1939年に発表された、ダルトン・トランボの反戦小説”Johnny Got His Gun”を基に製作された作品。 戦場で両手両足他を失いながら延命処置された兵士の苦悩を描く、監督、脚本ダルトン・トランボ、主演ティモシー・ボトムズ、キャシー・フィールズ、ジェイソン・ロバーズ、マーシャ・ハント、ドナルド・サザーランド他共演の反戦ドラマ。 |
・ドラマ
■ スタッフ キャスト ■
監督:ダルトン・トランボ
製作:ブルース・キャンベル
原作:ダルトン・トランボ”Johnny Got His Gun”
脚本
ダルトン・トランボ
ルイス・ブニュエル(クレジットなし)
撮影:ジュールス・ブレンナー
編集:ミリー・ムーア
音楽:ジェリー・フィールディング
出演
ジョー・ボナム:ティモシー・ボトムズ
カリーン・バークマン:キャシー・フィールズ
ボナム夫人:マーシャ・ハント
ボナム:ジェイソン・ロバーズ
キリスト:ドナルド・サザーランド
スウェーデン兵士:デヴィッド・ソウル
赤毛の兵士:アンソニー・ギアリー
マイク・バークマン:チャールズ・マッグロー
看護師:ダイアン・ヴァーシ
ティラリー軍医:エドワード・フランツ
ジョー・ボナム(少年期):ケリー・マクレーン
アメリカ 映画
配給 Cinemation Industries
1971年製作 111分
公開
北米:1971年8月4日
日本:1973年4月7日
製作費 $80,000
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
第一次大戦下。
脳髄と生殖器だけが無事だった負傷兵は、心臓と呼吸中枢は機能し生存していた。
軍医ティラリー大佐(エドワード・フランツ)は、その重傷患者”身元不明負傷兵47番”を延命させ、他の負傷兵を救うための研究に役立てることを考える。
”負傷兵47番”ジョー・ボナム(ティモシー・ボトムズ)は、意識の中で自分がどこにいるかを考え、恋人カリーン・バークマン(キャシー・フィールズ)のことを想う。
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いずれは徴兵されることが分かっていたジョーは、国に奉仕するべきだと考えて志願したことをカリーンに話す。
楽観的なジョーと違い、カリーンは彼の身を案ずる。 帰宅したカリーンの父親マイクは、ジョーに寄り添う彼女に部屋に向かうよう指示する。 カリーンが恐がっていることを察しているマイクは、娘の側に行ってあげるようジョーに伝える。 準備を整えたカリーンはジョーを部屋に迎え入れ、そして二人は愛し合う。 翌日、駅でジョーを見送ろうとするカリーンは、行かないでほしいと伝えながら、神に祈り別れを告げる。 戦場に向かったジョーは前線に送られ、爆撃を受ける。 ジョーの様子を見にきたティラリーは、彼をサンクルールの基地病院に搬送するよう指示する。 パン工場で働くジョーは、母(マーシャ・ハント)からの電話を受け、父(ジェイソン・ロバーズ)の死を知らされて帰宅する。 移送されたジョーは、ティラリーの診察を受けている際、両腕を切断されたことに気づき憤慨するものの、その気持ちを誰にも伝えられない。 ティラリーは、目立たない立入禁止の収納庫に患者を移す。 戦場に向かう列車を待っていたジョーは、キリスト(ドナルド・サザーランド)の下で賭けをしたことを思い出す。 両脚も切断されたことに気づいたジョーは、諦めながら自分が何をされているのかを考える。 ロサンゼルスに移る前にコロラドで暮らしていた少年時代、そして、父が大切にしていた釣り竿のことなどをジョーは思い出す。 看護するだけの状態になったティラリーは、総司令部に向うことを伝えて後を任せる。 管で栄養などを補給されたジョーは、顔面も大きく損傷していることに気づき動揺し、それにも拘らず、まだ生きていることに驚き嘆く。 ジョーは、意識の中でキリストに会い、生きているだけの肉の塊である状況を知らせる。 今話していることは夢であり、自分は実在しないとキリストに言われたジョーはショックを受ける。 翌朝、現れた看護師が窓を開けたため、何かを感じたジョーは、陽の光を浴びていることに気づく。 昼と夜、時間、月日などを考えたジョーは、戦場で死体の埋葬をさせられ、その直後に爆撃を受けたことを思い出す。 父がサーカスの客寄せの真似をしたことを思い出すジョーは、自分が見世物にされる様子を想像する。 自分に付き添う看護師(ダイアン・ヴァーシ)の優しさを感じたジョーは、カリーンを想うものの彼女は去って行く。 看護師は、意識のあるジョーを気の毒に思い優しく接する。 父と山中を旅していたたジョーは、借りた釣り竿をなくしてしまったことを伝える。 大切にしていた釣り竿だったが、父はジョーを叱らずに旅を楽しもうと語りかけ、息子を抱き寄せる。 雪の降る夜、出かけようとした看護師は、ジョーの胸に”メリー・クリスマス”と綴る。 