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ブローン・アパート Incendiary (2008)

大規模な爆破テロで夫と息子を失った女性の苦悩を描く、監督、脚本シャロン・マグアイア、主演ミシェル・ウィリアムズユアン・マクレガーマシュー・マクファディン他共演のドラマ。

アカデミー賞 ■ ストーリー ■ 解説


ドラマ


スタッフ キャスト
監督:シャロン・マグアイア

製作
アンディ・パターソン
アナンド・タッカー
エイドリアン・マグワイア
製作総指揮
サイモン・フォーセット
テッサ・ロス
フィリップ・アードーズ
ダリア・ジョヴィチッチ
原作:クリス・クリーヴIncendiary
脚本:シャロン・マグアイア
撮影:ベン・デイヴィス
編集:ヴァレリオ・ボネッリ
音楽
梅林茂
バーリントン・フェロング

出演
若い母親:ミシェル・ウィリアムズ
ジャスパー・ブラック:ユアン・マクレガー
テレンス・ブッチャー:マシュー・マクファディン
レニー:ニコラス・グリーヴス
息子:シドニー・ジョンストン
ゴルバニ夫人:サーシャ・ベアール
ゴルバニの息子:ウスマン・コクハー
ダニー・ウォルシュ:エドワード・ヒューズ

イギリス 映画
配給 Optimum Releasing
2008年製作 96分
公開
イギリス:2008年10月24日
北米:2009年2月6日
日本:2011年1月29日
製作費 $10,000,000
北米興行収入 $22,460


*詳細な内容、結末が記載されています。
ストーリー
ロンドンイーストエンド
若い母親(ミシェル・ウィリアムズ)は、警察の爆弾処理犯の夫レニー(ニコラス・グリーヴス)と4歳の息子(シドニー・ジョンストン)と暮らしていた。

第二次大戦中に”焼夷弾”で開いた穴の後に建った公営団地に住む彼女は、きつい仕事で神経的に参っているレニーを気遣うものの、そのせいで気難しい性格の彼との関係も冷え切っていた。

そんな彼女も疲れ果ててしまい、レニーが仕事に出た夜、息子を隣人に任せてパブに向かう。

通りの向かいに住む富裕層の男性ジャスパー・ブラック(ユアン・マクレガー)に声をかけられた彼女は、警察の爆弾処理班の夫と待ち合わせていることを彼に伝える。

全国紙”ザ・エクスプレス”の記者だと言うジャスパーは、彼女を自宅に誘い愛し合う。
...全てを見る(結末あり)

テロ対策部門長テレンス・ブッチャー(マシュー・マクファディン)は、部下である精神的に限界に達しているレニーの様子を気にする。

数日後、息子を連れて”アーセナルFC”の試合を観戦しに行くレニーを見送った彼女は、高級車”ジャガーXK”で出かけるジャスパーに声をかけられる。

試合に行くと言うジャスパーに再び誘われて彼を家に招いた彼女は、付き合えないと言いながらも、彼と再び愛し合う。

その時、テレビで中継されていたアーセナルFCチェルシーFCの”ビッグロンドン・ダービー”の爆破事件が起き、驚いた彼女は驚き動転してしまう。

ジャスパーの車で”エミレーツ・スタジアム”に向かった彼女は、ジャスパーの制止も聞かずに息子を捜す。

大惨事となったスタジアム内に入った彼女は、何かを見つけたところで屋根が崩壊して意識を失う。

彼女は病院に運ばれて手当てを受け、”メーデー事件”と呼ばれた、約1000人の犠牲者を出したテロは大きく報道され、街中が混乱する。

自爆テロ犯は6人だということが分かり、市内は悲しみに包まれる。

第二次大戦中にロンドンを守った防空気球と同じように、犠牲者を偲ぶ1000個の気球が空に浮かぶセレモニーが行われる。

彼女を見舞ったジャスパーは、面倒を見てくれる者がいるのかを尋ねる。

貧しい生れであるため、誰かが傍にいないのを不思議に思うのだろうと答えた彼女は、ジャスパーから、スタジアムで見つけた、息子が大切にしていたウサギのぬいぐるみを渡される。

