ヴィクトル・ユーゴーが1862年に発表した同名小説を基に、デンマークの名匠のビレ・アウグストが再映画化した作品。 ささいな罪で刑務所に入れられ長年の重労働の末に出獄し司教の教えで改心した男の運命を描く、主演リーアム・ニーソン、ジェフリー・ラッシュ、ユマ・サーマン、クレア・デインズ共演によるドラマ。 |
・ドラマ
■ スタッフ キャスト ■
監督:ビレ・アウグスト
製作
サラ・ラドクリフ
ジェームズ・ゴーマン
原作:ヴィクトル・ユーゴー
脚本:ラファエル・イグレシアス
撮影:ヨルゲン・ペルソン
編集:ヤヌス・ビレスコフ・ヤンセン
音楽:ベイジル・ポールドゥリス
出演
ジャン・ヴァルジャン:リーアム・ニーソン
ジャヴェール警部:ジェフリー・ラッシュ
ファンティーヌ:ユマ・サーマン
コゼット:クレア・デインズ
コゼット(少女期):ミミ・ニューマン
マリウス・ポンメルシー:ハンス・マシソン
テナルディエ:ジョン・ケニー
テナルディエ夫人:ジリアン・ハンナ
エポニーヌ:シルヴィ・コヴィルィズコヴァ
ガヴローシュ:シェイン・ハーヴィ
アンジョルラス:レニー・ジェームズ
カルノー:ジョン・マッグリン
ボーヴェ:リーネ・ブリュノルフソン
ミリエル司教:ピーター・ヴォーン
イギリス/アメリカ/ドイツ 映画
配給 トライスター・ピクチャーズ
1998年製作 134分
公開
イギリス:1998年11月20日
北米:1998年5月1日
日本:1999年2月6日
ドイツ:1998年12月24日
北米興行収入 $14,096,320
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
19年間の刑務所生活の末、仮釈放になった男ジャン・ヴァルジャン(リーアム・ニーソン)は、行く場所もなくさ迷いヴィゴーの町にたどり着く。
飢えを凌ぎ宿を得るため、ヴァルジャンはミリエル司教(ピーター・ヴォーン)の元に迎え入れられる。
食事を与えられたヴァルジャンは、盗みで投獄されたことを司教に伝え、科せられていた重労働を思いながらベッドに横たわる。
夜中に目が覚めたヴァルジャンは、銀食器を盗み、それに気づいた司教を殴り倒して、その場から逃げ去る。
翌日、ヴァルジャンは取れえられ、司教の元に連れて行かれる。 しかし司教は、銀食器はヴァルジャンに譲ったもので、燭台を忘れて行ったとまで言って彼をかばう。 釈放されたヴァルジャンに司教は、昨夜言った”新しい人間になる”ことを、彼に約束される。 9年後。 人望厚い質素な暮らしをするという市長(ヴァルジャン)は、ジャヴェールと対面するが、彼は刑務所で自分を鞭打った、かつての看守だった。 タイルとレンガ工場を買取り成功していたヴァルジャンだったが、危険を感じ、銀行の全財産を引き出して郊外に埋める。 その頃、工場で働くファンティーヌ(ユマ・サーマン)は、父親が分からない子供がいることが知られてしまい解雇される。 ヴァルジャンは、世話になり亡くなった司教から聞いていたパリの修道院に寄付をする。 そんな時ヴァルジャンは、馬車の下敷きになった労働者を助けるが、それを見ていたジャヴェールは彼が気になる。 同じ頃、ファンティーヌは、生活と子供への仕送りのために、仕方なく娼婦になる。 市長の素性が気になるジャヴェールは、住民調査をすることを彼に提案する。 ジャヴェールの気が済むようにさせようとしたヴァルジャンは、彼に自分に関する各種の証書を渡す。 パリ。 しかし、石切り場の怪力男だった囚人ヴァルジャンを知るジャヴェールは、市長がその人物であり、犯罪者であることを確信し、そのような男に行政などを任せることができないと主張し告発も考える。 その件に関しては、パリ警察が内密に調べることになり、ジャヴェールは一旦は引き下がる。 娘を里親に出しているファンティーヌは、養育費の値上げを要求され、病気を押して夜の町に立つ。 男達にからかわれ、痛めつけられたファンティーヌを救おうともしない、ジャヴェールの行為を見兼ねた部下のボーヴェは、それを市長に伝える。 ジャヴェールは、ファンティーヌを逮捕して投獄しようとするが、そこにヴァルジャンが現れる。 ヴァルジャンは、市長の権限で翌朝までジャヴェールの職を解き、ファンティーヌを釈放させる。 気を失ってしまったファンティーヌが、肺病で命が長くないことを知ったヴァルジャンは彼女を介抱し、人任せだった雇用のことを謝罪して、娘を呼び寄せることも約束する。 