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恋愛手帖 Kitty Foyle (1940)

1939年に発表された、クリストファー・モーリーの小説”Kitty Foyle”を基に製作された作品。
2人の男性に愛された女性の心の迷いを描く、監督サム・ウッド、脚本ダルトン・トランボ、主演ジンジャー・ロジャースデニス・モーガンジェームズ・クレイグ他共演の恋愛ドラマ。

アカデミー賞 ■ ストーリー ■ 解説


ドラマ(ロマンス)


スタッフ キャスト ■
監督:サム・ウッド

製作:デヴィッド・ヘンプステッド
製作総指揮:ハリー・E・エディントン

原作:クリストファー・モーリーKitty Foyle
脚本:ダルトン・トランボ

撮影:ロバート・デ・グラス
編集:ヘンリー・バーマン
音楽:ロイ・ウェッブ

出演
キティ・フォイル:ジンジャー・ロジャース

ウィンウッド”ウィン”ストラッフォード6世:デニス・モーガン
マーク・アイゼン:ジェームズ・クレイグ
ジオーノ:エドュアルド・シャネリ
トム・フォイル:アーネスト・コサート
ストラッフォード夫人:グラディス・クーパー
デルフィーヌ・ディタイユ:オデット・ミルティル
パット:メアリー・トリーン
モリー:K・T・スティーヴンス

アメリカ 映画
配給 RKO

1940年製作 108分
公開
北米:1940年12月27日
日本:1947年7月15日
製作費 $738,000
北米興行収入 $2,385,000


アカデミー賞 ■
第13回アカデミー賞
・受賞
主演女優賞(ジンジャー・ロジャース
・ノミネート
作品・監督・脚本・録音賞


*詳細な内容、結末が記載されています。
ストーリー ■
1900年。
男性は女性を敬い、優しく接する時代だった。
ある女性は男性と知り合い結婚し、幸せな家庭を築く・・・。

その後、女性の参政権を求める運動が起き、男性と同じ権利が得られることになり、男性は女性を特別視しなくなる。

やがて、女性は男性と同じく働き、夜も出歩くようになる。
1940年代には、これを”5時半の気分”と呼んだ・・・。
__________

ニューヨーク
26歳のキティ・フォイル(ジンジャー・ロジャース)は、仕事を終え、恋人で医師のマーク・アイゼン(ジェームズ・クレイグ)を待つ。

現れたマークがが向かうお産の手伝いをしたキティは、彼からその場で結婚を申し込まれる。
...全てを見る(結末あり)

それを承諾したキティは、マークから”フィラデルフィアの男性”のことを聞かれ、彼のことは忘れたと答える。

帰宅したキティは、その”フィラデルフィアの男性”ウィンウッド”ウィン”ストラッフォード6世(デニス・モーガン)がその場で待っていたため驚いてしまう。

ウィンは、返された指輪を見せてキティと寄りを戻そうとするのだが、彼女はそれを拒む。

アルゼンチンブエノスアイレスで暮らすというウィンに、待っていたにも拘らず、なぜ5年前にそれを言わなかったのかと尋ねキティは彼を責める。

ウィンが自分を愛し続けてくれていたことを知ったキティは心が動くが、彼から妻と離婚することを約束はできないと言われる。

実はウィンとの愛を諦めていなかったキティは、ブエノスアイレス行きを承諾し、出航する桟橋の場所を聞き彼を見送る。

旅立つ準備を始めたキティは、子供時代から持っていた”スノーグローブ”を手に取った瞬間に何かを感じる。

キティは、もう一人の自分に、ウィンの愛人のままで終わる可能性などを指摘され、冷静に考えるよう忠告される。

結婚にこだわる必要はないと断言するキティは、マークと結婚すれば幸せになれるにも拘わらず、他人でしかいられないウィンを選ぶのかを問われ、その考えは間違っていると答える。

同じことを、以前にもフィラデルフィア時代に言ったと指摘されたキティは、それを思い出す。
__________

15歳のキティは、家を抜け出して舞踏会会場に向かい、上流階級の人々が到着する姿を見て帰宅する。

黙って部屋に向かおうとするキティに声をかけた父親トム(アーネスト・コサート)は、金持ちに憧れ夢を追い続けることの愚かさを語るが、彼女はそれが間違った考えだと指摘する。