彼女が立ち直るまでには時間がかかると判断したジャスパーは、何も語らずに立去る。

その後、彼女は、テレンスに送られて団地に戻る。

ゴシップ専門の記者だったジャスパーは、彼女のことを考えると何もせずにはいられず、テロの映像を入手しようとする。

犠牲者の追悼ミサが開かれ、彼女はテレンスに付き添われて出席する。

映像をチェックしたジャスパーは、爆破犯ゴルバニのことを警察が知っていることに気づく。

カウンセラーには会っているかとテレンスに訊かれた彼女は、”オサマ・ビン・ラディン”に手紙を書くように言われていると答える。

ビン・ラディン”の住所が分からないと言う彼女は、イスラム系の看護師は優しかったと話す。

これは宗教間の問題ではなく、テロとの戦いだとテレンスは彼女に伝える。

家で息子のビデオを見ていた彼女は、訪ねて来たジャスパーから、爆破犯のことを知る警察が、それを隠していると言われる。

犯人はゴルバニという男で、妻は夫が行方不明だと言っているが、突然、捜索をやめて引っ越したことを、ジャスパーは彼女に伝える。

ゴルバニの妻(サーシャ・ベアール)が勤める薬局に向かった彼女は、何も話さずにその場を去る。

妻を尾行した彼女は、息子(ウスマン・コクハー)がいることを知る。

サボって学校から出て来た息子をつけた彼女は、スポーツ店に向かった彼の様子を監視する。

電車を待っていた彼女は、通行見合わせになったため、息子に話しかけてバスで一緒に帰る。

修復中のスタジアムに向かったジャスパーは、事件当日の観客の氏名リストを入手しようとするが、テロ対策部門に問い合わせをするようにと言われる。

その後もゴルバニの息子と会った彼女は、親交を深める。

なぜ学校をサボるのかを息子に尋ねた彼女は、クリケットのバットを買ってくれると父が約束したため、スポーツ店に行ったことを彼から知らされる。

テレンスに会った彼女は、進行中のプロジェクトに協力してほしいと言われる。

趣味のトレーラーハウスを彼女と見に行ったテレンスは、その後、パブに向い、結婚15年になる妻に追い出されたことを話す。

カウンターにジャスパーがいたため、注文する振りをして席を立った彼女は、彼に帰ってほしいと伝える。

彼女を部屋に送ったテレンスは、彼女を抱きしめて別れる。

戻って来たテレンスは、彼女と一緒にトレーラーハウスでどこかに行くことを、時々、想像するとドア越しに伝える。

二人は通路で話し、”キャンバー・サンズ”に行くことを考えているとテレンスから言われた彼女は、息子と過ごした思い出の場所だったために動揺する。

自分のことは構わないでほしいと言われたテレンスは、離れる気はなく、傷ついた心を癒してあげたいことを伝えて抱きしめる。

そんな二人を、やりきれない思いでジャスパーは窓から見つめていた。

その後、ゴルバニを特集した”メーデー事件”の記事をまとめていたジャスパーは、スタジアムの観客リストをメールで入手し、”テレンス・ブッチャー”の名前があることを確認する。

ゴルバニの息子とキャンバー・サンズに向かい楽しい時を過ごした彼女は、帰りの電車の中で父親の話を聞き彼を抱きしめる。

二人はロンドンに戻り、イスラム系のゴルバニの息子は、駅構内で警察に監視される。

テロ犯ゴルバニの新聞記事やニュースが一斉に報じられ、息子がそれを知ってしまい動揺する姿に彼女は気づく。

走り出した息子を監視カメラが捉え、警官が彼を追う。

彼女も息子を追うが、警官は、ホームに逃げた少年が爆発物を操作すると考えて発砲する。

息子と警官の間に立っていた彼女は倒れ込む。

自分の息子のことを考える彼女は、スタジアムでウサギのぬいぐるみを見つけた時のことを思い出しながら意識を失う。

病院で目覚めた彼女は、弾はこめかみをかすっただけだと看護師に言われる。

現れたテレンスに事情を訊かれた彼女は、4月28日に息子と共にキャンバー・サンズに向い、母と行ったこともあるその場所が、唯一の楽しい思い出だったことを話す。

二度と息子に会えない悲しみを語る彼女の姿を見たテレンスは、考えを巡らせる。

廊下で待っていたジャスパーに話しかけたテレンスは、自分達には共通の興味があるようであり、潔く手を引く時期を知るべきだと伝える。

そうしなければ後悔することになると言われたジャスパーは、テレンスの忠告に感謝する。

病室に戻ろうとするテレンスに話しかけたジャスパーは、かつての事件でゴルバニを容疑者として監視していたにも拘らず逃がしてしまい、その失態を挽回するまで、それを隠しておきたかったはずだと伝える。

何も答えず握手だけしたテレンスは、なぜ彼女に嫌われたと思うかをジャスパーに問う。

その話にうんざりするジャスパーは、彼女がその日を思い出すからだと言われる。

テレンスが、事件当日のチケットを購入していたことを知っているジャスパーは、チェルシーファンであるはずの彼を牽制する。

その後ジャスパーは、彼女に観客のリストを渡す。

退院した彼女は、テレンスのトレーラーハウスでキャンバー・サンズに向い、翌朝、リストの件を彼に尋ねる。

レニーは理解してくれると言うテレンスは、犯人を一人だと考えて被害は50人以下、レニーと息子の死亡の確率は500分の一だったことを彼女に話す。

官庁を狙う大規模な爆破計画の情報が入り、自分達はそれに備えていたと言うテレンスは、寸前になりスタジアム爆破予告があり、どこか分からなかったため警告は出せなかったと伝える。

