1947年に発表された、ミッキー・スピレーンのハードボイルド小説”裁くのは俺だ”(I, theJury)の主人公”マイク・ハマー”が活躍するシリーズであり、1952年に発表された同名小説の映画化。 国家が絡む事件に巻き込まれた私立探偵が真相を暴こうとする姿を描く、製作、監督ロバート・アルドリッチ、主演ラルフ・ミーカー、アルバート・デッカー、クロリス・リーチマン他共演によるフィルム・ノワールの秀作。 |
■ スタッフ キャスト ■
監督:ロバート・アルドリッチ
製作:ロバート・アルドリッチ
原作:ミッキー・スピレーン
脚本:A・I・ベゼリデス
撮影:アーネスト・ラズロ
編集:マイケル・ルチアーノ
音楽:フランク・デ・ヴォール
出演
ラルフ・ミーカー:マイク・ハマー
アルバート・デッカー:G・E・ソバリン博士
ポール・スチュワート:カール・エヴェロ
マキシン・クーパー:ヴェルダ・ウィクマン
ウェズリー・アディ:パット・マーフィー警部
ギャビー・ロジャース:ガブリエル/リリー・カーヴァー
クロリス・リーチマン:クリスティーナ・ベイリー
フアノ・ヘルナンデデス:エディ・イエーガー
フォーチュニオ・ボナノヴァ:キャメロン・トラヴァーゴ
ニック・デニス:ニック
マリオン・カー:フライデー
ジャック・イーラム:チャーリー・マックス
ストローザー・マーティン:ハーヴェイ・ウォレス
ジャック・ランバート:シュガー・スモールハウス
アメリカ 映画
配給 ユナイテッド・アーティスツ
1955年製作 106分
公開
北米:1955年5月18日
日本:1955年10月11日
製作費 $410,000
北米興行収入 $880
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
私立探偵マイク・ハマー(ラルフ・ミーカー)は、夜の街道で、裸足のままヒッチハイクする女性クリスティーナ・ベイリー(クロリス・リーチマン)を車に乗せる。
ハマーは、検問で精神病院から女性が逃げたと知り、それがクリスティーナだと察するが、彼女が助けを求めたため、その場をやり過ごし先を急ぐ。
クリスティーナはハマーに、無理矢理病院に入れられたことを告げ、スタンドで店員に手紙の投函を頼む。
その後、突然2人は数人の男達に襲われ、クリスティーナは拷問にかけられ、気絶したハマーと共に車ごと崖下に落とされてしまう。
病院で意識を取り戻したハマーは、秘書兼恋人ヴェルダ・ウィクマン(マキシン・クーパー)とパット・マーフィー警部(ウェズリー・アディ)に、事件の一部始終を聞かれるものの、再び気を失ってしまう。 ハマーを、”自称”私立探偵で強請の常習だと決め付ける連邦検察局側の追求に閉口しながら、彼は、平凡な女性クリスティーナの死に政府が動きだしたことを疑問に思う。 マーフィー警部から、私立探偵と拳銃所持の免許停止を通達されたハマーは、クリスティーナが何らかの事件に巻き込まれていたと考える。 ハマーは、クリスティーナが以前住んでいたアパートを突き止め、彼女がリリー・カーヴァー(ギャビー・ロジャース)という女性と同居していたことが分かる。 クリスティーナが名前をもらったと言った、”クリスティーナ・ロセッティ”の詩集を見つけたハマーは、それを持ち帰る。 リリーの居場所を知り、彼女からクリスティーナのことを聞き出したハマーが帰宅すると、何者かから脅迫めいた電話がかかってくる。 翌朝、贈り物らしき車に爆弾が仕掛けられていることに気づいたハマーは、修理工ニック(ニック・デニス)の助けでそれを外す。 ヴェルダが、事件の関係者と見られる4人の男の名を突き止め、ハマーは、その中の生き残りハーヴェイ・ウォレス(ストローザー・マーティン)の自宅に向かい、彼の情報から、死亡したボクシング選手について探りを入れる。 ボクシング・ジムのマネージャー、エディ・イエーガー(フアノ・ヘルナンデデス)に会ったハマーは、チャーリー・マックス(ジャック・イーラム)とシュガー・スモールハウス(ジャック・ランバート)という男達の名前を聞き出す。 ハマーは、その2人が、街を牛耳るカール・エヴェロ(ポール・スチュワート)に雇われていることをマーフィー警部から知らされる。 エヴェロの屋敷に向かったハマーは、チャーリーとシュガーの脅しをかわし、エヴェロと話し合いを始める。 ハマーに口止め料を払おうとするエヴェロだったが、侮辱された彼はハマーを追い払う。 4人の中の一人、オペラ歌手キャメロン・トラヴァーゴ(フォーチュニオ・ボナノヴァ)の元に向かったハマーは、殺された男が何かを隠していたことを知る。 リリーの元に、怪しい男達が現れたことを知らされたハマーは、彼女を連れて自宅に向かう。 