1932年6月。
世の中は不況で夢もなくなり、キティは、グレッグ式速記を習っていた。

その頃、フーバー大統領と対立候補ルーズベルトは、激しい選挙戦を繰り広げていた。

6月23日午後4時37分。
父トムの用事で自宅に来ていたウィンと出会ったキティは、彼の雑誌社に誘われて秘書となる。

キティに惹かれていたウィンはそれを伝え、彼女も同じ思いだということを知る。

ニューヨーク
愛し合うようになていた二人は、ジオーノ(エドュアルド・シャネリ)の闇酒場で選挙速報を聴き、ルーズベルトがリードしていることを知る。

ジオーノは、禁酒法を廃止しようとしているルーズベルトの勝利を当然、望まない。

キティは、二人の関係が知られないようにするため、ウィンがニューヨークに来たのかを気にする。

ルーズベルトの勝利で意気消沈するジオーノを尻目に、盛り上がる店内で楽しい時を過ごした二人は愛を確かめる。

気管支炎の父トムの体調を心配するキティは、ウィンのことを聞かれ、結婚を考えていると答える。

家柄だけで生きる目的がない男との交際に意見するトムの考えを否定し、キティは自分のことは自分で決めると言って家を出る。

キティを送り出したトムだったが、娘が傷つくだろうと考える。

出社したキティは、大恐慌の影響を受けて、雑誌が廃刊になることをウィンから知らされる。

失意のウィンを励ますキティだったが、失業しても金銭的な援助をすると言われ、気分を害してそれを拒む。

帰宅したキティは、父トムの言葉が正しかったことを伝えるが、彼は座ったまま息を引き取っていた。

心の支えを失い、キティはフィラデルフィアを離れてニューヨークに向かうが、ウィンとの思い出を断ち切ることはできなかった。

デルフィーヌ・ディタイユ(オデット・ミルティル)の高級香水店で働いていたキティは、ある日、誤って非常ベルを鳴らしてしまう。

同僚に気絶した振りをするよう言われたキティは指示に従い、やがて警察や医師マークが駆けつける。

マークはキティを診て仮病だと気づき、彼女の失態を知り、黙っていることを条件に食事に誘う。

キティは、気乗りしないまま仕方なくそれを承諾する。

予定通り現れたマークだったが、キティは豪華な食事を期待していたにも拘らず、彼がその場に居座ろうとしたため呆れてしまう。

部屋をシェアしている二人パット(メアリー・トリーン)とモリー(K・T・スティーヴンス)の妨害も尻目に、マークは持参したカードを取り出してゲームを始めてしまう。

3時間もそれを続け、食事をしようにも10セントしか持っていないというマークにキティは呆れてしまう。

マークは、惹かれた女性が金目当てかを試すためのテストだったことを伝える。

合格だと言われたキティはマークを見送り、土曜の映画に誘われ、見かけ倒しだと思いながらも、彼に惹かれてそれを承諾する。

数日後マークとデートをしたキティは、今現在、恋しい人がいるかを聞かれる。

明確な答えを返さないキティは、次回のデートで食事とダンスに誘われる。

その間もウィンが気になるキティは、部屋に大量の花が届けられていることを知り、ドアのベルで彼が来たことを確信する。

現れたウィンとの再会を喜んだキティは、かつて行く約束をした舞踏会の代わりにクラブに向かい、贈られたドレスを着てその場で明朝まで踊る。

朝の5時となり、奏者を連れてホテルに向かったマークとキティはチェックインを断られ、下町のレストランで朝食をとる。

マークは、曾祖母の指輪を見せてキティに渡そうとする。

キティがそれを受けとらないため、奏者に曲を変えさせたマークは彼女に求婚する。

しかし、キティはそれを断り、ここがフィラデルフィアでないからだという理由を伝える。

フィラデルフィア以外なら恋人でいられる自分達は生きる世界が違うと、キティはマークに伝える。

マークは、フィラデルフィアのことは理解できると言って、ニューヨークで暮らすことを提案してキティを納得させる。

ストラッフォード夫人となったキティは、ウィンの家族に会うためにフィラデルフィアに向かう。

マークは、結婚したことを母(グラディス・クーパー)に知らせるが、その場にいた家族は驚いてしまう。

家族が結婚は認めたものの、躾けのために1年は待つようにと言われていたことを、マークは戸惑うキティに伝える。

それを侮辱と捉えたキティは、この街に住む気のない自分達の計画を率直に語る。

しかし、ストラッフォード家の跡取りがこの街に住み、銀行の役員になることが義務付けられていることをキティは知らされる。

ウィンに決定権はなく、拒否すれば財産が与えられないと言われたキティは、貧乏になるだけで、彼が自分を望んだ末の結婚であり、相手は金ではないと言い切る。

憤慨したキティは席を外し、彼女を追ったマークはニューヨークで暮らすことを伝える。

