第二次大戦におけるナチス・ドイツの戦犯裁判で党首脳陣の後に行われた裁判を題材にしたアビー・マン原作のテレビ・ドラマを基に製作された作品。 製作、監督スタンリー・クレイマー、スペンサー・トレイシー、バート・ランカスター、リチャード・ウィドマーク、モンゴメリー・クリフト、マクシミリアン・シェル、マレーネ・ディートリッヒ、ジュディ・ガーランド、ウィリアム・シャトナー他共演。 |
・マレーネ・ディートリッヒ / Marlene Dietrich / Pinterest
・ジュディ・ガーランド / Judy Garland / Pinterest
■ スタッフ キャスト ■
監督:スタンリー・クレイマー
製作:スタンリー・クレイマー
脚本:アビー・マン
編集:フレデリック・ノッドソン
撮影:アーネスト・ラズロ
美術・装置
ルドルフ・スターナッド
ジョージ・ミロ
衣装デザイン:ジーン・ルイス
音楽:アーネスト・ゴールド
出演
スペンサー・トレイシー:ダン・ヘイウッド判事
バート・ランカスター:エルンスト・ヤニング(被告)
リチャード・ウィドマーク:タッド・ローソン大佐
モンゴメリー・クリフト:ルドルフ・ピーターセン
マクシミリアン・シェル:ハンス・ロルフ弁護士
マレーネ・ディートリッヒ:ベルトールト夫人
ジュディ・ガーランド:イレーネ・ホフマン・ヴァルナー
エドワード・ビンズ:バーケット上院議員
ウィリアム・シャトナー:ハリソン・ベイヤーズ大尉
バーナー・クレンペラー:エミール・ハーン(被告)
トーベン・マイヤー:バーナー・ランペ(被告)
マーティン・ブラント:フレデリック・ホフシュテター(被告)
アラン・バクスター:マット・メリン将軍
ケネス・マッケンナ:ケネス・ノリス判事
レイ・ティール:カーティス・アイヴス判事
ジョセフ・バーナード:エイブ・ラドニッツ少佐
ベン・ライト:ホルベスタッド
ヴァージニア・クリスティン:ホルベスタッド夫人
ジョン・ウェングラフ:カール・ヴィーク博士
アメリカ 映画
配給 ユナイテッド・アーティスツ
1961年製作 179分
公開
北米:1961年12月19日
日本:1962年
製作費 $3,000,000
■ アカデミー賞 ■
第34回アカデミー賞
・受賞
主演男優賞(マクシミリアン・シェル)
脚色賞
・ノミネート
作品・監督
主演男優(スペンサー・トレイシー)
助演男優(モンゴメリー・クリフト)
助演女優(ジュディ・ガーランド)
編集・撮影(白黒)・美術(白黒)
衣装デザイン賞(白黒)
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
1948年。
かつて、ナチス党大会が開かれたニュールンベルグ。
アメリカ、メイン州の地方判事ダン・ヘイウッド(スペンサー・トレイシー)は、ニュールンベルグ軍事裁判の裁判長としてバーケット上院議員(エドワード・ビンズ)と共に現地入りする。
宿舎に到着したヘイウッドは、補佐のハリソン・ベイヤーズ大尉(ウィリアム・シャトナー)と屋敷の使用人ホルベスタッド夫妻(ベン・ライト/ヴァージニア・クリスティン)に迎えられる。
ヘイウッドは、瓦礫の山と化した街並みとは対照的な、豪華な元ナチス高官の屋敷を見て、自分には贅沢過ぎると漏らす。
裁判は、ナチス首脳部に次いで行われるものであり、世の中の関心は既に薄れていた。
そして裁判は始まり、ヘイウッドは被告人達に罪状認否を問う。
被告達は無罪を主張するが、エルンスト・ヤニング(バート・ランカスター)だけが、この法廷を認めずに異議を申し立てる。
それを、被告の弁護を担当する、ヤニングの教え子でもあるハンス・ロルフ弁護士(マクシミリアン・シェル)が代弁する。
