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巌窟の野獣 Jamaica Inn (1939)

1936年に発表された、ダフネ・デュ・モーリアの小説”Jamaica Inn”を基に製作された作品。
船を難破させて積み荷を奪う略奪団とその黒幕の悪事を描く、監督アルフレッド・ヒッチコック、製作、主演チャールズ・ロートンモーリン・オハラレスリー・バンクスロバート・ニュートン共演の犯罪ドラマ。

アカデミー賞 ■ ストーリー ■ 解説


ドラマ(サスペンス/犯罪)

アルフレッド・ヒッチコック Alfred Hitchcock 作品一覧
アルフレッド・ヒッチコック / Alfred Hitchcock / Pinterest


スタッフ キャスト ■
監督:アルフレッド・ヒッチコック

製作
チャールズ・ロートン

エリッヒ・ポマー
原作:ダフネ・デュ・モーリアJamaica Inn
脚本
シドニー・ギリアット

ジョーン・ハリソン
アルマ・レヴィル
J・B・プリーストリー
撮影
ハリー・ストラドリング

バーナード・ノールズ
編集:ロバート・ハマー
音楽:エリック・フェンビー

出演
ハンフリー・ペンガラン卿:チャールズ・ロートン

メアリー・イエレン:モーリン・オハラ
ジョス・メルリン:レスリー・バンクス
ジェームズ”ジェム”トラハーン:ロバート・ニュートン
ペイシェンス・メルリン:マリー・ネイ
チャドウィック:ホーレス・ホッジス
ハリー:エムリン・ウィリアムズ

イギリス 映画
配給
Mayflower Pictures(イギリス)
パラマウント・ピクチャーズ(北米)
1939年製作 108分(イギリス) 北米98分
公開
イギリス:1939年5月12日
北米:1939年10月13日
日本:1952年7月25日


*詳細な内容、結末が記載されています。
ストーリー ■
1820年代、イングランドコーンウォール
難破船を岩場に引き込み積み荷を強奪する一団は、嵐の中でたどり着いた船を襲い船員を殺す。

一団のボスで隠れ家である宿屋”ジャマイカ・イン”の主人ジョス・メルリン(レスリー・バンクス)は、奪った積荷を運ぶよう指示する。

母を亡くしたメアリー・イエレン(モーリン・オハラ)はアイルランドを離れ、叔母ペイシェンス(マリー・ネイ)が経営するジャマイカ・インに向かう。

メアリーが乗っていた馬車の御者は、悪い噂のあるジャマイカ・インに寄ろうともせず、速度を上げて通り過ぎて止まる。

御者を非難するメアリーだったが、領主のハンフリー・ペンガラン卿(チャールズ・ロートン)に頼めと言われ、荷物を降ろされて置き去りにされる。
...全てを見る(結末あり)

ペンガランの屋敷に向かったメアリーは、その美しさに驚く彼に歓迎される。

領主で治安判事だと言うペンガランは、ジャマイカ・インに向かおうとするメアリーに、若い女性が行く場所ではないことを伝える。

叔母がジャマイカ・インにいるとメアリーから言われたペンガランは、彼女を送ることにして馬を用意させる。

ジャマイカ・インにメアリーを送ったペンガランは、何かあったら連絡するようにと伝えてその場を去る。

銃を手にして現れたジョスは、メアリーが妻のペイシェンスを頼って来たことを知る。

メアリーは、粗野なジョスが叔父だと気づき、ペイシェンスと再会した彼女は、母が3週間前に亡くなったことを伝える。

ペイシェンスに荷物を運ばせようとするジョスの態度を、メアリーは気にする。

仲間がいる奥の部屋に向かったジョスは、船の積み荷を横流ししている者がいると言われ、一団に加わって2か月しか経っていないジェームズ”ジェム”トラハーン(ロバート・ニュートン)を疑う。