国中に警告したら大パニックになる恐れがあり、犯人に察知されるのを防ぐために、自分達は動けなかったことをテレンスは話す。

これは戦争であり上層部の判断だと言って、取り乱す彼女を落ち着かせるテレンスだったが、息子は無駄死にしたと言われる。

引き止めるテレンスを振り切りその場を去った彼女は、ロンドンに戻る。

その後、部屋に閉じ篭った彼女は、戻った息子と過ごす日々を想い描き、やがて妊娠したことに気づく。

買い物に出かけた彼女は、食品店で万引きをしてしまう。

店を出た彼女は、ゴルバニの妻と息子に声をかけられる。

妻から話したいと言われた彼女はそれを断り、手紙を渡される。

手紙に書いたことを伝えるようにと息子に促された妻は、叶うことなら息子さんとご主人をお返ししたいと言って謝罪する。

息子は無事で家で留守番をしていると伝えた彼女は、その場を去る。

家に戻った彼女は息子がいないことに気づき、動揺しながら病院の屋上に向い、彼の顔がプリントされた空に浮かぶ気球を見つめながら涙する。

祖母に連れられて来たことがある”ロンドン大火”の”大火記念塔”を見下ろしながら、大火事でも世界は終わらなかったことを考える彼女は、レニーと息子の思い出を心の中にしまうことができる。

瓦礫の上に立つ、ペストヒトラーにも負けなかった街が自分の全世界だと思えるようになった彼女は、たとえ街が爆弾で破壊されても、さらに強く甦ると考える。

責任は双方にあり、自分が各国の指導者に手紙を書くと、彼女は”ビン・ラディン”への手紙に綴る。

陣痛が始まった彼女は病院に向い、無事に男の子を出産する。

ジャスパーは、自分の子を出産した彼女の元に向う。

息子の誕生に感激する彼女は、爆弾の音をかき消す子供の泣き声と共に、世界を元に戻そうと考える。


解説 評価 感想
*(簡略ストー リー)
ロンドンイーストエンド
若い母親は、警察の爆弾処理犯の夫レニーと4歳の息子と共に公営団地で暮らしていた。
辛い仕事で精神的限界に達しているレニーを気遣う彼女だったが、気難しい彼との関係も冷めきっていた。
そんな時、彼女は、気晴らしにパブに行った際、自分達とは違う団地と通りを隔てて住む富裕層の新聞記者ジャスパーに声をかけられ、誘われて愛し合ってしまう。
アーセナルFCチェルシーFCの”ビッグロンドン・ダービー”の日、試合を見に行くレニーと息子を見送った彼女は、再びジャスパーに声をかけられて愛し合ってしまう。
その時、レニーと息子がいるはずのスタジアムで大規模なテロが起きる。
驚く彼女は動転してしまい、ジャスパーの制止を振り切りスタジアムに向い、必至でレニーと息子を捜すものの被害に巻き込まれてしまう。
病院で治療を受けた彼女の傷は癒えず、支えになりたいジャスパーは、1000人もの犠牲者を出した事件の真相を究明しようとするのだが・・・。
__________

2005年に発表された、クリス・クリーヴIncendiary”の小説を基に製作された作品。

ブリジット・ジョーンズの日記」(2001)が大ヒットして注目された、シャロン・マグアイアの脚本を兼ねた監督作品で、若手人気女優ミシェル・ウィリアムズ他、ユアン・マクレガーマシュー・マクファディンなど実力派が共演する注目の作品。

恵まれない生活環境で育った、労働者階級の女性の不倫ドラマ風に始まるドラマは、無差別テロによる歴史的な被害となる惨劇を描く衝撃の内容で展開し、夫と息子を失った女性の痛ましい姿を描く深いドラマに仕上がっている

主人公が住む場所は、第二次大戦の焼け跡に立った公営団地で、クライマックスで登場する”ロンドン大火”の”大火記念塔”と共に象徴的な存在として映し出され、新しい命の誕生が世界を救う一歩になるという、人間の逞しさが力強いテーマとして描かれている。

2001年のアメリカでの同時多発テロ、2005年のロンドン同時爆破事件発生後間もない、2007年に撮影が行われた作品で、辛い体験をした被害者や家族が鑑賞するには覚悟がいる内容でもある。

それが理由か、魅力的なキャスティングにも拘らず、アメリカでは限定公開されただけで、イギリス本国でも受け入れられず、批評家の評価も低かった作品でもある。

テロで夫と息子を失った被害者であり、また家族を裏切ってしまったことでも苦しむ若い母親をミシェル・ウィリアムズが好演している。

主人公と親密になるプレイボーイだが、事件後は彼女を支えようとする新聞記者のユアン・マクレガー、主人公に惹かれる彼女の夫の上司でテロ対策部門長のマシュー・マクファディン、主人公の夫ニコラス・グリーヴス、息子シドニー・ジョンストン、爆破テロの犯人の妻サーシャ・ベアール、その息子で主人公と親交を深めるウスマン・コクハーなどが共演している。


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