フランク・キャプラお得意の風刺に洒落たロマンスを加えたスクリューボール・コメディの名作にしてハリウッド映画史上に残る傑作。 主演のクラーク・ゲイブル、クローデット・コルベール他、アカデミー作品賞他主要部門を受賞した。 |
・クラーク・ゲーブル / Clark Gable / Pinterest
■ スタッフ キャスト ■
監督:フランク・キャプラ
製作
フランク・キャプラ
ハリー・コーン
原作:サミュエル・ホプキンス・アダムス
脚色
ロバート・リスキン
撮影:ジョセフ・ウォーカー
編集:ジーン・ハブリック
音楽:ルイス・シルヴァース
出演
クラーク・ゲイブル:ピーター・ウォーン
クローデット・コルベール:エリー/エレン・アンドリュース
ウォルター・コノリー:アレクサンダー・アンドリュース
チャールズ・C・ウィルソン:ゴードン編集長
ロスコー・カーンズ:オスカー・シェプリー
ジェームソン・トーマス:キング・ウェストリー
ウォード・ボンド:バスの運転手
アメリカ 映画
配給 コロンビア・ピクチャーズ
1934年製作 105分
公開
北米:1934年2月22日
日本:1934年8月29日
製作費 $325,000
北米興行収入 $2,000,000
■ アカデミー賞 ■
第7回アカデミー賞
受賞
作品・監督
主演男優(クラーク・ゲイブル)
主演女優(クローデット・コルベール)
脚色賞
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
大銀行家アレクサンダー・アンドリュース(ウォルター・コノリー)の娘エリー(クローデット・コルベール)は、父の許可なく飛行家キング・ウェストリー(ジェームスン・トーマス)と結婚すると言い出し、止めようとする父を振り切り失踪してしまう。
新聞記者ピーター・ウォーン(クラーク・ゲイブル)は、編集長ゴードン(チャールズ・C・ウィルソン)と喧嘩をしてクビになる。
マイアミからニューヨークに向かう乗り合いバスの席のことで、ピーターは運転手(ウォード・ボンド)と言い争いになってしまう。
そこにエリーが現れ、ピーターの席に座ってしまい、再び揉め事が始まる。
運転手がエリーに加勢したため、ピーターは二人掛けの席に強引に座ってしまう。 横柄なピーターと、勝気なエリーはいきなり衝突するが、空席もなく仕方なく二人は同席する。 最初のバス停留所で、エリーの鞄が奪われたのを見かけたピーターは、犯人を追うが取り逃がし、それを彼女に伝える。 エリーが困り果てたため、ピーターは運転手に事情を説明し、バス会社に弁償させようとするが、彼女は身元がばれるのを恐れそれを制止する。 そしてバスは出発するが、疲れていたエリーは、ピーターの腕の中で眠ってしまう。 目が覚めたエリーは、気まずい思いをしながらホテルに向かい、出発に遅れた彼女は、置き去りになってしまう。 ピーターも残っていたのを不審に思ったエリーは、新聞で自分の身元を知った彼から、家に帰るよう言われる。 ウェストリーが、女を手玉に取る最低な男だと知っているピーターは、それでもニューヨークに向かおうとするエリーに呆れてしまう。 父アンドリュースが、賞金を出すと思ったエリーは、口止め料として、自分がそれをピーターに払う約束をする。 ピーターは、何でも金で解決できると思っている、わがまま娘に愛想を尽かし、その場を立ち去り、ゴードン編集長に”特ダネあり”の電報を打つ。 バスに戻ったエリーは、ピーターとは同席はせずに、居合わせたオスカー・シェプリー(ロスコー・カーンズ)の横に座る。 つまらぬ話に嫌気がさしているエリーを、妻だと偽り、ピーターはシェプリーを追い払う。 感謝するエリーにも、ピーターは冷たい態度で接していたが、豪雨で橋を渡れなくなり、バスは付近にあるモーテルに向かう。 その晩は、モーテルに泊まることになったピーターとエリーは相部屋になる。 