しかし、里親は金を要求するだけで娘を旅立たせる気配はなく、仕方なくヴァルジャンが迎えに行こうとする。 そこにジャヴェールが現れ、本庁に”仮釈放破りの囚人”を証拠もなしに告発したことを伝え、自分を解雇するよう市長に願い出る。 市長は、その男”ジャン・ヴァルジャン”が、ある町でリンゴを盗み逮捕され、ジャヴェールは、それを確認したことで市長を罪人と勘違いしていたことを伝え謝罪する。 その男を救わなければならないヴァルジャンは、罰は自分に与えるようジャヴェールに伝え、職に留まるように指示する。 ヴァルジャンは、ファンティーヌに娘の引渡し書にサインをさせて、自分が彼女と娘の世話をすることを約束する。 その後、”ジャン・ヴァルジャン”だという男の裁判に立ち会ったヴァルジャンは、それを見過ごすことが出来ない。 ヴァルジャンは、証人としてその場に居たかつての囚人仲間を前に、自分が”ジャン・ヴァルジャン”であることを裁判長に告げて、その場を立ち去る。 ファンティーヌの元に戻ったヴァルジャンは、様態の悪化した彼女から、娘を引き取って育てることを約束する。 その時、ヴァルジャンの逮捕状を受け取ったジャヴェールが現れ、二日間の猶予を願う彼を無視して罵る。 自分が逮捕されると思い、取り乱したファンティーヌは息を引き取り、激怒したヴァルジャンはジャヴェールを痛めつけて、その場から逃げようとする。 表で待ち構えていたボーヴェは、ヴァルジャンに銃を向けるが、彼に銃を渡して自分を殴らせ逃亡を許す。 ジャヴェールは工場に向かうが、既にそれは従業員に譲渡されていた。 ヴァルジャンは、隠してあった金を手にして、ジャヴェールの追跡を振り切り、ファンティーヌの娘コゼット(ミミ・ニューマン)を引き取りに、里親テナルディエ夫妻(ジョン・ケニー/ジリアン・ハンナ)の宿屋を訪ねる。 コゼットを引き取る交渉に入ったヴァルジャンは、足元ばかりを見て現金を騙し取ろうとするテナルディエに、コゼットを引き取るためのファンティーヌの委任状を見せる。 難なくコゼットを引き取ったヴァルジャンは、通行証がないままパリに入る手段を考える。 一方、本庁の協力を得たジャヴェールは、ヴァルジャン逮捕に執念を燃やす。 ヴァルジャンは、コゼットを連れて城壁を登り、修道院に逃げ込む。 以前、馬車の下敷きになり助け、そこに世話になれるよう手配した男の元に向かったヴァルジャンらは、そこで匿われる。 ジャヴェールは、修道院を調べることが出来ずに、捜査を諦める。 10年後。 しかし、コゼットはそれを嫌い、ヴァルジャンは仕方なく街に移り住むことを考える。 街に出たヴァルジャンは、馬車にコゼットを残して用事を済ませようとするが、見るもの全てが新鮮に見える彼女はその場を離れてしまう。 コゼットは、街頭で人々を前に、王政反対の演説をする革命派の青年マリウス・ポンメルシー(ハンス・マシソン)に目を留める。 マリウスもコゼット気になり、彼女を馬車まで付けてしまい、それを知ったヴァルジャンは、コゼットが大人に近づきつつあることを感じる。 その後ヴァルジャンとコゼットは、貧しい人々のために尽くす日々を送る。 マリウスがコゼットに近づこうとしていることに気づいたヴァルジャンは、見知らぬ者との接触は危険だと、彼女に言い聞かせる。 実の父親ではないが、母親と約束して守りたいことを伝えるヴァルジャンに、不満を訴えるコゼットだったが、密かに現れたマリウスから手紙を受け取る。 本庁で警部になっていたジャヴェールは、マリウスの動きを探っていたが、彼がある女性(コゼット)と接触していることを知る。 その後、コゼットとマリウスは毎晩のように会うようになり、ジャヴェールは、彼女の父親を訪ねる。 ジャヴェールの訪問を知ったヴァルジャンは、留守だということにしてコゼットに対応させ親展を受け取る。 それを読んだヴァルジャンは、コゼットとマリウスのことを知り激怒する。 コゼットは、ヴァルジャンが、警察を恐れ何も教えないことに不信感を抱き、マリウスを愛していることを伝える。 絶望に近い思いのヴァルジャンは、自分が脱走囚で、少年の時に飢えに苦しみ、パン屋のパンを盗み、19年もの間、刑務所にいたことをコゼットに語る。 その後ジャヴェールは、マリウスの相手が、ファンティーヌの娘コゼットだと知るが、ヴァルジャンらは既に屋敷を引き払っていた。 