1979年に発表された、アンドレ・デビュースの短編”Killings”を基に製作された作品。 年上の女性と付き合っていた一人息子を殺された夫婦の苦悩を描く、製作、監督、脚本トッド・フィールド、主演シシー・スペイセク、トム・ウィルキンソン、ニック・スタール、マリサ・トメイ他共演のドラマ。 |
・ドラマ
■ スタッフ キャスト ■
監督:トッド・フィールド
製作
グレアム・リーダー
ロス・カッツ
トッド・フィールド
製作総指揮
テッド・ホープ
ジョン・ペノッティ
原作:アンドレ・デビュース”Killings”
脚本
ロバート・フェスティンガー
トッド・フィールド
撮影:アントニオ・カルヴァッシュ
編集:フランク・レイノルズ
音楽:トーマス・ニューマン
出演
ルース・ファウラー:シシー・スペイセク
マット・ファウラー:トム・ウィルキンソン
フランク・ファウラー:ニック・スタール
ナタリー・ストラウト:マリサ・トメイ
リチャード・ストラウト:ウィリアム・メイポーザー
マーラ・キーズ:カレン・アレン
ウィリス・グリネル:ウィリアム・ワイズ
ケイティ・グリネル:セリア・ウェストン
大臣:ヴェロニカ・カートライト
アメリカ 映画
配給 ミラマックス
2001年製作 131分
公開
北米:2001年11月23日
日本:2002年月8日3
製作費 $1,700,000
北米興行収入 $35,900,000
世界 $43,368,780
■ アカデミー賞 ■
第74回アカデミー賞
・ノミネート
作品
主演男優(トム・ウィルキンソン)
主演女優(シシー・スペイセク)
助演女優(マリサ・トメイ)
脚本賞
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
メイン州、カムデン。
町医者のマット・ファウラー(トム・ウィルキンソン)と妻ルース(シシー・スペイセク)の一人息子である大学生のフランク(ニック・スタール)は、帰省してロブスター漁のアルバイトをしていた。
フランクは、年上で二人の息子の母親であるナタリー・ストラウト(マリサ・トメイ)と付き合っていた。
マットの家で、ナタリーの息子の誕生日を祝うパーティーが開かれていたが、そこに彼女の夫リチャード(ウィリアム・メイポーザー)が現れる。
フランクは一応リチャードを歓迎するが、マットとルースはその様子を気にする。
ナタリーとリチャードが正式に離婚していないことも、彼女とフランクが付き合っていることも、マットはルースほど心配していなかった。 建築家になる計画があるフランクは、夏の間だけナタリーと付き合うことをルースに伝える。 ナタリーと寄りを戻そうとしたリチャードだったが、彼女にその気はなく二人は口論になる。 リチャードを相手にしないナタリーは、彼を追い払う。 ナタリーの家で過ごしていたフランクは、現れたリチャードに殴られ、マットの治療を受ける。 聖歌隊の教師であるルースは練習を終えて帰宅し、フランクの様子を見て驚く。 大事になる前にナタリーと別れるようにとルースに言われたフランクは、席を外してしまう。 事を荒立てる気のないマットは、他の男との噂もあるナタリーの件を語るルースの話に興味を示さない。 とは言うものの、フランクが気になるマットは、ランチを忘れたと言っては診療所を抜け出し、息子の様子を見に行く。 ナタリーの家で暮らし始めていたフランクは、祖父も漁師だったと言って、その後を継ぐことを考えているとマットに伝える。 それで満足なのかと聞かれたフランクは分からないと答え、ナタリーの素晴らしさだけを伝える。 フランクと話し合おうとするルースだったが、まともな会話が成り立たない。 そんな時、リチャードがナタリーの家に押しかけて暴れる事件が起きる。 その場に駆け付けたフランクは警察を呼ぼうとするが、子供達のことを思うナタリーはそれを制止する。 そこにリチャードが現れ、フランクは警察を呼ぶと言って彼を追い払う。 しかし、押入って来たリチャードは、フランクと言い合いになり彼の顔面を銃撃し、それを知ったナタリーは悲鳴を上げる。 フランクが射殺されたという連絡をナタリーから受けたトムは、聖歌隊の練習をするルースの元に向かう。 葬儀を終えたトムは、友人のウィリス・グリネル(ウィリアム・ワイズ)と妻ケイティ(セリア・ウェストン)に声をかけられ、気になるルースの様子を見に行く。 寝室のベッドで横たわるルースに声がかけられないマットは、フランクの部屋に向い息子を想い涙する。 その後、普段通りの生活に戻るものの、悲しみに耐える日々が続くトムとルースの会話は減る。 気を遣ってくれるウィリスからリチャードの保釈の審問の件などを聞かれたマットだったが、多くを語る気になれない。 週末を山荘で過ごすというウィリスに誘われたマットは、それをルースに伝えるが、気のない返事しか返ってこない。 リチャードの審問が始まり、検察側の証人として呼ばれたナタリーは、銃声を聞いただけで現場を目撃していないと証言する。 警察に言った証言とは違うと、ナタリーはリチャードの弁護士マーラ・キーズ(カレン・アレン)に問われる。 ナタリーは目撃していないと認め、その証言により逃亡の恐れのないリチャードの保釈が確実となる。 ナタリーの証言によりフランクは事故死と判断される可能性があり、マットとルースが求めるリチャードの終身刑は望めない状況だった。 リチャードが、5~15年の刑となるだろうと弁護士から言われたルースは納得できない。 