ペイシェンスに呼ばれたジョスは、メアリーを送って来たペンガランが、ここえ来た理由を尋ねたらしいということを伝える。

動揺するペイシェンスと共に、メアリーからペンガランに会った理由を聞いたジョスは、酒を持って二階の部屋に向かう。

実は略奪団の黒幕だったペンガランは、今夜の成果では不足だとジョスに伝え、何か気づく前にメアリーを追い払う方法を考えようとする。

騒いでいる手下達の元に戻ったジョスは、トラハーンが金貨を隠し持っていたことを知る。

奪った物を自分一人でさばけるはずがないないと言われたジョスは、トラハーンが余計なことを言う前に殴り倒す。

ペンガランの元に向かったジョスは、金貨を持っていたトラハーンを追い出すよう指示される。

口封じにトラハーンを吊るして殺すことを伝えたジョスは、ハリー(エムリン・ウィリアムズ)にそれを実行するよう伝える。

男達のいる上の部屋で食事をして眠ろうとしていたメアリーは、騒ぎが気になり床板の隙間から階下の様子を探る。

トラハーンが吊るされるのを目撃したメアリーは、男達がその場を離れた隙に、その場にあったナイフで梁にかけられたロープを切る。

メアリーはトラハーンを逃がし、ペイシェンスの部屋に向かうものの、その場にジョスがいたために驚く。

ハリーに呼ばれたジョスは、トラハーンが逃げたことを知らされる。

メアリーが逃がしたことに気づいたペイシェンスは、彼女を裏口に向かわせる。

外に出たメアリーは、屋根に隠れていたトラハーンに引き上げられ、二人は隠れる場所がある海に向かおうとする。

トラハーンとメアリーは身を隠し、ジョスは、ハリーを港に向かわせて、他の者達にも探し出すよう指示を出す。

屋敷に戻ったペンガランは、肉屋やパン屋の請求書のことを報告する執事のチャドウィック(ホーレス・ホッジス)を怒鳴る。

チャドウィックに謝罪したペンガランは、ジョスが来たことに気づく。

ペンガランはチャドウィックを下がらせ、メアリーがトラハーンを逃がしたことをジョスから知らされる。

トラハーンが密告するはずなら、まずこの場に来ると考えるペンガランは、騒ぎを大きくしないようと言って、二度とこの場に来ないようジョスに警告する。

翌朝、岩場の洞窟で目覚めたメアリーは、傍らで眠るトラハーンを見て怖くなり、その場にあったボートで逃げようとする。

それに気づいたトラハーンはメアリーを引き留めるが、略奪と人殺しをしている仲間だと言われ彼女から非難される。

ボートが沖に流されてしまい、それに気づいたハリーらは、トラハーンとメアリーが洞窟にいると考える。

今後のことについて話していたトラハーンとメアリーは、ハリーらに見つかってしまう。

ロープで降りて来た男を叩きのめしたトラハーンは、ハリーらが下りてくる前にメアリーと共に海に飛び込もうとする。

メアリーに服を脱がせたトラハーンは、彼女と共に泳ぎ始めるが、ボートの男達に気づき岩陰に隠れる。

見つからずに済んだトラハーンとメアリーは陸に上がり、ペンガランの屋敷に向かう。

小作人の納税や要求などに対応していたペンガランは、現れたメアリーとトラハーンを招き入れて、暖炉で体を温めさせる。

男がトラハーンだと知ったペンガランは、ジャマイカ・インが人殺しの巣窟だと言うメアリーの話を聞く。

ペイシェンスを助けてほしいと言われたペンガランは、メアリーを着替えさせてトラハーンに食事を与える。

話は後で聞くと言われたトラハーンは、ジャマイカ・インで行われている悪事を伝え、自分が警察官である証明書をペンガランに見せる。

態度を変えたペンガランは、チャドウィックに食事と着替えを書斎に運ばせる。

海軍中尉だと言うトラハーンは、内務省の命令でジャマイカ・インを調査していることをペンガランに伝える。

強奪や密売どころか、船を難破させて船員を殺していると言われたペンガランは、ジョスが一味のボスだと知らされる。

調査結果をまだ報告していないことを確認したペンガランは、トラハーンから黒幕がいるとも言われる。

それが誰であるかをペイシェンスや手下達も知らないが、トラハーンは、必ず捕まえると言って自信を見せる。

