1922年に発表された、シュテファン・ツヴァイクの小説”Letter from an Unknown Woman”を基に製作された作品。 天才ピアニストを愛した女性の一途な恋を描く、製作ジョン・ハウスマン、監督マックス・オフュルス、主演ジョーン・フォンテイン、ルイ・ジュールダン、メイデイ・クリスチャン他共演の恋愛ドラマ。 |
■ スタッフ キャスト ■
監督:マックス・オフュルス
製作:ジョン・ハウスマン
原作:シュテファン・ツヴァイク”Letter from an Unknown Woman”
脚本:ハワード・コッチ
撮影:フランツ・プラナー
編集:テッド・J・ケント
音楽:ダニエル・アンフィシアトロフ
出演
リサ・バーンドル:ジョーン・フォンテイン
ステファン・ブランド:ルイ・ジュールダン
バーンドル夫人:メイデイ・クリスチャン
ヨハン・スタッファー:マルセル・ジュルネ
ジョン:アート・スミス
マリー:キャロル・ヨーク
カストナー:ハワード・フリーマン
レオポルド・フォン・カルトネガー中尉:ジョン・グッド
ステファンJr.:レオ・B・ペッシン
ポーター:アースキン・サンフォード
コンシェルジュ:オットー・ウォールディス
スピッツァー夫人:ソーニャ・ブライデン
コーナー夫人:ベティ・ブライス
花売り:ジョン・エリオット
チケット売り:イルカ・グリューニング
ステファンの友人:ローランド・ヴァルノ
アメリカ 映画
配給 ユニバーサル・ピクチャーズ
1948年製作 86分
公開
北米:1948年4月28日
日本:1954年7月3日
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
1900年頃、ウィーン。
かつては将来が期待されたピアニストのステファン・ブランド(ルイ・ジュールダン)は、女性関係でトラブルを起こし決闘を申し込まれていた。
家に戻ったステファンは、聾唖者である執事のジョン(アート・スミス)に、決闘などする気はなく、1時間後に裏門にタクシーを呼んであることを伝える。
ジョンから手紙を受け取ったステファンは、それが病院の便箋に書かれたものだったために気になる。
見知らぬ病気の女性からの手紙には、読んでいくうちに思い出すだろうと書かれていた。 学校からアパートに戻った少女リサ・バーンドル(ジョーン・フォンテイン)は、業者が上の階に楽器などの荷物を運び込む様子を見ながら、どんな人物が越して来たのか興味を持つ。 業者に指示を与えるジョンに挨拶したリサは、母(メイデイ・クリスチャン)に呼ばれて部屋に戻る。 部屋から聴こえるピアノの曲を聴いていたリサは、演奏しているのどんな人かはわからなかった。 ピアノの音が止み、部屋から出てきたステファンに一目で惹かれてしまったリサは、入り口のドアを開けてあげる。 ステファンから声をかけられたリサは、言葉を返すこともできず、友人のマリー(キャロル・ヨーク)に冷やかされ、恋に落ちたことに気づく。 その日から、紳士であるステファンに釣り合う女性になる決心をしたリサは、きれいな服を着てダンス学校に通い、偉大な音楽家の伝記も読み漁った。 コンサートは見に行けなくてもステファンの成功は知っていたリサは、彼の部屋に女性の出入りが多いことにも気づいていた。 そんなリサは、夜のステファンの演奏を聴くのが、この上ない喜びだった。 ある日、庭で絨毯のホコリを落とし、それを入り口まで運ぶジョンを手伝ったリサは、ステファンの部屋に忍び込み、興味深く中を見回す。 楽譜を落としたリサに気づいたジョンは、部屋から逃げ出すリサを見て微笑む。 中年男性カストナー(ハワード・フリーマン)と親しげに話していた母から、リンツで軍服の仕立て業で成功している彼に結婚を申し込まれたことを知らされたリサは戸惑う。 引っ越したくないリサは部屋に閉じこもってしまうが、母に説得された旅立つことになる。 駅で出発の準備をする母とカストナーのことはどうでもよかったリサは、一目ステファンに会いたいと思い、彼の部屋に向かうものの誰もいなかった。 