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父の祈りを In the Name of the Father (1993)

1974年にイギリスギルフォードで起きたIRAによる爆破テロ事件を基に、犯人として服役したジェリー・コンロンの自叙伝”The Story of Gerry Conlon of the Guildford Four”を基に製作された作品。*事件詳細
無実でありながら爆破テロ事件の犯人として父親と共に服役した青年の闘いの日々を描く、製作、監督、脚本ジム・シェリダン、主演ダニエル・デイ=ルイスピート・ポスルスウェイトエマ・トンプソン他共演による社会派ドラマの秀作。

アカデミー賞 ■ ストーリー ■ 解説


ドラマ(社会派)

ダニエル・デイ=ルイス / Daniel Day-Lewis / Pinterest


スタッフ キャスト ■
監督:ジム・シェリダン

製作:ジム・シェリダン
製作総指揮:ガブリエル・バーン
原作:ジェリー・コンロン”The Story of Gerry Conlon of the Guildford Four”
脚本
ジム・シェリダン

テリー・ジョージ
撮影:ピーター・ビジウ
編集:ジェリー・ハンブリング
音楽:トレヴァー・ジョーンズ

出演
ジェリー・コンロンダニエル・デイ=ルイス

ジュゼッペ・コンロン:ピート・ポスルスウェイト
ギャレス・ピアース:エマ・トンプソン
ポール・ヒル:ジョン・リンチ
キャロル・リチャードソン:ビーティ・エドニー
パディ・アームストロング:マーク・シェパード
ジョー・マクアンドリュー:ドン・ベイカー
ロバート・ディクソン:コリン・レッドグレイヴ
バーカー看守長:ジョン・ベンフィールド
チャーリー・バーク:ジョー・マクパートランド
コミューンのヒッピー女性:サフロン・バロウズ

アイルランド/イギリス/アメリカ 映画
配給 ユニバーサル・ピクチャーズ

1993年製作 133分
公開
アイルランド:1993年12月12日
イギリス:1993年12月13日
北米:1993年12月29日
日本:1994年4月16日
製作費 $13,000,000
北米興行収入 $25,096,860
世界 $65,796,860


アカデミー賞 ■
第66回アカデミー賞

・ノミネート
作品・監督
主演男優(ダニエル・デイ=ルイス
助演男優(ピート・ポスルスウェイト
助演女優(エマ・トンプソン
脚色・編集賞


*詳細な内容、結末が記載されています。
ストーリー ■
1974年10月5日、イギリスギルフォード
パブで爆破テロが起き、兵士と市民5人が死亡して74人が負傷する。

数か月前、北アイルランドベルファスト
職にも就かず盗みなどを続けるジェリー・コンロン(ダニエル・デイ=ルイス)は、イギリス兵を挑発して騒ぎを起こす。

IRAは、ジェリーの行動が活動妨害になると判断して目を付けていたため、彼を連行してそれを追求する。

ジェリーの父ジュゼッペ(ピート・ポスルスウェイト)は、IRA側と話をして息子を釈放させる。

ジュゼッペは、イギリスに向かうようジェリーに指示し、乗船する船に向かい息子を見送る。
...全てを見る(結末あり)

ジェリーは、学校時代の友人ポール・ヒル(ジョン・リンチ)が船内にいることを知り意気投合する。

6月26日、ロンドン
おばの家に向かうより先に、幼馴染みでヒッピーのパディ・アームストロング(マーク・シェパード)を訪ねたジェリーとポールは、共同生活者キャロル・リチャードソン(ビーティ・エドニー)らに歓迎される。