検察側の冒頭陳述が始まり、アメリカの検事タッド・ローソン大佐(リチャード・ウィドマーク)は、被告達が、ナチスの法律改変に加担し、無実の人々を、虐待や死に追いやった罪を追求する。 それに対しロルフ弁護士は、ヤニングを例にとり、かつて、”ワイマール憲法”の起草にあたり、司法大臣として著名な法律学者だった彼が有罪ならば、ドイツ国民全員が罪 その後、休廷となり、ヘイウッドは、ヤニングの著書全てと”ワイマール憲法”のコピーをベイヤーズに手配させて、旧市街やナチス党大会が開かれた”ツェッペリン・フェルト”を見て回る。 法廷は再開され、ヤニングとは司法省の同僚で恩師でもあるカール・ヴィーク博士(ジョン・ウェングラフ)は、法律家としての意見を述べる。 ナチス政権以後、判事達の役目が国家を守ることになってしまい、客観的な事実は無視された。 政治犯への断種が義務付けられ、抵抗した者は辞職に追い込まれたが、ヤニングは、国家(ナチス)に従ったことをヴィーク博士は証言する。 ロルフ弁護士は、ヤニングに罪があるというヴィーク博士が、1934年の在任時にヒトラーに忠誠を誓ったことを追及する。 絶句したヴィーク博士に、宣誓を拒みヒトラーの暴挙を止められたはずだと詰め寄るロルフを見て、ローソンが尋問 の削除を要求する。 ローソンとロルフは激しい論争を続けるが、ヘイウッド判事がそれを制止して、ローソンの異議を却下し、ヴィーク博士は退席する。 その夜、屋敷の持ち主だったベルトールト夫人(マレーネ・ディートリッヒ)が荷物を取りに現れる。 夫人と顔を合わせたヘイウッドは、使用人ホルベスタッドに彼女のことを尋ね、二人に、ヒトラー政権下のドイツの様子を聞き始める。 途端に動揺し始めた夫妻は顔をしかめ、何も知らなかったことを強調する。 夫妻は、”アウトバーン”の整備など、ヒトラーが行ったこと全ては否定せず、ユダヤ人迫害などは、大抵の国民は知らなかったことをヘイウッドに語る。 翌日、ローソン検事は、ナチスが実行した断種の犠牲者である、ルドルフ・ピーターセン(モンゴメリー・クリフト)を証人として証言台に立たせる。 共産党員だったピーターセンは、ナチスに捕らえられて裁判にかけられた。 ピーターセンは、被告席にいるヤニングとフレデリック・ホフシュテター判事(マーティン・ブラント)の、署名入りの断種命令書を受け取った。 その後、逃亡したピーターセンは再び捕らえられ、病院に連行されて、断種手術を施されたことを証言する。 ロルフ弁護士の尋問が始まり、彼はピーターセンが精神的不適格者であることを証明しようとして、その断種が合法であることを主張する。 そしてロルフは、ピーターセンの知的障害を法廷で証明し、ローソンの反論を退け、ヘイウッドは休廷とする。 その夜、ヘイウッドは、クラブでベルトールト夫人と再会するが、彼女は現れたローソンを見て退席してしまう。 ローソンは、陸軍の将軍で処刑されたベルトールト夫人の夫を起訴したため、彼女の反感を買っていたのだった。 ピーターセンの件で落ち込むローソンは、酔って皮肉を交りにヘイウッドに愚痴をこぼす。 ピアノ・コンサートの会場で、再びベルトールト夫人に出くわしたヘイウッドは、彼女を送り自宅に招かれる。 ベルトールト夫人は、夫が政治的犠牲者だということをヘイウッドに伝える。 翌日ローソンは、ユダヤ人と関係したため、悲惨な生活を強いられた、イレーネ・ホフマン・ヴァルナー(ジュディ・ガーランド)を証人に立たせるために、ベルリンに向かう。 イレーネは危険を感じながらも、ローソンの説得に応じて出廷を決意し、ニュールンベルグに向かう。 証言台に立ったイレーネは、家主だったユダヤ人との親密な関係を追及した、被告席の検事エミール・ハーン(バーナー・クレンペラー)に、嘘の供述を強要されたことを述べる。 それを拒んだ結果ユダヤ人は死刑を宣告され、イレーネは偽証罪で2年間投獄されたのだが、その時の裁判長がヤニングだった。 その後、ローソンは自ら証言台に立ち、補佐のエイブ・ラドニッツ少佐(ジョセフ・バーナード)に尋問させる。 ”ダッハウ”や”ベルゲン・ベルゼン”強制収容所解放部隊にいたローソンは、悲惨な様子を収めたフィルムを映写し、600万人またはそれ以上のユダヤ人が虐殺された記録が存在したことを伝える。 ベルトールト夫人と親交を深めていったヘイウッドだったが、ローソンの記録フィルムを見て、何を信じていいのか心の整理がつかずにいた。 そんなヘイウッドに、自分や軍人としての誇りを持っていた夫も含め、殆どの人々は、ユダヤ人虐殺の事実はしらなかったと夫人は語る。 