1956年にパリで初演され1960年にブロードウェイで上演されたミュージカル”Irma La Douce”の映画化。 警官をクビになった男が娼婦と愛し合うようになったことで巻き起こす騒動を描く、製作、監督、脚本ビリー・ワイルダー、共同脚本I・A・L・ダイアモンド、ジャック・レモン、シャーリー・マクレーン共演のロマンチック・コメディ。 |
・シャーリー・マクレーン / Shirley MacLaine / Pinterest
■ スタッフ キャスト ■
監督:ビリー・ワイルダー
製作:ビリー・ワイルダー
脚本
ビリー・ワイルダー
I・A・L・ダイアモンド
撮影:ジョセフ・ラシェル
編集:ダニエル・マンデル
音楽:アンドレ・プレヴィン
出演
ネスター・パトゥー/X卿:ジャック・レモン
イルマ・ラ・ドゥース:シャーリー・マクレーン
ムスターシュ:ルー・ジャコビ
ヒポリート:ブルース・ヤーネル
ルフェブル警部:ハーシェル・ベルナルデ
アメリカ 映画
配給 The Mirisch Corporation
1963年製作 142分
公開
北米:1963年6月5日
日本:1963年11月9日
製作費 $5,000,000
北米興行収入 $20,000,000
■ アカデミー賞 ■
第36回アカデミー賞
・受賞
音楽賞
・ノミネート
主演女優(シャーリー・マクレーン)
撮影賞(カラー)
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
パリの裏通り。
”ホテル・カサノバ”で客引きをするイルマ・ラ・ドゥース(シャーリー・マクレーン)は、客に泣きを入れて、チップをはずませる。
”カサノバ通り”の彼女らの仕事を、警官は見て見ぬふりで甘い汁を吸う。
そこに、馬鹿正直な新人警官ネスター・パトゥー(ジャック・レモン)が赴任してくる。
勘が鈍いネスターは、イルマが愛犬コケットの散歩をしているだけの女性と思い込み、酒場の主人ムスターシュ(ルー・ジャコビ)に、通りでは、公然と売春が行われていると知らされ、ようやくそれを理解する始末だった。
驚いたネスターは本部に連絡し、面倒なことになるという、ムスターシュの忠告も聞かずに手入れを始める。
正義感に燃えたネスターは、娼婦達全員を逮捕して署に連行する。 しかし、ルフェブル警部(ハーシェル・ベルナルデ)が、カサノバ通りでお楽しみ中だったとは知らずに、彼は即刻クビになってしまう。 酒場でイルマに会ったネスターは、何となく彼女に惹かれて、あれこれ世話を焼くのだが、イルマのヒモであるヒポリート(ブルース・ヤーネル)に叩きのめされてしまう。 しかし、運良くヒルボードを伸してしまったネスターは、一目置かれる存在になる。 宿無しのネスターを、自分のアパートに連れて行ったイルマは、正義感があり、カーテンの代わりに新聞紙を窓に張ってくれたりもする優しい彼をベッドに誘う。 やがて、イルマに世話にばかりなる訳にはいかないネスターと、男に尽くしたいイルマは、お互い惹かれ合うようになる。 イルマのヒモになったネスターは、商売とはいえ、彼女が他の男と寝ることが我慢できなくなる。 そこで、ムスターシュに500フランを借りたネスターは、イギリス紳士に成りすまし、イルマの客になることを思いつく。 酒場の地下室で紳士に変装し、ムスターシュの協力で、エレベーターでカサノバ通りに現れたネスターは、早速、イルマの元に向かう。 イルマとカサノバ・ホテルに入った紳士(ネスター)は、彼女の体を求めずに、一晩中カードをして語り明かした。 そしてネスターは500フランをイルマに手渡し、彼女はあまりの大金に驚き、週2回パリを訪れるという、紳士”X卿”と再び会う約束をする。 大金が手に入り、今後も大いに稼げることになったイルマは喜び、そして、ネスターは酒場の地下室に消える。 酒場に戻ったイルマは、興奮してネスターに500フランを見せ、通りのナンバーワンになった彼は、ヒモの保護協会の会長に推薦される。 ネスターは気前良くイルマに100フランを渡し、会長就任祝いのシャンパン代270フランをムスターシュから請求されてしまう。 ネスターは、ムスターシュに500フラン返せずに、借金を作ってしまったばかりか、”X卿”としてイルマに払う金の工面に困ってしまう。 仕方なくネスターは、イルマが寝てる間に、気づかれないように市場で働き、彼女に払う金を稼ごうとする。 X卿として、イルマに会う日がやってきたネスターだったが、彼女が恋人に会ってくれと言い出す。 ネスターは、何とか言い訳をしてそれを切り抜ける。 