1902年に上演されたポール・アンセルの舞台劇”Nos Deux Consciences”を基に製作された作品。 守秘義務に従い殺人事件についてを語れない神父の苦悩を描く、製作、監督アルフレッド・ヒッチコック、主演モンゴメリー・クリフト、アン・バクスター、カール・マルデン他共演のドラマ。 |
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■ スタッフ キャスト ■
監督:アルフレッド・ヒッチコック
製作
アルフレッド・ヒッチコック
シドニー・バーンスタイン
原作:ポール・アンセル”Nos Deux Consciences”
脚本
ウィリアム・アーチボルド
ジョージ・タボリ
撮影:ロバート・バークス
編集:ルディ・フェア
音楽:ディミトリ・ティオムキン
出演
マイケル・ローガン神父:モンゴメリー・クリフト
ルース・グランフォール:アン・バクスター
ラルー警視:カール・マルデン
オットー・ケラー:O・E・ハッセ
アルマ・ケラー:ドリー・ハス
ウィリー・ロバートソン検事:ブライアン・エイハーン
ピエール・グランフォール:ロジャー・ダン
ミレー神父:チャールズ・アンドレ
マーフィ:ジャドソン・プラット
アメリカ 映画
配給 ワーナー・ブラザーズ
1953年製作 94分
公開
北米:1953年3月22日
日本:1954年4月15日
製作費 $2,000,000
*詳細な内容、結末が記載されています。
■ ストーリー ■
カナダ。
何者かに弁護士が殺され、カトリックの法衣を着た男がその場から逃げ去る。
法衣を脱いだ男は聖マリー教会の礼拝堂に向い、それに気づいた神父のマイケル・ローガン(モンゴメリー・クリフト)は、教会で働くドイツ人移民のオットー・ケラー(O・E・ハッセ)がその場にいたために話しかける。
自分や妻アルマ(ドリー・ハス)によくしてくれたローガンを裏切ってしまったと言うオットーは、告白したいと伝える。
懺悔室に入ったオットーは、パートタイムで庭師として働いていた弁護士ヴィレットの家で、彼を殺してしまったことを告白する。
金を盗みに行ったオットーはヴィレットに見つかり、警察を呼ばれそうになったために殺したことを話す。
その後、帰宅したオットーは、アルマにも事故ではあるがヴィレットを殺してしまったことを伝え、ローガンへの借金を返し楽な生活を送らせたかったためだと言って後悔し、絞首刑を恐れる。 ローガンが警察に話すとアルマに言われたオットーだったが、神父は告白の内容を人には話せない誓いがあると伝える。 警察が来ることを恐れるアルマに、自分が自首しない限りは知られることはなく、神父は告白の内容を他人に話すことはできないと言い張る。 翌朝、ヴィレットの家で庭師の仕事をすると言って出かけようとするオットーに、アルマは亡くなった人の元に向かうのかと問う。 毎週、水曜日はヴィレットの庭の手入れをすることになっていると言って、オットーは教会の鐘の音を気にしながら出かける。 朝の礼拝を終えたローガンはアルマを見かけ、二人は互いを意識し合う。 ミレー神父(チャールズ・アンドレ)らと朝食をとろうとしたローガンは、オットーがヴィレットの家の庭の手入れに行ったとというアルマの話を聞き席を外して出かける。 ローガンの行き先をアルマは気にする。 ヴィレットの家に向かったローガンは人だかりの中で、警官からヴィレットが殺害されたことを知らされる。 ローガンは、ヴィレットとの約束があると言って協力することを伝え、担当刑事のラルー警視(カール・マルデン)に会う。 教会で働いているオットーのことなどを聞かれたローガンは、その場を去ろうとする。 ローガンは、第一発見者のオットーからラルーが話を聞こうとしていることを気にしながらその場を離れる。 現場では指紋が付いた凶器が発見され、現金もその場に残されていた。 オットーから死体発見時の話などを聞いたラルーは、彼がドイツ人移民であるために動揺していることに気づきながら、通りで落ち着かない表情のローガンに注目する。 その場に議員ピエール・グランフォール(ロジャー・ダン)の妻ルース(アン・バクスター)が現れてローガンに近づく。 