入り口でひたすらステファンを待ったリサは、彼が女性と戻ってきたためにショックを受け、仕方なくリンツに向かうことにする。 18歳になったリサは社交界デビューをすることになり、青年将校レオポルド・フォン・カルトネガー中尉(ジョン・グッド)を紹介される。 レオポルドと交際を始めたリサは、彼から結婚を申し込まれるものの、婚約者がいると伝えてしまう。 それを知った両親は驚き、リサはウィーンに戻る。 スピッツァー夫人(ソーニャ・ブライデン)の店でハウスマヌカンとして働くことになったリサは、その美しさが評判になる。 他の女性とは違い、仕事を終えてすぐに帰るリサは、ついにステファンと再会する日を迎える。 通りでステファンから声をかけられたリサは、彼から見覚えがあると言われる。 リサを誘ったステファンは、リハーサルと他の女性との約束をキャンセルし、彼女と共に食事をして楽しい時を過ごす。 その後、馬車に乗ったステファンは、通りで白いバラを買いリサに渡す。 プラーター公園に向かった二人は、遊戯場で楽しみ、リサは亡くなった父の話などをする。 その後、クラブで閉店後もダンスをした二人は、馬車でアパートに向かい、ステファンはリサを部屋に招き入れる。 リサにキスしたステファンは、彼女と一夜を過ごす。 翌日、公演のため、ステファンが2週間ミラノに向かうことを知ったリサは、彼を見送るために駅に向かう。 ステファンに別れを告げて見送ったリサだったが、その後、彼は戻らなかった。 病院のベッドで、ステファンの名を教えることを拒んだリサは、独りで死ぬことを覚悟するが、息子に会わせたかったためにそのことを悔やむ。 息子ステファンJr.(レオ・B・ペッシン)が9歳になった時に、リサは、ステファンも知る年の離れた富豪ヨハン・スタッファー(マルセル・ジュルネ)と結婚した。 ある夜、ヨハンと共にオペラ観賞に向かったリサは、その場に現れたステファンに気づく。 ステファンは、その才能を活かしきれず、今では平凡なピアニストとしか認められていなかった。 桟敷席に座り開演するものの、リサは、自分を見つめるステファンが気になり、初めて会った時のことを思い出して動揺し席を外す。 頭痛がするので横になるとヨハンに伝えてその場を去ったリサは、屋敷に戻ることにして馬車を呼ぶ。 リサがいなくなったことに気づいたステファンは、彼女を追い声をかけて、どこかで会った気がすると伝える。 自分が誰であるかを知りたがるステファンと別れたリサは、彼女が心配になり馬車で待っていたヨハンと共にその場を去る。 自ら望んだことではないが、気持ちを抑えられないとヨハンに伝えたリサは、自分の人生は彼次第だと伝える。 馬鹿げた考えだと言われるものの、ステファンが自分を必要としていることが分かったとヨハンに伝えたリサは屋敷に戻る。 後戻りはできないことをリサに確認したヨハンは、どんな手段を使っても阻止すると、剣の前で彼女に伝える。 息子を寝かせたリサは、涙する。 スイスに独りで旅する息子を駅で見送ったリサは、汽車の中から連れ出されるチフス患者に気づかない。 その後、ステファンを捜したリサは、通りの花売り(ジョン・エリオット)から白いバラを買い、彼のアパートに向かう。 ヨハンは、その様子を馬車から監視していた。 ジョンに迎えられたリサは、現れたステファンを驚かせる。 ステファンが音楽を諦めた話などを聞いたリサは、昨晩から自分のことだけを考えていると言われてキスされる。 自分たちのことを話したいとステファンに伝えたリサは、すべてを捧げるつもりだったものの、彼が何も覚えていないことにショックを受けてその場を去る。 テーブルには、かつて楽しい夜を過ごした時と同じ白いバラが置かれていた。 ステファンの指示で食事を買いに行き戻ったジョンは、その場を去るリサを見つめる。 何時間も街をさ迷ったリサは、その後、息子に会いに行くものの、彼はチフスで亡くなり死に目にも会えなかった。 頭痛が気になるリサは、自分もチフスではないかと考える。 