そして夫人は、生きていくためには忘れ去ることも大切であることを、ヘイウッドに伝える。 翌日ロルフ弁護士は、法廷で、国家の犯した汚点を嘆かわしく思うことを語った上で、ローソンが映写した映像は、被告人とは関係ないことを述べて激しく抗議する。 そしてロルフは、イレーネとユダヤ人のただならぬ関係を知る清掃婦を証言台に呼ぶのだが、ローソンは、彼女がナチス党員だったことを暴露する。 次にロルフは、イレーネを法廷に呼び、激しい追及を始めるが、度を超した彼の尋問を見たヤニングが、それを制止する。 沈黙を守っていたヤニングが、発言を求めたため、ヘイウッドは明朝まで休廷することを告げる。 ヤニングと面会したロルフは、広島や長崎に原爆を落とし、女や子供までを殺した国に屈服するのかを問うのだが、ヤニングはそれに意見しようとしない。 その頃、ソ連が西側を牽制し始める行動に出て、不穏な空気が漂い始める。 ヘイウッドは、裁判の行方が政治的駆け引きを左右すると、バーケット上院議員に忠告される。 翌日、ヤニングの”フェルデンシュタイン裁判”(ユダヤ人・ イレーネ事件)についての証言が始まる。 ヤニングは、当時の時代背景がヒトラーを生み、そして彼を求めた事実を語り、”フェルデンシュタイン裁判”の判決は、開廷する前から決まっていたことを告白する。 そして、強制収容所の事実を知らなかったと、都合よく言い張る自分達(被告)の罪も認める。 さらに、被告らの正体を知りながら黙認していた自分が、最も罪深き者だと言い切りヤニングは席を立つ。 罪を認めたヤニングに対し、尚も弁護する義務があることを告げたロルフは、当時、ヒトラーやナチスに同調または追従し、そして利用した者達も有罪なのかと問い質す。 そして、ヤニングが有罪ならば、全世界も有罪であると主張して、ロルフは発言を締めくくる。 その後ローソンは、マット・メリン准将(アラン・バクスター)から、被告達が有罪になれば、ソ連に奪われるかもしれないドイツを救えないと忠告される。 ローソンはメリンに、それならば先の大戦に何の意味があったのかと彼に問いかけて席を外す。 法廷に立ったローソンは、中東で始まった戦争や迫る冷戦が、法廷に影響を与えている事実を語りながら、判決を下す裁判長の、苦しい選択に重い意味があることを伝えて発言を終える。 被告らの最終弁論を終え、彼らは意志を変えぬまま判決が下るまで休廷される。 判決を前に、副判事カーティス・アイヴス(レイ・ティール)は、被告達を言及する意味があるかヘイウッドに疑問を投げかける。 しかしヘイウッドは、被告人の罪を問えないというアイブスの理由を、徹底的に追求しようとする。 判決を前にヘイウッドは、正義と真実、そして人ひとりの命の尊さを説く。 その後ヘイウッドは、全員に有罪の終身刑を言い渡す。 メリン将軍は判決に失望するが、ローソンは、ヘイウッドの真意を理解する。 アイブス副判事は、国益のために行動した被告人達をこの裁判で裁くべきではなく、後に歴史が証明された時に裁くべきだという、ヘイウッドとケネス・ノリス判事(ケネス・マッケンナ)が下した判決に反対意見を述べる。 帰国の仕度をしていたヘイウッドは、判決に対し、ドイツが歓迎していないことを補佐のベイヤーズ大尉から聞かされ、ベルトールト夫人に電話をするが、彼女の応答はなかった。 ヘイウッドの前に現れたロルフは、ヤニングが面会を希望していることを伝えると共に、被告達は5年後に釈放されるだろうと語る。 それに対しヘイウッドは、法廷でのロルフの論理の展開を褒め称え、被告が釈放されることもあり得るが、それが正しいとも言えず、誰にも決められないと淡々と答えを返す。 ヘイウッドの訪問を受けたヤニングは、自分の担当した裁判記録を、信頼できる彼に渡す。 そしてヤニングは、ヘイウッドの判決への批判の重圧を察ししつつ、自らはそれに敬意を表する。 さらにヤニングは、数百万の人々が犠牲になることを、自分は知らなかったことをヘイウッドに伝え、それを信じてもらおうとする。 しかしヘイウッドは、「最初に無実の者を死刑にした時、運命は決した」と言って、その場を立ち去る。 アメリカ支配区域で開かれた軍事裁判は、1949年7月14日に終了し、被告99人が禁固刑に処せられたが、その後、全員が釈放された。