夫、父親、そして男として役目を果たせなかったことを後悔するマットは悩む。 ナタリーに会ったマットは、証言について謝罪する彼女を気遣う。 週末をウィリスとケイティとで山荘で過ごしたトムとルースは、多少の気分転換にはなる。 聖歌隊の練習を再開したルースは、フランクの墓参りをした際に神父に呼び止められ、子供を亡くした母親の話を聞かされる。 ウィリスら周囲が、自分に気を遣い過ぎることを迷惑にも思い始めたマットだったが、語りかけてくれる言葉をありがたくも思う。 弁護士に会ったマットは、手を尽くしていいるという言葉に誠意が感じられない。 仕方なくマットは、リチャードを追い込む証拠を見つけるために行動を始める。 ルースは、謝罪に来たナタリーの頬を殴り追い払い、食料品店でリチャードを見かけて動揺する。 帰宅したルースは、力になりたいと言って話しかけてくるマットにまともに答えようとしない。 フランクの死が、何もしない自分のせいだと言われたマットは、常に息子を監視し厳し過ぎたルースが悪いと反論する。 自分に対しても同じであり酷い人間だと言うマットは、事件のことを話したかっただけだと答えるルースが、恐ろしい存在だとも伝える。 資金集めのためにお菓子を売りに来た少女に対応したマットは、ルースの元に戻り、言うべきことでなかったと伝えて謝罪する。 自分は酷い女であり許してほしいというルースを、マットは抱きしめる。 学校に訪ねて来たナタリーを許せなかったことと、自分を見て笑うリチャードに何度も会った話をマットにしたルースは涙する。 訪ねて来たマットにリチャードのことを話したウィリスは、彼のやりきれない思いを察する。 その後、町ではコンサートが開かれ、ルースは聖歌隊を指揮する。 よその町のバーで働いていたリチャードは、現れたマットに銃を向けられる。 車に乗り家に行くよう指示されたリチャードは、旅行の支度をするよう言われる。 自分達の前から消えるようリチャードに伝えたマットは、保釈破りをさせようとする。 アムトラックのパンフレットをその場に置いたマットは、リチャードと共にウィリスの山荘に向かう。 待ち構えていたウィリスに荷物を渡したリチャードは、マットに射殺される。 森で殺す計画と違うとウィリスに言われたマットは、リチャードが逃げたと答え、待ちきれなかったと伝える。 マットとウィリスは、リチャードの死体を森に埋める。 リチャードの車を駅に放置したマットは、予定よりも遅れたことで、目撃者がいないことを祈りながら町に戻る。 帰宅したマットは、寝室のベッドで起きていたルースから、殺したのかを聞かれる。 黙ってベッドに入ったマットは心配するルースに、部屋の壁にリチャードとナタリーの写真があったことを伝える。 それがどうしたのかと聞かれたマットは、笑顔のナタリーが気になったことを伝えるが、その理由を理解できない。 空腹だろうと言うルースは、キッチンに向かう。 コーヒーがいるかと言うルースの言葉に、マットは答えないまま、やがて夜が明ける。
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*(簡略ストー リー)
メイン州、カムデン。
町医者のマット・ファウラーと妻ルースの一人息子フランクは、二人の息子がいる年上のナタリーと付き合っていた。
ナタリーが正式に離婚もしていないため心配するルースだったが、マットは息子の行動を見守る。
そんな時、ナタリーの夫リチャードが家に押入り暴れる事件があり、駆けつけたフランクが射殺されてしまう。
失意のマットとルースだったが、フランクの死は事故死と判断され、リチャードは保釈されてしまう。
その後、将来がある息子を失ったことで悲しむマットとルースは会話も減り、リチャードに罪を負わせることもできずに苦悩する・・・。
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俳優であったトッド・フィールドが、短編映画の製作を経て初監督した作品。
愛する一人息子を失った夫婦の苦悩を切実に描き、その繊細な人間描写が秀逸であるトッド・フィールドの演出手腕は高く評価された。
殆ど会話やセリフのない場面が多く挿入され、それでありながら、登場人物の心情が伝わる描写は素晴らしい。
舞台となる町で人格者として慕われる医師が、苦悩した末に実行するクライマックスで描かれる殺人計画は、それ以前とは全く違うサスペンス・タッチの展開となり、その緊迫感のある演出なども見事だ。
度々思うことだが、派手な作品だけでなく、本作のようなドラマをキッチリと作れるところが、アメリカ映画が世界を席巻できる理由だろう。
第74回アカデミー賞では、作品、主演男優(トム・ウィルキンソン)、主演女優(シシー・スペイセク)、助演女優(マリサ・トメイ)、脚本賞にノミネートされた。
絶望そして苦難を乗り越えようとしてもがき苦しむ夫婦を演じ、言葉で言い表せないような深い演技を見せるシシー・スペイセクとトム・ウィルキンソンの演技は絶賛された。
主人公夫婦の息子を演ずるニック・スタール、彼と愛し合い失う辛い立場の女性を印象的に演ずるマリサ・トメイ、その夫役のウィリアム・メイポーザー(トム・クルーズの従弟)、その弁護士カレン・アレン、主人公夫婦の友人ウィリアム・ワイズとセリア・ウェストン、テレビに映る大臣ヴェロニカ・カートライトなどが共演している。