生活にも慣れてきた頃、IRAのテロがイギリス国内でも起き始め、ジェリーとポールは、アイルランド人であったために非難され追い払われてしまう。

10月5日。
公園にいた二人は、ホームレスの老人チャーリー・バーク(ジョー・マクパートランド)に小銭を恵んでその場を離れ、同じ頃ギルフォードでパブが爆破される。

娼婦の家の前で鍵を拾ったジェリーは、部屋に忍び込み現金を奪いベルファストに戻る。

その頃、パディのヒッピー仲間はジェリーらのことを当局に話す。

対テロ捜査部ロバート・ディクソン警部(コリン・レッドグレイヴ)は強硬捜査を発表して、ジェリーは逮捕されイギリスに連行される。

ジェリーは、テロの容疑者として厳しい尋問を受け、息子を救うためにジュゼッペは現地に向かう。

パディ、キャロル、ポールも逮捕され、ジェリーは拷問とも言える尋問に耐えながら、ホームレスのチャーリーが自分達のアリバイを知ることを伝える。

ポールらは自供書にサインするが、ジェリーはあくまで犯行に関わっていないことを訴える。

現地に到着したジュゼッペは、義妹の家に向かうものの、彼らも共謀者として逮捕されてしまう。

ジュゼッペを殺すとまで言われたジェリーは、仕方なく自供書にサインしてしまう。

拘置所に向かったジェリーは、同じく逮捕されたジュゼッペと同じ官房に入れられる。

無実を主張しながら動揺するジェリーを、ジュゼッペは落ち着かせる。

やがてジェリーらの裁判は始り、対テロ責任者ディクソンは、自供にもとずく容疑者の有罪を主張する。

証言台に立ったジェリーは、ホームレスのチャーリーが自分のアリバイを知ることと、父を殺すと殴られ脅されたために、自供書にサインしたことを話す。

しかしジェリーは、人々が、刑事の証言と娼婦の家に侵入して現金を奪った男のどちらを信ずるかと問い詰められる。

全ての状況証拠からジェリーは無期懲役を言い渡されてしまい、ジュゼッペや爆弾製造に関わったと判断されたおば、ポール、パディ、キャロラインの長期刑も確定する。

控訴を決心したジェリーは、イギリス人弁護士のギャレス・ピアース(エマ・トンプソン)の協力を得られることになる。

ピアースは、公園のベンチに”C・B”(チャーリー・バーク)と刻まれていることを確認する。

ジェリーとジュゼッペは、刑務所で囚人達にも白い眼で見られていた。

同じ頃、逮捕されたIRAのリーダー、ジョー・マクアンドリュー(ドン・ベイカー)は、ギルフォードのパブ爆破テロを自供し、ジェリーらが無実だと知ったディクソンらは焦る。