イルマは、酒場でネスターに500フランを渡すのだが、年金基金で組合に没収されてしまう。 さらにネスターは、頬にイルマが付けた口紅が残っていたのを落とし忘れて騒動になってしまう。 その後も、毎晩働き詰めのネスターは、帰ってきたところをイルマに見つかり、浮気した朝帰りだと疑われて、大喧嘩になってしまう。 ネスターの苦労も知らずに、彼に愛想を尽かしたイルマは、X卿とベッドを共にしてイギリス行きをせがむ。 困ったネスターは、X卿をセーヌ川で殺してしまうことにする。 ヒポリートはX卿の大金を見てしまい、ネスターが本当に彼を殺したものと思い込み、それを警察に通報してしまう。 X卿を待つイルマに、本当に彼女を愛しているのは自分だと言うネスターだったが、彼はX卿の財布を持っていたために、益々危うい立場になる。 駆けつけたルフェブル警部の前で、法学部を出たというムスターシュは、ネスターに罪を認めさせる。 原因は、愛するイルマに対する嫉妬だとムスターシュは説明して、彼女は感激し、ネスターを再び愛しく思う。 しかし、ネスターは、殺人容疑でルフェブル警部に逮捕されてしまう。 懲役15年のネスターは、面会に来たムスターシュから、イルマが妊娠したことを知らされる。 ムスターシュから、大量のストッキングを渡されたネスターは、それを使い脱獄に成功する。 イルマの元に戻ったネスターは、彼女にプロポーズするが、子供の父親がX卿だということを知らされる。 そこに、ネスターを捜していたルフェブル警部が現れる。 ネスターは、クローゼットにしまってあった警官の制服を着て扮装し、その場を切り抜ける。 ムスターシュは、ヒポリートに偽の情報を教え、X卿の殺害現場にルフェブル警部を向かわせる。 そして、現場の川の中から、なんとX卿が姿を現す。 無実となったネスターは、イルマと結婚式を挙げる。 そして、ルフェブル警部に呼び止められたネスターは、警官に復職し、陣痛が始まったイルマは教会で出産する。
...全てを見る(結末あり)
*(簡略ストー リー)
パリの裏通り。
”ホテル・カサノバ”では、娼婦のイルマ・ラ・ドゥースらが客引きをして賑わっていた。
”カサノバ通り”の娼婦らを、警官は見て見ぬふりだったのだが、そこに、馬鹿正直な新人警官ネスター・パトゥーが赴任する。
鈍いネスターは、酒場の主人ムスターシュの忠告も聞かずに手入れを始めてしまい、娼婦達全員を逮捕して署に連行する。
しかし、ルフェブル警部がお楽しみ中だったとは知らずに、ネスターは即刻 クビになってしまう。
宿無しとなってしまったネスターを、気の毒に思ったイルマは、彼をアパートに招く。
その後、優しいネスターにイルマも惹かれ、やがて2人は愛し合うようになる。
イルマのヒモになったネスターだったが、仕事とは言え、彼女が他の男と寝ることに我慢できなくなる。
そしてネスターは、イギリス紳士に扮してイルマの客になり、彼女を独占することを思いつくのだが・・・。
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「アパートの鍵貸します」(1960)のスタッフと主演2人が再びコンビを組んだ、抱腹絶倒のラブ・コメディ。
第36回アカデミー賞では、音楽賞を受賞し、主演女優(シャーリー・マクレーン)と撮影賞にノミネートされた。
テンポよく歯切れのいいビリー・ワイルダーの演出は冴え、名コンビI・A・L・ダイアモンドとの、皮肉と風刺を込めた脚本も素晴らしい。
舞台設定は違うが、前記の「アパートの鍵貸します」(1960)に、やや似ている恋愛関係で進行する。
前者に比べると”情愛”の描き方を抑え、ドタバタ喜劇の要素を高めた非常に楽しい作品。
当時のこの手の作品にしては500万ドルという多額の製作費がかけられ、舞台となる”カサノバ通り”は、オールセットで作られた、見事な仕上がりになっている。
アンドレ・プレヴィンの軽快で楽しく、また粋な雰囲気のテーマ曲は出色で、見事にアカデミー賞音楽賞を受賞した。
イルマを愛するがために自らイギリス紳士に扮し、その資金を寝食忘れて稼ぎ出そうとする、世間知らずだが正義感があり、何より優しさがにじみ出る主人公を好演したジャック・レモンと、しっかり者で、とぼけたシャーリー・マクレーンの、愛くるしい娼婦役が原題の通り”可愛いイルマ”として、作品の最大の魅力となりドラマを盛り上げる。
博学の酒場の主人役のルー・ジャコビ、ヒモ役のブルース・ヤーネル、カサノバ通りの馴染み客でもある警部ハーシェル・ベルナルデなどの、芸達者な役者達も大いに笑わせてくれる。