ヴィレットが殺されたことを知らされたルースは、自分達が自由になったと言ってローガンと共にその場を去る。 議会に向かったルースは、夫のピエールを誘いランチに向かう。 教会に戻ったオットーは、その場で壁のペンキ塗りをしていたローガンを意識しながら、ミレー神父にヴィレットが殺されたことを伝える。 ミレー神父が部屋を出たため、なぜヴィレットの家に来たのかをオットーはローガンに問う。 オットーは逮捕を恐れて動揺する。 ウィリー・ロバートソン検事(ブライアン・エイハーン)を訪ねたラルーは、昨夜、ヴィレットの家の近くを通った二人の少女を呼ぶ。 少女達は、ヴィレットの家から出て来た男性が神父だったと話す。 ラルーは、街中の教会を回り前日の夜に外出した神父がいるかどうかを部下のマーフィ(ジャドソン・プラット)に調べさせる。 神父が犯人であることが信じられないロバートソンに、心当たりがあると言ってラルーはその場を去る。 警察署に呼び出されたローガンは、マーフィと共にラルーの元に向かう。 それを知ったオットーは、アルマが法衣を洗っていないことを確認してある考えを話す。 ラルーからヴィレットのことを聞かれたローガンは、弁護士でありながら誰も彼のことを詳しく知らないと言われ、自分も同じだと答える。 事件現場に来た理由を聞かれたローガンは、私的な用でありヴィレットの死とは無関係だと伝える。 立場上、詳しく調査する必要があると言うラルーは、通りで会っていた女性(ルース)いついて尋ねる。 話題を変えようとするローガンは動揺するが再び女性のことを聞かれ、話せないと答える。 そういう態度では不利な立場になると言うラルーは、事件の夜に神父が目撃され翌朝も現れたことで、同一人物である可能性を否定できないと伝える。 一人を除き街中の神父のアリバイがとれたと言うラルーは、事件の夜に出かけたローガンが、誰と会っていたかを確かめようとする。 それにも答えないローガンに苛立つラルーは、協力が得られないのは残念だと言って彼を帰す。 ルースの家に招待されていたロバートソンはラルーからの電話を受け、ローガンを容疑者と断定したことを知らされる。 それを知ったルースは動揺し、夫のピエールは、彼女が今でもローガンを愛していることを確認する。 ルースの自分への愛がないことを知ったピエールは、ローガンは逮捕されるべきだと言って部屋を出る。 ローガンに電話をしたルースは、翌日会う約束をする。 翌日、フェリーで街を離れたローガンは、ある場所でルースに会う。 容疑者となり警官に尾行されているため自分から離れた方がいいと言うローガンだったが、愛を諦められないことをルースは伝える。 聖職者の道を選んだことを理解してほしいとローガンに言われたルースは、手を引くことを伝える。 二人を監視していた刑事から報告を受けたラルーとロバートソンは、ルースを警察署に呼び出す。 それをピエールに伝えたルースは、事件の夜にローガンと会っていたことを話す。 グランフォール夫妻とローガンが顔を合わせた席で、ラルーは、今朝と事件の翌朝にローガンと会った理由をルースに問う。 ヴィレットに会いに行ったと言うルースは、それを止めたローガンとは前日の夜に会っていたことを話す。 ラルーとロバートソンは驚き、ピエールはルースが外出していたことを認める。 ローガンに会っていたことはピエールには伝えていないと言うルースは、ローガンと会っていたのは間違いないと話す。 ヴィレットに会おうとした目的を聞かれたルースは、恐喝されたためにローガンに相談したことを話す。 戸惑うルースをラルーは追及するが、ローガンのアリバイを証明しに来ただけで彼女は事件とは無関係だとピエールは意見する。 恐喝の理由を聞かれたルースは、話す必要がないとローガンに言われながらも、それが自分達の関係についてだと語り始める。 幼馴染だったローガンとルースは自然に愛し合うようになり、結婚を前にして戦争が始まり彼は志願した。 ルースは納得いかないまま、戦場に向かうローガンを見送る。 ローガンに待つなと言われていたルースは、やがて彼からの手紙も届かなくなり、ピエールの下で働くようになった。 優しくて気さくなピエールと結婚したルースは、式で初めてヴィレットに会った。 