ニックの修理工場に寄ったハマーだったが、その後、彼は何者かに殺されてしまう。 ハマーはリリーを自分のアパートに残し、ニックの死を知りヴェルダの元に向かう。 ヴェルダから、G・E・ソベリン博士(アルバート・デッカー)という人物と知り合ったことを聞いたハマーは、クリスティーナがスタンドの店員に渡した手紙が、自分宛であったことを知り、オフィスでそれを確認する。 しかし、チャーリーとシュガーがハマーを待ち伏せして、彼を連れてある海辺の家に向かう。 ハマーは自白剤を打たれるものの、エヴェロが現れても、クリスティーナが言い残したという”、私を覚えてて”を繰り返すだけで、彼からは何も聞き出せない。 エヴェロの隙を見てシュガーを誘き出し、2人を殺したハマーは家を抜け出し車で逃走する。 自宅に戻ったハマーは、クリスティーナが所持していた”クリスティーナ・ロセッティ”の詩の一節をヒントに、彼女がスタンドで、何かを飲み込んだことに気づく。 ハマーに現金を要求する検死官から、クリスティーナが飲み込んでいた鍵を奪ったハマーは、それが”ハリウッド・アスレチック・クラブ”の物だと気づく。 現場に向かったハマーは、鍵が4人の男の内の一人のロッカーの物だということを突き止め、その中から閃光を放つ箱を見つける。 車で待っているはずの、リリーがいないことに気づいたハマーは、マーフィー警部の元に向かい、クリスティーナやリリー、そして4人組と彼が絡んでいる事件だということを追求する。 マーフィーはハマーのただれた手首を見て、ある言葉を彼に聞かせる。 自分が探し当てたものが、放射性物質だと悟ったハマーは鍵をマーフィーに渡し、ヴェルダに危険が迫っていることを知る。 自分に自白剤を打った人物が、ヴェルダの話していたソベリン博士だと知ったハマーは、海辺の家に向かう。 箱を手に入れていたソベリンは、中身の半分を要求するガブリエル(リリー)に射殺されてしまう。 ソベリンに箱を開けるなと言われたガブリエルだったが、彼女がそれを開けようとした時ハマーが現れる。 ガブリエルは、容赦なくハマーも銃撃して箱を開けてしまう。 箱の中からの高熱を発した閃光がガブリエルを襲い、彼女は炎に包まれてしまう。 一命を取り留めたハマーは、ヴェルダを助け海岸に逃れ、ソベリンの家は大破する。
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*(簡略ストー リー)
私立探偵マイク・ハマーは、夜の街道で、裸足のままヒッチハイクする女性クリスティーナを車に乗せる。
ハマーは検問で、クリスティーナが精神病院から抜け出したことを知るが、彼女が助けを求めたためその場をやり過ごす。
その後、2人は男達に襲われ、車ごと崖から落とされクリスティーナは死亡し、ハマーは病院に運ばれる。
回復したハマーは、クリスティーナの件で政府が動き出したことに疑問を感じ、彼女が何らかの事件に巻き込まれていたことを察する。
そして、平凡な女性クリスティーナのことを調べ始めたハマーは、原爆開発”マンハッタン計画”が絡んだ陰謀に気づくのだが・・・。
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後期のフィルム・ノワール作品で、公開時の不評から後年は傑作とまで言われるようになった。
事件の鍵を握る謎の女性の死を執拗に追う主人公が、警察権力やギャングの圧力に全く怯まず突き進む姿の描き方などは、いかにもロバート・アルドリッチらしい力強い演出が冴える。
当時、ややかたよった考えが蔓延していた、”核”の問題をテーマにした終盤では、突然SFホラーのような展開となり、異色のサスペンスとして娯楽性も高い。
主人公ラルフ・ミーカーの、女癖が悪く腕っ節は強い、世渡りのうまさで世間の荒波を闊歩する姿は、現実を忘れさせてくれる痛快ささえ感じ、やや陳腐に思えるストーリーも気にならない。
着こなしも良くスポーツカーなども似合う主人公は、差し詰め、少々柄の悪い”ジェームズ・ボンド”のようでもある。
足元と声だけで登場して、終盤ようやく顔が見えるという演出が心憎い、事件の黒幕である科学者アルバート・デッカー、落ち着いた物腰で、大物の雰囲気を出しているギャングのボス、ポール・スチュワート、政府の秘密捜査に関わる警部ウェズリー・アディ、主人公の秘書兼愛人役マキシン・クーパー、黒幕の加担者だったギャビー・ロジャース、事件の鍵を握る謎の女クロリス・リーチマンの20代の姿は貴重な映像で、殺される修理工ニック・デニス、おどおどした表情が実に彼らしいストローザー・マーティン、殺し屋ジャック・イーラムとジャック・ランバート、オペラ歌手フォーチュニオ・ボナノヴァ、フアノ・ヘルナンデデスなどが共演している。