嵐が近づき、今夜も難破船が襲われると言うトラハーンは、黒幕も現れると確信し、先回りする考えのペンガランと共にジャマイカ・インに向かうことになる。

ペンガランは、守備隊長への救援の手紙を書く。

着替えたメアリーは書斎に入ろうとして、トラハーンが警官であり、ジョスが逮捕されるという話を聞いてしまう。

この話をメアリーには内緒にすることを、トラハーンはペンガランに確認して屋敷を出る。

ペイシェンスの元に向かったメアリーは、トラハーンが警官だったこと知らせ、彼とペンガランが来る前に叔母を逃がそうとする。

人殺しであっても夫のジョスを見捨てられないと、ペイシェンスはメアリーに伝える。

戻って来たジョスはメアリーがいたために驚き、トラハーンが警官だと知らされる。

そこに現れたトラハーンに銃を奪われたジョスは、家宅捜索をするとペンガランに言われる。

メアリーは警官の身分を隠していたトラハーンを非難し、自分に全てを任せるようにとペンガランに言われる。

黒幕が使う部屋を調べたトラハーンは、証拠となるものを見つけて、ペンガランに裏口を開けさせる。

ペンガランが戻り、メアリーとペイシェンスを上の部屋に連れて行くようトラハーンに指示する。

屋敷で船の船長に食事をさせて情報を掴んでいたペンガランは、ジョスに計画を実行するよう指示し、積み荷が黄金だと伝える。

当局が動き出しているので危険を避けるために、休暇を取り客船で旅立つと言うペンガランは、金目の物を運びフランスで売りさばくことをジョスに話す。

ペイシェンスも共犯だとされたことに納得いかないメアリーは、トラハーンに意見するが、叔母と共に部屋に閉じ込められる。

黒幕の到着を待っトラハーンは、ペンガランから逮捕状を渡され、その黒幕を教えるようジョスに迫る。

階下で声が聞こえたため、守備隊が到着したと思ったトラハーンだったが、それはハリーらだった。

トラハーンは発砲するものの捕えられ、仲間がいることを知ったハリーは、ジョスに銃を向けられたペンガランが現れたために驚く。

ジョスはトラハーンが警官だと知らせ、自分達を捕えに来たことをハリーに伝える。

ハリーらはトラハーンとペンガランを殺そうとするが、捜査が入るこの場ではまずいと言うジョスは、難破船で始末するようにと指示する。

ジョスの後ろには黒幕がいると言うトラハーンを黙らせたハリーは、彼とペンガランを椅子に縛って拘束する。

ペンガランをロープで縛ったジョスは、ペイシェンスに見張らせると言って銃を渡し、メアリーを連れて手下達と共にその場を去ろうとする。

ジョスにメアリーの安全を保証させたペンガランは、彼らが去った後で、緩められていたロープをほどく。

ペンガランは、ジョスとは深い仲だと言ってペイシェンスの持つ空の銃に弾を込めて、トラハーンを見張っているように指示し、守備隊も来ないことを知らせてその場を去る。

トラハーンからロープをほどくように言われたペイシェンスは、多くの命が悪党に奪われることを知らさる。

ジョスの命は保証すると言われたペイシェンスは、トラハーンのロープを切る。

現れた馬車を止めたトラハーンは、守備隊の駐屯地に向かう。

ジョスらは海岸で難破しそうな船を待ち、隙を見てその場を逃れたメアリーは、灯りで船に合図をしようとする。

それを見張りに阻止されたメアリーは、灯りを落してしまう。

見張りを崖から突き落としたメアリーは、火が燃え移った毛布を掲げる。

明かりを確認した船は進路を変えて沖に向うが、メアリーは捕らえられる。

ハリーらはメアリーに襲いかかろうとするが、ジョスがそれを阻止して馬車で走り去る。

しかし、ジョスはハリーに銃撃され、メアリーは彼を支えながら馬車でその場を離れる。

ペンガランから仕事で留守にすると言われたチャドウィックは、馬車で旅立った主人の言動がおかしいことに気づいていた。

ジャマイカ・インに着いたメアリーは、ジョスが撃たれたことペイシェンスに伝えて、二人で彼を介抱する。