戦争は終わり、ローガンが戻ることを知ったルースは彼を迎えに行き、二人は再会を喜ぶ。 出かけた先で嵐に遭い、ある家の庭で一晩を過ごした二人夫だったが、翌朝、家主が現れてローガンと口論になる。 ローガンに殴られた家主はルースに気づき、彼女はその相手がヴィレットだと分かる。 ルースは、結婚したことをローガンに伝えていなかった。 その後ルースは、ローガンの叙任の日まで5年間ヴィレットとは会っていなかった。 頻繁にヴィレットと出くわすようになったルースは、ある日、議会に現れた彼から相談を受ける。 それを断ろうとしたルースは、ローガンとの関係を話すと言ってヴィレットに脅される。 執拗に迫るヴィレットへの対応で困惑するルースは、ローガンに相談するため事件の夜に会ったのだった。 話をつけると言ったローガンに会うため、翌日ヴィレットの家に向かったルースは騒ぎが起きていることを知る。 ルースは、その場でローガンから事情を聞いたのだった。 ピエールとルースに帰る許可を与えたロバートソンは、ローガンのアリバイを認める。 ルースに感謝したローガンも帰ることを許される。 ローガンの件は片付いたと語るロバートソンに、ラルーはヴィレットの検死結果を渡し、彼の死亡推定時刻が11時半だと言うことを知らせる。 ルースとローガンが別れたのは11時であり、30分あれば彼が犯行を行えるとラルーは指摘する。 翌朝、ピエールに起こされたルースはロバートソンが来ることを知らされ、ヴィレットが殺された時間とアリバイにずれがあったと言われる。 それをラルーは知りながら話を聞いたと考えたルースは、余計なことまで語ったことを後悔する。 証人に呼ばれるとピエールから言われたルースは、ローガンが容疑者として逮捕されることを知らされる。 ローガンの殺人を裏付ける、動機につながる発言をしてしまったことに気づいたルースは、利用されて逆効果だったことに気づく。 その後、ローガンに会ったルースは逮捕されることを伝え、彼は何もできないと答える。 警察に行ったローガンに、そこで何を話したかを聞いたオットーは、彼から自分が逮捕されると言われる。 自首させるために脅しているのかと言うオットーが、自分の保身しか考えていないことを知ったローガンは、何も語らずに外出する。 焦るオットーは、ローガンを殺すことも考えて隠してあった銃を手にする。 ローガンに会いに来たマーフィに対応したオットーは、外出したローガンが怯えていたことを話す。 マーフィからローガンが姿を消したという報告を受けたラルーは、指名手配をする。 街を歩き回り一旦、礼拝堂に向かったローガンは、その後、警察署に出頭してラルーのオフィスに向かう。 逮捕されたローガンの裁判は始まり、オットーの証言などを聞いた妻アルマは心を痛める。 証言台に立ったルースは、結婚前から事件の夜までローガンに対して愛情があったかをロバートソンに聞かれる。 それを認めたルースは、殺人の動機を立証するための質問に対して動揺する。 ロバートソンの質問を受けたローガンは、ヴィレットの血液が付着した法衣が自分のものでないと証言し、なぜ鞄の中にあったのかを問われる。 アルマは動揺し、ローガンは答えられないと言って証言を拒否する。 神父になった理由が何かから逃げるためかを聞かれたローガンはそれを否定し、結婚を知らないままルースに会ったことは密会ではなく、ヴィレットと口論になったのも当然の行為だと答える。 疑われて殴るくらいなら、恐喝された場合は更に過激な行動である殺人を犯すのではないかと聞かれたローガンは、それを否定する。 犯行時間について聞かれたローガンは、11時15分には教会に戻り礼拝堂に向い、オットーに会ったことを伝える。 オットーがローガンと会ったという証言は11時45分であることをロバートソンは確認し、時間は覚えていないが、その後のことは事実ではないとだけローガンは答える。 ヴィレット殺害の直接的行為に関してのロバートソンの推理を、ローガンは否定する。 裁判長は、陪審員に評決の協議を求めて退席させる。 法廷に戻った陪審員は、疑念は残るものの証拠不十分のためローガンが無罪であることを伝える。 弁護側はローガンの釈放を求め、裁判長は評決に不満を示しながら被告人の釈放を認める。 