財産を放棄して貧乏生活をすることに同意したマークは、家族にそのことを伝えに行くが、キティはそれが現実的でないと考えてその場を去る。

ニューヨークで元の仕事に復帰したキティは、魂を失ったような毎日を送っていた。

マークに再会したキティは、正規のバーになったジオーノの店に連れて行かれる。

席に着いたキティは、禁酒法時代にウィンと来た際のことを思い出す。

キティは、結婚したものの離婚したことを伝え、ジオーノが持ってきた思い出のボトルを見て再びウィンを想う。

マークはキティの様子を見て、彼女が未だに相手を愛していることを知り、自分の気持ちは変わっていないと伝える。

一緒に居ても辛いだけだというキティの気持ちを察したマークは、何かあれば連絡をしてほしいと伝えてその場を去る。

ある朝、キティは通院してから出社し、ウィンからの電話を受け会う約束をして心が晴れる。

デルフィーヌに病院に行った理由を伝えたキティは、妊娠したことを知らせ、ウィンもそれを喜んでくれると信じる。

ジオーノの店でウィンを待っていたキティは、テーブルの新聞記事で、彼がプロイセンの令嬢と婚約したことを知る。

動揺したキティは店に戻り、デルフィーヌにその件を伝え、子供は産み一人で逞しく育てると話す。

しかし、出産を見守ってくれたデルフィーヌの表情で、キティは産まれた子が亡くなったことを知る。

5年後。
仕事でフィラデルフィアに行ったキティは、接客した相手にかかって来た電話の内容で、彼女がウィンの妻であり連れていたのが息子だと気づく。

忘れたぬいぐるみを取りに戻ったウィンの息子の名前を”ウィン7世”だと当てたキティは、なぜ分かるのかと聞かれ、昔、同じくらいの子を知っていた答える。

キティは、ウィンから贈られた指輪を子供のポケットに入れて、内緒で父親に渡すよう伝える。

子供を迎えに来たウィンの妻から名前を聞かれたキティは、規則で教えられないと答える。
__________

マークは病院で、そしてウィンも埠頭で自分を待っている・・・。

心を決めたキティは荷物を運びタクシーを呼び、ドアマンに、訪ねてくるはずの男性への言伝を頼む。

”あなたをいつまでも尊敬します、一生、忘れない・・・、特別な気持ちで愛し続けます・・・、私は今夜結婚します”と伝えたキティは、マークが待つ病院に向かう。


解説 評価 感想 ■

*(簡略ストー リー)
ニューヨーク
高級化粧品店に勤める26歳のキティ・フォイルは、恋人のマークに求婚される。
それを承諾したキティは、マークに”フィラデルフィアの男性”のことを聞かれ、彼のことは忘れたと答える。
ところが、帰宅したキティは、その場で待っていた”フィラデルフィアの男性”である良家の子息ウィンから愛を告げられる。
妻子があるウィンから南米に同行してほしいと言われたキティは、実は、今でも思いが変わっていなかった彼と旅立とうとする。
そんなキティは、ウィンの愛人としての生活か、マークとの幸せをとるかの選択を迫られるのだが・・・。
_________

コメディから人間ドラマまで幅広いジャンルの作品を手掛けるサム・ウッドが、ダルトン・トランボの巧みな脚本により、心揺れ動く女性の心理を描いたドラマ。

冒頭で紹介される地位向上による女性の生活感の変化、その象徴のような”アイリッシュ”である主人公が、迷い続けながらも、常に前向きで逞しく生きることを信条としている部分などを、強烈なインパクトで描くサム・ウッドの演出手腕が見所の作品。

そんな、20世紀初頭から禁酒法大恐慌時代を経て繁栄期に向かい、アメリカが第二次大戦に参戦する直前の時代背景をなどを考えながら観ると、実に興味深い作品でもある。

子供時代から現在まで持ち続ける”スノーグローブ”が映し出される度に、主人公の考えが語られて時代が変わるという設定や描写はファンタジックでもある。

ダンサー、そしてミュージカル・スタートして、フレッド・アステアと9作に共演し(アステアとはその後「ブロードウェイのバークレー夫妻」(1949)でも共演)、1930年代に大活躍したジンジャー・ロジャースは、シリアスな演技でもその才能を発揮し、心揺れ動き迷いながら逞しく生きる女性を演じ、第13回アカデミー賞で見事に主演女優賞を獲得した。
・ノミネート
作品・監督・脚本・録音賞

主人公を愛する良家の子息デニス・モーガン、同じく主人公を愛する平凡な医師ジェームズ・クレイグ、酒場の主人エドュアルド・シャネリ、主人公の父親アーネスト・コサート、ウィン(デニス・モーガン)の母親グラディス・クーパー、主人公を温かく見守る香水店のオーナー、オデット・ミルティル、主人公のルームメイト、メアリー・トリーンK・T・スティーヴンスなどが共演している。


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