下心の全くないピーターは紳士的に振る舞い、自分が記者であることを明かし、独占記事を書くことを条件に、エリーをウェストリーに会わせる約束をする。 そしてピーターは、ベッドの間に毛布で”ジェリコの壁”を作るが、エリーは不安な一夜を過ごす。 翌朝、既に起きて朝食の準備を始めたピーターは、寝ているエリーを起し、堅苦しい生活に飽きていた彼女は、素朴な朝食を楽しむ。 アンドリュースが雇った探偵が、ピーターの部屋に現れ、二人は夫婦喧嘩を装いその場を切り抜ける。 エリーの捜索が進まないアンドリュースは、1万ドルの懸賞金を出すことを発表し、新聞に失踪の記事を載せる。 バスの中で、何日も食事をしていない親子の母親が気を失ってしまい、ピーターの所持金を、エリーが少年に渡してしまう。 エリーの記事を読んだシェプリーは、ピーターに賞金を山分けしようと話を持ちかける。 ピーターは、エリーについては、裏組織が絡んだ身代金目的の誘拐だと言って、シェプリーを怖気づかせて追い払う。 エリーの身元がばれるのを恐れたピーターは、彼女を連れてバスを離れる。 野宿することになった二人は、次第に惹かれ合うようになった気持を、互いに抑える。 翌朝、歩き疲れた二人はヒッチハイクしようとするが、ピーターは、自慢していた割には車を止められずに、エリーがスカートをたくし上げて、1回で車を止めてみせる。 エリーのおかげで車に乗れた二人だったが、運転手は人を乗せて荷物を奪う泥棒だった。 置き去りにされるものの、追いかけたピーターは車を奪い戻ってくる。 一方、結婚に賛成すれば、エリーが戻ってくると考えたアンドリュースは、仕方なくウェストリーと手を組み結婚を許可する。 ニューヨークまで、車で3時間のところまで来たにも拘らず、エリーが急ごうとしないことをピーターは疑問に思う。 前金を払えずに1週間滞在することにして泊まった宿で、エリーはピーターに愛を告白する。 しかし、ピーターはエリーをベッドに戻し、彼女は泣きながら眠ってしまう。 エリーが眠った後、宿を抜け出したピーターは、記事を書き新聞社にそれを持参する。 ピーターは、ゴードン編集長に、エリーが結婚を取り止め、新しい恋人(自分)と結婚するスクープを1000ドルで売ろうとする。 ゴードンはその記事を見て興奮し、ピーターに金を渡して、朝刊のフロントページを差し替える指示を出す。 ピーターが逃げたと家主に言われ、エリーは宿を追い出されてしまい、彼女は父アンドリュースに迎えに来るよう電話してしまう。 その連絡がゴードンに入り、彼は再びフロントページの差し替えを指示し、ペテン師だと言って、ピーターのことを罵る。 意気揚々と宿に帰ろうとするピーターだったが、彼の車を追い越し、アンドリュースとウェストリーはエリーの元に向かう。 途中、エリーを乗せた、アンドリュースの車に気づいたピーターは、それに追いつくことはできなかった。 エリーは父親の元に戻り、ウェストリーとの結婚の準備は進み、新聞社に現れたピーターは1000ドルを返す。 しかし、ゴードン編集長はピーターを労い励ます。 結婚式当日、幸せそうでない娘エリーの真意を知った父アンドリュースは、ピーターを呼び二人の関係を探ろうとする。 懸賞金についての話し合いをしたいという、ピーターからの手紙が届いていたことを知り、エリーはショックを受けて彼を見限る。 それでも、エリーのピーターへの気持ちが変わらないことを悟ったアンドリュースは、彼を屋敷に呼び寄せる。 懸賞金を払おうとしたアンドリュースに対し、ピーターは、宿泊経費などわずか40ドル弱しか要求しなかった。 アンドリュースは、娘のわがままは父親のせいだと言い放ち、エリーへの愛情も告白し、その場を立ち去るピーターを気に入ってしまう。 その後ピーターと出くわしたエリーは、父親から金を受け取ったことを知り彼を突き放し、ピーターもその場を立ち去ってしまう。 