トラハーンを逃がしたことを知ったメアリーは、彼が自分達を逃がしてくれると言うペイシェンスが、ジョスと人生をやり直すという考えを聞く。

黒幕の存在をメアリーに知らせようとしたペイシェンスだったが、何者かに撃たれてしまう。

叔母の死にショックを受けるメアリーは、水を飲ませたジョスも息を引き取ったために叫び声をあげる。

現れたペンガランは、自分の名前を出そうとしたペイシェンスを撃ったことをメアリーに伝える。

騒ごうとするメアリーに、猿ぐつわで声を出させないようにして手も縛ったペンガランは、彼女を自分のものにしようとする。

ペイシェンスの死を悲しむメアリーを連れてその場を去るペンガランを、戻って来たハリーは目撃する。

トラハーンが逃げたことと、ジョスとペイシェンスが死んでいることを知ったハリーは、動揺して逃げようとする。

ハリーらは、その場に押入って来たトラハーンと守備隊に捕えられる。

メアリーがペンガランに連れ去られたことを知ったトラハーンは二人を追う。

港で客船に乗船していたペンガランは、トラハーンらが現れたことに気づき、銃を手にしてメアリーを連れて甲板に向かう。

守備隊の兵士はペンガランを銃で狙うが、彼の精神的な異常に気づいていたメアリーは、ペンガランが病気だと叫ぶ。

トラハーンに銃を向けられたペンガランは、マストに登ってしまう。

人々の前で、”偉大な時代は終わった、道を開けろ”と叫びながらペンガランは身を投げる。

メアリーはその光景に目を背け、トラハーンに抱き寄せられながら船を降りる。

その場に現れたチャドウィックは、主人が正気を失いかけていたことに気づいていたために呆然とする。


解説 評価 感想 ■

*(簡略ストー リー)
1820年代、イングランドコーンウォール
船を難破させて積み荷を奪い船員も皆殺しにする略奪団のボス、ジョスは、宿屋ジャマイカ・インを隠れ家にしていた。
母を亡くしてアイルランドを離れ、ジャマイカ・インを経営する叔母ペイシェンスを訪ねようとするメアリーは、途中で馬車を降ろされてしまう。
領主で治安判事のハンフリー・ペンガラン卿の屋敷に向い助けを求めたメアリーは、彼と共にジャマイカ・インに向かう。
ペイシェンスに再会したメアリーは、粗野な夫ジョスに虐げられやつれた叔母の様子を気にする。
眠ろうとしたメアリーだったが、その場に集まっていた男達が、ジョスをボスとした略奪団だと気づく。
裏切りを疑われ殺されそうになったトラハーンを助けたメアリーは、彼と共にその場から逃げる。
ところが、ジョスに指示を出し略奪を指揮する黒幕は、実はペンガランであった・・・。
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アルフレッド・ヒッチコックハリウッド進出前に撮った、イギリスでの最後の作品。

32年後に「フレンジー」(1972)をイギリスで撮るまでヒッチコックはアメリカでの活動を続けることになる。

そのヒッチコックが、アメリカで最初に撮った「レベッカ」(1940)や「」(1963)の原作者でもある、ダフネ・デュ・モーリアの小説”Jamaica Inn”を基に製作された作品。

サスペンスとも犯罪映画とも言える作品で、そのテーマが微妙に中途半端でもあり、製作も兼ねる主人公の領主であり治安判事を演ずるチャールズ・ロートンの怪演だけが印象に残る内容とも言える。

嵐の海の岩場の様子などを映し出す映像などは迫力あるが、既に作品内で様々なアイデアと工夫を見せていた、ヒッチコックらしい映像感覚などは殆どない。

ヒロイン役のモーリン・オハラは、アイルランド人らしい気性の荒い女性を演じ、撮影当時まだ10代とは思えない貫録さえ感じる演技を見せる。

略奪団を率いるジャマイカ・インの主人レスリー・バンクス、その妻のマリー・ネイ、略奪団を調査する警官だったロバート・ニュートン、領主の異常さに気づく執事ホーレス・ホッジス、略奪団の一員エムリン・ウィリアムズなどが共演している。


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