった。

西は、捕虜のアメリカ兵が息を引き取っているのを知り、彼の母親からの手紙に気付き、それを部下達に呼んで聞かせる。

その直後、砲撃に遭った西は両眼を負傷してしまう。

視力を失った西は、副官大久保中尉(尾崎英二郎)から戦況報告を受ける。

その状況を熟慮し、西は部隊を大久保に任せ、食料弾薬を持って北部に移動することを命ずる。

西は大久保からライフルを受け取り、部隊が出発した後に自決する。

清水は、見下していたアメリカ兵が、手強かったことに気付き、捕虜の母親からの手紙の内容が、自分の手紙の文面と同じことなどから、双方が同じ人間だということを理解する。

それを思うと、無駄死にしたくなくなった清水は、西郷に共に投降してくれと頼み込む。

その後、清水だけが投降に成功するが、彼はアメリカ兵に射殺されてしまう。

大久保の部隊は清水を発見し、彼の哀れな姿に西郷は泣き崩れ、彼の母から贈られた、千人針の銃弾除けを遺体に捧げる。

司令部には近づくが、敵軍と遭遇した大久保は部下を前進させた後に戦死する。

摺鉢山西の部隊の生存兵は司令部に到着し、栗林は彼らの労を労う。

栗林は、見覚えのあった西郷に声をかけ、彼は栗林に二度助けられたことを伝える。

二度あることは三度あると、栗林に励まされた西郷は、妻の花子に最後の手紙を書く。

栗林も家族宛に手紙を書いていたが、子供から贈られたひよこの、餌のミミズを取って来た西郷に、家族のことを尋ねる。

お国のために命を捧げる覚悟は出来ていても、家族のことを思うと死ねない気持ちがこみ上げる西郷は涙する。

そこに、本土から無線が入り、硫黄島で戦う兵士のために、栗林の故郷の長野の子供達が唄う歌が流れてくる。

その後、西郷は、資料を全て燃やすことを栗林から命ぜられる。

そして栗林は、総攻撃開始を決意し、部下達を前に語る。

”日本は戦に敗れたりと言えども、いつの日か国民が、諸君らの勲功を称え、諸君らの霊に涙し黙祷をささげる日が必ずや来るであろう。 靖んじて国に殉ずるべし”

”予ハ常ニ諸子ノ先頭ニ在リ”と締めくくった栗林は敵陣に向かい、部隊は”バンザイ突撃”を仕掛け、栗林は爆撃で負傷する。

司令部に残った西郷は、命令通り資料他を燃やすが、一部を地中に埋める。

副官藤田に介抱された栗林だったが、夜が明けたところで彼に斬首を命ずる。

しかし、藤田は銃撃されてしまい、瀕死の栗林の元に西郷が現れ、彼は自分を埋めるよう命ずる。

栗林は、”ここはまだ日本か?”と西郷に尋ね、彼は”日本であります”と答える。

それを聞いた栗林は、かつてアメリカの友人から贈られた”M1911”を抜き、自らの胸を貫く。

やがてアメリカ兵が現れ、栗林の拳銃を彼らが奪ったことに気付いた西郷は、シャベルを振り回す。

気絶させられた西郷は、担架で浜辺に運ばれ、アメリカの負傷兵と共に手当てを受ける。

西郷の目には、水平線に沈む美しい夕陽が映っていた。
__________

日本の発掘隊は、地中から大量の手紙を発見する。

それは、”硫黄島の戦い”で散った兵士達が、家族に送ろうとした手紙だった。


解説 評価 感想 ■

*(簡略ストー リー)
師団長でありながら、自ら最前線の地に赴任した司令官栗林忠道中将は、アメリカ留学の経験を生かし、敵軍の圧倒的有利を見抜きながら、本土防衛の拠点となる硫黄島を死守する決意を固める。
既に、日本軍は壊滅的打撃を受けていたため、本土からの支援も受けられず孤立していた。
そして栗林中将は、祖国のために、死を覚悟した戦いに挑むしかなくなる・・・。
__________

ドラマの主人公である師団長栗林忠道中将(戦死直前に大将に昇進)の手紙をまとめた、吉田津由子の著書”「玉砕総指揮官」の絵手紙”を基に製作された作品で、スタッフは前作とほぼ同じである。

殆どが日本人キャストで、一部を除き、全編日本語で作られた初めてのハリウッドのメジャー作品でもある。

普段はオーバーアクションや芸の貧弱さが気になる日本人俳優達が好演しているのには、クリント・イーストウッドをはじめ、超一流の演出家やスタッフの影響が大きく、それがいか、に作品の出来を左右するかが良くわかる。

保守的な参謀との確執や、防御しか手立てのない状況の中で、部下を思い、苦しい胸の内を明かすことなく家族を思い続ける、栗林中将の人物像と、彼に関った部下らの姿を、一兵卒の目から描いた人間ドラマであり、落ちついた雰囲気の中で緊張感も漂う、イーストウッドの、深みのある繊細な人物描写にも圧倒される。

前作と同じく、日米両国以外での人気は低く、商業的には成功しなかった。
その殆どが日本でもあった。
製作費 $19,000,000
北米興行収入 $13,753,930
世界 $68,673,230

作品としての評価は高く、第79回アカデミー賞では、作品、監督、脚本、音響編集賞にノミネートされた。
受賞:音響編集賞

前作のイーストウッド同様、息子のカイル・イーストウッドマイケル・スティーヴンスの主題曲は胸を打つ名曲だ。

実際の死因は今でも不明である、栗林中将と西中佐の戦死場面の演出なども興味深い。
また、硫黄島の最大の難題”水”問題なども随所で描かれ、兵士達の苦労も細かく描かれている。

今の日本では、彼しかいないというのも寂しい、主人公の栗林中将を熱演する渡辺謙、もう1人の主人公として兵卒を好演する二宮和也、信頼される指揮官西竹一中佐の伊原剛志、憲兵をクビになり島に送られる加瀬亮栗林に反旗を翻す士官中村獅童、阪上伸正、栗林の副官渡辺広、部下を扱く上官坂東工、兵卒の松崎悠希、山口貴史、西中佐の副官、尾崎英二郎栗林の参謀となる市丸利之助少将の長土居政史、アメリカ軍士官マーク・モーゼスなどが共演している。


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