人々から軽蔑の眼差しと罵る言葉を浴びせらるローガンを見て、耐え切れなくなったアルマは彼に駆け寄る。 その場にいた警官に、ローガンは無実で夫が犯人であることをアルマは伝える。 オットーは隠していた銃を手にしてアルマを銃撃し、その場は混乱する。 ローガンはアルマを介抱し、彼女がローガンは無実だと言ったことをラルーは確認する。 アルマは、ローガンに許してほしいと言い残して息を引き取る。 マーフィからオットーがホテルに逃げ込んだことを知らされたラルーは、彼と話をしようとする。 真相を語らないローガンがオットーと話をしたいというため、ラルーはそれを許可してホテルに向かう。 ラルーにオットーを捜すよう指示されたマーフィらは、調理室でシェフが撃たれたことを確認する。 それを知らされたラルーは、尚も何も話さないローガンと共に、ステージに逃げたオットーの元に向かう。 投降しろというラルーの指示に従おうとしないオットーは、二人殺したと言われてローガンが全てを話したと考える。 オットーは告白を人に話したローガンを非難するが、ラルーとその場にいたミレー神父は、ローガンが神父の誓いを守り何も話さなかったことに気づく。 ピエールと共に状況を見守っていたルースも、全てを理解してその場を去る。 ラルーの指示で部下はオットーの肩を撃ち、ローガンは制止も聞かずに彼に近寄る。 アルマが死んだことを知らされたオットーは信じようとせず、哀れな自分とローガンについてを語りながら引き金を引こうとする。 銃撃されたオットーは、倒れながらローガンに助けを求め許しを請う。 腕の中で息を引き取ったオットーに、ローガンは祈りを捧げる。
...全てを見る(結末あり)
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★ヒッチコック登場場面
上映開始直後の約1分半、通りにある長い階段の上部の道を横切る男性がアルフレッド・ヒッチコック。
遠景のショットではあるが彼だとはっきり分かる。
*(簡略ストー リー)
カナダ。
聖マリー教会の神父マイケル・ローガンは、教会で働くドイツ人移民のオットーから、弁護士ヴィレットを殺害したことを告白される。
告白の内容は他人には話せないという神父の守秘義務があるため、ローガンはその内容の深刻さから悩む。
更に、犯人が神父である可能性が高まり、事件の夜に外出していたローガンは、ラルー警視に呼び出されて犯行を疑われる。
事件当夜、議員の妻ルースと会っていたローガンは、彼女との関係も話す訳にいかず、告白の件も語れないまま追い込まれる・・・。
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いきなり殺人事件で始まるもののサスペンスではなく、守秘義務を破れない神父の苦悩を描くドラマとなっている。
犯人は冒頭から明らかであり、警察は通常捜査の段階を踏むが、何も語れずに嫌疑がかかる神父の姿を見守るしかない観客は、重苦しい思いでクライマックスを迎えることになる。
更に、カトリックの聖職者の身でありながら、女性と密会しているようにしか思わせないところもポイントでり、殺人事件以外で緊張感を漂わせるという、アルフレッド・ヒッチコックの序盤の演出にも引き込まれる。
戦後のドイツ移民の苦しい立場や恵まれない生活が殺人事件に発展するという、当時の社会情況に言及する内容にも注目したい。
その後の作風を感じさせる、ディミトリ・ティオムキンの音楽が非常に印象的で、またファンには嬉しい。
辛い立場に追い込まれる神父を演ずるモンゴメリー・クリフトは、聖職者の身であることを受け入れながら生きる逞しさも感じる役柄を好演している。
主人公とは不釣り合いな女性に思える議員夫人アン・バクスターが過去を語るシーンは本作の一つの山であり、それ以後の彼女は別人のように見えてしまう演出も見事だ。
警察官としての義務を果たそうとする警視カール・マルデン、弁護士を殺した犯人O・E・ハッセ、夫の犯行と行動に心を痛めるその妻ドリー・ハス、検事ブライアン・エイハーン、ヒロインの夫である議員ロジャー・ダン、神父チャールズ・アンドレ、刑事ジャドソン・プラットなどが共演している。