共和制再興のため、蜂起する準備が整ったマリウスは、コゼットの元に向かい、彼女が父親とイギリスに渡ることを知る。 警察側は、革命派の動きを察知してそれに備え、翌日、街が混乱する中、ジャヴェールは棄権を承知して革命派に扮し、マリウスを監視してヴァルジャンに近づこうとする。 マリウスを捕らえ、コゼットを誘き出したジャヴェールは彼女に銃を向ける。 しかし、マリウスが銃を奪い、コゼットに別れを告げてジャヴェールを同志の元に連行する。 マリウスと別れた、コゼットの苦しみを知ったヴァルジャンは、イギリス行きを中止し、革命派の元に向かい、処刑を待つジャヴェールと顔を合わせる。 ヴァルジャンはマリウスに会い、コゼットの元に向かうよう彼を説得する。 その時、少年ガブローシュ(シェイン・ハーヴィ)が兵士に射殺され、直ちにジャヴェールが殺されることになる。 ヴァルジャンが、その役目を申し出てジャヴェールを路地に連れ出す。 しかし、ヴァルジャンはジャヴェールの拘束を解いて解放し逃げるように伝える。 その後、革命派は銃を捨てて降伏して多くが処刑され、ヴァルジャンは、負傷したマリウスを連れて下水道に逃げる。 それに気づいたジャヴェールは彼らを追い、ついに二人を捕らえる。 ヴァルジャンは、自分を捕らえて瀕死のマリウスを見逃すようジャヴェールを説得する。 ジャヴェールはそれを承知し、コゼットの元にマリウスを連れて行くことを許されたヴァルジャンは、母親ファンティーヌのペンダントを彼女に渡して別れを告げる。 ヴァルジャンはジャヴェールの元に戻るが、自分を憎んでいないというヴァルジャンを解放し、法を守り職務を全うすると言って、ジャベールはセーヌ川に身を投げる。 そして、ついに自由を手に入れたヴァルジャンは、愛するコゼットの元に急ぐ。
...全てを見る(結末あり)
警察署長に就任したジャヴェール(ジェフリー・ラッシュ)は補佐ボーヴェ(リーネ・ブリュノルフソン)に迎えられて、町の市長に会いに行く。
ジャヴェールの提案は総監も受け入れるが、市長を調べることは疑問視される。
コゼット(クレア・デインズ)は、修道院の寄宿学校で尼僧になるために学んでいた。
*(簡略ストー リー)
19年の刑期の末、仮釈放となったジャン・ヴァルジャンは、自分を迎え入れてくれた司教を裏切り、銀食器を盗み彼を殴り倒して逃亡する。
翌日、捕らえられたヴァルジャンは、司教の元に連れて行かれる。
しかし司教は、銀食器は譲ったものだと言ってヴァルジャンを釈放させて改心させる。
9年後、ヴァルジャンは町の市長になり、亡くなった司教の教えを守り、人のために尽くし質素に暮らしていた。
そこに、警察署長に赴任したジャヴェールが現れるのだが、彼は、ヴァルジャンの投獄時代のを知る刑務所の元看守だった。
ジャヴェールは市長の素性を調べ、疑いを確信にして彼の告発も考える。
その頃、ヴァルジャンが経営する工場で働くファンティーヌは、里親に出した娘コゼットのために身を粉にして働いていた。
しかし、私生児を持つ母親と言われ工場を解雇され、仕方なく娼婦となり、やがて病に倒れる。
ファンティーヌの不幸を知ったヴァルジャンは、彼女の世話をして、コゼットを引き取ろうとする。
しかし、ある事件で市長がヴァルジャンであることを知ったジャヴェールは、彼を逮捕しようとする・・・。
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誰もが親しんだことのある、あまりにも有名な物語であるため、その再確認的な視点で観てしまうというのが正直なところだが、深い内容で重みもある、見応えのある作品に仕上がっている。
既に世界的名声を得ていた、包容力のあるリーアム・ニーソンの演技は注目で、同じく同世代のジェフリー・ラッシュが、実力派らしく、主人公の”宿敵ジャヴェール”を重厚に演じ切っている。
終盤の、フランスの復古王政時代を絡めた展開に期待したのだが、サスペンス・タッチを意識し過ぎたせいか、やや力強さに欠ける演出が気になる。
薄幸の女性ファンティーヌを熱演するユマ・サーマン、自分や義父の秘密を知らずに育つ、その娘コゼットのクレア・デインズ、彼女と恋に落ちる革命青年のハンス・マシソン、ジャヴェールの部下ながら、人格者であるヴァルジャンに手を貸す警察官リーネ・ブリュノルフソン、ヴァルジャンを改心させる司教ピーター・ヴォーンなどが共演している。