今日がクリスマスだと知ったジョーは、日付を数えられるようになったために感激する。 パン工場でクリスマスを祝ったことを思い出したジョーは、亡くなった父に再会して母のことなどを聞かれる。 最近、母には会ってないと答えたジョーは、釣りに行くと言う父と別れる。 カリーンの声が聴こえ、自分を愛していないと言って遠ざかるために、ジョーは彼女を見つけられなくなる。 再び現れた父は、モールス信号を使って意思を伝えるようジョーに助言する。 頭を動かし信号を送るジョーの姿を不思議に思う看護師は、それが何かを理解できない。 看護師は軍医を呼ぶが、ジョーは指示書に従い鎮静剤を打たれただけだった。 痙攣とは思えないと言って看護師は意見するが、将軍となっていたティラリーに報告するよう軍医に指示される。 思いが伝えられないジョーは苦しむ。 その後も頭を動かし続けるジョーの様子を見た看護師は、責任者やティラリーらを呼ぶ。 それがモールス信号だと指摘する通信兵は、”SOS”、”助けて”と患者が言っていることを責任者に伝える。 大脳は停止しているのではないかと責任者に聞かれたティラリーは、何も答えられずに部屋を出る。 患者が何を望むか聞くようにと責任者に指示された通信兵は、額に指を当てて信号を送る。 費用が掛かることは承知で外に出たいことを伝えたジョーは、自分を見世物にするようにと伝える。 今は動かせる状態ではないと伝えるよう指示した責任者だったが、それが叶わないなら殺してくれとジョーは答える。 動揺しているのだろうと考える責任者は患者の名前を聞くが、ジョーは殺してほしいと繰り返し伝える。 鎮静剤を打ち名前を聞き出すよう指示した責任者は、その場の者達にこの件は他言無用だと伝える。 新たな指令を待つと語る責任者は、”殺せ”と言うだけの患者にかける言葉がないか従軍牧師に問う。 患者のためには祈るが、この場で行われていることは信仰に反する行為だと言って牧師は責任者を批判する。 それでも聖職者かと責任者に言われた牧師は、この患者は神ではなく、軍が作ったと言い残してその場を去る。 鎮静剤を打つよう指示した責任者らも立ち去る。 一人残った看護師に、ジョーは殺してほしいことを伝えようとする。 神の御心に背くことに対し許しを請う看護師は、二度と罪を犯さないことを誓い、ジョーの呼吸管を鉗子で塞ぐ。 ジョーは看護師に感謝するが、部屋に入って来た責任者が鉗子を外し、看護師に出るよう命ずる。 責任者はジョーに鎮静剤を打ち、部屋を暗くしてその場を去る。 自分で死ぬこともできないジョーは、このままではいる気にもなれず、何かしなけらばならないと考える。 意識が薄れるジョーは、”SOS”、”助けて”と唱え続ける。
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*(簡略ストー リー)
第一次大戦下。
志願兵ジョー・ボナムは戦場で負傷して両手、両足を失いながら、脳髄と生殖器、心臓と呼吸中枢が機能していたため生存していた。
軍医のティラリー大佐は、他の負傷兵を救うための研究に役立てることを考え、”身元不明負傷兵47番”(ジョー)を延命させる。
意識の中で自分がどのような状況なのかが分からなかったジョーは、両手、両足や人間としての機能が失われたことを知る。
家族や恋人のことを考えながらジョーはもがき苦しみ、その思いを誰かに伝えようとするのだが・・・。
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戦前からハリウッドのトップ脚本家として活躍し、その後”赤狩り”の標的となる波乱の人生を歩んだダルトン・トランボが、自らの原作を演出した唯一の監督作品。
その反戦的内容から原作は絶版となり、後にダルトン・トランボは共産主義者とみなされ、その発表から32年後のベトナム戦争の最中に製作、公開された。
原題の”Johnny Got His Gun”は、軍歌”Over There”で使われる”Johnny Get Your Gun”が兵士募集の宣伝文句となっていたことを痛烈に皮肉っている。
余りにも悲劇的な現実をモノクロで、喜びも悲しみもある主人公の思い出場面は鮮やかなカラーで描写し、その対比により戦争の悲惨さを訴える見事な演出となっている。
アカデミー賞では無視された本作は、カンヌ国際映画祭ではパルムドールは逃すものの、審査員特別グランプリ及び”FIPRESCI Prize”をダルトン・トランボが受賞した。
戦場で人間としての機能をほとんど失う青年を好演するティモシー・ボトムズ、その恋人キャシー・フィールズ、主人公の両親ジェイソン・ロバーズとマーシャ・ハント、戦場でキリストと呼ばれる男ドナルド・サザーランド、兵士デヴィッド・ソウル、アンソニー・ギアリー、カリーン(キャシー・フィールズ)の父親チャールズ・マッグロー、看護師ダイアン・ヴァーシ、軍医エドワード・フランツなどが共演している。