その後ジェリーは、囚人仲間から勧められたドラッグに溺れるが、嘆くジュゼッペのためにそれを止める。

同じ刑務所に収監されたジョーは、ジェリーとジュゼッペに、自分が爆破テロの実行犯であり、警察にもそれを話したことを伝える。

敬虔なカトリックであるジュゼッペは、兵士のたまり場であったとは言え、罪もない者を殺したジョーの行為を非難し謝罪や協力を受け入れない。

しかしジェリーは、闘いを続けるべきだと言ってジュゼッペに意見する。

祖国の対立の歴史などをジョーから教わったジェリーは、彼との親交を深める。

ジョーは、次第に囚人を統率して暴動を起すものの警官隊に制圧される。

それに加担したジェリーは、ジュゼッペに無視されてしまう。

面会に来たピアースだったが、ジェリーはまともに話を聞こうとしない。

ある日、映画上映会が開かれ、ジョーはバーカー看守長(ジョン・ベンフィールド)に火を放ち重傷を負わせる。

それを非難したジェリーは、肺病を患うジュゼッペの元に戻りジョーは移動させられる。

ジェリーは、嘆願書を書き続けるジュゼッペの手伝いを始めて、同時に自分達を助けようとするピアースへにも協力する。

病気が悪化しているジュゼッペの仮釈放を申請するために、ピアースはディクソンを訪ねるが、ジョーの供述を無視する彼は前向きな考えを示さない。

ある夜、ジュゼッペは呼吸困難に陥り病院に運ばれるものの息を引き取る。

ジェリーはそれを知らされ、囚人達はジュゼッペの死を悼む。

ピアースの行動は市民に伝わり、ジェリーらの釈放を要求するデモが起きる。

その後ジュゼッペの調書が解禁され、ピアースはそれを調べ、ジェリーは亡き父を想う。

ジェリーの調書を見ることができたピアースは、弁護側に提示する必要がないというファイルに注目し、それを持ち出す。

警察が全てを知っていたことで、ジェリーはピアースに説得されて法廷に立つ決心を決める。

ピアースは、証言台に立つディクソンを前に、ジェリーらが15年もの間、辛い刑務所生活を過ごしたことを確認する。

ホームレスのチャーリーの写真を見せたピアースは、事件の約一月後に、ディクソンが彼の供述書をとった事実を知らせる。

裁判長はそれを確認し、ピアースは、この件を弁護側に提出することが無用だというメモも見せる。

法廷内は騒然となり、ディクソンは動揺し、ピアースは彼の逮捕を要求するものの、一時休廷となる。

その後、ジェリーら全ての被告人は無実となり釈放され、民衆に歓喜で迎えられる。

ジェリーは、獄中で亡くなったジュゼッペへの想いと、15年間の苦しみを訴えるために闘い続けることを誓う。
_____

ジェリー・コンロンロンドンに在住し、母親やピアースと共に父ジュゼッペの冤罪を晴らした。

パディ・アームストロングはその後ダブリンに戻り、キャロル・リチャードソンはイギリスで結婚して1児の母となる。

ポール・ヒルはロバート・ケネディの娘と結婚してニューヨークに在住している。

事件を調査した諮問機関は、警察の行った化学分析に疑いを抱き、被告人が無実であるという結論に達した。

ギルフォードのパブ爆破を自供したIRAのメンバーは起訴されず、イギリスの刑務所に収監されている。

送検された3人の刑事は、いずれも無罪となった。

ジュゼッペはベルファストに埋葬されている。


解説 評価 感想 ■

*(簡略ストー リー)
1974年。
イギリスギルフォードIRAによる爆破テロが起きる。
数か月前、北アイルランドベルファスト
自堕落な生活を続ける青年ジェリー・コンロンは、イギリス兵を挑発したためIRAに目を付けられる。
ジェリーは父ジュゼッペの指示に従いロンドンに向かい、同行したポールと共に、幼友達でヒッピーのパディやキャロルと共に共同生活を始める。
その頃、IRAの活動がイギリス国内で活発化し、ジェリーとポールは共同生活者に非難され追い出される。
ジェリーらが、公園でホームレスのチャーリーに小銭を恵んでいた頃、ギルフォードで爆破テロ事件は起きる。
テロ対策本部のディクソン警部は、ヒッピー仲間の情報で、ベルファストに戻っていたジェリーらを逮捕しイギリスに連行する。
無実を訴えるものの聞き入れられないジェリーは、父を殺すとまで言われ、仕方なく自供書にサインしてしまう。
ジュゼッペは息子ジェリーを救うためにロンドンに向かうのだが、彼も共謀者として逮捕され、二人は同じ監房に入れられてしまう・・・。
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北アイルランド問題をストレートに描いたジム・シェリダンは、アイルランド人である彼の目線で、微妙にすれ違う親子の関係や絆を描きながらも、厳しい現実を直視した鋭い演出を見せる。

大きな問題となった冤罪事件を中心に描く物語なのだが、自堕落な青年が長い年月をかけながらも、父親の生き方を見て成長していく姿なども感動的なヒューマン・ドラマでもある。

第66回アカデミー賞では、作品、監督、主演男優(ダニエル・デイ=ルイス)、助演男優(ピート・ポスルスウェイト)、助演女優(エマ・トンプソン)、脚色、編集賞にノミネートされ、基にした第44回ベルリン国際映画祭では金熊賞を受賞した。

ジム・シェリダンとは「マイ・レフトフット」(1989)でも組んで、アカデミー主演賞を受賞していたダニエル・デイ=ルイスは、「ボクサー」(1997)でも再び彼の作品の主演ということになる。

単なる不良青年として登場するダニエル・デイ=ルイスは、父親役のピート・ポスルスウェイトと刑務所内で共同生活を送ることで、徐々にではあるが、人生を見つめ直し成長する人物を熱演し演技派としての実力を見せつけてくれる。

自堕落な息子を見捨てることなく、信念を貫く姿勢で、彼を正しい道に導こうとするピート・ポスルスウェイトの力強い演技も光る。

終盤にかけて活躍する弁護士を好演するエマ・トンプソン、犯人にされるジョン・リンチビーティ・エドニーマーク・シェパードIRAのメンバーで爆破テロの実行犯ドン・ベイカー、テロ対策本部の責任者コリン・レッドグレイヴ、看守長のジョン・ベンフィールド、ホームレスの老人役のジョー・マクパートランド、主人公と親交を深めるヒッピーの女性(サフロン・バロウズ)などが共演している。


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