リサは、”今でもあなたを愛し、息子といた時間が人生だったと思える、その喜びを分かち合えたらよかった、自分があなたのものだと知ってくれたら、失う必要がなかった”という内容の手紙を書く。 ステファンは、リサが亡くなる前に自分の名を呼んでいたと書かれた、病院側のメモを確認する。 かつて愛し合ったリサのことをようやく思い出したステファンは後悔し、時間を知らせるジョンが、彼女のことを覚えていたことを知る。 ジョンが書いてくれた”リサ・バーンドル”という名を確認したステファンは、決闘のために到着したヨハンの馬車に気づく。 逃げるつもりだったステファンは決闘する覚悟を決めて支度し、一輪の白いバラを手にしながらリサのことを想う。 ジョンに別れを告げたステファンは入り口に向かい、かつてその場で自分を見つめていた、リサの面影が目に浮かぶ。 微笑んだステファンは、馬車に乗り込み決闘の場に向かう。
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...全てを見る(結末あり)
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*(簡略ストー リー)
1900年頃、ウィーン。
かつては将来が期待されたピアニストのステファン・ブランドは、女性関係のトラブルで決闘を申し込まれて帰宅する。
執事のジョンから手紙を渡されたステファンは、病院の便箋につづれらた内容を読み、見知らぬ女性(リサ・バーンドル)の過去を知ることになる。
手紙を読んだステファンは、少女時代の初恋の相手である自分への、女性の長年の思いを知ることになる・・・。
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シュテファン・ツヴァイクの原作を基に、女性映画を得意とするドイツ帝国出身のマックス・オフュルスが、20世紀初頭のウィーンを舞台に、初恋の相手である天才ピアニストを愛した女性の一途な恋を描くメロドラマの傑作。
決闘の話で始まる冒頭から、緊張感漂う内容に引き込まれる。
主人公の少女時代の恋心が成長しても続き、それを相手に知ってもらえないまま亡くなるという、悲運の女性の人生を描く悲しい物語なのだが、これほどまでに人を愛して生きられた彼女は、後悔もあったが、幸福でもあっただろうと思わせる、マックス・オフュルスの繊細な演出は見事だ。
手紙の相手が、かつて愛した人であったことを知った、夜逃げをするつもりだったピアニストが、彼女と息子の人生に報いるために、覚悟を決めて決闘の場に向かい終わるラストも素晴らしい。
1992年、アメリカ議会図書館が、国立フィルム登録簿に登録した作品でもある。
終戦間もない時期であるため、撮影はロサンゼルスで行われたのだが、当時のウィーンの街並みなどを見事に再現している。
ダニエル・アンフィシアトロフの美しいテーマ曲が心に残る。
主演のジョーン・フォンテインは、普通に生きれば何不自由ない人生を送れた立場でありながら、初恋のピアニストへの愛に一生を捧げ、それを知ってもらえないまま亡くなる悲劇のヒロインを見事に演じている。
天才と言われながら才能を活かしきれなかったピアニストであり、主人公の気持ちに気づかずに後悔する男性を好演するルイ・ジュールダン、主人公の母親メイデイ・クリスチャン、彼女と結婚する実業家のハワード・フリーマン、後に主人公と結婚する富豪で、ピアニストに決闘を申し込む主人公の夫マルセル・ジュルネ、ピアニストの執事を印象深く演ずるアート・スミス、主人公の少女時代の友人キャロル・ヨーク、主人公と付き合い結婚を申し込むものの断られる青年将校ジョン・グッド、チフスで亡くなる主人公の息子レオ・B・ペッシン、ポーターのアースキン・サンフォード、コンシェルジュのオットー・ウォールディス、主人公の雇い主であるブティックのオーナー、ソーニャ・ブライデン、上流階級の婦人ベティ・ブライス、通りの花売りジョン・エリオット、遊戯場のチケット売りイルカ・グリューニング、ステファンの友人ローランド・ヴァルノなどが共演している。