結婚式が始まり、ピーターの気持ちを父から聞いたエリーは、誓いの言葉を前に、式場から逃げ出してしまう。 アンドリュースは、ウェストリーとの手切れ金10万ドルを支払い、満足気にピーターからの電報を受け取る。 ”ウェストリーとの結婚解消はまだか、”ジェリコの壁”が崩れそうだ”という、ピーターからの電報に対して、アンドリュースは答える、”壁を崩してよし”と。 そして、安宿に泊まったピーターとエリーの部屋からは角笛が鳴り響き、”ジェリコの壁”は落ちる。
...全てを見る(結末あり)
*(簡略ストー リー)
大銀行家アンドリュースの娘エリーは、父の許可なく、飛行家のウェストリーと結婚すると言い出し失踪してしまう。
新聞記者ピーター・ウォーンは、編集長ゴードンと喧嘩をしてクビになり、ニューヨークに向かう乗り合いバスでエリーと出会う。
席のことで揉めた二人だったが、逃亡劇で疲れていたエリーは、そのままピーターの腕の中で眠ってしまう。
目が覚めたエリーは、気まずい思いをしながらホテルに向かうが、出発に遅れ置き去りになってしまう。
ピーターは新聞でエリーの身元を知り、彼女に家に帰るよう忠告する。
ウェストリーが、女を手玉に取る最低な男だと知っているピーターだったが、エリーが、それでも彼の元に向かおうとしたためにで呆れてしまう。
父が賞金を出すと考えたエリーは、口止め料として、自分がそれをピーターに払う約束をしてしまう。
そして、何事も金で解決できると思い込む、わがままなエリーに愛想を尽かしたピーターは、ゴードン編集長に、”特ダネあり”の電報を打ってしまうのだが・・・。
__________
大恐慌のピークを迎えていた時代の人々が、本作でどれだけ心が癒され、また現実を忘れ楽しい一時を過ごせたかを思うと、その価値は実に大きい。
1993年、アメリカ議会図書館が、国立フィルム登録簿に登録した作品でもある。
第7回アカデミー賞では、ノミネートされた主要5部門全てを受賞する快挙となった。
作品、監督
主演男優(クラーク・ゲイブル)
主演女優(クローデット・コルベール)
脚色賞
苦しい時代を生き抜く逞しさを教えてくれる、クラーク・ゲイブルの、30代前半には思えない、誰をもねじ伏せてしまいそうな雰囲気は、既にハリウッドのキングとしての貫禄と実力を兼ね備えている。
またゲイブルが、 クローデット・コルベールのわがままをたしなめるシーンで、相手が男でも萎縮するような言い方で「首をへし折るぞ」と軽く言い流すところなどは、実にゲイブルらしい。
悪く言えば横柄で、よく言えば、周りを自分のペースに巻き込んでしまう、一種男の美学と言ったところだろうか。
クローデット・コルベールの、小柄で可愛らしくて憎めない、じゃじゃ馬令嬢役の熱演も出色だ。
そして本作のキーポイントとなる”ジェリコの壁”は、クローデット・コルベールの更衣室がなかった時に、咄嗟に考えたフランク・キャプラのアイデアらしい。
乗り合いバスで、食べ物を買う金のない親子に有り金を渡し、一文無しの主人公達は、畑からニンジンを失敬して、生のままかじり飢えをしのいだりする、人情味溢れるシーンは、フランク・キャプラの真骨頂だ。
ゲイブルの横暴ぶりに、いつも怒り心頭の編集長チャールズ・C・ウィルソンが、記事を読み感心して、落ち込んでいるゲイブルに、「一杯やってまた来いよ」と、優しく声をかける場面や、大富豪にも拘らず、嫌味もなく物わかりの良いヒロインの父親ウォルター・コノリーも、いかにもフランク・キャプラ作品らしいキャラクターだ。
乗り合いバスの乗客で、懸賞金をせしめようとして、ピーター(C・ゲイブル)に逆に脅される男ロスコー・カーンズ、エリー(C・コルベール)の結婚相手ジェームソン・トーマス、そして、まだ若いウォード・ボンドが、バスの運転手役で出演している。