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渦巻 I Know Where I’m Going! (1945)

1943年に映画制作会社”The Archers”を設立して精力的に作品を発表する、イギリス映画界の誇る黄金コンビ、マイケル・パウエルエメリック・プレスバーガー両者による、製作、監督、原作、脚本の意欲作。
自分の考えのままに突き進む人生を送る女性の揺れ動く微妙な女心を描く、主演ウェンディ・ヒラーロジャー・リヴセイジョージ・カーニー共演によるロマンチック・コメディの古典的な名作。

アカデミー賞 ■ ストーリー ■ 解説


ロマンチック・コメディ


スタッフ キャスト ■
監督
マイケル・パウエル

エメリック・プレスバーガー
製作
マイケル・パウエル

エメリック・プレスバーガー
原作
マイケル・パウエル

エメリック・プレスバーガー
脚本
マイケル・パウエル

エメリック・プレスバーガー
撮影:アーウィン・ヒラー
編集:ジョン・シーボーンSr.
音楽:アラン・グレイ

出演
ジョーン・ウェブスター:ウェンディ・ヒラー

トークィル・マクニール:ロジャー・リヴセイ
ウェブスター:ジョージ・カーニー
レベッカ・クロージア:ナンシー・プライス
カトリーナ・ポッツ:パメラ・ブラウン
ラウリッヒ・モール:フィンレイ・カリー
ロビンソン夫人:キャサリン・レイシー
ロビンソン:ヴァレンタイン・ディオール
チェリル・ロビンソン:ペトゥラ・クラーク

イギリス 映画
配給 General Film Distributors

1945年製作 91分
公開
イギリス:1945年11月16日
北米:1947年8月9日
日本:1948年7月1日
製作費 £200,000


*詳細な内容、結末が記載されています。
ストーリー ■
ロンドン
幼い頃から、自分の生きる道を定め生きてきたジョーン・ウェブスター(ウェンディ・ヒラー)は、銀行の支店長である父(ジョージ・カーニー)を高級レストランに呼び、彼から解約した口座の現金を受取る。

そしてジョーンは、父に結婚することを伝え、相手が、勤め先の社長で、大富豪のロバート・ベリンジャーだと伝える。

その後ジョーンは、スコットランドヘブリディーズ諸島で結婚式を挙げると言って、父に見送られて汽車で旅立つ。

マンチェスター経由で目的地に向おうとするジョーンは、行き先の予定表や地図を確認し、結婚式や社長夫人になったことを想像しながら、行く先々で担当の案内役に迎えられて旅を続ける。
...全てを見る(結末あり)

天候は崩れ始め、船で”マル島”のトバモリーに着き、さらにキローランに向かおうとしたジョーンは、船が欠航になったために、町の民家に泊めてもらおうとする。

ある家で、イギリス海軍士官のトークィル・マクニール(ロジャー・リヴセイ)に会ったジョーンは、彼の友人である家主のカトリーナ・ポッツ(パメラ・ブラウン)に歓迎される。

ジョーンは、キローラン出身だというトークィルと話をして親交を深める。

霧が深くなり、それが晴れるようにと祈りながら、眠りに就いたジョーンは、翌朝、天気が回復したことを喜ぶ。

散歩にでていたトークィルに挨拶したジョーンは、霧は晴れたものの、強風警報が出ていることを知らされ、船頭のルーリ・モール(フィンレイ・カリー)が、船を出すことは出来ないと説明する。

ジョーンは、キローランの地主に呪いがかかるという、”モイ城”にトークィルと向う。

トークィルがそこに入ることを拒むために、ジョーンはそれを不思議に思うが、彼は、実は自分がキローランの地主で、ベリンジャーにも土地を貸していることを話す。

それを知ったジョーンは納得し、彼と共にバスに乗り、沿岸警備隊の無線を借りるために、それを管理する家に向かう。

無線を借りたジョーンは、ベリンジャーと話すことができて、ソーン城に疎開している、ビジネス・パートナーであるロビンソン(ヴァレンタイン・ディオール)とその妻(キャサリン・レイシー)に世話になるように言われる。

天候が回復し次第迎えに行くと言われたジョーンは、ホテルに泊まることをベリンジャーに伝えてる。

その後、食事をすることになったジョーンとトークィルは、立場を考えた彼女の提案で、別々の席に着く。

その夜はホテルに部屋をとり、風が止むことを祈って眠ったジョーンだったが、翌日も天候は変わらなかった。

ソーン城。
ロビンソン夫妻を訪ねたジョーンは、二人と娘のチェリル(ペトゥラ・クラーク)に歓迎される。

ジョーンは、夫妻のおばレベッカ・クロージア(ナンシー・プライス)の屋敷に同行する。

そこに、レベッカの招待を受けていたトークィルが居たために、ジョーンは驚いてしまう。

ブリッジを始めるというロビンソン夫妻とレベッカに、それを遠慮したジョーンとトークィルは、結婚60年を祝う老夫婦のパーティーに出かける。

ジョーンは、地元の人々のダンスや歌を楽しみながら、今朝、”モイ城”に行ったことなどをトークィルに話す。

トークィルの、自分に対する眼差しで、何かを感じとったジョーンは、その場を去ろうとするが、彼に引き止められてパーティーの仲間に入る。
ダンスなどを楽しみ、ホテルに戻ったジョーンは、心の迷いを振り払い、何とかキローランに行けるようにと、その夜も祈る。