...全てを見る(結末あり)
に問われることになると反論する。
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*(簡略ストー リー)
1948年、ニュールンベルグ。
軍事裁判の裁判長としてアメリカ、メイン州の地方判事ダン・ヘイウッドは、かつてナチス党大会が開かれた地に到着する。
裁判は、ナチス首脳部に次いで行われるものであり、世の中の関心は既に薄れていた。
裁判は始まり、ヘイウッドは、被告人達に罪状認否を問い、各人は無罪を主張するが、司法大臣として著名な法律学者であった、ヤニングだけが、この法廷を認めず異議を申し立てる。
被告の弁護を担当する、ヤニングの教え子ロルフ弁護士がそれを代弁する。
その後、検察側の冒頭陳述が始まり、アメリカの検事ローソン大佐は、被告達がナチスの法律改変に加担し、無実の人々を虐待や死に追いやった罪を追求する。
それに対するロルフは、著名な法律家ヤニングが有罪ならば、ドイツ国民全員が罪に問われることになると反論し、双方の意見は平行緯線をたどる・・・。
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戦勝国によって敗戦国を裁くことの妥当性や、祖国のために戦った結果を罪として問えるかなど、戦争裁判の矛盾点を、社会派のスタンリー・クレイマーが、鋭い視点で問題提起した傑作ドラマ。
超豪華オールキャストによる大作で、主な登場人物7人の演技は、それぞれが個性を生かし見応え十分。
冒頭とラスト、そして主人公がナチス党大会が開かれた”ツェッペリン・フェルト”を見学した際に流れる
ドイツの軍歌である”Wenn wir marschieren”が非常に印象に残る。
第34回アカデミー賞では作品賞以下10部門にノミネートされ、主演男優賞(マクシミリアン・シェル)と脚色賞を受賞した。
・ノミネート
作品・監督
主演男優(スペンサー・トレイシー)
助演男優(モンゴメリー・クリフト)
助演女優(ジュディ・ガーランド)
編集・撮影(白黒)・美術(白黒)・衣装デザイン賞(白黒)
主演のスペンサー・トレイシーは、難しい立場で裁判の意義をかみしめながら、淡々とそれを進行させる裁判長を見事に演じ、8回目となるアカデミー主演賞候補となった。
*(受賞2回、ノミネート9回/生涯)
当初、裁判自体を否定するバート・ランカスターは、元司法大臣としての揺れ動く心と苦悩がこのドラマのキーポイントだけに、彼の圧倒的存在感が印象に残る。
*この役は当初、ローレンス・オリビエが予定されていた。
「若き獅子たち」(1958)でハリウッド進出を果たし、22作目の出演となったマクシミリアン・シェルは確かに素晴しい演技ではあったが、5番目の配役順でありながらアカデミー主演賞を受賞したために、そのノミネートの基準が問題にもなった。
*この役はマーロン・ブランドが欲しがった役でもある。
若い彼とがっぷり四つに組む検事役のリチャード・ウィドマーク、ナチスに精通する、将軍の未亡人マレーネ・ディートリッヒなど、これほど多数のスターが平均的に好演している作品も珍しい。
共演陣の中でも、検察側の証人として登場する、モンゴメリー・クリフトとジュディ・ガーランドの二人は、共にアカデミー助演賞候補になり、その悲しい過去から、異常に近い精神状態に陥る証人を見事に演じている。
二人は数年後には、若くしてこの世を去ることになるが、晩年の名演と言っていい。
初々しいウィリアム・シャトナーも、判事補佐のアメリカ軍将校で出演している。
政治的視点から裁判を見つめる上院議員エドワード・ビンズと将軍アラン・バクスター、副判事のレイ・ティールとケネス・マッケンナ、被告バーナー・クレンペラー、トーベン・マイヤー、マーティン・ブラント、検事補佐ジョセフ・バーナード、判事の宿泊先使用人夫妻ベン・ライト、ヴァージニア・クリスティン、証人の法律学者ジョン・ウェングラフなどが共演している。