しかし、翌日も風は収まらず、ジョージはキローランに渡りたいことをルーリに伝えるが、彼にそれを拒まれる。

その後、ジョーンとトークィルはカトリーナの家で、彼女が自分達の間柄を疑っている様子に気づく。

それが気になるジョーンは、トークィルにキローランへ連れて行って欲しいと頼むが、彼にもそれを断られてしまう。

仕方なくジョーンは、町の青年に船を出すことを依頼するが、彼の恋人であるルーリの娘が、それが無謀な行為で、自分の幸せしか考えないと言ってジョーンを非難する。

泣き崩れる彼女に、ジョーンは、自分の未来が崩れ去る瀬戸際だといって理解を求める。

その頃、トークィルも、青年がジョーンのために船を用意していることを知り、それを止めようと彼女の元に向う。

トークィルは、ジョーンが、多くの人々を危険にさららそうとしていることを痛烈に非難する。

幼い頃から、自分の考えを絶対に変えないことが信条だったジョーンは、何を言っても聞き入れようとせず、ついにトークィルは彼女を見限ってしまう。

冷静さを失ったトークィルは、ジョーンを止めなければ、二度と会えなくなるとカトリーナに言われ、我に返り海に向かう。

トークィルは仕方なく船に乗り、ジョーンと青年と共に荒狂う沖に出て、彼はやがて渦巻きに近づくと警告する。

雨風も激しさが増し、ジョーンの大切なドレスは吹き飛ばされ、エンジンには水が入り船は停止してしまう。

雨と風は静まるが、船は渦巻きに巻き込まれ、トークィルが、何とかエンジンを直してその場を脱出する。

結局、船は引き返し、ルーリは娘を心配させた青年を殴り倒そうとするが、彼は疲労で倒れてしまい、ジョーンとトークィルは、カトリーナに迎えられて疲れを癒す。

今回の事件でカトリーナは、ジョーンを軽蔑もせず冷静に事態を見守り彼女を休ませる。

ジョーンは、その夜は祈るのを止めて眠ることにする。

翌朝、ようやく穏やかな天候となり、迎えの船が到着するため、ジョーンとトークィルは別れることになる。

お互い言葉を交わした二人だったが、ジョーンはトークィルにキスを求め、彼はそれに応じて別れる。

モイ城”に向かったトークィルは、言い伝えられていた呪いのことを考える。

トークィルの祖先が、ある事件で男女を井戸に落として殺したため、足を踏み入れた子孫は不幸になるということだった。

内部を確認したトークィルは、石壁に刻まれた呪いの言葉を見つけるが、戻って来たジョーンに気づく。

ジョーンは意地を張っていたことを謝罪し、トークィルは城が怖くないことを告げて、二人は愛を確かめ合う。

呪いの言葉は、こう締めくくってあった。

”・・・その後は自由には生きられない、一人の女性に一生縛られ、鎖につながれたまま死ぬ”


解説 評価 感想 ■

*(簡略ストー リー)
ロンドン
幼い頃から生きる道を定め、その通りに生きてきたジョーン・ウェブスターは、勤務先の会社社長との結婚を父親に宣言し、式を挙げるために、スコットランドヘブリディーズ諸島に向う。
旅を続けたジョーンは、目的地キローランの手前のマル島で、天候悪化のために立ち往生してしまう。
その場でジョーンは、同じ船を待つイギリス海軍士官トークィル・マクニールに出会い、彼がキローランの出身だということを知り、二人は親交を持つ。
その後、霧が晴れた後日から強風が吹き荒れ、船が出港できず、何としても人生計画通りに事を運びたいジョーンは焦り始める。
そんなジョーンは、自分の立場を考えながらも、キローランの地主であったトークィルと親しくなるに連れて、心に迷いが生じてくる・・・。
__________

自分の考えのままに突き進む人生を送る女性が富豪との結婚のためにスコットランドの孤島に向かうが、天候で立ち往生したことで地元の青年と出会い、それによる迷いで揺れ動く微妙な女心を描くドラマ。

コメディ・タッチで始まる物語は、次第に純愛ドラマの雰囲気が漂い始め、結局、結ばれることになる二人が気持ちを伝え合うのは、クライマックスの一瞬なのだが、それに至るまでのプロセスが実に情緒的でもある。

そして、ラストは痛快ささえ感じさせる、マイケル・パウエルエメリック・プレスバーガーの脚本、演出の素晴らしさを堪能できる作品。

死も覚悟する渦巻きからの命がけの脱出、廃墟となった古城の呪いの言葉が、主人公二人の運命を決めるキーワードとなり、一気に盛り上がり、あっさりとハッピー・エンドを迎える、爽やかな結末は圧巻だ。

冒頭での、娘の結婚に驚きつつも、その決断力と行動を最も理解する父親が、動揺することなく彼女を見つめる眼差しや態度で、主人公の意志の強さが伝わる演出なども見事だ。

イギリスを代表する女優として、その後、多くの作品に出演して活躍するウェンディ・ヒラーは、既に30歳を過ぎてはいたが、中年過ぎ以上の出演作しか知らない方には、若々しく新鮮な印象を与えるはずだ。

当初から観客は、主人公とこの青年とが結ばれることを望んでしまう、そんな雰囲気を持つ役柄を好演するロジャー・リヴセイ、主人公の父親役ジョージ・カーニー、部屋を提供し、主人公達の行動を冷静に見守るパメラ・ブラウン、船頭フィンレイ・カリー、主人公の夫となる富豪の知人夫妻ヴァレンタイン・ディオールキャサリン・レイシー、その娘で、撮影当時11歳のペトゥラ・クラーク、そのおばナンシー・プライスなどが共演している。


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